まるで怪しげな奇祭のような晩餐会は終わり、その夜は雌奴隷たちといつものように絡み合って就寝。
 一人寝には大きすぎるベッドは、実際、往時には幾人もの女を上げていたのだろう。悪徳の街の支配者がその程度の遊びをしていないはずもない。
 ……とはいえ、さすがに10人以上を同時に乗せていたかどうかはさすがに怪しい。欲張ってもせいぜい3〜4人ってところだろうか。一般的にはあまり女ばかり多くても精力がもたないし。

 翌朝、改めて朝食配達ついでにやってきたレディに対し、ウチの雌奴隷の面々はというと最初から全裸で迎える策に出た。
「いや、何でそうなるんだよ」
「女は足りているというアピールですわ。そしてわたくしたちがドラゴンライダーの忠実なる性処理奴隷として服従している……という境遇自慢でもあります」
「自慢なのかそれは。いやうんわかったお前的にはすごい自慢したいんだよな」
「無論アンディさんは服を着て出てくださいませ。裸のわたくしたちが余計に奴隷姿として引き立ちますわ♪」
「ここでは俺が言い訳できないと思ってお前……」
 言い訳。
 つまり「お前たちをあまり堂々と雌奴隷として扱うと世間体が危ないし一人で損をする」という言い訳。
 主に顔見知りの多い場所や、俺がドラゴンライダーということが公になっていない場所では大事なことなのだが、せっかく何でもすると誓った雌奴隷なのだから、もっと過激な体験をさせてほしい……という彼女らの要求に「応えない」ための言い訳。
 でも世間一般の感覚とは言い訳の方向が逆だよね。なんでイカレたスケベ行動を「しない」ということに言い訳が必要なんだ、っていう。
「いっそのこと、ここを発つまでは服を着ずにおるのが雌奴隷として然るべき扱いと主張しようかのう♪」
「アイリーナ様、あまりご主人様を困らせるものでは……」
「そうは言うがフェンネル、そなたとて昨夜はだいぶ興が乗っておったではないか」
「それは……でも、あんなにも多くの男性の性欲が自分たちに向くのは……そして、そのカラダをご主人様一人に捧げてみせるのは、雌奴隷として高ぶらずにはおれませんし」
「そうよねー☆ 過激な露出の快感と絶対隷属の陶酔、両方満たせる最強プレイよ☆」
「ヒルダはちょっと楽しそうにしすぎ」
「ルナちゃんだって楽しんでたでしょー?」
「別に……私はアンディとえっちできるなら気にしないだけだし」
 とまあ、結局みんな裸のまま、昨夜乱痴気騒ぎをした屋敷の前庭にゾロゾロと出ていく。無論ドラゴンの三人も。
 レディ・スワローと食料運搬係の部下数名は、その光景に面食らったような呆れたような顔。
「……朝からあんな祭りをまたやるのかい?」
「隠す必要がなくなっただけですわ。わたくしたちは本来、いつでも主人たるアンディさんの性欲を満たすために同行している雌穴なのです。取り繕わずに言えば、竜にて空を行く間はみなこの姿で奉仕しておりますもの」
「……こりゃまた、冴えない見た目のわりにとんでもないヤツだ」
 レディが呟くと、なんだかムッとした感じのエマが何か言おうとしてライラに首根っこを掴まれて止められた。「冴えない」とか「とんでもない」が侮辱に聞こえたのだろう。
 でもまあ実際、オーロラの言葉もレディの呆れも事実なので混ぜっ返せない。
「悪いが娘っ子たちは疲れてるから昨夜みたいなのは今やるってわけにもいかないよ。どうしてもっていうなら……まあ今はアタシが市長だ、よその街区から募ってくるがね」
「……女は呼ばなくていいっていうのを示すためにやったはずなんだけど」
「また裸で踊らせながら観客にして遊ぶじゃないのかい」
「昨日は結局そういう状況になっただけで狙ったわけじゃないよ!?」
 やはりどこか行き違いがある。
 いや、まあ、そりゃそうか。もう隠す必要ないとか言って朝から堂々と同行者をすっぽんぽんで外に並べたら、異常性欲の暴君として扱うよね普通。
「とにかく朝ごはんはありがたくいただくので、とりあえずあとはいいです」
 レディにはそう言ってお引き取りいただこうと思ったが、ヒルダさんがびし、と手を立てて止めた。
「ちょっと待って。ごはん置いたら解散でいいけどレディ、あなただけは居残り」
「なんだい。アタシもひん剥こうってのかい? 見ての通りのデブだ、笑いものにしかならないしやめてほしいね。これでも人並みにプライドはあるんだ」
「なんで太ってるのかちょっと調べたいのよ」
「ただの大食らいさ。若いころからよく太る体質でね」
「それでもなかなかここまでなるものじゃない。これでも医者歴400と余年、ダークエルフの生理はよく知ってるわ」
「……そんなに長いこと医者をやっててこんな色ボケ集団に……って、もしやアンタ、タルクのエロ魔神」
「あらん☆ さすがに仕事長いと遠くでも有名になるのかしら☆」
 クネクネとなんだか嬉しそうなヒルダさん。
「顔をつないでナンボの立場さ。多くはないが向こうに知り合いもいてね。たまにだが手紙も来るし、訪ねてくる時もあるんだよ」
「ん、もしかしてコスモスかしらね」
「……アンタも知り合いかね」
「親友よ☆」
「……納得はするよ、これ以上なく」
 ああ、なるほど。そういえばコスモス嬢もこっちに知り合いがいるって言ってたっけ……。
 それにお互い政治力のある同士、パイプを持つ意味もある。ヒルダさんが連想したのもそうおかしな飛躍ではない。
「ま、診察はするけど別にアンディ君に見せびらかして診ることはないから安心して☆ というわけでごめんねアンディ君、おちんちん慰めるのは他の子で我慢して☆」
「……まあ、それは大丈夫ですけど」
 そもそも俺、この朝っぱらから乱交再開しなきゃいけないのかなあ。
 ……ちなみに差し入れられた朝食の中にはバナナ一山がドクター・オウル名義で、そしてマンゴーというなんか丸くて濃厚な甘酸っぱい匂いのする果物がオスカー氏名義で混ざっていたので、くいしんぼう娘たちがとても喜んだ。

「おいスマイソン」
「ん……ああ、バウズ」
 朝食の分け前を取りに来たバウズは、未だ裸の女だらけの玄関ホール(さすがに外でそのまま食べるのは俺が落ち着かないので引っ込んだ)で渋い顔をした。
「服を着せろ。お前たち以外にも連れてきた女はいるんだぞ」
「……うん、まあ、そうなんだけどウチの雌奴隷たちがなんかようやく雌奴隷らしい感じになったって喜んじゃって」
「お前は『題目ほどの鬼畜ではない』という立場に留まりたいのか『題目に負けないほどの鬼畜になりたい』のかわからん」
「別に鬼畜になりたがってはいないだろ!?」
「女たちを止めずにいると、お前が手をかけたかかけていないかに関わらず、事実として調教師と調教済み奴隷になると言っているのだ」
「……や、やっぱり?」
 うすうす気づいてはいた。でもまあ女の子たちが自発的にエロいこと考えてくれるぶんにはいいよね、という原則でやってきた。
 でも確かに、例えばベアトリスやネイアが、なんかこう意識改革もしないうちにどんどん異常な状況で雌奴隷のふるまいをするのに慣れていくのは少々異様といえなくもない。
 もう俺が提案したかしてないかに関わらず、周りの空気がもう「そうしない方がおかしい」という感じになるのはよくないよね。
「……俺が細かくお前の考えに意見すべきとも思えないが、奴隷というならお前が望むように従えるべきではないのか。お前は少し女の気分に流され過ぎだ」
「そ、それはちょっと反省する」
「薬を打たれておかしなことになっている娘と、身内同士で常識を殺し合っているお前の女たちは、傍から見ればそうは変わらん。面白がっていられるうちはいいが見境がつかなくなっては誰も幸せになれんぞ」
「仰る通り……」
 確かに俺は綺麗な子にエロい恰好でチヤホヤされて楽しいけど、あんまりどこまでも突っ走ったら、少なくとも雌奴隷たちはただのあたまおかしい人の集団扱いになっちゃうよね。
 それはよくない。あたまおかしい子を量産する人は確かに調教師だ。手段がイメージとちょっと違うだけだ。
「みんなと話し合う……」
「そうしろ」
 なんだかんだで俺のハーレム状態にしっかり意見できる男って貴重かもしれない。ありがとうバウズ。

 で、裸のままで歩き回ったり食べたり飲んだり俺のちんこに跪いたりしてる雌奴隷たちを集め、車座でさっきのバウズと話したことを伝える。
「というわけで加減はしよう。確かに特異な状況だけど、これ以上突っ走ると普通によくない。俺はみんな賢いと信用してるけど、今後誤解でもっと突っ走っちゃう子が出てきたり本当に羞恥心とか捨てちゃったりしたらよくない。俺はエロくて可愛い子は好きだがイカレた子は好きでいられる自信はない」
「確かに今はこれで満足ですが、あまりその先を求めては危険ですわね……女として大事なものを取り落としかねません」
「……満足とか不満とかオーロラの基準が僕にはよくわからない」
「む。アンゼロスは不満じゃったのか。わらわはだいぶ思い切ったな、と思っておったが」
「ち、違う……けど」
「ほほ。自信なさげじゃのう。……ま、我はもはや飼い主殿の基準ではイカレてしまっておる可能性は捨てきれぬが」
「ドラゴンの羞恥心は元々別。アンディ様もそれくらいはわかってる。……でも、私たちと同じようにみんながやったら、確かに普通の人たちは正常な精神持った女とは思わないかも」
「うちのコロニーはどうなるの? ……むぐむぐ」
「ルナさんのコロニーは常識自体が意味をなさないからこそというものではないでしょうか」
「ね、ネイア、結局どうしたらいいの? 裸だとやっぱり駄目なの?」
 ちなみにエマは神妙に聞いているだけで、フェンネルは俺のちんこを丁寧にしゃぶってるので参加せず。まあ議論しようにもメインメンバーに数え辛いから意見はあまり出せなさそうだけど。
 んでグロリアさんはというと、起きてからずっとキャンバス出して何か描いていてロビーに出てきてもいない。昨夜の祭りで何かインスピレーションが湧いたんだろう。
 とにかく全員にそれなりに「ちょっとはっちゃけすぎたかな」程度の違和感はあってくれたようで、穏当に服着用させることはできそうだった。
 と、雰囲気がうまくまとまりかけたところで、どうやら別室で診察しながらもこっちの声はエルフ耳ゆえに聞こえていたらしいヒルダさんが戻ってきて一言。
「何より、みんなすっぽんぽんだと羞恥心ってかえって薄れるわよね☆ アンディ君が求めた時に求めた子だけがいつでも裸になる感じの方が度胸もいるし興奮するかも☆」
「なるほど、さすがヒルダさんですわね」
「一理ある……」
 やっぱオーロラとアンゼロスはちょっと手遅れな気がしてきた。
 今後注意しよう。あんまりエロい提案させないようにしよう。こいつらがリードするとベアトリスとかどんどん壊れそうだ。
「それでヒルダさん、レディは?」
「うーん。ちょっとした呪病がかかってるのよねえ」
「呪病!?」
 なんか穏やかでない言葉が出てきた。なんだそれ。
「なんですかそれは」
「ある種の悪意で作られるタイプの呪いみたいな病気。自然には発生しないわね。普通に治療すると面倒なのよ。完治させるのに20年がかりになったりするわ」
「……それってヤバい奴なんじゃ」
「それが違うのよねえ。長いこと苦しめるために作るのよ、こういうのって。命に別状はないけど不自由な生活を強いられるように。多分、若いころに何かのとばっちりを受けたか、あるいは恨まれたか……とにかく何か陰湿な奴に付けられたんだと思うわ」
「……魔法を使えるはずのダークエルフでも今まで気づかない……気づいても治すのに20年がかりか」
 世の中には恐ろしいものもあるもんだ、と思うと同時、この街ならあり得るだろうとも思う。
 タルクで見たように魔法はほんのちょっとした、例えば食べ物をおいしく仕上げるためにさえ使うことができる。それはある意味贅沢で、魔法が使えない種族からしたら、くだらないことに使っているようでもあるが、豊かな使い方だ。
 でも、悪徳と悪意が支配する世界では、他人を苦しめるためにも魔法は開発される。それは怖いことだが予想の範疇だ。
「ちょっとした、っていうことはヒルダさんならなんとかできますか」
「20年っていうのは魔法なしの正攻法。私の腕なら半年かな」
 半年。大幅に短くはなったが、滞在するには結構な期間だ。
「……治すんですよね?」
「もちろん。でも私より当然、いいお医者さんが世の中にはあるわよね?」
 ヒルダさんはウィンク。
 ……うん。つまり……。
「ポルカに連れていく、ってことですか」
「そっ。早ければ一週間で健康体。あの子、まだノールと同じくらいの歳なのよ? それが枯れ切ったオバサン気取りなんて、そんなのってないじゃない」
 そう聞くとすごいな。
 ノールさんってヒルダさんとディアーネさんの間だから……まあざっと見て300歳か。400歳という感じではないよな。それだと歳を気にする言動が出始めるし。
 ……って、歳を気にするラインをクリスティで設定してしまった。
 ヒルダさんですら俺より若く見えるし、800歳ぐらいになってようやく30歳前後の見た目になるんだから、どっちにしたってそれくらいまでは年増という感じではない。あまり無礼なことは考えるのはナシにしよう。
 で、そう思いながらも跪いて俺の股間で黙々と前後に動くフェンネルのこげ茶の頭に、俺の射精欲求は刺激され続けている。
 思考速度が鈍る。
 みんなのあられもない姿が視覚刺激になり、俺はレディをどうするかという考えを中断して、ひとまずフェンネルの口内の感触に集中する。
 ねっとりとした彼女の口の中は舐め上げる技を放棄し、俺が射精したがっているのを察知して、息を止めてじゅぼじゅぼと口全体で往復刺激を与える態勢になっている。それでもそう長く息は続かないので、十数往復も前後しては少し息を整え、また頭を振って献身的に俺のちんこに射精をさせようと励むのを繰り返す。
 彼女の真面目さと献身性がうかがえるフェラチオに、俺の欲望は満たされる。そう、満たされたはずでありながら、俺はつい彼女の頭を掴み、モノのように振るって刺激を求めてしまう。
 あとほんの少し。ほんの少し続くだけでいい。そのもどかしさを我慢できずに、俺はフェンネルの動きが緩んだ瞬間にそうして動かして……その喉奥に精液を放ち、フェンネルは盛大に咳込み、鼻からも精液を吹き出してしまった。
「うあっ……ご、ごめん……」
「うげふ、えふっ……べふ、ぶぇふっ……!」
「あらら。アンディ君ったらー」
「つ、つい」
 皆の見ている前での失態に、どうにもバツが悪い。
 が、アンゼロスやオーロラ、ライラなど、むしろうっとりとしている娘もいる。
「……いいなー」
「あのように荒々しく喉を犯されるのも良いものですわ……♪」
「ほほ。飼い主殿はもああいうのは我に任せてくれればいくらでもやるというのに」
 お前たちやっぱり要注意だよ。同じ水準で他の子に教育始めちゃ駄目だからな。
 ……いや、あとで実際やってみようかなともちょっと思ったけど。

 服をみんなに着せて、レディを改めて玄関ホールへ連れ出して。
「トロットへ旅? 冗談じゃないよ。アタシの現状を見てごらん。今が踏ん張りどころじゃないか」
 やっぱりレディはそう言った。
 数か月前に街の実権を握った彼女の状況を考えると、それはそうだろう。
 が。
「そなたの言葉は覚悟はあれど希望が足らぬ。捨て鉢さと背中合わせの責任感は、老いた人間族のようじゃ。それは無理の利かぬ己の身ゆえと見るがな」
 ライラが指摘すると、レディは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「そんなつもりはないがね……アンタがそう見えるって言うなら、敢えて反論を言い募るのも大人げないかもね」
「行って帰って、せいぜい十日。その程度はあのオスカーという男や、オウルという人間に任せても良かろう。そなたが年相応の……健康なダークエルフとして、女として蘇れば、それはどんな施策よりもこの街の再生の象徴となり得るじゃろう」
「……麻薬漬けの娘たちが正気付いたんだ。その霊泉っていうのも全くの眉唾ってわけではないんだろうね。だが……すぐってわけにはいかないよ」
「我らも一度ラパールに向かわねばならぬ。その帰りがけにまた寄ろう」
「……やれやれ、生まれて初めての国外旅行になるね」
 なんだかんだと言っても、ライラの言葉は彼女を動かす。
 しかし……想像がつかないなあ。ノールさんと同じくらい……か。
 今見る彼女の姿は、どこの下町にもよくいる、肥満で化粧の濃い中年おばさんそのものでしかない。
 ダークエルフは美しい種族だとわかっていても、それが美しく蘇るなんて考えが及ばない。
 誰の呪いかは知らないけど、それで彼女の人生にもたらした不利益は計り知れないことだろうな。それでも街の顔役としてひとかどの人物になったレディの根性もすごいけど。

(続く)

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