朝が来た、というのをすぐには認識できなかった。
 全ての窓の木戸を閉じ、音声結界で外の音を遮り、なおも内側を煌々と魔法光で照らしていたためだろう。
 多くの女体に埋もれるようになりながら、誰のだかわからない膣に幾度目かわからない射精をしつつ、眠気と疲労で朦朧としながらレディとディープキスしているところでフッと我に返り、もしかしてあんまりここで粘り過ぎてはまずいのでは、という心配が首をもたげる。
 いくつもの魔法結界を使って中の様子が漏れないようにしているとはいえ、朝になれば街は動き出すし、ここに誰か近づくかもしれない。例えばオナニーブラザーズにとってはこの女体祭りなんて魅力的だろうし、俺の雌奴隷やその予定者が40人近くも街から消えているあたりでなんらかの集まりになっている(そしておそらく乱交)というのは察しが付くだろう。覗きに来ないとも限らない。
 そんなのを抜きにしても、街で仕事がある子たちもいる。このままムチャクチャな乱交に耽り続けていたらまずい。
「んぐ……ん、そ、そろそろ終わりにしよう。……今後はみんな、俺の好きな時にマンコ貸してもらうぞ」
「も、もう終わり……?」
「私にも中出しして欲しかった……」
「またの機会、またの機会♪」
「ご主人様、今夜はどこに泊まるんですかー?」
 俺に群がって中出し待ちをしていた子も、既に諦めて周りで寝こけていた子も、他の子の世話にせっせと動いていた子も、俺の宣言を聞いて気配を変える。
 エンドレスの乱交に向いていた意識から、外に帰ろうという意識へ。
 みんな聞き分けは良くて嬉しい。そしてさすがに霊泉水補給を続けていたとはいえ、俺の射精もだいぶ元気がなく、もう普通の量の精液しか出ていなかった。最後にハメていた子はどうやらローリエだったらしい。今身体を辿って気が付いた。
「ネイアさんだけ4回くらいハメてましたよね?」
「そ、そんなに?」
 セボリーに指摘されてちょっと自分で驚く。特に固執したつもりはなかったんだけど。
「や、ネイアさんが何度もハメ捨てられては復活して無限アタックしてたんですけどね」
「意外と貪欲なんだな」
「……す、すみません」
 指摘されてネイアは赤くなっているが、エロいのは大いに結構だ。今後もその意気でたくさんエロいことをし合おう。
 体力的にドラゴンはほぼ無限みたいなものなので乱交では有利だったのでは、と思ったが、落ち着いて見てみると最初の「誓いの中出し」以降は彼女らは外野に回っていたようだ。ライラあたりが自重を促したか。
 そして本気で無限のブレイクコアは望み通りのたっぷり中出しを受けたようで(彼女としたのは覚えてる)、カウンターに座ってその腹を満足そうに撫でていた。
「はいはい、みんな服を着て。お祭りは終わり。あとはアンディが望むまではお外で裸にならないこと。温泉は別だけど」
「おいアンゼロス」
 まるで俺が野外全裸露出させるのが日常イベントみたいに言うな。
 ……あ、うん。たまにやるよね、と言われたら反論できないけど。
「私たちもですか?」
「ずっとエロい恰好してないといけないのよね?」
 レイラとコルティの銀竜姉妹が真顔で聞いてくる。
 ……もしかして今後ずっとポルカで全裸奴隷生活するつもりだったんだろうか。
 いや、ドラゴンだと余裕だよね。価値観的にも体調的にも。
「……とりあえず人前に出る時は裸は駄目」
「そうなのですか」
「別にいいじゃない」
「お前らの裸を眺めるのは俺の特権だから」
 うん。妥当だよね、この理由。
「それなら風呂とか覗かれたら潰した方がいい?」
「それは勘弁してあげて。たまに追っ払うのはいいけどポルカの人口減らすのは駄目」
 覗きはポルカ男のロマンだから、コルティに任せていたらみんな死んでしまう。
「ほ。飼い主殿は自分の評判をせこせこ気にしておるだけじゃ。汲んでやらんか」
「基準が分かりにくいのよ」
「我が都度都度教えてやる。全く、田舎の竜は加減が分からんで困るのう」
 お前に任せるとそれはそれで偏りそうなんだけど……でもまあ仕方ないか。
 雌奴隷には思う存分好き勝手エロいことをしつつ、町のみんなには悪く思われたくない、という俺のずるい感覚が悪いというのは薄々分かっている。
 ……そういえば、レイラとコルティはともかくシャリオはどこだ、と見回す。見当たらない。
「シャリオどこ行った?」
「さっき出口の方に行ったけど」
 コルティの言葉に従って探しに行く……前に俺も服を着ないと。

 シャリオは新酒場の建物のすぐ外にいた。裸のままだった。
 朝日を受けて白く光る裸体とキラキラ輝く銀髪は溜め息が出るほど美しかったがそれはそれとして。
「何か着ろ。誰かに見られたら困る」
「……少し待て。話は聞いていたが、今着るわけにはいかない」
 シャリオはそっけなく言って、ちょん切れてる方の腕を真横に伸ばす。
 そしてググッ、ググッと腕に力を入れるような動作をして……。
「少し離れろ。汚れるぞ」
「?」
 唐突に、その皮膚化した切断面が……爆発した。
 いや、閃光剣の治癒阻害効果を受けた妥協的で中途半端な治癒状態を自ら破壊し、本来の腕を再生開始したのだ……と、一瞬遅れて気が付く。
 血肉がその辺に振り撒かれ、その痕から腕が急速に再生する。
 ブレイクコアのところで何度か見た四肢再生とよく似ていた。ブレイクコアのと違うのは何やら熱を発しているように湯気が立ち、そのせいで見た目的な痛々しさがあまりなかったことか。
「ふう」
「……お前、もう再生できるようになってたのか」
「…………」
「なんでそんな気まずそうな顔してんだ」
「……笑いたくば笑え」
「なんで」
 シャリオは恥じ入るような顔でしばらく黙り、そして白状する。
「さ、再生自体は……しばらく前からできそうな感触はあった。だが……治ってしまったら、あの場所に戻らなくてはいけない」
「……いや、そんなことはないけど」
「腕を治すだけという約束だった。治ってしまえば留まる義理がないだろう」
 ま、真面目な奴。
「……お前がレイラたちをどうするのか、本当は興味があった。そして、私も今回呼ばれたから……もしかしたらと、期待してしまった。だからわざと再生しなかった。……所詮浅ましい悪竜と笑え。ライナー様への忠誠を掲げながら、本当は……そんな風にこの世に未練があったなんて」
「……この世に未練があって何が悪いんだ」
 つい真顔で聞き返してしまう。
 いわゆる武人もそういう理屈を口にしがちだが、ドラゴンのそれは俺にとっては特に理解できない。
 ライナーは納得して死んだわけではない。
 例えば、もしライナーがやるだけやり切った結果として負けたのなら、賭けたドラゴンも諦めもつくだろう。
 だが、そうじゃない。
 主人と一緒にやりたかったことはまだまだたくさんあるはずで、それなら未練なんかあって当たり前だろう。
 シャリオは特に主人に求められたかった……エッチも含め、女として満たされたかった。
 それはライナーの、おそらくはつまらない見栄によって満たされず、そして俺とネイアに敗死したことによって永遠に断ち切られた。それなのに「主人とともに死ぬのが竜の忠誠」と言い張って、未練があることすら恥とする。
 そんなのはただただ引っ込みがついていないだけで、馬鹿らしいじゃないか。
「俺はライラやマイアが他人に寝取られる未来なんて想像したくもないが、だからって俺が死んだらあいつらに続いて死んでほしいなんて全く思わない。最低限の義理立てぐらいはして欲しいけど、マイアなんて俺がこれから百年生きたって、その頃まだライラくらいにもなっちゃいないんだ。まだまだ人生楽しめるし、精一杯楽しむまで死んでほしくないぞ」
「……それは人間の基準だ。竜は違う。竜は……」
「その人間に対して、お前たちシルバードラゴンは偉大と持ち上げて裁定権を委ねたんだろ。ドラゴンの欲求が低いとか力が強すぎるとか、そういうのはもうわかってるんだ」
「…………」
「お前たちドラゴンは、誇りだの盟約だのってモンに縛られ過ぎて、根っこから考えることを放棄してるように見える。根本的なところから考えて自分で答えを出すのを、卑怯だとか姑息だとか思ってるんじゃないか」
「……それは」
「お前が自分の欲求を我慢したまま死ななくてよかった。俺はライナーみたいな覇王にはなれないが、お前を女として抱いてやるくらいは、いくらでもできる。死人は抱けない」
「…………」
 シャリオは視線をさまよわせる。何か言葉を探している。
 俺は彼女の、つけたばかりの首輪を掴み、引き。
「どっちにしろドラゴンの盟約なんて関係ない。欲求不満のスケベ女を見つけて俺が囲った。それだけでいいだろ」
「……う」
「ドラゴンのお前は必要ないが、肉便器としてなら嫌っていうほど使いまくってやる。……だから逃げるなよ」
「……は、はい」
 手を放すと、シャリオは顔を赤くして俯き、首輪を大事そうに握る。
 ……結局、半端に威圧的に接することでしか、大事にしてやるから心配するな、の意図さえ伝えられない。
 俺もライナー同様、まだまだだな、と思う。
 きっとボナパルトのおっさんのようなカリスマがあれば、ただ「心配するな、俺を信じろ」と言うだけで相手を安心させることだってできるんだろうな。
 ……でも、シャリオはそんな俺の不器用な言葉でも嬉しそうだった。
 ずっと不安定な自分の立場が不安だったんだろう。お前もここにいていい、という言葉が欲しかったんだろう。
 ……で。
「……アンディ」
「えっ……か、母さんっ!?」
 最悪のタイミングで通りがかる母。これから男爵邸に出勤するようだ。
 ここは既に建物外だから幻影は効いていない。シャリオは裸に首輪一丁。そして、あまりにもアレな直近の台詞。
「あんたは……!!」
「いやこれは一種の合意の上でのあれでね!?」
 お袋は持っていた杖を歳に見合わぬ勢いでぶん投げ、俺の脇腹にまっすぐドスッと突き刺さった。
 悶絶。
 いや、シャリオも赤くなって俯いてないで反応しろよ。
 止めなかったのはドラゴンとしてのお前はいらんと言ってしまったせいか?
 ……それと慌てて出てきて仲裁しようとする雌奴隷たち、みんなちゃんと服着ようね。半分くらいがまだ裸だからお袋が余計に混乱してるから。

「私は……早いうち、シタールに帰らないといけないんだけど」
 レディが残念そうに言う。
 ようやくスリムバージョンの自分を本当の自分と認識し、俺とのセックスによって女の喜びを理解できたばかりなのだが、シタールは彼女が責任を持って統治すると誓った町。そう長くも空けていられない。
「ほ。しばらくは市長として励むがよい。そなたのその姿を民に見せれば、ポルカの宣伝になろう。旅人や移住者を募る役に立てば、また飼い主殿が直々に犯しに行くじゃろうて」
「……うん、わかった」
 すっかり若々しい喋り方をしているレディだが、本当に面影がなさ過ぎて、向こうに着いた時にオウル翁たち現地の人々がレディだと認識できるか心配だ。
「首輪は向こうでは外してくれよ」
「……だめ?」
 レディに上目遣いで反問されるが、駄目だろ。首輪の意味は向こうの人たち結構知ってるわけだし。
「ほ。むしろ着けさせておいた方が安全やもしれぬぞ。竜の飼い主というそなたの威をもって、この女を守ることになろう」
「他人にドラゴンの権威を笠に着させるのは反対だっただろ、ライラ」
「雌奴隷となれば話は別じゃ。我らがつきっきりで守るわけにもいかぬ。そのくらいは融通してやらんと、いつ殺されるかわからぬ土地じゃろう」
「そこらの暗殺者に隙を見せるつもりはないんだけどね」
「我ら竜なら首を取られてもいざ知らず、ただびとなど死ぬときは一発じゃ。種はあるに越したことはない」
 ライラはずいぶんあちこちに気を回してくれてるなあ。コルティたちの件もそうだけど。
 彼女には感謝の気持ちを込めて、またいずれイチャイチャさせてもらおう。

 レディ以外のダークエルフ組は、まだしばらくポルカでのんびり&エロい日常を楽しみたいみたいだ。
 いや、そもそも帰るつもりがありそうなのはノールさんくらいしかいないんだけど。
「しばらくは私が借りた家でみんな住めると思いますよ♪」
「なんかコスモスさんのところにいるといつの間にか娼婦にされそうよね……」
「懐には余裕あるし、私らはしばらく宿屋住まいでいいかな」
「あ、私コスモスさんとこでご厄介になるー」
「シーマ!?」
「ふふふ。プロの技を盗むのだ」
「シーマちゃんなら歓迎ですよー♪ 軽食キッチンでも活躍してくれそうですし♪」
 いつの間にかコスモスさんとシーマさんが組んでいる。
 まさか本当に娼婦にされたりはしない……と思うけど。成り行きを見守りたい。

 娼婦といえば、もう一人。グロリアさんはセレモニーの夜を題材に長編エロ絵巻を構想している。
「エルフスイートナイトや奴隷品評会とはまた別のアプローチでいけそうなのよねー。視点キャラは奴隷商人……いや、性奴隷漁りを趣味にする金持ちって方向で……」
「首輪を受け入れる女の子にスポットを当てるんですか」
「んー……ちょっとコンセプト弱いかなあ? でも奴隷品評会シリーズってハーレムシチュなかったよね?」
「俺も全部読んだわけではないので……」
「もっと練るべきかな。んー、でも昨日のやつはすごく『これだーっ!』って思ったのよねえ」
 ブツブツ言いながら大量のラフを描き散らしていくグロリアさん。
 集中しているのが寂しかったのでおっぱいを触ったら、目もくれずに「触るんならもっとガッとやってよねー」とか言われてなんか負けた気がした。なんとなく。

 そして、結界の隙間を一晩中維持していたらしいディエルがブレイクコアを伴って森に戻っていくのを見送り。
「さてスマイソン殿。見てもらいたいものがある」
 アイリーナにそう告げられて、俺は森の(一応結界の外側の)空き地に連行された。
 そこにあったのは。
「……小屋?」
「ま、小屋じゃな。ささやかではあるが」
 何の変哲もない、一辺5メートルあたりの四角い小屋。
「この小屋がどうしたんだ」
「これはな、森でも特別頑丈な木を使っておる。下手な金属よりも強く、しかも軽い木じゃ。伐採するには斧ではなく魔術が必要なほどのな」
「……はぁ」
「本来、特別な施設を作るためにしか使わんのじゃが……その施設が百年に一度しか建て替えぬものじゃから、死蔵の材が溜まっておってな。かといって安易に森の中で別の施設には使えぬ。示しがつかぬでの。……そこで、スマイソン殿のためということで、わらわたちが外に引き取って使うことにした。それがこれじゃ」
「……お、おう」
 材質と経緯を話されても俺にはやっぱりただの小屋にしか見えない。
 こんな場所に小屋建てる前に相談すべきじゃないだろうか。ここ、うちから気軽に来るにはちょっと遠いぞ。
 それともここをヤリ部屋にしようという話だろうか。……スマイソン家だけで足りないんだろうか。
「反応が薄いのう」
「俺にって言われても……こんなところに小屋あってもなあ……」
「場所など……おお、そうか。それを言うのを忘れておった」
 アイリーナが手を叩き、そして空に向かってマイアを呼ぶ。
 しばらく待つとマイアがどこかから現れた。
「何。アイリーナ、あんまり呼びつけないで。アンディ様がいたから来たけど」
「うむ。すまんの。ドラゴン体になってこれを持ち上げよ」
「いいけど」
 え、えー?
 ……と思っていたら、小屋は全く抵抗なく、ひょいとマイアに持ち上げられてしまった。
 土台を全く打っていない。
「……って、そうか、これ……」
「うむ。そなた専用じゃ」
 ……そうか。馬車に代わる移動用のハコ。
「ふふん。どうじゃ。いじりたくなってきたじゃろう」
「……ふふふふふ」
 なるほど。ワクワクしてきたぞ。

(続く)

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