「ま、ここまで描けたら、あとは仕上げってとこかしらねぇ。モデルさんたちに立っててもらう段階は終わったから、後は楽しみにしてて。……と言っても描き上がりを見られるかどうかはわかんないかー」
グロリアさんが筆をクルクルと手の上で回しつつ終了宣言する。
その筆は水洗いしたわけでもないのに、既に絵の具が綺麗に落ちている。
どうやらエルフである彼女は画法に魔術を多用しているらしく、見ている限りでは納得のできない現象は他にも多々起きていた。数色しかない絵の具の色が総天然色を実現するのも然り、あっという間に乾燥するのも然り。
人間の平凡な画家では、こんな絵を仕上げるためには多大な時間と画材、そして彩色の特殊技術が必要になるのだろう。
ズルいと言えなくもないが、もとよりこういったものは使っていい技術に制限などあるはずもない。出来上がったものが良ければ、魔法でも特異体質でも、使いこなした者勝ちだ。
「おおお……すごい、私なんだけど私じゃないっていうか……こういうのに収まると自分がちょっとえらくなった気分になれますね」
「裸だけどね」
テテスに突っ込まれつつ無邪気に感動するナリス(シーツ布をマントみたいに肩がけしてる)を、アルメイダ(特に俺の視線を気にせず全裸首輪)が少しあきれたように見る。
「ナリス……お前は忘れがちだが、レッドアームは充分に立派な存在だぞ」
「え、あ、いやー、そうなのかもしんないですけど」
「常々思っていたが、お前くらいの腕でも貧乏たらしく他人のフォローをさせられるような冒険隊とはなんなのだ。市井ではレッドアームどころか、正規兵ほどの戦闘力も持ち合わせていれば立派なものだろうに」
「あー……私自身がそもそも人押しのけて先陣切るタチじゃなかったといいますか……そもそも一般の冒険家は魔物やっつけるのなんて想定外なんですよう。カチ合わないようにする工夫が冒険のキモなんですよう」
「ふむ……ならばナリスの秘めた才能を生かせるガントレットは天職だったといえる……のか?」
「全っ然天職じゃないです。そんなもん私が普段から消極的なあたりで察してくれてるものかと思ってましたが」
「鍛え込む気もなくそれだけの腕が保てているのは、贔屓目抜きに大した才能だと思うが……」
「私ゃ何かブッ殺すより、のんびりまったりしつつ、適度に文化的刺激を受けて生きていきたいんですよ。お金が要るからやってるだけで別に武名を上げようとかそんな野望はこれっぽっちもないんです」
「冒険家はのんびりまったりには程遠いと思うが……」
「しょうがないじゃないですか、身元不明エルフがのんびりまったりできる土地なんてそうそうないんだから。文化的刺激のほうを取ったまでです」
そんなナリスの弁明を聞き、テテス(一応という感じでシーツ胴巻き)とシャロン(裸首輪)は顔を見合わせて。
「聞けば聞くほどナリスちゃんって雌奴隷向きですよね」
「まさに天職ではないかしら」
「あんたたちナチュラルに酷い発言してるのわかってますか!?」
……身元不明のエルフゆえの放浪の運命に対し「奴隷向き」という評は、確かに聞きようによっては悪役の発言だ。うん。
「でも雌奴隷と言っても、実質わりと自由で気楽な側室みたいなものだよ?」
「ポルカは良い土地だし、ご主人様は何より強い権威で身元を保証してくれるじゃないの。エッチも自分から混ざっているのだし、軽い外出感覚で諸国を訪問することもあるわ。ナリスの求めるものは全てあると思うのだけど」
「うぐ……そ、そうだとしても奴隷になるなんていう宣言はまっぴらです」
少したじろぎつつも、いつも通りのことを宣言するナリス。
テテスは唇に指を当てつつ。
「んー、じゃあ結婚ならいいの?」
「……そ、それは……状況次第というか、真剣な話なら考えなくもないっていうか……」
「近いうちにご主人様、法的に何人と結婚しても良くなるんだけど」
「う……」
「どうするの? これからも逃げ続けるの?」
「に、逃げるって何さ!」
「多分ご主人様のそばにいたらお嫁さんにしてくれちゃうと思うんだけどなー。ナリスちゃんはこれからも軍人は性に合わないとか言いながら、ずーっと半端な立場続けちゃうのかなー」
「そ、そんなこと言われたって……だいたい、そういうのって流れでいくような話じゃないじゃん……」
追い詰めるようなテテスの挑発に、さすがに見かねて俺は割って入る。
「そういうのを横から言って迫るのは違うだろ。ただでさえまともな関係じゃないんだ。他人が勢いつけて決めさせるようなことじゃない」
「そうは言いますけどー。ナリスちゃんのなんか半端でズルズルな立ち位置がなんか気持ち悪いですし……」
「いくら友達とは言っても、人生は自分だけのもんだろうが」
「そうですけど」
俺は実際のところ、他に行き得る道がある娘に、無理に手元で雌奴隷させたいとは思っていない。
実態はどうあれ、そうして俺の雌奴隷として生活する覚悟を決めるというのは、他の世間体を完全に潰すことに他ならないのだ。
他のどんな夢より俺とのセックス漬けの方が幸せだ! ……なんて寝言は言えない。
その選択をしてしまった娘は、できるだけの範囲で幸せにする。それだけのことだ。
だから、まだ現実の夢に取っ掛かりのあるナリスを、まるで義務のように引きずり込んではいけないと思う。
「それに、モデルが終わったらもうガントレットナイツの本部に戻る手筈だろ」
そっちに戻ってしまえば、彼女らにとっての「現実」が待っている。
そう思って話を終わらせようとしたのだが、逆にナリスが頭を抱えることになった。
「うー……そっか、終わっちゃったら出なきゃいけないんだった」
「はあ……しばらくはお別れですねー、ご主人様。忘れちゃ駄目ですよ?」
「しばらくはなんのかんのと理由をつけて退役はさせてもらえないと思いますけど……私に種付けしたくなったら、いつでもいらしてください……♪」
「私もだ。できるだけ早くゴタゴタは片付けて専念できるようにするが……それまでの間は、わざわざ出向かせてしまうことになる。それでも良ければ、いつでも……♪」
シャロンとアルメイダ、裸の二人が擦り寄るようにアピールしてくる。
それを見て肩をすくめながら、グロリアさんは絵を片付け始めた。
「何度見ても冗談みたいだけど……そんな大物の女騎士たちにそうまで媚びさせるって凄いやね」
シャロンとアルメイダは、それぞれ俺の片腕ずつを抱きながらグロリアさんに答える。
「武に長けた女は、ただの殿方には扱いづらいのです。そんな私たちの力を恐れることも否定することもなく、女の喜びを教え込んでくださったご主人様ですもの」
「自分が雌として生きるのならば、この雄のためだ……そう自然に思わせてくれる。自分が、好いた男の子供を孕み産むことを喜ぶ『女』という生き物だということを、どうしようもない事実として教えてくれるのだ。そうであること以外が瑣末なことにすら思う」
「わかるわ。突っ張って生きていた自分がなんと浅ましいことか……そんな生き方なんて捨てて、早くご主人様の子を身篭りたい……お腹の底で本能が疼くのよね」
うっとりとするシャロンとアルメイダ。ややたじろぎつつも曖昧に笑ってごまかすグロリアさん。
いつも思うけど思い込み激しいよね、二人とも。
「本当に早く身篭りたいものだ……」
「そうだ。ねえテテス、私の避妊を解いてくれるかしら。いつもはぐらかすんだから」
「はぐらかしているわけじゃないですよー。どうせ解くならご主人様に見せ付けないと。今から自分の種で孕む用意できてるって認めてもらって、興奮してもらった方がいいじゃないですか」
流し目で俺に同意を求めつつ、胸で巻いたシーツをそっとほどくそぶりを見せるテテス。
どうします? せっかくだからここで一戦始めます? とでも言うかのようだ。
俺は少しグロリアさんを気にしたが、よく考えれば彼女は娼婦でエロ作家だ。勝手に始めたところでそう怒ることはないだろう。参考にはされるかもしれないけれど。
テテスに頷いてみせると、テテスは自分もシーツを脱いで捨て、シャロンの腹に指を這わせて小声で呪文を唱える。
ナリスをちらりと見ると、頑としてシーツを纏った手を閉じつつも迷ったように視線をさ迷わせていた。
一方、アルメイダはというと、テテスによる避妊解除を眺めながら、ポツリとつぶやく。
「こうして避妊を解除したところで、私や騎士長は滅多なことでは孕みはしないのだがな……避妊などという魔術があるのなら、確実に妊娠させる魔術もあればいいんだが」
それを聞いて、テテスは身を起こしながら答える。
「同じことをヒルダさんに聞いたことありますけど、一応あったみたいですよ」
「……あった? 今はないということか」
「使えば妊娠はするそうです。かなりの確率で奇形や死産になるそうですけど」
「…………」
「孕まないようにするのとは訳が違うんだそうですよ。……まあ、魔法で強引に赤ちゃん作るのってそれだけでもなんか嫌な感じしますよね」
「う、うむ」
少し青くなるアルメイダ。聞いててちょっと俺も引いた。
しかし、そこで思わぬところから声が上がった。
「直接、子宝をどうこうするんじゃないけど……おまじないなら知ってるよ」
グロリアさんだった。
イーゼルとキャンバスは片付けた後だが、手には筆一本。
それをくるくると回しつつ、ニヤリと笑うグロリアさん。
「長いこと亜人街でエロいことを商売にしてたからね。獣人に伝わるおまじないなら教えてもらったことあるんだ。今言ってたような副作用はないよ。確実な効果もないけれど」
「どんなのです?」
俺が聞くと、服のすそを捲り上げたグロリアさんは、手に持った筆で自分のヘソの下に奇妙な文様を描いていく。
「こんなの。獣人は満月時の妊娠率が高いと言ってもやっぱり運は絡むからね。確実に子宝を、って意味で、若い娘の子宮の上に昼間のうちに描いておくんだって」
「……へえ……」
「面白い風習ですね。私にも描いていただけません?」
「わ、私もだ。……どうせ長く離れるなら、今確実に……孕みたい」
シャロンとアルメイダが名乗りを上げる。テテスはどう出るかと思っていると、イタズラっぽく微笑み。
「それじゃあ私は……おまじないナシで。元々孕みやすいんですから、フェアにいきましょうかね」
「お前ならもっとガツガツするかと思ったのに」
「所詮はおまじないですしー」
魔法とは違う、民間信仰に基づいた一種の迷信。それでもやってみたいとする純血エルフのアルメイダとシャロンの前のめりな意気込みはほほえましい。
「それにー……グロリアさん。何気なく自分で描いちゃってますけど……そそりません?」
「!」
ひそひそと俺にささやいたテテスだったが、さすがに耳ざとく聞きつけるグロリアさん。
「これはっ……べ、別にあたしに種付けしろって意味じゃないからね!?」
「所詮はおまじないじゃないですか♪」
テテスはそう言って、あわてて文様を消そうとするグロリアさんの手を掴んで止める。
「ちょっ……」
「試しにみんなで実験してみましょうよ♪ みんなエルフですし、誰か孕んだら効き目はバッチリだと思いますよ……♪」
「あっ、あたしは……ちょっと、アンタね!?」
「グロリアさんも直接口説かれてるんですし、満更でもないでしょう……?」
テテスはニヤニヤしながらグロリアさんの服を脱がす。それぞれ既に文様を書いてもらったアルメイダとシャロンも協力してグロリアさんを瞬く間に素っ裸にする。
「な、なんなんだいっ……急にっ!」
「お礼ですよ、お礼♪」
「良い絵を描いてもらった。それにこの文様。……感謝は一番槍を譲って示そう」
「妊娠祈願の印をつけて犯してもらうなんて、風情に溢れています♪」
「っ……」
グロリアさんは文句ありげな顔をしたが、しばらくして小さく溜め息をつき。
「……まあ、こういう趣向でヤるのは……これを教えてきた当の奴もいるし、初めてじゃないけれど。……いいじゃないか、孕ませられるものなら孕ませてみなよ」
覚悟を決め、そこらのテーブルに腰をかけて足を軽く上げる。
俺は新鮮な興奮を覚える。
もちろん彼女やシャロン、アルメイダたちが意味不明の文様を子宮の上に描いて……いや、子宝祈願をその身に書き付けて俺のチンポを待つという単純な行為に、自分でも驚くほど気持ちが高ぶっている。
「……っ」
ナリスは仲間はずれにされるのを嫌がったか、ようやくシーツを脱ぐ。
と、その前に中腰でテテスが近づき、筆を軽く掲げて見せながらナリスに囁く。
「……ナリスちゃん、参加するなら描かないと♪」
「……う、うー……ええい、どうせ気分だけの問題だし……っ」
ナリスはテテスが返事も待たずに筆を伸ばしてくるのを許容する。
……俺はそれを横目にしながら、ちんこでグロリアさんの膣に狙い定めた。
(続く)
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