いよいよセレモニーも大詰め。
残るは三人。ライナー配下のドラゴンであったレイラ、コルティ、そしてシャリオ。
俺はうっすら滲んだ汗をセレンに拭いてもらいつつ、出番を待つ三人の全裸銀髪美女を前に一息。気合を入れる。
ここからは、簡単ではない。
彼女らの複雑な宣言をつまびらかにして、他のドラゴンや雌奴隷たちにも現状を理解させ、その上で受け入れるということを納得させなくてはいけない。
ドラゴンの「盟約」に関する話は、雌奴隷内でも理解度に差がある。俺でさえ完全に把握できているとはいえないし。
そんな状況なのだから、このセレモニーの趣旨である「雌奴隷仲間全員へのお披露目」には、しっかりと構える必要がある。
レイラとコルティが俺の雌奴隷に降ることの意味。それを受け入れる俺の決心。そして、シャリオの決断と、それへの対応。
ただのエロ儀式というにはとびきり難儀なものが、この先には詰まっている。
深呼吸。射精を受けてぼーっとしていたリェーダや、しばらく前に身を起こしていたエマも、俺から漂う大仰な気負いの気配に気づいたようなそぶりを見せる。
俺は緊張しながらカウンターに置いてあった箱を開ける。青や黄、白の予備もいくつか余っているが、レイラとコルティにはそれらではない首輪を用意してあった。
黒。
「え……」
「あれ何だろ」
「初めて見る色」
外野にいた娘たちがざわつく。
この首輪は、特別だ。意味は俺だけが知っている。俺だけで決めた。
「レイラ、コルティ。……出てきてくれ」
「……はい」
「わかったわ……」
俺の表情から、今までとは流れが違うことを察知したか。
心当たりもあるはずの姉妹は、少しだけ低い声で返事をしながらマットの上に進み出る。
レイラは穏やかながらも鋭い知性を感じる美貌に、見事な美巨乳。
コルティはエマ・マイアよりいくぶん年上の風貌に、まだ育ち切らないながら美しい形の美乳。
姉妹は対照的なものを抱えながらも、芸術家が理想に命を吹き込んだように美しいという点においては、ドラゴンの常に漏れない。
その裸体の一切を隠すことなく俺の前に並びながら、二頭の竜はじっと俺を見つめた。
俺も見返しながら、彼女たちにではなく新酒場に立ち合う雌奴隷たち皆に聞かせるため、少し声を張る。
「知っての通り、……この二人は、ライナー・エクセリーザをライダーとするドラゴンだった。……いや、正確に言えば今もそのままだ。死んだってドラゴンの忠誠は揺るがないはずだからな」
「…………」
「…………」
二人は沈黙し、雌奴隷たちは困惑したようにざわめく。
それは既に終わった話だと思っていたものも多い。当たり前だ。全てを捧げた主への忠誠を保持したまま、他の男の雌奴隷になろうなどという話は普通はわからない。俺だって今も確信は持てていない。
ただ、解釈に異を唱えていないからには大きく間違ってはいないはずだ。
それを改めてこの場で確認し、彼女たちの特殊な立ち位置について他の雌奴隷たちとも共有することで、どう接したらいいのかを各々が決める。
それはきっと、これからの生活には絶対必要なのだ。
「レイラとコルティは、ライナーに殉じて死ぬはずだった。主が敗れたドラゴンってのはそういうものだ。誇りを捧げた主人が世界から否定された以上、ドラゴンの方も意地汚く生きることは醜い。だから、喪に服しながら死んでいくのが彼女らの望みだった。……そうだな?」
「……はい」
「そうよ」
「だが、俺はそれを否定したい。それがドラゴンとして美しい生の終え方だというのは理解する。お前たちは悪竜とされ、裁く権利は俺に委ねられた。だが、恨みもない相手をこの世から追放するというのは、俺の体現したい正義じゃないんだ」
その言葉の受け止め方はさまざま。
ふーん、とあまり感慨もなく頷いているのはポルカ滞在の猫獣人たちに多いか。話がわかっていないというわけではないが、この対立と和解に至る流れもわからず、なんとなく俺がいつものように何か活躍してドラゴンを感服させた、と思っているだけなので、俺が「こうだ」と言えば「そうか」と思うのだろう。
だが、彼女たちのカールウィン事件での振る舞いを多少なりとも知る者たちは複雑な顔をしている。
恨みもない、というのは違うだろうという意見や、下手をすればドラゴンたちの面子を潰す話ではないかと心配しているであろう子もいる。
悪竜を裁くのはライダーには限らず、一般のドラゴンも乗り出せる。ライダーに判断を委ねるまでもない悪行というのは存在し、彼女らはそれを犯している。
だから彼女らが裁かれるべきというのは俺がライダーであるとか以前の絶対的な話であり、強引に救おうとするのはドラゴンの元々持つ規範に対する挑戦に近い。
そのままではどうしてもカドが立つ。
「だから、俺は裁いた。この姉妹に互いを差し出させ、相手の命を救う代わりに従順に従えと。……そして姉妹は結論した。相手を生かすために、俺の雌奴隷になるという屈辱を受け入れることを。ライナーという主人を持ったまま、俺に奉仕し、もしも恵まれたならば子すら産み、奉仕し続けるという……ライナーを裏切り続けるという罰を受け入れた」
詭弁に聞こえるかもしれない。実際、詭弁そのものなのかもしれない。
彼女らはライナーに一度も抱かれたことがないという。
時代を変える強い英雄性を持ったライナーとの関係が恋愛というものとは遠かった可能性はどうしてもあり、そんなライナーにツバも付けられなかったカラダを俺に捧げたところで、それは裏切りなのかという問題はある。
だが、彼女らはそういう理屈で助命を受け入れた。それが重要だ。
「ラブラブ好きな俺を愛する振りもし続けてみせると言い切った。だから俺は、この女たちを雌奴隷として受け入れることにする。……雌奴隷だ。正真正銘、これはドラゴンの力の契約でもないし、恋人としての絆を俺なりの形で言い直したものでもない。本当の本気の『雌奴隷』だ」
つまり。
今までは実質的に嫁、側室、あるいは恋人関係を極端な言葉で統一した結果であった雌奴隷。
ドラゴンライダーとしての契約をも乱暴にまとめていたそれ「ではない」、本物の、ただの性欲処理要員としての雌奴隷。
だから、俺は今後彼女たちをドラゴンとして運用することは決してない。俺のドラゴンではないのだから。
ただただ、屈辱を伴う雌奴隷として彼女たちを飼う。その証がこの黒首輪だ。
彼女たちが今後囁く愛も気持ちも、俺には本物と偽物の判断はつかない。
もしかしたら本当に俺に気持ちごとカラダを開いてくれるかもしれない。
だが、それでも俺は、罰と嘘の証として黒首輪をした彼女たちと、性処理として接しようと思う。
それで彼女らの「ライナーと契約したドラゴン」としての誇りが満たされるのだろうから。
「これで悪竜への罰だという名目は立つ。ドラゴンとして彼女らを支配するのはあくまでライナー、俺はそのカラダを犯すためだけに手に入れる間男。……そうだとしても、俺は、俺の寿命くらいはこの女たちに生きていて欲しいから」
それは、宣言。
これは俺と彼女たちの、薄暗い契約だ。
彼女たちは屈辱を受け入れるという前提でカラダを開き、俺は嘘だと公然と疑いながら愛を囁かせる。白々しい契約。
そんな同士である俺と姉妹を……他の雌奴隷たちに認めろという、これはもはや暴挙のような話だ。
ややこしく、空寒く、疑わしい異分子の混入。
あるいは一部の淫乱娘にとっては、犯すだけしか用を告げられない生活なんて羨ましい境遇でもあるかもしれない。
そうだとしても。
「俺は俺の正義を偉大と呼び、仕えるというドラゴンの矜持が嘘じゃないと信じる。ドラゴンたちの言う『ライダーという正義』が、単なるドラゴン的価値観を押し付けただけの操り人形じゃなく、俺の持っている資質への評価だと信じる。裁く自由があるなら、赦す自由があっていいはずだ。偉大な正義と持ち上げる俺が赦したいと言った相手を、ドラゴンたちも認められるように時代が進んでいいはずだ」
正直。
ザーメンしたたるフルチン姿で、こんなこと改めて満場の全裸女に宣言してる俺は、すごく間抜けだと思う。
でも、俺の愛する女たちにはわかっていて欲しいから。
「だから俺は、今はこの二人を救うために、首輪で縛ることにする。……この二人は結局ずっと俺を恨んだままかもしれない。俺やみんなにはそうじゃないという演技をするだろう。ドラゴンは誇りのためになら、そんなことだって完璧にできる。見抜けやしないが、本当に気持ちの通じたみんなとこういう二人を一緒にするのは嫌だ。だから別の首輪にするんだ」
真心と素直な欲望の空間に紛れ込む、疑わしくも切り捨てられない彼女ら。
雌奴隷たちに連帯があるのなら、それを乱し、破壊するかもしれない要素ではある。
だからこそしっかり言わなければいけない。
俺は、そんな絆に挑むと。
……そして。
「いいんじゃないですか。……そういうのも受け入れてくれるご主人様で、私は嬉しいです♪」
そう言ったのはテテス。
……異分子って意味では、確かにテテスもとびきりか。
みんな異種族の中で人間だし、スパイだし、俺を利用しようとしたこともあるし。
そんなテテスも、俺が今まで通りの安定だけを望み、厄介だからと切り捨てていたらここにはいられなかった。
……まあ、根負けってところもあるけどさ。
それにブレイクコアも同調する。
「ドラゴンのことはわからないが、私は君のそういう優しさと勇気を愛している」
そういう風に肯定的に捉える子が出てくれば、そこから他の子たちの同調も始まる。
みんないい子だ。いつも、俺の突飛なわがままを受け入れてくれる。
……こうして裸で囲んでくれること自体そうだしね。
周囲の肯定に押され、俺は跪いた二人の首に黒い首輪をかけていく。
……そして。
「さあ、誓いの中出しだ。……何を誓うんだっていうと困るけどな」
俺がそう言って二人に四つん這いを促せば、姉妹は顔を見合わせ。
「……雌奴隷としての、あらゆる忠誠を」
「……とりあえず、妊娠くらいは誓ってあげる」
二人はそう言って薄く薄く微笑み、銀の陰毛を期待に濡らした尻を突き上げた。
(続く)
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