ネイアはそのまま俺の前に出てくるかと思ったら、エマにペタペタと(タイル張りの屋上に裸足なので)音を立てて駆け寄った。
「あの、ペンダントを貸してもらえますか」
「いいですけど……」
 ……あ、そういえばネイアはカールウィン事件終わってからなし崩しに雌奴隷扱いではあるけど、今はまだ専用の首輪ないんだっけ。
 でも、みんなネイアが雌奴隷だということを疑ってなんていないし、首輪の代わりなんて必要ないと思うけどなあ。
 ……と、思っているのは俺だけのようで、他の娘たちは「そういうことか」と納得したように頷いている。
「私のことを雌奴隷にしてくれると息巻いていたのに、こういう時にまるで忘れたように振舞うのは酷いと思います」
 ネイアはフワフワの髪を軽く持ち上げて、ちょっとだけむくれた顔をしながらペンダントを自らの首にかける。
 やる気満々のシースルードレスを身につけながら、そういう態度をとるのは本当に可愛らしい。
「ああ……忘れてたわけじゃないんだけどさ。ネイアはまだ本格的に雌奴隷を誓ったわけでもないんだから、ちょっとこういうのには踏ん切りつかなくてもしょうがないのかなって」
 自ら辱めるように雌奴隷の身分を語り、誓う。そんな「自分プレゼント」。
 例えみんなで決めた企画だとしても、まだ一番新参の位置から本気で混ざれるかどうかは別だ。
 ……まあ本当の一番の新参はエマなんだけど、彼女はドラゴンだから服従の誓いには元々前のめりだし。
「私はもう、あなたの求める何もかもを承服したつもりですよ。……カールウィンをあなたが救ってくれるのなら、私はあなたに身を捧げることに……あなたの性奴隷として残りの人生を使い果たすことに、なんの躊躇いもありません。皆と同じようにいつでも裸になり、股を開き、あさましく子作りをねだって、四六時中精液を胎内に溢れさせる、そんな女に……」
「あ、いや、どこからがプレゼント的な口上? っていうか始まってる……?」
「……お望みなら別の文言でいきますけど」
 ネイアは口では大胆なことを言いながら、若干まだそこまで割り切れていないのか恥ずかしげに身を抱いている。
 腕を巻きつけたところで素肌が全く隠れる感じの服でもないし、中天の太陽は薄絹を透かした素肌のシルエットをことさらくっきり映しているけれど。
「……もう、あなたのものなんですよ。この私のカラダは、魔物や人を斬るためのものではなく、あなたのおチンポを擦り上げるためにあるものです。あなたは、既に殺伐の運命から奪い取っている……この体も、この心も。あなたと子を作ったり、あるいはただ性欲をぶつけ合ったり……際限なく睦みあうことが何よりの喜びなのです」
 ……ネイアの中では、まだそこまでのめりこめているかは怪しいところだけど。
 でも、気持ちとしてはそうありたい……そこまで夢中になってしまいたい、と思っているのは伝わってくる。

 ネイアは責任感が強い娘だ。放り出したくても放り出しきれない。
 今や俺がドラゴンパレスを動かし、ディアーネさんが政治的機構を整え、デューク神官長……国王代理やブライアンが動かし始めているカールウィン。
 地元出身者で実力と求心力のある剣士として、ネイアも彼らにとって重要な人材であるのは確かだが……もう、直接ネイアが身を粉にしなければならない実質的な理由は少ない。
 流れとしては、もう俺の元で雌奴隷として堕落してしまってもいい。俺がカールウィンに関わっているということは、ネイア一人が走り回るよりずっと大きな効果があるだろう。
 だが、そうわかっていてもネイアは堕落しきれない。
 俺もわかっている。ネイアは根本的に真面目で、優し過ぎる。
 自分が頭の先まで気持ちよくて幸せな生活をしてしまうことは、何かに申し訳ないと思ってしまう。
 まだ不幸な祖国を、たとえ何も出来ないとしても、みんな忘れてエロに頭を塗りつぶした生活はできない。
 ただ、そんなネイアだからこそ俺は幸せにしたい。
 彼女の雌奴隷になりきった言葉は、だからまだ、願望で目標。
 俺が何をしても受け入れるというのはきっと嘘じゃない。だけど、愛欲に夢中の雌奴隷という姿は、いつかそうなろうと努力しなければならない姿。
 どこか歪だけれど、ネイアにとってはそんな堕落した女に「いつか、なりたい」のだ。俺を幸せにするために。そして自分まで続いてきた運命を、本当に終わらせるために。

「だから、改めてあなたに宣言します。私の全てをあなたの自由にして下さい。ありとあらゆる場所の肌で射精して、どうかあなたの子を孕ませてください。あなたに与えられるものは何でも受け入れます。調教も、快楽も、精液も……この身に刻み付けてください。きっと良い雌奴隷になってみせますから」
「……激しいこと言っても、やっぱりネイアはネイアだなあ」
「なっ……どういう意味、ですっ……んっ」
 同じようないやらしい言葉でも、どこか実感とは遊離してしまう。それはネイアの長所なのか短所なのか。
 だが、俺はそんなネイアを好きになった。幸せにしたいと感じた。
 彼女の言葉を止めるようにキスをして、透け布越しにもわかる羞恥の熱を感じながら抱きしめる。
 まだまだ、ゆっくりと、彼女を染めていこうと思う。

 そのキスが済むころになって、ネイアのつけていたペンダントを後ろから外すベアトリス。
 で、上目遣いで俺を見ながら、それをおずおずと首に巻く。
「……あのなベアトリス」
「な、何」
「これ言うの何度目だかよくわからないけど、お前がなんで混ざるの」
「……なんでダメなのよ。これつけたら……混ざっていいんでしょ」
「……ま、まあそうなんだけど。わかってる? これ、俺にみんなして服従してみせてるだけだぞ」
 なんかベアトリスも流れで混ざってしまった感があるが、これは女としての屈辱だ。
 俺に対して自分をプレゼントする。
 雌奴隷たちがやるなら、既に自分を捧げている子がそれを強調するだけなのだから大したことはないけれど、ベアトリスの場合は……いくらペンダントのおかげで「ごっこ」でしかないと言ってもなあ。
 特にその義理もないのに女としての尊厳を投げ捨てて「服従ごっこ」なんてして、いったいどうなるっていうんだ。
「……じゃあどうすればいいの」
「どうって……いや、グロリアさんだって不参加なんだし、とりあえず下がっておいたらいいんじゃ」
「……そんなに私がいるのヤなの?」
「ええー……いや、そういうことじゃなくてな?」
 ベアトリスは、ぎゅっと薄布ドレスのすそを掴んでうつむく。
「なんで他の女がやるのは止めないのに私だけ止めようとするの。他の女だと喜ぶのに私だけあっちいってろって言うの。……ひどい」
「いや、待て待てなんでそんな泣きそうな声で言うんだよ。これな、正直すごく異常な行為でな?」
 俺が慌てて説明しようとするが、ネイアに止められる。
「スマイソンさん。……よくありませんよ、そういうのは」
「え」
 俺、変なこと言ってる?
 と、きょとんとすると、アンゼロスが溜め息をつき。
「子供の頃、友達の誕生日会に行ったことある?」
「……ま、まあ、一応」
「玄関で帰らされたことは?」
「え」
 ……い、いや……まあそういうのは……。
 俺自身はなかったけど、そういや一度見たことあるな。
 喧嘩してる子の誕生日パーティーに、それでも渋々って感じで現れて、案の定「帰れよバカ」「うっせえ来てやるんじゃなかったよバーカ」とか罵り合って一人帰ったの。
 で、追い返した本人が親にゴツンと怒られて泣き出して。
 すごい気まずい誕生日パーティーになった。
「私は、あるよ。耳を隠して遊んだ子に『今度誕生日だから来てね』って言われて、ノコノコ行くじゃない? でも外ならともかく、家の中で帽子脱がないわけに行かない。で、耳を見たら親が『なんでエルフがウチに来る』って」
「……う」
 想像するだにやるせない。
「お前、わかってる? それと同じだよ、これ」
「…………」
 そ、そうか?
 いや、まあ形だけ見れば誕生日パーティーだし、確かに祝われる当人の俺は不参加を勧めてるけど。
 ……確かに、そうだけど。
「で、でも雌奴隷的なそういうのってさ」
「アンディ。……グダグダ言わない。ベアトリスだってわかってるよ。わかってて、アンディが喜んでくれると思ってたんだ。それをフイにしてあっち行けなんて言っていいの?」
「……うう」
 そう言われると、俺すごいひどいこと言った?
「……ごめんベアトリス。……俺が悪いな、それは」
 ベアトリスがどこまでわかってるのかはまだ疑問が残るが。
 こういう「屈辱的な扱いを受け入れてみせる」なんて、本人が納得していたら心配してどうのこうの言うことじゃないのかもしれない。
 俺はそう思いなおしてベアトリスに謝ると、ベアトリスは鼻を啜ってから、「うん」と言い、しばらく黙る。
 そして、改めて。
「……わ、私を……あげる、から。……好きなように犯して。みんなと同じように子作りして……いつでもどこでも、おちんちんにちゅーして欲しいならそうするから、私も……あなたのものになりたいです。パパのチンポ奴隷に」
「……パパ気に入ったの?」
「……だってアンタ、喜んでたし……」
 そして目を逸らし。
「……こ、こういうの言うだけで嬉しいなんて、馬鹿じゃない? ……だ、だって結局同じじゃない、前に確かめたこと、言い換えただけよ、こんなの」
「ベアトリス!」
 ネイアが叱るように名前を呼び、ベアトリスは拗ねたように背中を向けてしまう。まあお尻丸出しなんだけど。
 ……あ、でもベアトリスの言う通り、子作り自体はしていいよって前にいわれた気がする。
「せっかく大トリなのじゃ。その憎まれ口がなければすぐにでも犯してもらえたじゃろうに」
 アイリーナが苦笑するように言うと、ベアトリスはバッと振り向き、少し弱気な顔で俺を見上げ、それからハッとしたように口を尖らせて睨む。
 チャンスを逃したことに気づき、だからといって俺にまた媚びるのは気持ち的にできず、結局睨みつけるしかできなかったのだろう。
 そこまでわかりやすく、また子供っぽいと……なんだか可愛くて仕方なくなってくるじゃないか。
「ベアトリス。さっきの誓いはまだ有効だな?」
「……っ」
 俺はニヤニヤしながらそう言って、彼女の胸元を指差す。
「服、脱げ」
「……!」
 服脱げって言われてこんなに嬉しそうな顔する女の子いるだろうか。
 それくらい、信じられない、という顔からパアッと表情が明るくなる。
 いそいそと脱ぎ始めるベアトリスの姿を横目に、他の娘たちに顔を向ける。
「いいんだよな?」
「もちろん。ご主人様のお気に召すまま、だよ、アンディ」
「順番が変わるだけですわ」
「ククク、良い良い。子供に譲るのも大人の役目よ」
「……アイリーナもちっちゃいのに」
「う、うるさいのう。そなたとてわらわをどうこう言えるほど立派な身ではなかろう、マイアよ」
「ちょっとはまし」
 雌奴隷たちは仲良くて何より。
 そして、前よりは少し勿体つけて脱ぐことを覚えたベアトリスを両手を広げて迎えつつ、俺は真昼の陽光の下で、水張りの浴槽に服のまま尻から浸かる。
 バシャン、と音が立ち、水しぶきが舞う。砂漠の抜けるような青空の中に、その輝きが宝石のように視界を彩る。
 みんなの告白を受けて満たされた気持ちの中、薄布ドレスのまま次々浴槽に飛び込んでくるほかの雌奴隷たちにも手を伸ばし、俺はわけもなく笑い声を上げながら、嬉しそうなベアトリスを組み敷いて最初の一発に取り掛かった。

(続く)

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