随分長いことポルカを離れていたような気がするが、実際は大した期間ではない。
多分、新しい出会いとか、ガントレットの四人との別れとか、精霊祭とか本当に色々あったせいだろう。
それに、男があまり同行していなかったせいで、どこに寄ってもちんこの休まる暇がなかったし。
エッチしまくるのはいいけど、やっぱりメリハリなしにヤリまくるのはよくないな。ヒルダさんに精力偏重の調整魔法もかけてもらわなきゃいけなかったし。
旅行は軍務とかと平行して、ある程度やるべきことがあった上でのお楽しみアリがちょうどいい塩梅なのかもしれない。
とは言っても、もうすぐ退役だけど。
で、コスモスさんは我が家で寝泊まりすることをセレンとジャンヌに認めさせたものの(ちゃんと産む気で後々のことも考えてて、特に雌奴隷の関係を荒らす気もないのなら、猫たちと同じ扱いとして干渉しないという結論になったっぽい)、ポルカ周辺の観光にも興味があるということで、ミシェラに案内を頼んで出ていく。
そしてお次はグロリアさんとガラティア。
「この人、絵描きさんっていう話ですけど……」
「エロ絵巻の新進気鋭の作者だ」
「女性なのに?」
セレンが訝しげな顔をする。
それを聞いてグロリアさんは苦笑いした。
「エロ絵巻が衝撃的でね。そういう世界もあるのかってなって、自分でも描くようになったのよ。まあ、破門されちゃってから実際に娼婦生活してるんだけど、なんにしろエロの世界が合ってたってことかしらねえ」
「……この人も娼婦さんなんですか」
「そんなジト目すんなよ。連れて回り始めたのはそれが理由ってわけじゃないんだって」
「まあエロいことは普通にしてるけどね」
しれっと言うグロリアさん。
セレンとジャンヌは二人同時に「いやそれは別にいい(んですが)(だよ)」と声を揃える。
「なんで娼婦さんを私たちが問題視してるかというとですね。私たちは雌奴隷という輪でもって、外部からはちょっと想像できないような互助関係を構築してまして」
「いろんな女が、アンディの雌奴隷という立場で平等になってるおかげで成立してる力関係があるだよ。そこんところを斟酌する義理のねえ女に割り込まれると、最悪の場合はそれがみんな壊れちまうだ」
「アンディさんが雌奴隷として従えて、私たちと平等の立場になる……というなら、調整の余地はいくらでもあります。でもその枠を外れている人が誘惑するというなら、正直のところ……」
「こっちも黙ってるわけにもいかねえだ。アンディの言うことには従うつもりだが、この期に及んでポイ捨て離散はシャレんなんねえだでな」
「そ、そんなことはしないって」
俺は慌てるが、子持ち雌奴隷二人は揃って溜め息。
「信じてますけど」
「アンディも神様じゃねえだ。心変わりはあるもんだで。アンディは力ずくの脅しには滅法強ぇだが、おまんこの達人にかかったら、ヒルダ先生みたいな超絶テクで骨抜きにされねえとも限らねえだ。ご主人様を偉そうに縛るってのもよくねえと思うだが」
「警戒はしたくなっちゃいますよね」
「…………」
夢がない話というか、生臭い話というか。
でもまあ、過信しないっていうのは地味に大事だよな。
俺は頭もよくないし力もない。セックスの回数だけなら重ねた自負はあるが、みんな性格のいい女の子たちばかりで、本当に厄介な妖婦が現れたら身を持ち崩さないという保証はどこにもない。
英雄叙事詩のうち、その老後と死まで歌われるような話は、大抵女のせいで破滅が始まるしな。
その危険に対してセレンたちが無防備でいる理由はどこにもない。彼女たちのコミュニティは、もう俺の一存だけの集まりではなくなっている。
俺という性欲旺盛な主人に従うという体裁の中で、「雌奴隷として自分たちと対等になった女だけは認める、それ以外の女は要注意」という基準は、ある意味では合理的な判断と言えるのだろう。
「まあそういうわけで、今後も続ける予定なら立場は明確にしてもらいたいかなーと」
「アンディの雌奴隷になるっていうなら歓迎するだよ。まだお互いよく知らねえだが、ライラ姉様が一緒にいて弾いてねえなら悪い女とは思わねえだ」
「ライラさんはちょっと鷹揚ですけど、今回はアイリーナ様も行きましたしね。氏族長だけあって人を見る目はありますし」
「んだ」
彼女たちなりに、あいつの審査をパスしているなら大丈夫、みたいな基準はあるようだ。
……っていうか審査してたんだろうか。微妙なところだ。
「雌奴隷ねえ……」
グロリアさんは腕組みをして考え込んでしまう。結局今に至るまでフワッとした立場のまま来てしまったが、最初は彼女もなんやかやのうちに雌奴隷に入れようと思ってたんだよな。
今はどうなのかといわれると……少し難しいけど。
「まあ、もともと日銭をまたぐらで稼ぐ生活なわけだし……もっといい感じの生活をするために専属の愛人になるってのは悪いコースでもないとは思うのよね。お宅のご主人は絵にも理解があるし」
「でも……何か含むところがありそうですね」
セレンがエレニアをあやしながら、探るような目をする。
こと、人との探り合いに関してはセレンは強い。たくましく生きなければならないハーフエルフの性分か。
グロリアさんはその視線に居心地悪そうな顔をしつつ、言葉を繋ぐ。
「正直まだ計りかねるのよ、ご主人。ものすごい性豪ってのはよくわかるし、とんでもない身分の女がたくさんはべってる。それがみんなして凄い男だって言う。でも、接する限りは普通の人って感じがしちゃって、どうしても態度が決め辛くてね」
「なるほど……まあ、それは確かにアンディさん見てると思っちゃう気がしますねぇ」
「アタシらも時々信じらんねえことするだ。特にアタシは一番に子産みに入っちまったで、ほうぼうで大ごとやらかしてるの聞くばっかりで、まあ八割は直接見てねえだが」
「……そんなだっけ」
「んだ」
考えてみればジャンヌって最初のトロット国内騒動以降、ほとんどポルカで出産と子育て生活過ごしてるんだよな。
ということは……直接見たのは一番大きな見せ場としてもブレイクコア事件くらいなのか。
「マスターナイトやっつけたとか魔神やっつけたとか、勇者ねーちゃんの国で捕まって生還したとかメンチの切り合いでドラゴン黙らせたとか、あと他にも色々やったって聞くだがアタシ全然見てねえだよ。人づてだ」
「私も似たようなものです。マスターナイトやっつけるところだけ居合わせましたけど。アンディさんってば、孕ませて動けなくしておいて、見てないところですぐ命懸けの戦いばっかりして」
「……うん、ごめん」
自分でも別にそんなに危険なシーンにあえて飛び込むような真似をしているつもりはないんだけど、話にだけ聞いている彼女たちにしてみれば耳を疑いっぱなしだったろうな。
「……そんなに色々戦ってるのにこの普通さなの?」
「まあ戦ったというか……戦ったんだけど本気で勝負になったのはあんまりなくて大抵ちょっと時間稼ぎしたくらいというか」
「なぁんだ」
細かいことはおいおい説明するとして、総括するとそうなる。
が、それを聞いたジャンヌとセレン、あと端っこでピーター抱いてデレデレしていたアンゼロスはとても不満そうな顔をした。
「向かっていくだけでもありえねえ大物ばっかりだで」
「謙遜し過ぎですよぅ。アンディさんはそれでいいかもしれませんけど雌奴隷みんなホラ話に騙されてるみたいに思われちゃうじゃないですか」
「アンディは本当の英雄だよ。僕が保証する。アンディは強いから凄いんじゃなくて、強くないのにそういうの全部を生き残って、それだけじゃなく自力で勝機を掴み続けてるのが凄いんだよ」
「わ、わかったわかったって」
三人をいなす。
こほん、とセレンが咳払い。
「とにかく。アンディさんはドラゴンにも氏族会議にも、レンファンガスにも、トロット王家にも認められた本当に凄い人なんです。勘違いとかラッキーじゃすまされないんです」
「……だいぶあったと思うけど」
「アンディさん黙って。謙遜はもういいですっ」
「はい」
理不尽だ。
「そのアンディさんの雌奴隷になるというのは惨めなことじゃなく、むしろ名誉だ、って言ってる子も多いんです。アイリーナ様やフェンネルさんたちは、むしろ森を抜けてアンディさんの肉便器として生きる方が格が高いとすら言ってるんです」
言ってないと思う。多分「破門されても雌奴隷の互助の下で生きてくだけで生活も社会的地位も安定するかも」とかその程度のこと言っただけだと思う。
あと雌奴隷はともかく肉便器はどうか。些細な差の気がするけど、さすがに肉便器が格調高くは思えない。
「……う、うーん。やっぱりなんかしっくりこないんだけど……もう少しゆっくり考えさせてもらっていいかしら」
「ええ。むしろグロリアさんみたいにしっかり考えてくれるなら、いいことだと思います」
なんかグロリアさんは伝聞と現物、そして言葉のギャップがどうしても埋めきれないっぽい。
そして、それまで黙って話の流れを見ていたガラティアは、おずおずと手を挙げて。
「あたしは……その、雌奴隷……するって、決めてきたんだけど……」
「ああ、じゃあいいですよ」
「首輪早く作ってやるだよアンディ。できたら儀式するだ」
「えっ……あ、いいんだ……」
特に何も言われずにスルーされた。拍子抜けした顔のガラティア。
「い、いやこの子な? ラパールの海賊の娘さんでな?」
「さっき聞きましたよぅ」
「要はアンディのちんちん大好きになっちまった若い子だなや。猫たちとあんまかわんねえだ」
「…………」
身も蓋もねえ。そして問題ないとわかると雑すぎる。
いいんだけど。いいんだけどさ。
とりあえずはガラティアとグロリアさんにも街の案内をすることにする。
そんなに広くないし、男爵邸と森の入り口、それに俺が入り浸りやすい酒場や猫屋敷、ジャッキーさんの工房くらいは教えておかないと。
「ガラティアは他の雌奴隷の子もおいおい覚えてもらうけど、とりあえず酒場と服屋にいるエルフの子は雌奴隷の先輩だ。わからないことがあったらどっちかに聞きにいくといい。それとグロリアさん、森の入り方わかる?」
「わからないねえ。っていうか南の出身だからね。いくら同じエルフって言っても他人の家の鍵は合わないよ」
「ああ、そうか」
なんかそういうのって共通のような気がしていたけど、言われてみれば人間だったら人間の城に入れるだろう、くらい雑な話だ。
……と、そこにゴートとランツが通りかかった。
「あっ、スマイソン十人長」
「帰ってきたんですか。で、頼んどいたエロ絵巻は」
「あ、あー……いや先にお帰りなさいくらい言えよ」
「おかえりなさい十人長。で、エロ絵巻は」
こいつら真昼間に、知らない女と一緒の上司に対して強すぎる。
「回収はしてきたけど今は持ってねえよ! 夜に酒場に来い!」
「了解」
「イェッサー」
わざとらしく敬礼を決めるオナニーブラザーズ。
「……何、愛好者?」
こそりとグロリアさんが手を立てつつ聞いてくる。
「はい。不肖の部下どもですがエロ絵巻への愛は俺に勝るとも劣りません」
「ふーん。……じゃ、これあげる」
グロリアさんは荷物袋から丸めた絵を取り出し、渡す。
「この前の島で描いたガラティアちゃんの絵」
「なっ!?」
ガラティアが真っ赤になる。いきなり目の前で知らない男に自分の全裸の絵を渡される心境たるや。
そしておごそかにそれを広げたランツは、ゴートと一緒に目を見開き。
「神!」
「神がおわす!!」
いきなり往来でグロリアさんに平伏した。
「えっ、いや、喜んでくれたならいいけど」
「これ描いたんですかお姉さん!」
「神の御業だ!」
「……あ、あー……うん。そうね」
困りつつもまんざらでもない感じのグロリアさん。
それにしてもお前ら美女エルフがエロ絵描いてることに何も疑問もたないのな。
「う、うううう……」
ガラティアは真っ赤になりつつ俺の背後に隠れた。
……グロリアさんには安易に雌奴隷の絵を人に渡さないように言っておかなきゃ。できるだけバレないようにアレンジするとかしてくれないと、俺もちょっとモヤッとするし。
(続く)
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