5メートル四方の内部空間。天井の高さはギリギリ3メートルいくかどうか。
 これを広いと見るか、狭いと見るかは用途による。
 床全面をベッドと考えれば充分な広さだが、下手すると二十人以上を入れて飛行する客室と考えると足りない。全然足りない。
 それなりの期間の遠征の拠点にすると考えれば、この「小屋」で快適に過ごせる人数は、多くて十人までというところかな。
 ひとりに縦2.5メートル、横1メートルの空間があれば雑魚寝はしやすいだろう。頑張れば詰められるだろうけど、そうなると気持ちよく休むのは難しくなる。いや、ハンモックでもう数人分は確保できるかも。
 でも、そんな使い方は考えなくてもいいか。
「どういじってもいいんだよな?」
「既に所有権はそなたのものじゃ。ただ、竜が運ぶことを想定すれば、あまり外壁に穴をあけるのはよした方が良いじゃろうな」
「風が吹き込むか……あ、この窓ってもしかしてガラス……ガラスじゃないな、なんだこれ」
「コランダムだそうじゃ。ガラスよりはだいぶ強い」
 ……コランダム? って確か宝石じゃなかった?
 この窓に使われてるの、50センチ四方くらいあるぞ?
「……これだけですごい値にならない?」
「何を言う。値が張るというのであればおそらくこの壁材床材のほうがよほどじゃ。森の外では手に入らぬぞ、おそらく」
「……叩いてみた感じはそんなに頑丈そうな感じでもないけどなあ。衝撃が返って来ないっていうか」
「そう思うじゃろ。そこらの鉄の刃物では歯が立たぬぞ」
「……マジで?」
 やってみた。
 ナイフを床や壁にガスガスと突き立ててみたが、アイリーナの言う通り全然刺さる気配がない。
 叩いてもあまり痛くないのにすごい頑丈さだ。
 見た目は普通に木材で、冷たい感じもしないのに……不思議なもんだ。
「とても燃えにくい木じゃからの。いざとなれば焼き討ちにも耐える。まあ、ライラ殿以外ほとんど氷竜じゃというに、わざわざ焼き討たれることもないじゃろうが」
「そもそも焼き討ちにされる覚えは……」
 ……今はないけど、こうも権力持ちの雌奴隷が増えると今後はわからないな。
 うん。油断はしないことにしよう。
「……恨みは買わないに越したことはないな」
「うむ。まあ、そなたをあえて敵に回すのも大抵は愚かしきことと悟りそうじゃがの。戦神と竜四頭、騎士多数を従える田舎鍛冶屋じゃ」
「実在を疑われそうな字面だよなあ……」
 言いながらも内装の方法を考える。
 床材壁材が頑丈なのは理解した。となると、そこに穴をあけて色々作りつけるというのは現実的じゃないな。
 いや、こうして小屋にできたんだから加工技術はエルフの家師たちにはあるんだろうけど、不純な目的の改造に彼らを使うのは気が引けるし。
 そう、もはやこの小屋が「空輸中のセックス部屋」となるのはほぼ決定事項だ。それ以外なんてアイリーナも誰も望んでないだろう。
 しかし今のところ、中身は本当に木製のただの正方形の部屋。このまま使うのはそっけなさ過ぎる。
 ベッドを作りつける……のはマットで代用してもいいが、それにしたって傾くたびに滑ってしまう。マットを固定するくぼみか、紐か何か引っ掛けるフック的なものを用意したいけど……。
「あ、そうか。内箱を組めばいいのか」
 部屋のサイズにぴったり合わせた内部フレームを普通の木材で作ればいいんだ。何もこの「小屋」そのものを削る必要はない。
 そのぶん少し狭くなるけど、なにもこの広さをめいっぱい使えなきゃいけないわけでもないしな。
 問題は、俺があんまり木工は専門じゃないことなんだけど……でもゴートやボイド使うのもな。
 いや、自力で始めてみるか。ディアーネさんやセレンならやり方も知ってるはずだし、シャロンやネイアも砦作りの時に大工は得意みたいなこと言ってたよな。
 なんなら彼女たちの手も借りればいい。さすがに雌奴隷たちには遠慮しなくていいだろう。
 あとは材料。
「アイリーナ、普通の材木って余ってる? 杉とか樫とか松とか」
「余っておるかと言われるとのう」
「……このすごい木は余ってたのにそういうのはないの?」
「普通の木材は何にでも使い出があるからのう。基本的には間伐や倒木処理で出た材木が出回っておるが、有り余って置き場がないということはない。欲しいと言えば手に入れることも出来ようが、タダではないぞ」
 ま、まあそうか。
 タダではないと言われると怯んでしまうが。こっちはこっちで必要なものだ。ちょっと頑張ってみよう。
「内装に使うから、用意してもらえるか。この部屋の長辺と同じくらいの板材、そうだな……とりあえず20枚くらい」
 多分色々作るには足りないけど、まずは手を付けるための最初の材料。
「うむ。手配しておこう。それと、この小屋は……」
「俺んちの裏に運んでおく。マイア、頼む」
『うん』
 しばらくは試行錯誤だ。

 一度温泉に入って一息。
「ふぃー」
 珍しく誰も入っていない。俺一人の貸し切り状態。
 まあ冬はまだしも、夏の真昼間だしな。このタイミングはあまり居座る奴はいないんだろう。
 温泉でじゃばじゃば顔を洗いながら、まずはどういう内装にしようかと色々考えてみる。
 飛行中に傾くことを考えると手すりはあった方がいいかな。
 壁際に長椅子もつけたほうがいいだろうか。
 ベッドはどうしよう。マットで済ますか、ちゃんと作るか。
 出入りの際の身支度も考えたらサイドテーブル的なのも欲しいよな。
 いや、でもあまり家具をつけすぎて手狭になってしまうと、普段の馬車の狭い空間と大差ない。汎用性はさておいても、ヤリ部屋としての性能に特化するのが正しいのではないか。
 そう考えると余計な買い物だったかな、板材20枚。
 いや、でもいきなり思考放棄するべきじゃないだろう。あのすごい耐久性を考えれば、あの小屋は一生ものだ。色々試してみる価値はある。
 何より、木工も長じるに越したことはない。
 俺の本職は鍛冶屋になるだろうが、それ以外のスキルもあっちゃいけないってわけじゃない。こういう人に頼んだら気まずい工作とか、自分でできればそれが一番だ。
 セレンやアップルを見習って色々と学ぼう。何も一流にならなくたって、二流でも三流でもいいんだ。それで事足りるものはいくらだってあるんだし。
 性急に完成を目指さず、そういう趣味としてのんびり構えれば、小屋は最高に楽しいオモチャってものだ。
「……でも『小屋』ってのも味気ないな。名前付けるか」
 今は見た感じからそうとしか言えないけど、いつまでもそれじゃあつまらないよな。
 どんなのがいいかな……「秘密の花園号」とか?
 ……ないな。自分で出しといてなんだがダサすぎる。
 それなら寄贈者の名を取って「アイリーナ号」……紛らわしいし他の子も呼びづらいよな。アイリーナはあれで地味に地位あるし。
「うーん……『スマイソンパレス』……いまいち。『スカイハーレム』……違うなぁ」
 わざわざ名付ける以上、みんなが小屋を指して違和感なく呼べる名にしないと意味ないよな。
 温泉の中で唸っていると、入り口の戸が開いた。
「いないと思ったらここだったんだ」
 コルティだった。
 もし他の男が入ってたらどうするんだ、って別にどうもしないか。コルティは一応常識はある方だから裸なわけじゃないし、男の裸でキャーキャー言うクチでもないし。
 と思ったら脱衣小屋で普通に服を脱ぎ始めた。
「おいコルティ。ここ男湯……」
「温泉だったら裸でもいいんでしょ?」
「……まあ、うん。あえて訂正はしないけど」
「……えへへ。あえて曲解してあげてるのよ」
 コルティは悪戯っぽく微笑んで、首輪一丁の全裸になって浴槽に入ってくる。
 重量感は控えめだが若々しくぷるぷる弾むおっぱいや、淡く陽光に光る陰毛が、惜しげもなく視界に飛び込んでくる。
「本当はエロ奴隷自慢したいくせに」
「……それも曲解」
「そう? 他に男がいてもディアーネとかライラだと放っておいてるわよね?」
「…………」
 実のところ、コルティに言われる通り、少しだけエロ奴隷自慢がしたい感情もあるのは事実。
 そこらの路上で裸になられるとポルカの子供たちの教育にも悪いし、おばさん方の心証も悪いが、温泉ではカウント外というか……見せてる方もわかって見せてるし、見てる方も分かっていて見るので、俺と一緒に雌奴隷が入浴するのは全体的に黙認されている節はある。元々風呂覗きに関しては一種の名物行事みたいな感じで寛容な土地柄でもあるし。
 だからこそ、男湯に堂々と一緒に入ってしまう彼女らの姿は、俺が雌奴隷たちのエロ度を他の男たちに自慢できる数少ないシチュエーションでもある。
 間違っても触らせたり抱かせたりなんてしたくはないが、こんな極上のエッチな女が俺のものなんだぞ、という優越感は、普段は口には出せないが誇ってみせたいものなのは間違いないのだ。
「仮に俺が雌奴隷の自慢をしたいとして……お前がそれに早速乗ってくるとは思わなかったけどな」
「実は自慢したいのは私もなんだけどね」
「……何?」
 いひひ、とまるでそこらの人間娘と変わらない照れ笑いを見せて。
「エロご主人様ゲットしちゃった自慢♪」
「……それって自慢したいことなのかよ」
「アンタは理解できないかもだけど、私や姉さんみたいなドスケベにとっては最強に幸せだし♪」
 ……おいおい。
「……お前がそういうキャラだとはちょっと思ってなかったけどな」
「ふふん。私もちょっと思ってなかった」
 どこまで本気で、どこから演技なのか。考えるだけ無駄なんだけど……って。
「俺はラブラブエッチがしたいだけだから、もし演技だとしたらそこまでドスケベのフリはしなくていいんだぞ」
 うん。そういえばそう。
 そういう方向性では頼んでない。うん。
 ……が、コルティはニヤッと笑い。
「残念。私たちのスケベは多分、素よ」
「……多分て」
「私はそうだけど姉さんは知らない、って意味ね」
「…………」
「責任取ってよね。少なくとも……私は雌として、アンタにならどこまでもエッチになっていい、って言われて本気にしてるんだから。後からアンタが音を上げたって許さない。死ぬまで付きまとってチンポ要求しちゃうんだから」
「……ライナーは本当……」
 溜め息をつき。
「もったいない事したよなあ」
「あ、んっ♪」
 銀髪娘を抱き寄せて、そのぷるぷるのおっぱいを無造作に掴み、揉む。
 彼女に顔を近づければ、コルティはふざけた笑みからスッと目を閉じて、俺の唇に自然と吸い付いてくる。
 敵対している時は何も考えていない調子乗りの生意気女という印象しかなかったが、もしライナーが三頭とも丁寧に抱いていたら、もっと印象は違っていただろうか。
 ……すぐにそんな思考はやめる。もしそうだったら俺の出る幕はなく、彼女らは殉死するだけだった。こうして体当たりで俺の性欲に応えてくれる、それ以上に性欲を見せてくれるスケベ娘コルティは手に入らなかった。
 今は、目の前の事実にただ満足しよう。
「……あ、それとね」
「うん?」
「『スマイソン移動繁殖所』ってどう?」
「……例の小屋の話?」
「名前で悩んでたんでしょ」
 呟きが聞こえていた……って、そりゃそうだよね。彼女らの聴覚なら。
 でも。
「……長いし人聞き悪いから駄目」
「実態に即した名前になると思うのに」
「そうだけどさ」
「なんなら今から実績……作る?」
 コルティは流し目で挑発しながら湯の中でちんこを握ってくる。
「ガッツガツの孕ませエッチ、いつでも歓迎するけど?」
「……ここでそういう挑発されると、小屋まで我慢できなくなるだろ」
「うん、わざと♪」
 テテスとよく似た歳格好だけど、テテスと同じくらい曲者かもしれない、こいつ。
 そこに、温泉入り口からまた人の気配がして、ハッと首を伸ばして窺うと、午前中の仕事を終えたおっさんたちが風呂を浴びに来ていた。
「おう、先客がいたか……って」
「お、女の子……見覚えがないが、それはアレか、アンディ、お前の……」
 おっさんたちが面食らった顔で、俺におっぱい揉ませながら顔を寄せているコルティを指差す。
「……め、雌奴隷の子」
 俺はそう言うしかない。他に何と言えばいいんだ。
 ……そういえばコルティってあんまりポルカで顔知られてないのね。あんまり街歩いてないのかも。
「コルティ。……よろしく、おじさん♪」
 コルティはコルティで、おっぱいにかかっている俺の手を強調するように上から握りつつ、小悪魔な笑みで自己紹介。
 おっさんたちは顔を見合わせて。
「……は、入っていいのかね俺ら」
「お邪魔か?」
 ……えっと。
「どうぞ♪ ま、見たいなら見てもいいわ。私、この人に逆らえないから♪」
「コルティ、お前!?」
「どれだけスケベになってもいいんでしょ?」
 むぐぐ。
 本当にテテスに負けない曲者だぞ、こいつ。

 ……おっさんたちはなんだかんだでしばらく風呂に浸かってコルティの裸体をしっかり凝視していきました。
 ポルカっ子だもんな。うん。

(続く)

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