エマを絶頂させた余韻覚めやらぬまま、次はリェーダ。
 特徴的に縛った髪を解いてしまえば、彼女もエマとよく似ていた。
 美しいものは無個性的なのかもしれない、とぼんやり思う。醜いものはそれぞれの方向性があるが、美しいものは必然があり、収斂するように似ていく。
 意志の強そうな目元は特にそっくりといえるだろう。
 まあ、クリスタル・パレスもそう広くない。代をさかのぼれば、二人の血筋は普通に近いのかもしれない。
「リェーダ」
「……は。これに」
 一声かければ、スッと目の前に傅く。
 ……彼女がここに並ぶに至った経緯を思い出す。
 …………。
 えーと。
 そうだった。ふと「彼女と思い出深い絆エピソードってないよなあ」なんて思ったが、そりゃ当然だった。
 別に彼女は、俺がライダーとなることを強く望んでいないんだった。
 最初こそ若干ごり押し感があったものの、方向性がおかしかったんだ。
「お前にも正式に契約しようと思う」
「この身など、いつでも使える孕み袋で充分なのですが」
「充分といってもな。ドラゴンにはドラゴンの振る舞いをしてもらわないとそれはそれで困るから」
 リェーダは百歳近い、ほぼ成人、いや成竜だ。
 この歳までセックスの悦びを知らなかった……というのは、うん。結構あるというか見回しただけでもちらほらいるからいいとして。
 ドラゴンが本気で社会生活を放棄して、忠実に「孕み袋」を自認してしまうと、困る。
 そもそも、そういう活動をしている女性はリェーダだけではない。例えばテテスなんかも早く孕ませないといけないので、今後は時間の許す限り、というか時間があったらハメる生活をするわけだ。
 猫獣人たちの中にもそういうのを望んでいる子は多いし、好きなようにハメて孕ませて下さいな、と主張しているのはブルードラゴンの非首輪女性たちも同じ。
 リェーダ独自のニッチはもうない。困ったことに、もう過剰に埋まっているのだ。
 それなのに彼女の妙な勤勉さに任せ、無限のような体力と精神力をフル活用して所構わず「孕み袋」に邁進してしまうことになれば、俺の危うい生活はあっという間に崩壊してしまう。
 必然性が普通と逆なのだ。むしろセックスに専念させないために、彼女のドラゴンとしてのプライドに訴える。
「もちろん、お前に孕み袋にもなってもらう。俺はエロい男だからな、手出し自由の美女がいれば当然犯すけれど、でもライラやマイアたちのように、ドラゴンとしても俺の自慢になるような働きを期待してる」
 不本意なのだ。
 俺はドラゴンは正しく「セックス相手」として確保し続けてきた。
 ドラゴン一頭だって俺のような凡人には過剰過ぎるチカラだ。それを使って世のため人のため、あるいは俺自身のために壮大な事業をやる……なんてのはまったくもって俺の似合いの仕事ではない。
 ライラもマイアも、ただのスケベとそれに魅せられた寂しがりの女として契約したのだ。ドラゴンライダーとしての権利に付随する、彼女らのカラダを好きにできる権利を求めて。
 だというのに、ここに至って「ドラゴンとして自慢になる働きを」なんて逆に歯が浮く。
 ……でも、彼女を御するには必要なのだ。
 悪い子ではないし、勿論ドラゴンなのでこの世のものとは思えないほど美しいのに、変な意味方向に真面目過ぎるから、放っておけば暴走が続くことは容易に想像できてしまう。
 これが、あの動乱で彼女のプライドをへし折り、利用した者としてのけじめでもあるだろう。
「……わかりました。銀竜リェーダ、竜の盟約と誇りに懸けて、御意志のために身を捧げることを誓いましょう」
 うやうやしく頭を垂れるリェーダ。全裸なので若干滑稽だけど……まあドラゴンの契約の儀式ってだいたいこうだったよね、そういえば。
 ライラもマイアもほとんど裸になって首輪の授与を誘ってきた。それがこのセレモニーの原点のひとつでもある。
 茶化すわけにもいかず、俺は咳払いをした上でセレンから首輪を受け取り、リェーダの背後に回る。視界の隅にはカエルのようなポーズで未だ膣から下品な音をさせるエマの姿。
 リェーダは勢いで同じようにされるのを期待していたんだろうなあ。
 でも、エマは普通の意味で真面目だから、こんな下品な形の契約でもきっと生活の上で節度は持ってくれるんだ。
 お前は駄目な意味で真面目だから、絶対俺が社会的に酷い目に遭う。同じようなチンポに弱くて融通の利かない駄目っ子アルメイダがやらかしてるから知ってる。
 心の中だけで盛大にため息をついて、俺はリェーダに首輪をかける。
 その色は青。「孕み袋」の主張を聞き、黄色を授与してしまったら絶対変な方に弾けるから、せめて不本意であろう青にした。これでもまだちょっと「愛玩奴隷として邁進せよということですね」と張り切りすぎそうで危険なのだけど。
 ……なんで俺、こんなに罠地帯を歩くような繊細な気遣いしてるんだろう。精液と愛液でねっちょり濡れたままのちんこ揺らしながら。
 ほんのわずかな時間に無駄に色々と感慨にふけってしまったが、実際にはあまり滞りなくエマとのセックスからリェーダの首輪付けに移っている。俺が遠い目をしてしまったことに気づいたのは何人もいないだろう。
「……よし」
 ギュ、と首輪の留め具を確かめるように引っ張り、手を放す。
 少しゆるく、しかし首を振っただけではすっぽ抜けていかない程度の環を作っておく。
 ドラゴンたちは特に芸術的に首が細く、余裕はかなりできてしまう。しかし首が締まったり蒸れたりしたらカッコ悪いしな。
 ……異常に温度変化に強いドラゴンが蒸れてかぶれるなんてことあるのかな、と少し疑問に思ったけど、そういうのはまた今度ライラにでも訊こう。
 一歩離れるとリェーダは顔を上げ、改めて俺に尊崇の眼差しを向ける。
「……主様」
「似合うぞ」
 お世辞ではない。その儚い印象さえある白と銀の裸身を現実に繋ぎ止めるような首輪は、よく似合っている。
 ……って、周りみんな納得したり祝福したりする空気出してるけど「首輪が似合う」って誉め言葉か微妙だよな。
「粉骨砕身、御意志を実現すべく励みます」
 リェーダはその違和感に言及することなく、感激したように声を絞り出す。
 孕み袋で充分、と口では言っていても、やっぱり「力の契約」に憧れはあったんだろうな。
 一段……いや何段も下の立場である孕み袋にこだわったのは、彼女なりの贖罪と遠慮だったのかもしれない。
 ライナーを支持して襲い掛かった自らの不明の贖罪、そしてエマたち元からの支援者への遠慮。
 だとしても、暴走されるのは万が一にも困るからな。
「じゃあ……」
 ここで満足して次に行けば、なんか騎士の叙任みたいでかっこいいのだけど……うん。
 彼女の前に立つ俺はびよんびよんとちんこ立てっぱなし、出しっぱなし。やらねばならないことは残っている。
「はい。誓いの中出しですね」
 大真面目に、そして神聖な手順のように助平な字面を出して微笑みながら頷き、リェーダは跪いたままくるりと背を向け、そのお尻を突き上げる。
 そう。これはそういう儀式。俺の性欲が全てな世界に参入するための儀式だ。
 なんとも滑稽だ。その滑稽さにいつまでも苦笑いしてしまっているのは俺だけなのだけど。
 ……でも、いつまでも斜に構えていたら、この馬鹿な状況に勇気を出して身を任せている彼女たちばかりが恥をかくんだよな。
 うん。開き直ろう。
「入れるぞ」
 リェーダの若々しさと淫靡さの同居するボリューム感あるお尻を愛でるように一通り撫で回し、弾力の強い尻肉にギュッと指を埋めて、挿入。
「っっ……♪」
 リェーダは四つん這いで膣を捧げながら、それでも体じゅうで歓喜を表現してみせる。
 こうして挿入してしまえば、俺は極上の快楽とともに身勝手な独占欲の充足を感じ、この娘を手に入れた実感に喜悦を感じてしまう。
 なんだかんだ言ったってドラゴン娘は最高の女体で。
 最高の女体と交尾してしまえば、俺はそれを自分だけのものにしたくもなって。
 喜んでそれを誓う女の子の姿が大好きで、占有を確かめるために何度でもしつこく犯したくなる浅ましい人間でしかなくて。
 彼女を突き、快楽をその膣肉から引き出すたびに俺はそんな自分を実感し、認めざるを得ない。
 カッコつけたって、結局はリェーダは俺の女で、誰にも渡したくない交尾相手。
 快楽で脳髄が痺れ、本能が彼女の雌肉の味に夢中になっていくにつれ、彼女を半ば見下すように困った子扱いしていたこちらこそが諸悪の根源であることも実感せざるを得なくて。
 深夜の新酒場に充満する淫臭と嬌声、響き渡る肉と体液と肉の音。
 その中で、俺は肉棒から自分の欲望を白状する。
「リェー……ダ……っ!!」
「あん、あ、あっ、はっ……んはぁああっ♪」
 射精。
 例によって大量の白濁が溢れ、ブピピピッと彼女の膣肉で下品な音を立てる。
 俺は結局、また新しくドラゴンという極上の雌を手にした喜びに浸りながら、魔法光の浮かぶ天井を仰いだ。

(続く)

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