レディ・スワローの変化は翌日も続いた。
 というかもう完全に別人だ。
「……誰だいこれは」
「あなた自身でしょ?」
 宿で大きめの鏡をヒルダさんに見せられ、レディは自分の顔を撫でてひたすら怪訝な顔をする。
「変な夢でも見てる気分だよ」
 どれだけ酒やたばこで荒らしていたのか声まで変わり、元々のレディから残っている要素は若干年配臭い髪型くらい。
 完全に贅肉が取れると冷静に見られるもので、身長はオーロラより少し高いくらい。つまりうちの雌奴隷たちの大半より高めだ。
 ちなみに背丈が一番高いのがライラ人間体で俺と同じくらい。それより少し低いアルメイダ、次いでシャロン、クリスティ、オーロラと続く。
 その下はフェンネルとヒルダさんがだいたい同じくらいで、ディアーネさん、ルナ、アップル、セレン、セボリー、それにガラティアあたりは微差。正確には測ってないので体感。
 それよりやや低い感じがオレガノ、マローネ、ミリルあたり。この辺は抱くとちょっと小さいなと感じてくるライン。雌奴隷じゃないけどナリスもこのあたりか。
 さらにそれ以下のアンゼロス、テテス、ベアトリスにネイアにキュート、それより若干低い感じでマイアとエマ。この辺は普通に小さく感じる。
 そしてアイリーナ、ローリエ、一番小さいのはもちろんジャンヌ。
 ノールさんなんかはわりと長身でアルメイダくらいある。三姉妹はだいたいディアーネさんたちかその下のオレガノたちクラス。
 ……身長のことはまあいいとして。
「これでほぼ完治ですか?」
「見た感じはそうよね。でももう少し霊泉でお肌磨くのをお勧めするわ☆ ちょっと急に体型変わっちゃって皮が締まり切ってないでしょ?」
「むしろビロンビロンになってないのが驚きだけどね……人って三日でここまで変わるもんなんだねえ。我ながらびっくりだよ」
「ふふふー。たった300歳でオバサン気取りなんて私が許しません。もっとも、自堕落な生活はこれからもご法度だけどね☆ 体型は呪病でもなければああはならないけど、太った人は運動不足の生活に慣れ切っちゃってるから落とした後も不健康になりやすいのよね」
「店番で座って動けない商売人に無理をお言いでないよ。……まあ、今は店は閉めてるけれど」
「シタール一周くらいの散歩は毎日するべきよ。あるいはダンスか武術でもどうかしら」
「全く触れてない分野過ぎて、どうかしらといわれてもね……」
 なんだかんだと生活の心配をするあたりはさすがに医者っぽいヒルダさんだ。
 しかし、すごいな霊泉。
 失礼だが豚と並べたら豚の方が愛嬌ある分マシだよねって感じだったあのレディが、今や本当に普通の若いピチピチ美人だ。
「髪型ももっと若くしたらどうかな。いくらなんでもそんなグルグルアップはちょっと」
 俺が提案すると、レディは渋い顔をする。
「年上のファッションにそう文句を言うものじゃないよ、小僧っ子が」
「いや俺より若い外見なのにそれはないでしょ」
「急に小娘みたいな恰好しろと言われたってね。アタシはレディ・スワローだよ?」
「もうオバサンファッションしたって小娘がババアぶってるだけに見えるんだ」
「こ、この……アンタねぇ!」
 ビキ、とキレた顔をするレディ。だがヒルダさんが止めに入る。
「はいはい。照れるのはわかるけれど、確かに相応の恰好した方がいいわよ? 貫禄なんて若い恰好しててもいくらでも出せるんだから。オーロラちゃんやうちのディアーネちゃんなんて、あの恰好のままエルフの大長老でもビビらせちゃうのよ」
「お姫様育ちと一緒にしてくれないでおくれよ……」
 レディの改造計画は内面の段階に進んでいるようだ。最終的にどんなことになるのやら。
 しかし……あのビッグママ体型が普通のクール美女になっちゃうとはなぁ。
「綺麗だけど前の姿のイメージがどうしても邪魔するな……」
 生まれ変わったレディの肉体に下心を抱くには、もうちょっと精神鍛錬が必要そうだ。


 夏のポルカは一番賑わう季節だ。長距離馬車が観光と行商、どちらも一年で最も多く訪れる。
 霊泉にすがる傷病者はもちろん、霊泉のとびきりの効能を知っている商人や羊飼いたちもこの時期を狙って遠征してくる。
 雪がもっとも厄介なことを彼らはよく知っている。豪雪のこのあたりでは降り始めるのも早く、子蛇の向こうにある街まで二週間以上かかる(山越えが特にきつい)ため、油断して長居をすれば秋の帰りしなに雪が降ってきてしまうこともある。夏の早いうちに来て存分に霊泉を楽しみ、晩夏にはそそくさと戻っていく。
 今日も広場で行商人が何組も商品を広げ、市が自然発生している。そこで買い物を楽しむ中には見知った顔もちらほらといて、それを見つけるだけでも楽しい気分になるのだから不思議なものだ。自分の見ていないところでも、みんながそれぞれ楽しみを見つけているのが嬉しいのかもしれない。
「おーい、アゼル、リゼル」
「にゃ」
「ご主人様ー!」
「そういう呼び方をしないように。人前では。……あっはいなんというかその、そういう目で見ないでいただけると」
 半目でこちらを凝視する行商人につい懇願してしまう。
 迅速に話題を逸らそう。
「な、何見てたんだ? 石?」
「せっけんー」
「なんかフォルクローレってところで最近こーゆーの流行ってるんだってー」
「へえ……」
 まるで立体化した六芒星のような、少し透き通った黒緑の石……いや、よく見ると確かにヌメッとした光沢と独特の香りで石鹸と分かる。
 それをリゼルに見せられて感心する。石鹸自体はポルカ産もないわけではないが、作り方が画一的で色はどれもベージュ。匂いもこんなによくはないし、形も四角く切り分けただけでオシャレ感は全くない。
「一個で30枚だ」
「結構するんだな……」
「見ての通り凝った代物でね。安くしたくてもできないよ」
 商人はニヤリと笑う。
 しげしげと石鹸を見る。濁ったベージュのポルカ産とは違って、宝石と言っても一瞬納得してしまう美しさだ。
 飾っておくだけでも、その香りと見た目で結構よさげなインテリアになりそうに思う。
 ……まあ、これなら、あんまり安いよりもちょっとした値段の方が納得感はある。
「よし、買った」
「おいおい、横入りで買うのかい兄さん。そっちの猫獣人の嬢ちゃんたちが見てた奴じゃないか」
「プレゼントだよ。いいから包んでくれ」
 俺がそう宣言すると、商人はヒュウと口笛を吹く。アゼルとリゼルは無邪気に手を挙げて喜ぶ。
「さっきは人買いかと思っちまったぜ。『ご主人様』はちょっと趣味は悪いが、どういう関係かは聞かないでおくよ」
「そんな不穏なもんじゃないよ。この子達は見ての通りセレスタの子たちでね。ちょっと文化が特殊なだけだ」
 精一杯爽やかアピール。
 この商人にだけ今更好感度稼いだところであんまり意味はないけれど……いやいや、何事もコツコツとだ。イメージアップはこまめにしていこうじゃないか。
「ほら、リゼル。……何に使うんだ?」
「洗濯ー」
 即答するリゼルに行商人がガクッとずっこける。
「お、おいおい、確かにそう言うのに使えなくもないが勿体ないぜ。そういうの向きはほら、こっちにある奴だ」
「えー。石鹸って洗濯に使うものじゃないの?」
「手を洗ったり肌を磨いたり、髪を洗ったりな。そういうのがいいんだ」
「でもポルカだと普通にお風呂入るだけでもぴかぴかになるもんねえ」
「ねー」
「……持ってくる商品間違えたかな」
 商人が額に手を当ててトホホと弱る。
 確かに霊泉の効果は美容方面にも高く、だいたいの人は普通に入浴するだけで清潔になる。ポルカ産石鹸も洗濯用で、たまにヒルダさんのように持ち込み石鹸を使う人もいるが、香りを纏う用途に近い。
 そう考えると需要は低いのかも。
「……洗濯用もひとつ。いや、二つね」
「……まいどあり」
 たまには洗濯も遠方の品でやるのも悪くない。アゼルとミリルにあげよう。

 帰って来てからの数日間、ぶらぶらしてるだけなのだけど結構忙しい。
 何故ってそれはもう当然居残り組の子たちがひっきりなしに誘ってくるのだった。
「ご主人様ー♪ 突然ですけどこの後空いてます?」
 酒場で昼食を食べていればセボリーに声を掛けられ。
「予定は決まってないけど……」
「じゃあ七つの鐘の後すぐ集合で♪」
 ポン、と俺に手渡される鍵。……鍵。
「おいセボリー」
「先に入っててくださいねー」
「…………」
 どこに集合なんだ、と聞こうとしたのだけど、よく考えれば鍵が必要な場所は限られる。
 そして七つの鐘は都会風に言うと午後二時。酒場の昼営業が終わってすぐの時間だ。セボリーがすぐに足を運べる場所と言ったらこの付近しかない。
 つまり、裏の更衣室か。

 ……ということで鐘が鳴るちょっと前に更衣室に入ると、ちょうどキュートが着替え中。
「おっと」
「にゃっ?」
 セボリーに呼ばれたのであってキュートも混ざるかは聞いていない。あまり気にすることでもないとは思うが、もし一対一を望んでいたとしたらキュートを弾き出すのも可哀想だし、ここは……。
「ごめん、セボリーに話があるって言われて……着替え中に悪かった」
 サッと謝って外で待機。キュートが着替えて出るのを待とう。
 と、思ったが、キュートはパッと顔を輝かせて。
「あ、うん、聞いてるにゃー。全部片付けてからオレガノさん誘ってくるって言ってたにゃ」
「そ、そうなのか……ええと」
「それまで先に種付けしてもらってもいいって言ってた!」
 喜々として脱ぎかけていた服を改めてカゴに全部入れてしまい、裸で無邪気に寄ってくるキュート。
 ドアまで来たら外から見られてしまう。慌てて左右確認。さすがに酒場の裏手にわざわざ来る奴はいないだろうが、急いでキュートを押し込んでドアを閉める。
 ……明かり取りがなくてほとんど何も見えない。マスターの奥方が覗き対策に徹底的にそういう隙間潰したんだっけ。
「ちょっと明かりが欲しい……」
「にゃ? 見えない?」
「うん」
 キュートは猫獣人だから闇の中でも関係ないのか。
「ランプとかないの?」
「うん。なくてもあたし困らないし、セボリーさんが着替える時は自分で魔法唱えちゃうから」
「ああ……そうか」
 エルフは基本的に暗かったら自前の魔法光だもんな。
 となるとどうしよう。
「ちょっとだけ開けてヤるか……それとも外で?」
「にゃ、にゃー……♪」
 大胆な提案にも、キュートはバシッバシッと耳を動かしてる音を立てつつ異を唱えない。
 俺は小さな彼女の裸体を抱えて、どっちにするか少し考えて……ちょっと興奮する大胆な選択を優先する。
 な、夏だしいいよな。……夏だからなんだと言われると答えられないけど、夏だからいいよな。
 ささやかなイメージアップ作戦の後にこんなことして元も子もないじゃないか、と言われる気もするけど……ほら、夏だし。ちょっと冒険したい季節だし。全国的に。

 首輪全裸にサンダルだけつっかけさせて、キュートを更衣室の外に出させる。
「にゃ……はは、なんかすごくいけないことしてる感じ……♪」
 砂色の髪の猫獣人少女は、夏の午後の日差しを浴びて、生活感あふれる酒場の裏手でくるりと裸体を回してみせる。
 いつもの仕事場のすぐそばで、サンダルひとつをつっかけて、全裸。
 裏手と言っても狭くはなく、特に遮るものもなく郊外の草原に繋がっている。そちらを通る誰かがいたら隠れるものはない。真昼間から15歳の彼女がセックスのために裸になっていると、言い訳の余地もなく知られてしまう。
 それなのにキュートは顔を赤くしながら笑う。
「……ご主人様。しよ?」
「えっちだなあ。馴染みの客が近くをうろついてるかもしれないのに」
「え、えへへっ……いいんだ。ご主人様の専用雌奴隷だもん」
「悪い子だ。チンポでお仕置きしてやらないとな」
 俺もズボンからちんこを取り出し、キュートの後ろに回る。
 髪と同じ砂色の尻尾を立ててお尻を突き上げ、少しだけ浅い呼吸をしながら交尾をねだるキュートは、やはり興奮したのか結構濡れている。
 いきなりちんこを突っ込んでもいけそうだ。
「さあて……それじゃあえっちすぎる雌奴隷にお仕置きだ」
「にゃ、にゃー……ごめんなさい……♪」
「でも……正直なのはいいことだ。素直ないい子にご褒美のチンポだ」
 我ながら何言ってんだと思わなくもない。でもキュートは悦んでいる。突き上げるお尻の力強さと、ちんこを受け入れ締め付ける濡れそぼった肉筒の感触でわかる。
 まだまだ年若いポニーテールの少女が、真昼間の街中で、裸になって一回りも年上のチンポをハメられて嬉しがっている。
 なんと背徳的で、倒錯的なことか。
 俺は小さな腰から手を離し、飲み込ませた肉棒だけで彼女を揺すってよがらせながら、快楽と同時に浅ましい征服感にも酔う。
 そこに、足音が近づいてくる。
「にゃ……」
「ほら来ちゃったぞキュート。……見られちゃうぞ。お前がチンポにそんなに熱心に服従してるところ」
「にゃああっ……あ、恥ずかしい……にゃ……♪」
 俺は午後のうららかな日差しの中で、ゆるやかに腰を振りながら煽る。
 実際はその足音はセボリーたちだろう。こんなにちょうどよく裏手に用がある奴なんて、そんなには……いや、もしかしたらいるかもしれない。
 もしマスターとか奥方だったらどうしよう。怒られるのは俺の方だよね絶対。
 もし何かの間違いでそこらのお子様が見に来たりしちゃったら本当気まずいよね。
 ……煽っておいて自分が不安になってしまったが、現れたのはやっぱりセボリーとオレガノだった。
「あっ、二人とも大胆……」
「よう。先に始めてるぞ」
「にゃ……にゃあっ♪」
 顔を赤くして見入ってしまったセボリーを差し置き、オレガノはそそくさと更衣室に入る。
「お、オレガノ?」
 セボリーが取り残されてきょとんとしていると、すぐにオレガノはセボリーと同じ、全裸首輪にサンダルだけの姿になって更衣室から出てきた。
「こういう趣向なんですよね♪」
「……ま、まあ……いいけど」
 実際に大胆な青姦をしているので、明かりがないから外に出ただけ、とは言い辛い。
 セボリーはそれを見てゴクッと唾を飲み込み……意を決したように更衣室に入って、同じように裸サンダルになって。
「もう……変態なんですから」
「キュートとはこうしようってなっただけだから、別に中でシてもいいんだぞ」
「……キュートがそんな勇気出してるのに、私が引くわけにいきませんし♪」
 なんだかんだでこの二人もスリルを楽しみたい口のようだ。
 少し恥ずかしげに手指を胸前で絡めるオレガノと、敢えて見せつけるように手を腰の後ろに組んで前傾で胸を強調するセボリー。
 まあエルフの標準胸だからそんなに大きくはないんだけど、だからこその繊細な味わいもあるよね。何よりビンビンに勃起している乳首は見ごたえがある。
「待ってろ。キュートに中出ししたら次はオレガノ、その後セボリーな」
「はーい……♪」
「お誘いしたの私なのに、最後までお預けですかぁ」
「オレガノの方が先に並んだのに無視もできないし……キュート、そろそろ出そう……ちょっとガツガツするからな」
「にゃあ♪」
 猫少女の小さな腰を掴んで、狭い肉筒の奥の子宮口でぐいぐいと自ら亀頭を刺激し、圧迫の中で射精する。
「にゃああああ……っ♪」
「あんまり大声出すと見つかっちゃうぞ……」
 そう言いながらも、俺はその膣内からちんこを抜こうとせず、長い射精を全て少女の体内で楽しむ。


 三人を満足させた後、温泉で流そうと歩いていたらスッキリ顔のオナニーブラザーズに出会った。
「スマイソン十人長。イカ臭いっすよ」
「え、この匂いお前じゃなかったの?」
 素で相方を疑うゴート。面白い奴らだ。
 いや俺もこいつらもイカ臭いのは事実だろうけど。今は反論しづらい。
「っていうかなんでそんな満足そうな顔してんだお前ら。青空絵巻ニーでもしてたのか」
「その発想はなかった」
「さすがスマイソン十人長だ」
「違うのかよ」
「いえ、俺たちは最近素晴らしいオナネタに出会いまして」
「おねショタいいよね……」
 感じ入る二人。
「おねショタ?」
「……まあプライバシーに配慮して詳細は伏せさせていただきます」
「同じく」
「おいお前ら、本当に覗いちゃいけないトコ覗いてないだろうな」
 温泉はある程度伝統と化しているからまだ言い訳も聞くけど、その辺の家屋でも覗きをやったらさすがにポルカから叩き出されても文句言えないぞ。
「いえ。一般的な公開条件です」
「まあ最終的にはエアリさんで抜いてしまいましたが」
「お前ら」
 堂々と抜かせるエアリもどうなんだ。というか抜けるような恰好で出歩いちゃってるのか相変わらず。注意しないと。
 ……いや、今日は俺も強くは言えないけど。
「田舎っていいよな相棒」
「いいな……都会ではこうはいかないよな」
「お前ら本当何を見たんだ」
 ちょっと気になってきたけど結局勿体つけて教えてもらえなかった。
 ……エアリなら知ってるのかな。

(続く)

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