ルキノさんのダンスはノールさんとは少し趣が違う。
と言っても流派的な差ではなく、動きの質が違う感じ。
とにかくしなやかで流麗、かつ濃厚な表現力でググッとくる感じのノールさんに対し、ルキノさんは動きの端々にハッとするようなメリハリがあり、次々に強い印象の一枚絵を魅せてくるような感覚がある。
これはこれで天性を感じさせる。ある程度のモーションの定型はあるものの、一連のダンスはほぼアドリブだというのだからなおさらだ。
「あまり他のダンサーを知らないから的外れかもしれないけど……ルキノさんも相当な天才に見える……」
「そーねー。才能はあるわよ、私と張り合えるくらいだし」
まるで何でもないかのように言うノールさん。
……いや、それってつまり少なくともセレスタ南部、ダークエルフ支配圏内ではほぼ最高クラスってことでは。
射精済みのちんこを楽しむようにゆるゆる腰を揺すりながら、ノールさんは仰向けに視線をルキノさんにやる。
「ちょっとパターン少ないのが物足りないけどね……ん、っ♪」
「あれでですか……」
「たった10フレーズのうちに同じキメ方繰り返してるもの。そんなんじゃ酒場で稼ごうとしても場が持たないわよー」
「う、うるさいなーっ。たまたまよ、たまたま。とっさに出ちゃっただけっ」
踊りながら少し拗ねるルキノさん。
やはり本職に比べると劣る部分はあるものらしい。とはいえ、そういう素人目には何が悪いのかわからないところにしか指摘がいかないあたりは、ノールさんからもだいぶ認められているんだろう。
「でも、これだけ見栄え良く踊れるのになんでモテてなかったんだろう……」
つるんでいる三人のうち、モテていたのは比較的冷静なミラさんだけだったらしい。
シーマさんはノリが子供みたいだからともかくとして、ルキノさんはこれほどのダンス技能があるなら、それを武器にすればモテモテだったのではないか……という疑念がぬぐえない。
タルクに限らず、踊りの上手い女性はどこでもモテるものだ。踊り子という職に就かなくとも、ハレの日にそれを披露するだけで男はコロッとやられてしまう。
激しく、美しく。あるいは儚く、妖艶に。
踊るというのは、人が普通に生活している中には決して見られない側面を引き出す行為だ。それが得意というのは、自らの魅力を引き出す術に長けているということだ。
ただでさえ美しいダークエルフ。それも大富豪の家柄のルキノさんだ。この一芸をもってしてなお男にありつけないというのは考えにくいんだけど……。
「ルキノは口では突っ張るけど、一人でオトコに言い寄られるとすぐテンパって逃げちゃうから」
「ちょっ……そ、そんなことないよ!?」
ノールさんにバラされて慌てるルキノさん。
しかしダンスが続いているおかげでなかなか言葉がまとまらず、やがて踊りながら「うーっ」と唸って認める。
「……そ、そーいうつもりで踊ったわけじゃなかったしっ……一人の時狙ってくるやつって怖いじゃんっ……」
「セックスは普通一人と一人でするものよ?」
「そーだけどぉっ……」
ノールさんはにゅぽん、とちんこを抜いて器用にギターの邪魔にならないよう足を動かし、うつぶせに寝返ってルキノさんを見つめる。多分ニヤニヤしながら。
薄闇なのでよくは見えないが、その股間から尻にかけてたっぷり精液が垂れ広がっており、薄絹のダンサー衣装をも張り付かせているのがわかる。
「結局、弟くんみたいな子にハメてもらわないと、あと200年くらい処女だったかもね♪」
「さ、さすがに100年くらいしたらみんな焦ると思うしっ!」
100年と200年の差が俺にはわかりません。
そうは言いつつも曲が終盤に向かって盛り上がる。アドリブのはずのルキノさんだが、一度聞いた曲なのでタイミングはなおさらわかりやすかっただろう。
窓の向こう、月光で青く光る夜空を背景に、ルキノさんの裸体もシルエットだけを光らせて躍動する。ダンスの終わりに向かって、今まで魅せていない、激しくも美しいアクロバティックな動きが冴え渡っていく。
乳房が舞い、尻が閃く。男の視線を誘わずにはおかない股間の隙間が、床からの月光の照り返しに浮かんでは、幻のように影に消える。
そういえば、こういう影絵のようなエロダンスもどこかの地方にはあると聞いたことがあるな。
暗視種族じゃ丸見えでさほど面白くないはずだから、オーガやダークエルフが主体の砂漠じゃないはずだけど。どこだったっけ。
そんなことをぼんやり思いながら、まだ義姉の愛液に濡れるちんこをギターの下で勃起させつつ最後のフレーズを弾き終える。
セックスついでの演奏なんで正直ミスが多く、運指も拙く、とんでもない音やリズムの乱れも多かったけれど、それでもルキノさんはキレのいいダンスを踊りきってくれる。
少しだけ旅芸人一座の楽師の気持ちがわかった気がする。高い技術を持つ踊り子が自分の演奏に乗って美しく舞い、あるいはミスをも補い合いながら、輝く時間を共に生み出す喜び。
もちろんそんな楽しさなんて感じていなくて、ただ楽器を弾くしか日銭を稼ぐ手段がないからやっている楽師もいるのだろう。でも、こんな風にゴージャスな時間が自分の指からも生み出され得るのだ、と感じられれば、これを仕事にしたい、と憧れる気持ちもわかる。
……なんて冷静に考えられるのは、ノールさんの壮絶に迫ってくる舞踊技巧の後だから、というのと、それに乗せられて射精してしまった余裕と両方なんだろうな、と思う。
やっぱりその辺はちょっとルキノさんに申し訳ないところはあるな。
「はいはーい、よくできました♪」
「もうっ、交代交代っ! 踊ってる最中におかしな話で邪魔するのやめてよね、ダンスは魅せるものでしょ?」
「えへへ。はいはい、それじゃ弟くんお待ちかねのザーメン垂れ流しダンス……もう少し明るくした方がいいかしら?」
屈託なく起き上がり、コプッと膣から早くも精液を溢れさせつつノールさんが前に出る。
ルキノさんは軽く浮かんだ汗をそのままに、俺に丸出しの乳首を押し付けつつ頬キスをして……そしてふと、思いついたように。
「……せっかくだし、外で踊っちゃわない?」
恐ろしく大胆なことを言い出す。
宵も深いとはいえ、外で楽器を鳴らせば誰かが寄ってくる可能性もゼロではない。
幻影でごまかせばいいだろう、とは言うが、あまり小さな結界では演奏が聞こえなくなってしまうし、大きな幻影結界はたとえ音だけに限定しても難度が高い……らしい。
スマイソン家は町外れだが、どれだけ騒いでも誰も来ないほどは町から遠くもない。この庭でそのまま始めるのはとてもリスキーだ……が。
「だからいいのよ。もし見られてもセレスタのスケベ奴隷の文化ってゴリ押ししちゃえばいいわ♪」
首輪を嵌めた踊り子姉妹は、むしろ露出羞恥の予感にワクワクしてしまっている。
地面に四つん這いでハメられるのを待つルキノさんも、中出し精液を垂れ流したまま明るい月光に身を晒すノールさんも、見られたらその時、と割り切っていた。
確かに外はいい明るさで、涼しい風も吹いている。月光とはいえ、慣れた目にはもう二人の裸体は昼間のように乳輪の境目まで判別できる。
ドラゴンたちやエルフ四人娘たちが魔法や手作業でしっかり管理してくれている庭は、例え裸でゴロゴロ転がったって身を傷つけるものなどない、柔らかい土と下草で覆われている。コイン大の小石すら転がっていない。
今になって「庭をこういう使い方をすることを予期してこんな綺麗にしてあるのか」と思い至って戦慄しているけれど。……いや、そんなことはないよな? エルフの環境意識として昼寝向きの柔らかい庭が好ましいだけだよな?
「ノゾキが来たら見せてあげましょ♪ 私たちと弟くんの最高のスケベダンスを……♪」
「さっすがノール姉さん、ノリで生きてる♪」
「……いや、あの。距離的に一番近いのってお袋の家なんだけどね?」
俺一人が気まずい展開過ぎない?
というかドラゴンに音声結界頼めばいいよね。ついでに視覚的にも。
という意見はさっくり却下された。
「無理に隠すからいけないのよ。淫乱女と若い絶倫が子作りに励んでいるだけだもの。文句なんてナンセンスよ」
「私らだけじゃないしね。それに、首輪つけた子全員嫁にしちゃう気なんでしょ? 派手にやってる方が家族サービスをよくする旦那さんってことで印象いいかも」
ええと……それでいいのか? あれ?
なんだか反論が追いつかなくなってきた。
「じゃ、そういうわけで。ミュージックスタート♪」
「え、ええと……はい」
反論ポイントを整理しようとしている間にノールさんがポーズを取り、ルキノさんは自ら腰を押し付けて挿入を始めてしまう。
俺は急かす彼女らに勝てず、そのまま演奏を始めてしまう。
……明るい月と、星空の下。
褐色の絶世の美女たちが、俺の精液に濡れたまま、ポルカのつかの間の夏を祝うように舞い踊る。
時には二人一緒に舞い、時にはどちらも股間に這い寄って。
遥かな山脈と森と草原。
何もない見慣れた夜を、絢爛たる美女二人の大胆な舞いと、拙い音色と性臭が彩っていく。
……いつしかそれも、楽しくなる。
音楽と笑顔と、快楽と。
誰も邪魔しない静寂の夜に、ただただ繰り返されるそれが、楽しくないわけがない。
酒もあればもう私的な祭りだな、なんて思いながら、射精と演奏を繰り返して。
ダークエルフの姉妹の下半身は、とめどなく注ぎ込まれる精液で濡れて光り、それを誇るように躍動を続ける。
翌朝。エマは。
「昨夜はお母上の晩酌にお付き合いしておりました」
マイアは。
「音楽につられてフラフラこっちに来そうな酔っ払いを追い返してた」
……どちらも陰で頑張ってくれていたらしい。
ありがとう。ごめん。
(続く)
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