月の明るい夏の夜。家の庭に置かれた「空飛ぶヤリ部屋」の中で、ダークエルフ美女二人が局部を晒したダンサー衣装で、事の始まりを待っている。
エロ絵巻を読むために浮かべた照明は、消してもらった。
本来なら照明を浮かべて明るくした中で……というのが、暗視種族ならぬ俺に配慮した展開だが、青白い月明かりの中で浮かび上がる女体も、これはなかなか雰囲気あるじゃないか、と思ったのだ。
「それじゃあ、私たちのご主人様のお手並み拝見ね」
ツインテールのルキノさん、ワンレンロングのノールさん。
細部の見えない逆光の薄闇の中ではそれで見分けるしかない。
そして手元のギターは……まあ、俺は元々感覚で弾くタイプだからあんまり見えなくてもそんなに支障はないけど。
「たまにしか弾かないから、多少ペースが乱れたり音が外れても気にしないでほしい」
「はーい」
「演奏にばかり夢中になって私たちの舞いを見られない……なんてのはナシよ? ひどいなら手拍子だけで踊っちゃうんだから」
ノールさんはおどけたような媚びたような口調で囁く。
彼女たち砂漠南のダンサーは、もともと打楽器のリズムで踊るのが本流らしい。
だから場末の酒場で楽器や演奏者がない場合は、そこらのカウンターや床、食器を打ち鳴らした音を伴奏にして踊るのがよくあるパターンなんだとか。それなら酔っ払いのおっさんたちでもなんとかなるし、最悪ただの手拍子でもいい。
でもまあ、極上の素肌を見せつけて趣向を凝らしてくれるトッププロ相手に、そんな雑な妥協はナシにしたいよね。
素人奏者ではあるけど、最高のひと時を自分の手で彩れるとなれば頑張る気にもなるものだ。
「よし……ワン、ツー」
軽く爪先で拍子をとってから、演奏開始。
爪弾くメロディーはバッソンの酒場で聞き覚えた曲。たまにあそこも旅芸人が寄ったのだ。国境近くという立地なのもあり、路銀稼ぎにはちょうどいい場所だったらしく、一度滞在すれば半月からひと月程度は、町中の酒場を回って音楽や芸を披露していった。
それが去ったあとは酒場が寂しくなるので、戯れにウチの隊員たちが素人芸で真似をするのがお決まりの流れだったのだ。大抵はまさに酔っ払いの戯れでしかなく、しくじって笑いものになるのがせいぜいだったけど、俺やアイザック、ウイリアムズはわりとやれちゃう方。特にアイザックの歌は美声すぎて芸人よりおひねり飛んできた。
まあそれはともかく。そうして手につけた曲の中で、ギター一本でサマになって、しかも砂漠のダンサーの躍動するテンポを保ち、そのうえで最後まで曲を覚えているのは一曲しかない。……いい曲でも長すぎたりすると覚えられないし、逆に短いフレーズの繰り返ししかなかったりするやつは真似できてもキリがなくて自分でオチをつけなくてはいけないので除外。
「……♪」
トン、トン、トン、とノールさんは軽く跳んでテンポを把握すると、月光の中を蝶のように舞い始める。
長い四肢が光の中で薄い光を纏って躍動する。魔法なんかでなく、身に薄く塗った香油が月光を照り返しているのだ。
肉体で魅せる芸術に、魔法を使った演出は無粋。
薄闇の中で華麗に線を引き、「美」が「美」を表現する。
彼女の異名の宝石蝶は砂漠近くに分布する、不思議に煌めく羽を持つ蝶だという。羽を傷つけたり死んでしまうと色あせてしまい、価値がなくなってしまうらしい。捕らえるのには魔法を使わなくてはならず、長く飼うこともできないので、ただ彼らの好む花を育て、野生で舞う姿を見るのが楽しむ唯一の方法だという。
自由な彼女らしい異名だと思うが、首輪をつけた彼女は色あせるどころか、さらなる艶を帯びて輝きを増す。
初めて聞くであろう曲に、見事に乗ってみせる足運び、腕捌き。縦に横に、大きく空間を占有して男の視線を独り占めにする動き。
そして何より、そんな肉体の躍動美の合間にも男を挑発して、胸を、尻を、下腹を強調する妖艶な指使い、腰使い。
一言の言葉もなく、ただただ息遣いと演奏曲だけが場を支配しているにも関わらず、彼女は絡みつくように「揉みたい? 挿れたい? ここでおちんちんコスってみたい……? いいのよ?」と、その身体全体で囁いている。
卓越した舞踏の技量が、そして彼女の女性としての濃密な存在感が、男の本能に直接メッセージを届けてくる。
自分は最高の美そのものであり、そして男の欲望をおよそ全て満たして余る最上の雌なのだと。
一刻も早く手に入れ、その雌穴に肉棒を収めなければ、誰に奪われてしまってもおかしくない性の至宝なのだと。
男を滾らせ、漲らせ、酔わせ、焦らせる。ただの肉体の躍動だけで、目の前の男を幻惑し、狂熱に導く。
俺はノールさんの恐るべき舞踏にすっかりやられながら、それでもただ、目の前の絢爛たるそれを終わらせたくない一心で演奏を続ける。
すでにギターの下では俺のちんこが雌肉の予感に震えている。もしかしたら知らないうちに射精しているんじゃないかと思う。
ノールさんのダンスと表情が俺の心に送りつけてくる熱情は、たびたびカッとくるような衝動を喚起し、自分の状態を見失わせてくる。
気が付けば呆然として、かろうじて指が止まっていない……遅れてそう認識するほどで、思ったより手が覚えてくれていることに感謝すると同時に、彼女の膣内で激しく欲望を解放する瞬間が待ち遠しくてたまらない。
でも、少しでも長くその美を眺めていたい。音楽と女体の躍動が融合し、たひたすらに豪奢な時間を終わらせたくない。
矛盾する感情をもてあましながら、ただひたすらに指を動かし、舞い手に釣り合っていない素人演奏を続ける。
やがて、曲が終わりを迎える。
その瞬間を最初から計算していたようにノールさんはポーズを決め、優雅に横回転をして、舞いは終わる。
俺はぼーっとしてネックから手を落とす。目の前で展開された、ただただ自分だけに向けられた芸術を処理しきれない。
それを見てノールさんは微笑みつつ、腰をくねらせる妖艶な歩みで俺に近づく。
「よくできました……ふふっ、最高にハマッた感触、あったわ……♪」
「……はい」
彼女にもダンス一回一回に出来不出来というものはあり、最高にノったダンスができればその余韻で身が昂るという。
俺の演奏に合わせ、俺一人のために生み出された今のダンスは、どうやら彼女にそういう気分をもたらしているらしい。
「……もっとも、弟くん……もう、ご主人様って呼ぶべきかしら。あなたとのアッツいファックがすぐ待ってるって思ってたからこそのパッションだったのかもしれないけれど……♪」
「……っ」
喉が鳴る。
目の前にノールさんの裸体がある。
ダンサー衣装でありながら尻も性器も乳房も全く隠していない、セックスを一切拒むもののない姿で身を火照らせている、もう俺だけの雌奴隷と誓った義姉の肉体が、抱き寄せられる距離にある。
美の化身が、俺のちんこを欲して舞い降りてきている。
ギターを投げ出してノールさんに飛びつこうともがくその前に、ノールさんはスッと腰を落として俺の手を掴み、押さえる。
「……すぐにでもハメたいでしょ? でも、せっかく広いベッドで、ルキノも出番待ちしてるんだから……ね♪」
「え……?」
ノールさんは自分も情欲に逸った顔をしながら、悪戯な笑みを浮かべてルキノさんを横目で示す。
「空飛ぶヤリ部屋」のベッドは広い。5メートル四方の部屋のほぼ半面だ。
それだけ広ければ、ノールさんと正常位でハメながら、その正面にルキノさんを捉える体勢にもできる。
そして俺はノールさんの膣内にちんこを飲み込まれながら、ギターをまた構えている。
「……あの、ノールさん」
「んっ……なーに、不満?」
「……セックスはセックスで集中したいっていうか、ノールさんとアツいファックしながらギター演奏は難しいっていうか……」
「ふふふっ。ルキノのダンスでの興奮を、私のおまんこにぶつける恰好になるのが気に食わない?」
「さっきのダンスでの滾りをまず本人にぶつけて解消してから次、っていうのが筋なんじゃないんすかね!?」
「だーって、そしたらおちんちんがいちいち暇しちゃって可哀想じゃない。あんなに先汁垂らして」
「エロい恰好のダンス見てビンビンにしながら演奏するだけで気が散ってキツいのに、セックスしながら演奏はもう無理どころの話じゃないよ!?」
「そーねー。じゃあルキノには手拍子で踊らせましょ♪ 腰振りながらでも手を叩くくらいできるでしょ? 私も一緒に叩いてあげるから♪」
「そんなんルキノさんが不憫だよ! というか俺が言ってるのって無理に同時にやらずに順序よくやろうってだけだよ!?」
俺は悲鳴のように言うが、窓をバックに演奏待ちしているルキノさんはというと。
「どっちでもいいけど? その代わりノール姉さんが次に踊るときは私に射精させていいんでしょ?」
「はい多数決ー。弟くんも早く中出しダラダラダンス見たいでしょ♪」
「……見たいけどねそりゃ」
集中できないセックスとダンス鑑賞が続くことになりそう。
……でもルキノさんの最初のダンスだけは意地でギター演奏をやりきりました。
うん。俺頑張った。ノールさんの膣内に射精した瞬間はさすがに演奏止まっちゃったけど。
(続く)
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