船では相当な時間を揺られる必要がある大陸への距離も、ドラゴンの翼ならあっというまだ。
「あたし、大陸って漠然と、ものすごく遠いものだと思ってた」
「そうか?」
「海図の上ではそうでもないのはわかってるんだけど……ラパール海賊はセレスタには近寄らないし、かといってゴートやバラルにも乗り付けられないしさ。気持ち的な距離があったっていうか」
ゴート王国、バラル商国は南部大平原の国々だ。ゴートと言ってもゴート正兵の方じゃない。
大陸の海岸をずっと辿っていくと、セレスタからゴート王国へと続くことになる。
と言っても、ドワーフ国家のゴート王国は海洋的な国家というわけではない。
ゴートの西側海岸線は青蛇山脈に直接占められているので、中央から交通の便がすこぶる悪く、岸辺に暮らす人々(ドワーフ以外の住民がほとんど)がほそぼそと漁民をやっている程度だ。
それでもさすがに鋼鉄のドワーフ国家、漁村も意外と武装度が高くて海賊相手にも強いとか。
バラル商国はさらにその南側で海岸線を継ぐことになる。セレスタ同様に商業主義を国家のモットーとする国だが、セレスタの1/3程度の大きさだ。が、勢いは強くて向こうではかなりブイブイいわせているとか聞く。
セレスタも含め、それらの国はさすがに海賊船の一隻や二隻で縄張りを侵して暴れられる相手ではない。
「海賊やめて陸に上がるっていうのは……考えたことないわけじゃないけど、なんだか違う世界に入るみたいだよ」
「うん。それはいいけど陸が見えてるってことは一度降りるってことだからな。服着ような」
「す、すぐまた次に行くって言ってたじゃん。あたしは待ってるから……用は済ませて、早く続きシにきてよ」
ガラティアはほんの二時間ほどの間に、ベアトリスともども中出し各2回、顔射1回(共同戦果)を受けている。ガラティアはザラザラ舌の処置をヒルダさんから受けて、猫獣人たち同様に自分の舌の感触に驚き、そしてちんこも勢いで舐めてくれたりして実に有意義な旅路だったがそれはまあいいとして、ヤリかけ娘を裸で待たせたままレディ・スワローを迎えるのはちょっとどうかと思う。
「レディを拾って、それからタルクにも行って……誰を拾うんだっけ?」
アンゼロスが二人に手ぬぐいを投げながら確認してくる。
タルクではとりあえずミラ嬢たち三姉妹に中出しの約束してるんだけど、どうしようかな。
気まま旅だし、彼女やノールさん、それに娼婦の皆さん含めてポルカをアピールしようかと思ったりもする。
一度でも来たら絶対またリピーターいると思うんだよね。霊泉は言うまでもなくすごいし、夏の今は緑豊かで涼しくて、避暑には最適だ。
……まあ娼婦の皆さんやカルロスさんちの一族がポルカのファンになったからって、それになんの意味があるんだという気もするけど。
「そのあとにうちのコロニーにも寄って」
「ああ……そういやそうだったな」
猫コロニーも避けて通ってはいけないな。グロリアさんには魅力的な場所だし。うちの雌奴隷たちもあのお祭り感は気に入ってるっぽいし。
「……あ、でもレディとか拾っていったら猫コロニーではっちゃけて遊ぶわけにもいかないのか」
「その程度で目を回すタマじゃないでしょ、あの子☆ なんならドナちゃんのところに預ければいいんだし」
「そりゃ……確かにそうかもしれないけど」
猫コロニーは俺を唯一の種付け役として待っている。
あそこにちょくちょく通うのは、無論俺が楽しいというのが最大の理由だけど、彼女たちにとってはおろそかにされては困る切実な問題でもある。何より性欲が滾っているのに我慢させるのは可哀想だろう。
彼女たちは村ごとみんな俺の嫁として扱うと決めた。
なのにショックを受けそうな客が一人いるからって配慮のためにスルーというのも、そう何度も続けていいことではない。
「……じゃあドナ婆さんのところか……なんならライラのパレスでもてなしてもらうって感じで」
「ほ。もうパレスには何もないのじゃがのう」
ちびライラが会話に入ってくる。
「例えほとんど空っぽだとしても、ドラゴンパレスに滞在するってだけで、一般人にはちょっとした体験だろ?」
「それで喜ぶのはナリスのような輩だけではないかの」
「つまらなかったらごめんなさい、だな。ドラゴンで本来なら何週間もの旅路をひとっ飛びだ。その本来の長い退屈を思えば、あまり面白みのない夜があっても我慢してもらっていいだろう」
「ま、それもそうじゃな。そもそもあの女を癒してやるのが連れていく目的じゃった。楽しい旅体験をさせることが主ではなかったのう」
「そういうこと」
融通が利き過ぎるから、もっとベターな旅ができるのではないか、と欲張りたくなるが、本来往復で三か月は下らない旅を数日で済ませられるのだ。
単なる時間の節約だけでも多大なメリットで、こっちの一晩やそこらの寄り道をなじられるような筋合いはない。
どうも自分が旅の主催になると、変な心配をし過ぎてしまうな。
「よし、それじゃレディを迎えに行こう。マイアとエマもついて来てるな」
「うん」
「もちろんです」
二人のちび幻影も俺の目の前にふわりと浮かぶ。
どうでもいいけど最初にライラがやったのをみんなで真似しているせいか、ちび幻影は全裸がデファクトスタンダードになってしまった。
眼福だけどいいのかなあ……。まあいいか。
マイアはそもそも裸族のミスティ・パレス出身だから裸でもあまり気にしないし、エマも何か変な方に俺に合わせて頑張っちゃう子だし。……そもそも今、俺以外みんな女の子だしな。
シタールの街では旅装のレディ・スワローが待っていた。
体型ゆえのたっぷりした衣服は、複雑な縫製をしていない大布巻きつけタイプの古い着衣だが、その頭には余裕のある鍔広の帽子を乗せており、マントも上等なものだ。
町の中ではむしろ弛んだ二の腕を見せつけるような服を着ていたが、さすがに遠出となるとちゃんとしたの着るか。
「世話になるよ。でも、一月以上は空けられないから、その期限でやっとくれ」
「充分充分。ポルカで徹底的にケアしてあげるわね☆」
「本当かねぇ……まあ、こんなデブが人並みになるっていうなら儲けもの、駄目なら駄目でもドラゴンさんへの義理だ、文句は言わないがね」
「そんなに悲観しないの☆ 呪病って私が見抜いたんだから、絶対に解いてあげるわ」
「呪いは解けても大食らいはそう簡単に治るもんでもないんじゃないのかい?」
「カラダに引っ張られてるだけよ☆ 本来ダークエルフは太ろうとしたって絶対にそこまでにはなれないもの。呪いが解けたら満腹感も正常に機能するようになるわ。ま、普通に治すなら急に痩せると皮だけ弛んで酷い感じになっちゃうけど、ポルカの霊泉なら皮膚だって体に合わせて綺麗に治る。期待してて、きっとオスカー君やオウルさんがポーッとしちゃう美女になって帰れるから☆」
「改めて聞くとやっぱり詐欺みたいにムシのいい話だねぇ」
やれやれ、と言いながら馬車に乗る。
……横幅があり過ぎて椅子で三人分くらい幅を取ってる。
「わらわたちはあちらの馬車に移るのがいいかのう」
「そうしましょうか」
アイリーナとフェンネルがライラの馬車を諦め、隣のマイアの馬車に乗る。
「あらま。やっぱデブ過ぎて邪魔かね」
「大丈夫大丈夫、あのコたち道中にアンディ君とセックスしたいだけだから☆」
「…………」
「そういうコたちだってのはこの前に見せたでしょ? みんなドスケベなのよ。やらせておいてあげて。話し相手には私がなってあげるし☆」
ヒルダさんがあけすけに説明しながらレディと一緒の馬車に乗る。
前回、雌奴隷たちはシタールで堂々と衆人環視ヌード披露に雌奴隷告白、さらにはセックスまでしてみせたのだ。誤魔化す必要は確かにない。
ヒルダさんは猫コロニーに備えて俺たちの異常さを予め教え、慣らしていく作戦に出たか。
「タルクでも何人か引き取るかもしれないんだけどなあ」
「あら、タルクで引き取るならばそれこそわたくしたちと同じ扱いでよい方ばかりでしょう」
「……そうかな」
思い浮かべる。
ミラ嬢たち三姉妹。ノールさん。あるいは娼婦の皆さん。
確かにハーレムセックスにも怯まないどころか、敢えて混ざっちゃう人たちばかりだ。
「そうかも……」
「いっそのこと派手にまいりましょう♪」
「……開き直り過ぎは良くない気がするけど」
「皆さん、アンディさんのおちんちん目当ての、選りすぐりの猛者です。過度の遠慮はかえって無礼ですわ♪」
「そうかな……そうかも……」
「アンディしっかりして。なんかふらふらしてるよ」
アンゼロスが心配してくれる。
うん。
鋭く突っ込むべきだと頭ではわかってるんだけど、ここ最近一般常識を適用しちゃいけない異常シチュエーション(毎回女子ノリノリ)が連続しているせいか、ツッコミこそ無粋なのでは、と思い始めている。
だいたい俺、エッチなことにはむしろ拳を握って突き進む方だよね。特に据え膳なら。
責任者として気負っているうちに、ちょっとダサいこと言う役に知らず収まってしまっている気がした。
違う。俺はもっとストレートでハイスピードなスケベガイのはずだ。
常識人ぶって消極的になるのは期待する女の子たちにむしろ失礼、恥をかかせる仕打ちではないか。
「迷ったら大切なものに祈れってデューク神官長に言われた」
「急に何を言い出してるんだ」
「神様は、親父は、俺がスケベであることを咎めるだろうか。俺がエッチな女の子たちと思い切りセックスしたいって素直に言ったら怒るだろうか。否」
「アンディ、ちゃんとこっち見て喋ろうよ」
「……お袋は怒るのが見えた」
「それ鷹揚に許しちゃう母親はだいぶブッ壊れてるから! 普通そうだから!」
「でもうちのコロニーだったら男の子が生まれたらだいたいみんな『好きなだけ頑張ったら』って言うと思う」
「ルナのコロニーは特殊過ぎるよ!」
俺が頭ふらふらしながら自己暗示的にいろいろブツブツ考えていると、ドラゴン体のままのマイアが厳かに言う。
「うちのパレスならむしろ親戚中で逆輪姦すると思う」
「それもどうかと思います」
横から同じくドラゴン体のままのエマがツッコミを入れてくれた。
俺もちょっとどうかと思った。近親相姦はちょっとまずいよね。お袋とセックスはしたくない。
そのままタルクまでまたひとっ飛び。
そんなに長期間離れていたわけではないのだけど、エキゾチックな街や拠点をいくつも経由するとなんだかホッとするホームタウン感がある。いや決して俺のホームじゃないんだけど。
「タルクも随分久方ぶりだねえ。シタールで立場持ってからはさっぱり来てなかったからね」
「コスモスと知り合いなのよね? こっちに来てる時に知り合ったのかしら」
「いんや、コスモスの方がフラッと来たのさ。この体じゃあ旅行も億劫でね」
「確かにあの子、よくフラフラ遠出するって評判だけどねえ。まさかシタールに行くなんて」
「あれで抜け目ない女だからね。当時の『親鳥』の目もすり抜けて、随分うまく出入りしてたもんさ。さて、顔ぐらい見られるかね……っと」
カルロスさんちの中庭にいつものように着陸した三頭。それぞれの馬車からみんなが出て、数時間の旅の身のコリをほぐす。
俺はとりあえずミラ嬢たち三人に会ってそれぞれに約束通り中出しセックスしないと。
……最低な用件だ。
「また来たのかいヒューマン」
そしてちょっと嫌そうな顔のカルロスさんが一番に庭に出てきた。
で、すぐにナンシーさんにグキッと頭を後ろに引っ張られる。
「恩人に嫌そうな顔をするな。それでも商売人か」
「く、首がっ……」
「すまないね。カルロスのことは気にせず、いつでも何度でも泊まっていくといい。うちの妹たちやメイドたちも次に来るのを楽しみにしていたからね」
「だ、だからヤだったんだぁ……っ!!」
……あの。グキッていうのはやばいんで早くヒルダさんなり他の医術できる兄弟なりに診せてあげて。
「もう南を訪問し終えたのかい? さすがはドラゴン、早いものだね」
「え、ええ……それで、ええと」
まずどの用件から切り出すか。
コスモスさんを呼んでくれ、と言うべきか。いや、いの一番だとそれでまたカルロスさんに嫌味言われそうだ。物陰からアシュトン大臣も飛び出して文句言ってきそうだ。
でも直接ミラ嬢たちを呼びつけるのも「何の用だ」なんて言われそうで。いや、挨拶って言えばいいのか。
……と。
「あら、もう戻ってきたの? 早かったわねー」
そこに颯爽と現れたのはどちらでもなくノールさんだった。
いや、まあそりゃそうか。中庭にドラゴンが現れたら目立つし、ノールさん一番身軽だもんな。
「宝石蝶じゃないか。この前は世話になったね」
「あら。シタールの。……何、ドラゴンに乗って便乗旅?」
「医者の姉御さんがどうしても来いって言うんでねぇ。十日やそこらで帰れるって話なんで乗ったのさ」
「なぁるほど。南まで行って乗客下ろし終わったら次の旅行客……ね。面白そうじゃないの」
ノールさんは微笑み、俺に絡みついてきた。
「物見遊山のつもりでいいなら、私もポルカ、行ってみたいんだけど」
「あ、あー……いいですけど」
……十日でまた戻ってこれるっていうあたりに反応したんだろうか。
まあ帰りの手段は大切だと思うけど。
「途中で寄り道しますよ?」
「それでも帰りはそんなに伸びないでしょ?」
「ええまあ」
……いつでもどこでもの乱交村だけどね。
(続く)
前へ 次へ
目次へ