雌奴隷たち相手のエロエロ水遊びは夕方になろうかというところまで続いた。
 いや、暑いとは言ってもずっと水遊びは寒いから、結局ノンストップとはいかずにちょくちょく上がってたし、途中でライラが町の料理店から出前させたお昼とかも食べたんだけど。
 もちろん傲慢な富豪ごっこして水風呂に浸かりながら雌奴隷に腰を振らせ、別の子に料理を口に運ばせる……という案もあったんだけど、食べこぼしが水に落ちるのを避けられなくて汚いし、やはり落ちついて食べた方がいいよね、ということで、結局ちゃんと椅子とテーブルのある室内でいただいた。
 ベアトリスはヒルダさんに唆され、結局ずっと一枚も着ようとしないまま俺の股の間に顔を割り込ませ、手コキやフェラの技術指導されたり、アクロバティックな姿勢でなんとかテーブル下からおまんこ挿入できないか試したりしていたのだけど、まあそれはしょうがない。さっきも内心で決めたけど、彼女に関しては俺が責任持って雌奴隷教育しよう。

 さて、俺たちがそんなことしている間にも、ライラは街の商人たちの挨拶を辛抱強く相手して、時には通りに出てドラゴン体をちょっと見せたりもしていた。いや住民が喜んでたのはその前後に景気よく脱いだ人間体のほうだろうけど。
 そしてベッカー特務百人長やバウズ、それにユーファさんらはどうしていたのかというと、それなりに大きな屋敷なので別部屋を使ってまったり過ごしたり、青空酒場に出て行ったりしていた。
 護衛は男手二人だったが、この街の人間はライラの一行に加わっている彼女らを無下にはできない。それこそどこに行っても下にも置かぬ扱いを受けていたらしい。
「そんなに大きい街ってわけじゃねえけど、街の雰囲気は明るくて活発だし、憲兵隊に活気があるせいかゴロツキも少ない。四方の一次産業も豊富だし、改めて素性のいい街だよな」
「今まで寄ってきた街にはあまりない余裕を感じられるな。上がり調子の展望というべきか」
 屋敷に帰ってきたベッカー特務百人長とバウズは、そう言ってこの街の性質を褒めた。
「ここに留まるっていう女性は何人くらい出そうですか」
「今分かってる中では三人くらいかな。……タルクに行くと言ったら、そっちに興味を示した子の方が多い。あっちならコネが太いからな。俺もヒルダ先生も、いくらでも口利きができるから安心だ」
「ああ……確かに」
 ヒルダさん、というかカルロスさんのオニキス商会なら、手広く色々な商売をやっている。普通の仕事から夜のお仕事まで、彼女らがタルクで自立して暮らしていくつもりなら、強力なバックアップがしてもらえることだろう。
 ……麻薬を克服して就く先が夜のお仕事っていうのは、はっきり言ってやるせなくはあるけど……でも人生の再スタートをどうするかっていうのは、俺がどうのこうの口出しすべきことじゃないからなぁ。タルクで女一人で稼げる仕事となると、そっちを意識しないわけにもいかないし。
 できるだけ真っ当な仕事を……と、あのカルロスさんなら配慮してくれると思うけど。
「ベッカー特務百人長の口利きっていうと、やっぱり軍のほうですか」
「ん、まあ……あそこは駐屯地あるし、確かに軍属や入隊ってのもアリではあるけど……俺の嫁の一人がタルクの有力者の筋なんだよ」
「へえ」
 そういや、あんまり詳しく聞いたことなかったかも。
「ただ、まぁ……あそこも割とキナ臭い部分はあるからなぁ……カルロスの旦那ほど綺麗な情けはかけてもらえないかもしれない」
「……?」
「いや、その嫁オーガなんだよね。お前に一度紹介しなかったっけ、トリコーンの」
「あ、あー……そういえば」
 半年前の冬の精霊祭。その時に見た、ような。
 確かもう一人はダークエルフだったよね。
「タルクでオーガの有力者っていうとあれだろ。大体予想つくだろ」
「いや、俺、あそこのことといったらカルロスさんが仕切ってることくらいしか……」
「……まあお前みたいに北方詰めだとそんなもんか。タルクのオーガは土建を主体に大規模の商工グループを二つ組んでるんだけどな、なにかと血生臭い争いも絶えないんだわ。タルク中心部だけじゃなく、よそからもちょっかいかけられたりな。あまりにもグチャグチャすぎて、はっきり言えば軍も手を突っ込むのを嫌ってるくらいだ。で、うちのローズはその二大オーガ連合の片っぽのトップの家の生まれ」
「……お姫様?」
「まあ強引に言えばそう言えないこともないな。で、そのおかげで多少顔が利くのはいいんだが……麻薬漬けの女をそう可哀想がってくれるようなトコかというと、な?」
「ああ……」
 聞くからにスレスレ、あるいは真っ黒のことにも手を染めてそうだ。
 とはいえ、それをことさらつついて非難するつもりはない。
 麻薬なんて世の中から消えてなくなればいいのに……と思うには思うが、わざわざこちらに無関係の相手と揉めるほどじゃない。俺が首を突っ込むべき事情ではない。
 そんな複雑な家のご令嬢をポッと娶った特務百人長も凄いけど。いや、この人くらいの超人だからこそ、しがらみをねじふせるだけの説得力が持てたんだろう。
「タルクってパラダイスな感じがしてましたけど、やっぱり面倒なところも多いんですね……」
「人が多けりゃそれだけ損得がある。歴史が長けりゃそれだけスタートラインに差がある奴も出る。種族が違えば、食う物寝る場所欲しいもの、どれも平等ともいかないもんだろう。それでも一応小競り合い程度で済んでるだけ、よくやってると思うぜ」
「でも、そういう争いの火種があるところに連れて行くのも気が引けるところはありますよね」
「火種がない場所なんてねえよ。ポルカでさえ、いつエルフと揉め始めるかわかんねえだろ」
「そんなことはさせないつもりですけど……」
「どこの土地だって、みんなそう思ってるさ。自分だけ願望を優先して、起き得る可能性を無視するのは道理が通ってねえぜ」
「…………」
 ベッカー特務百人長は、青空酒場で引っ掛けたのか、ほろ酔いの目つきのまま、どっかりと窓辺に腰掛けて夕空を見る。
「選ぶのは彼女たちだよ。便利な土地には人が多い。田舎じゃトラブルは少ないが人生もそれなりだ。どっちがいいかは本人にしか選べない。……お前は道義として彼女たちを助けた。それは立派なことだが、その先の人生を支配してまで、思い通りの幸せを押し付けたいのか?」
「……そう言われると」
「じゃあ、わきまえとけ。お前はただでさえ、人生かけて幸せにしなきゃいけない相手が多いんだろうが」
「そう……ですね」
 おずおずと頷くと、ベッカー特務百人長は横目で見て肩をすくめる。
「ガラにもねえこと言っちまった。……こっから先は独り言だ、聞き流して忘れろ」
 ベッカー特務百人長は、俺から背を向けるように姿勢を崩し。
「俺はディアーネ隊長に振られてんだぜ。そのディアーネ隊長を幸せにできてねえのに、これ以上あれこれ欲張って後回しにしてやるなよな」
「…………」
 まあ、こんな調子じゃそう言いたくもなるか……。
 うん。すみません。

 精霊祭をどこで迎えるか。
 ここで数泊して、街のみんなに盛り立てさせて祭りの主役になるのも悪くない選択ではあったが、俺たちはタルクに飛ぶことを選んだ。
「せめて祭りまでは滞在なされても……」
「ほ、皆の健勝が知れて良かった。ここに来たのは旅の道筋ゆえ、先を急ぐことを許せ。後で近くのサンドワームは摘んでおいてやろう。当日は安心して騒ぐが良い」
「はっ。ありがたく」
 町長や憲兵隊長にそう言いつけて、ライラは服を豪快に脱ぎ、ドラゴン化。
 続いてエマやマイア、バウズもドラゴン化して、盛大に見送られながら俺たち一行はタルクに向けて離陸する。
 ここで降りる人たちの世話は、一人ずつ別々の商会の長に頼んだ。
 女性一人の新生活は何かと不自由もあるだろうが、各商会で、それぞれの面子にかけて取り計らってくれるだろう。

 そして、しばらく飛んで夜のタルクに到着。
 タルクでも精霊祭の準備に大忙しで、その会場になるであろう街の各地で、住民たちが夜を徹して櫓や舞台を組み立てている。
 オーガたちは元々暗視種族だから、夜でも細かい作業に不自由はない。ダークエルフもまた同様。
 俺たちは幻影で姿を隠しながら、そっとカルロスさんちの中庭に着地するわけだが……なにせ4頭だ。
 ただでさえ中庭全体が会場にされるのでスペースが少ないのに、ドラゴン4頭はちょっと大き過ぎる。
「どうしたものかのう」
「……みんな同時に着陸するのは無理かもね」
 ちびライラの困惑に、ヒルダさんは腕組みをして窓から見渡し。
「でもギリギリ馬車とか船とか置けるスペースはあると思うし、詰め詰めで置きながら順に人間体になって降りちゃうんでどう?」
「窮屈じゃのう……」
「こんな時期に来て、場所空けろとも言えないじゃない☆」
「竜の威厳もあったものではないのう」
 ライラがため息混じりにそう言いながら俺たちの馬車を下ろす。
 それと1メートルも離れていない場所に、ぎゅっと詰める形でバウズの持ってきた船も置かれ、さらにホバリングしながらマイアとエマも持参の馬車を置いていく。
 そして、俺たちがわいのわいのと下車したところで、ようやく通りがかりのダークエルフがこちらに気がついた。
「……えっ? 誰?」
「……あ、ども、お世話になってます」
 面食らった様子の青年に、俺は恐縮しながら軽く会釈する。
 よく考えると不適切な気もしなくもない。
「……?」
 青年は俺をしげしげと見ながら、出入りの業者か何かだと思ったのか、おずおずと立ち去ろうとする。
 そこにヒルダさんがニュルッと目の前に出た。
「はぁい☆ クリント兄上、お久しぶりー☆」
「うひぃ!? ひ、ヒルダッ!?」
「……なんで私のほうにその反応なのよ」
「あ、えっ、な、なんで今ここにヒルダがいるんだ!? 確か嫁にいったんじゃ!?」
「んもー☆ 嫁入りしたのは70年くらい前じゃない☆」
「え、ああそうだっけいやええと……あれ? いやそうじゃなくて」
 なんだか混乱しているらしい彼に、仕方ないので俺から話を切り出す。
「えーと、すみません。……カルロスさんかナンシーさんに取り次いでもらえます?」
「き、君はちょっと待っててくれ、出入りの業者なら今担当の者を呼ぶからね」
「いや出入りじゃなくて俺……えーと」
 うん。見事に「ディアーネさんやヒルダさんの恋人」とは思われてない。というか印象薄いのかな俺。
「面倒くせぇなあ。俺がお邪魔してきましょうか」
「あ、君っ……ベッカー君」
「こんばんわ。ドラゴン4頭で到着ですんでちっとばかし嵩張ってますが」
「……えっ、ドラゴン4……?」
 ぽかんとしているクリント兄上。
 と、その背後にヌッと口ひげを蓄えたダークエルフが現れる。
「あっ」
 ベッカー特務百人長が珍しく慌て顔で指差した。
 仏頂面のダークエルフはクリント兄上氏をぐいっと押しのけて踏み出し、ムフーッと鼻息。
「よく来た。ディアーネは見当たらんようぢゃが」
「ディアーネちゃんはまだカールウィンよ?」
「なるほど。それは良かった」
 口ひげのダークエルフ……アシュトン第六大臣。
 珍しく本家にいたらしい彼は、大きく息をついて、腰に提げていた剣をズルリと抜き。
「とりあえず死ぬのぢゃあ!」
 いきなり俺に切りかかってきた。
「わー!?」
 俺は慌ててバックステップ。かろうじて一撃を逃れる。
 さらに剣を振り上げて、びょーんと飛び掛ってきたアシュトン大臣を、みんなあっけに取られて動けない中、全く空気を読まずにベアトリスがスッと近づいて脇腹に横蹴りを叩き込んで吹き飛ばしてしまった。
「ぐほぉ!?」
「お、おいベアトリス!?」
「……ねえ、何これ」
「大臣だよ! 超えらい人だよセレスタの!」
「……頭おかしい奴がそんな偉くて大丈夫なの?」
 ひどいことを言う。いや確かにどう見ても頭おかしいけど。
 でも、愛娘が三人も一人の男に食われたら俺だってこう……なる……なるかなぁ?
 ちょっと自信ないけど。

(続く)

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