遠く、街から祭りの音が響いてくる。
 陽気に響く笛や太鼓の音。時々歓声。

 何をしているのかな、と少し気になりつつも、俺は複雑な顔でラン王女の頭をゆっくりと撫でる。
 種明かしをされてしまえば、腑に落ちることは色々ある。
 神話作りにこだわったこと。ポンコツ女騎士一人しか従者がいないこと。そして妙に俺に「カラダでの支払い」を望むそぶりがあったこと。
 病弱さに手が施せず、若くして死ぬものとして扱われ、それに本人さえも半ば納得して従っていた彼女の心境を鑑みれば、これは祖国にドラゴン災害を向けないための命懸けの「戦い」だ。
 さらに、見た目の俺の気質や、その俺たちの語るポルカの霊泉の効能も、彼女から見れば全くの偽りかもしれない、と思うのは当然だ。
 いくらアイリーナが王族級の貴人といっても、直接の国交のない同士では全ての言を信頼するには値しない。素性の分からないドラゴンライダーなんて、なおさら大嘘つきの可能性を考えて然るべきだ。
 何かの理由で俺たちが豹変するとしても、罠だったとしても。
 それさえも彼女は覚悟のうえで、ただドラゴンという暴威を目にした以上は今のように動くしかない。
 フィオーナを守るためという意味も確かにあるだろうが、そもそもあとは死を待つ身の彼女には、こんな大きな厄を引いたまま逃げて逃げられる先はない。
 もはやあの時点で命は捨てていたのだ。
 そして俺たちの要求が、せめて年若い王女の体を貪ったという満足で終わってくれるなら……という思いから、自ら身を差し出すような言動を繰り返したんだろう。
 礼儀正しく敬ってみせつつも、俺たちを全く信用してなかったわけだ。
 しかし俺たちは特に嘘もつかなかったし、王女の身は順調に健康体になり、未来は開けた。
 今、こうして残りの札を開陳し、俺に選択を迫るということは、ここからは俺たちを信じて相乗りし、良好な関係を築くことでセントガルドに対して本質的に敵対させない……と同時に、今後の国内での生存戦略に積極的にドラゴンの力を借りていこう、という老獪な策も同時に立てているわけだ。
 当然、俺は突っぱねることもできる。提示されたように今すぐラン王女を殺して見なかったことにするのも、俺たちの勢力ならなんなく可能で、そしてラン王女本人が死んでも元々そうなるのが多少早まるだけで、セントガルドにはダメージはほぼない。
 もしも拒否するならラン王女を殺せば済む、という選択肢もまた曲者で、それで終わらせたらもうセントガルドに乗り込んでクレームをつける理由も消える。
 彼女の提示に乗った時点で、俺には「セントガルドの限定的勢力の味方になる」か「セントガルドとは関わらない」という二択しかない。
 まだ大人と呼ぶには幼すぎる少女が、身一つを懸けて綱渡りをしながらひねり出した戦略。
 それにきっとアイリーナも感服したんだろう。
「王女様」
「……これよりはランとお呼び下さい。あなた様がどういう形を選ぶにしろ、この身はもはや捧げものでございます。へりくだる必要などはありません」
「んなこと言われても王女様は王女様だ。ディアーネさんはディアーネさんだし男爵は男爵だし王様は王様だ。俺の味方は多いかもしれないけど、俺の身分は平民で充分だ。偉い身分の相手を貶めて上に立つことが好きなわけじゃない」
「……言い方を変えます。アイリーナ様やシャロン姫、オーロラ姫を呼び捨てにされるのに、私をそうお呼びになるのは身の置き所に困るのです」
「あー……」
 そう言われると悩む。確かにちょっと不統一……いやいや。
「アイリーナたちは雌奴隷だから。うん」
「ではなおさらです。私も今日この場よりあなたの雌奴隷とお考え下さい」
「……あのね、ちょっと待ってね」
 どこから説明しようか。いやもうすでにザッとは理解してもらってるはずなんだけど。
 あ、でも結局「ドラゴンライダーだから野放図な女性関係が許されてる」というのが彼女の認識で、雌奴隷は文字通りその権威に隷属している女、という考えなんだろうな。
 半分は当たってるんだけど。確かに雑に許されてる理由はドラゴン由来なところも結構あるんだけど。
「雌奴隷っていうのはそもそもドラゴン……ライラが入ってくる前から始まってる話でね。字義と結構違うんだ。奴隷なんて言ってるけど、ほぼお嫁さんだと思って欲しい」
「それはアイリーナ様から聞きましたが」
「違う。多分情報が不足してる」
 アイリーナをちらりと見ると、アイリーナも困った顔をして肩をすくめた。
 俺の今日までの遍歴をラン王女に話すうえで、雌奴隷がどういう存在か触れずに済んだとは思えない。
 だが、外から見た関係性は「俺のスケベ根性と幼稚な独占欲ゆえに手を出し放題のハーレム状態、しかし異文化の集まりゆえにそれを肯定する女たち」というのがせいぜいだろう。
 それだけで説明がついてしまうといえばついてしまうんだけど。
「雌奴隷と言っても俺はそれぞれとしっかり関係を築いてきた。欲しいと思った女、俺が捕まえておかないといけないと思った女を時間をかけて選んで、それを他の女も認めてくれて成立している関係だ。内部での認定の儀式もある。ただ覚悟決めて隷属してくれればそれで雌奴隷一丁上がりってわけじゃないんだ」
「……私は必要とはしてもらえない、と?」
「セックスするにはまだ早いよ」
 まあ正直、もう多すぎるよなあ、という意識が働いているのも事実だし。
「アイリーナ様やジャンヌさんなどは私より体が小さいのに……」
「こいつらは特殊だから。アイリーナはもう成長しないしジャンヌはドワーフだから小さくても子供産める」
「これ。わらわが成長せぬというのは断言する話ではないぞ。一般的には十八を過ぎたエルフはそれ以上成熟せんというだけで……」
「ややこしくなるからその話は今度な?」
 ちびっこ組はボーダーラインを定める上でとても危険な存在かもしれない。今以上幼い見た目の子に手を出さないよう気を付けよう。
 そんなの有り得るのかと思うでしょうが、世の中にはそういう子が喜んで裸で誘ってくる場所もあるんです。クリスタル・パレスとか。
「それに我が国では15歳ともなれば嫁に出ることが認められています。もちろん子産みも」
「……えっ、15歳なの?」
 もうひとつかふたつ年下に見える容貌だ。
 と思ってラン王女を凝視すると、ラン王女はしばらくして視線をさまよわせる。
「……あ、あと九か月ほどで」
「それはちょっと誤差とは言いづらいな……」
 というか法が許すかどうかはまた別の話だった。引きずられるところだった。
「まずえーと、そうだな、百歩譲って最終的にエッチするのはアリとしようじゃないか」
「はい」
「でも俺ね、正直あんまり気持ちが入らないエッチは不得意なんだよ」
「…………」
 悩ましい顔をするラン王女。
「どうしたらよいのでしょう……」
「いや、お付き合いを暖めてからにしようっていう……ね?」
 なんでそこで悩むんだろう。
 こういうのって普通男が性欲で迫って女が誘導しようとする流れじゃないんだろうか。
「阿呆」
「な、なんだよ」
 いきなりアイリーナに罵倒されて口を尖らすと、アイリーナは扇をゆるゆる振りながら呆れ顔をした。
「そんなもの王族に求めるでない。わらわたち気の長い種族ならいざ知らず、人の姫君なんぞ嫁に出されて初めて夫と言葉を交わし、その晩にいきなり子作りを始めるのは当然の事じゃ。それが義務。夫の匙加減の余地はあれど、拒否は許されん」
「……いや待って。それってセントガルドの話? あとこういう押し掛け嫁の場合ちょっと違わない?」
「そういうのが当然という階層の教育を受けておるのじゃから察せよ。そなたの得意な『関係を深めたうえでのラブラブえっち』なぞ、流れが想像もできんでおるのじゃ」
「ええ……」
 いや、普通……普通って俺が言っても説得力ないし他国に通用もしないんだろうけどさあ。でも普通、エッチってそういうのっけからのイベントじゃないよね女の子的に。
 アレな事例を知りすぎて恋愛感覚が迷子になったテテスとか、いきなり温泉乱交から始まったフェンネルたち四人娘とか、基本がコロニーあげての大乱交な猫獣人やブルードラゴンとか、なんとなくノリで混ざっちゃったミラさんたちとか、あとチンポ説得に普通に負けたアルメイダとかいるけどさあ。
 ……あれ、例外ばっかりのような気がしてきたぞ。
「そなたの『気持ちが入らない』なんて戯言は、要は勢いが足らんというだけのことじゃろう。どちらにせよ、もうこの王女を殺すか守るかという選択には決着がついたのじゃ。とっととハメて安心させてやるのが男の甲斐性じゃろう」
 言いながらアイリーナは服を脱ぎ始める。
「!」
 硬直するラン王女。その様子を見ながらニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべるロリ氏族長様。
「お前……ここで乱入するのかよ」
「そなたの腹が決まるまでしっかり待ってやろうと思うておったがの。ここでグダグダと押し問答しておったら収穫祭が終わってしまう。そうなれば恨まれるぞ、竜を含めて雌奴隷みなに」
「!」
 ラン王女がさらに青くなる。
「というわけで……そなたも脱げ脱げ、汚してしまってはこの後踊れぬぞ♪」
「え、ええっ……こ、これから……まぐわったあとに踊るのですか!?」
「まあ、それが一番なのじゃがな。……そなたも雌奴隷となる身、スマイソン殿の意向を無視する癖をつけてはいかんからのう」
 アイリーナは首輪一つの裸になって邪悪な笑みを浮かべる。

 ラン王女もアイリーナに倣って脱ぎ始める。
 覚悟をしたとは言っても俺の視線はやはり気になるようで、脱ぎながら時々震え、俺の方を不安そうに見ては息継ぎをするように勇気を振り絞り、肌をあらわにしていった。
 その本気で恥じらう姿が逆にスポーンと脱ぐ雌奴隷たちに対して新鮮……い、いやいや、変な嗜虐趣味に目覚めるのは良くないぞ俺。こういうのを求め始めると新しい子を際限なく抱くしかなくなるからな。いつかテテスが言ってた処女専とやらになってしまう。
「やはり好みを外れるわけではないようじゃのう」
 アイリーナはそんな俺の視線の微妙な熱量を感じ取ってからかってくる。
「そ、そりゃあ……って、変な煽り方するなよ、王女様が止まっちゃうだろ」
「クク、まだ抱くには早いと言いながら、早く見たくて堪らんかのう?」
「手間取りすぎると恨まれるって言い出したのお前じゃん!」
「なに、その間にわらわが面倒を見てやろう♪」
 心底楽しそうにアイリーナは俺の足元に跪き、ズボンを緩めてちんこを引っ張り出す。
 いくら口では文句を言っていても、股間は女の子の裸体に素直に反応してしまうのが俺のいいところだ。うん。しないよりはとてもいい。
 そのちんこにアイリーナは躊躇なく、小さな柔らかい唇でキスをする。
「ちゅ……っ♪」
 いつもは懇意に知識を教授し、生活の便宜も図ってくれている、見た目はラン王女自身よりも幼い氏族長。
 その彼女が、いたいけな裸体に無骨な首輪だけを纏い、跪き、音を立てて男の肉棒にキスをしてみせる。
「空飛ぶヤリ部屋」での復路のうっかりはともかく、それ以降は生々しい性行為からは遠ざけられていたラン王女には、そのアイリーナの猥褻な姿は刺激的なはずで……あとは下着だけなのだが、それを脱ぎ落とす手も止まっている。
「……早う脱ぐがいい。スマイソン殿の射精量じゃと、下着もぐっちょりと生臭い汁で濡れてしまうぞ。それを着たまま踊りたいというなら止めぬが♪」
「えっ……あ、あの……」
「今日のところは時間がかけられぬゆえ、種汁を身に浴びるだけで良しとしようぞ。それだけでもオスに穢されたと言うことはできよう。こうしてわらわも手伝ってやる……ん、ちゅっ……あむ、んぐっ……ん、んむっ……ちゅぽっ、はんんっ……♪」
 見せつけるように。挑発するように。
 幼く白く薄い裸体を優雅にうねらせ、プラチナブロンドを掻きあげながら、アイリーナはフェラチオを披露する。
 半身になって、口の中への肉棒の出入りをラン王女によく見えるよう、角度をつけつつ、アイリーナ自身も性を知ってから何年と経っていない……なんて信じられないほどに、ひたすら卑猥に、妖艶に。
「ちゅぽ……は、んはっ……いかん、ヨダレが垂れまくってしまうのう。さあ、早うわらわと一緒に、このチンポを口で愛でようぞ……♪」
「……えっ……あ、あの……」
「まさか雌奴隷を志しながら、主のチンポに口づけのひとつもできぬとは言うまいな?」
「んくっ……」
「なに、40人の雌奴隷、どの女も喜んで口に含む幸せ棒じゃ……♪ アップルもジャンヌも、ディアーネもクリスティも、ライラ殿もシャロン姫もナリスも……かのドラゴンたちも、みな奪い合ってまで種汁に汚されたがるものじゃぞ♪」
 生唾を飲み込み、意を決して最後の一枚……ぱんつを脱ぎ落とすラン王女。
 まだ穢れを知らない思春期の美少女が、男性の肉欲に本能的な怯えを見せつつも意志で押さえつけ、ふらふらと股間に近寄ってくる姿にはやはり格別の感慨があり、そしてアイリーナの盛大に下品な口唇奉仕は俺を結構追いつめている。
 ご存じの通り、俺は今もってそんなに我慢強いわけでもないのです。連発力はどんどん増しても快楽への耐久力はまだまだ童貞に毛が生えた程度。
 そんな射精の予感に震える肉棒に、本来穢すのを躊躇すべきラン王女さえもが唇を近づけ、自らの唾液で口の周りも喉元も汚しまくったアイリーナが口移しをするように亀頭を差し出して、二人のキスが左右から亀頭をサンドすれば。
「ん……ぐぅっ……で、るっ……!」
 ビュルルルルルルルルルルルッ、ビュルルルルルルルルッ、ビュッ、ビュルルッ……!
 我慢なんて効くはずもなく、盛大にちんこは跳ね上がって、左右に振れながら激しく精液を撒き散らす。
「ひぅぅっ……!!」
「ん……あ、れろっ……もったいないっ……♪」
 舌をさし伸ばすアイリーナと、目をつぶって身をちぢこまらせるラン王女に、概ね均等に精液が降り注ぐ。
 妙な背徳感と罪悪感を感じながら、俺は二人を汚しに汚して……さて、こんなに汚した二人を霊泉で洗ってまた盛装をさせ、素知らぬ顔で収穫祭を楽しませるのはちょっと骨かも、とぼんやり思いながら、せっかくなのでアイリーナに残り汁も吸ってもらうことにして、ちんこを無遠慮に押し付ける。
「ん……はむ、っ……せっかくじゃから下の穴に突っ込んで続けぬかえ……♪」
「キリがなくなるじゃん」
「なに、一度で構わぬ。どうじゃ♪」
「……じゃあ」
 アイリーナを立たせて突っ込もうとして、ふと窓を見たらじーっとマイアとエマとコルティが覗いていた。
 ここ二階。窓辺に三人まとめて張り付く足場なんてない。
 ……いつかやってたみたいに足を氷で壁に固定してたりするんだろうか。
「……やっぱり祭りで踊った後な」
「なんじゃ。せっかくじゃから王女に本気のまぐわいを見せつけてやればよかろうに」
「みんな待ってるから! ほら窓に! 窓に!」
「……何もおらんが」
「隠れるなよ三人とも! 意地悪か!」
 一方、覗かれていたと知ったラン王女は、変な声を出して凄い速さで服を掻き集めて机の下に逃げた。
 初々しくていい。……うん。

(続く)

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