馬車の中は薄暗い。
窓からの陽光があるとはいえ、その窓もいわゆる木戸だ。王都の家のような窓ガラスなんて嵌まっているわけじゃない。揺れる乗り物にそんなのつけるのは割れたら怖いし。
暗い夜ならランタンくらいはぶら下げるのだけど、昼間の車内は窓を開けることによる採光が主で、だから窓際以外は文字を読むのも覚束ない程度に暗い。
その薄暗さの中でのエッチも色々と風情があって悪くないのだが、個人的には明るいところで女体をしっかり見たい派なので、暗さに不満を感じる部分もある。
見れなくたって触って確かめればいい、とは言ってもやっぱり視覚的な満足感が欲しいのだ。
「……と思うんだけど贅沢かなあ」
最初に絡み付いてきたテテスを抱きかかえつつ、ちんこはアンゼロスが頬張っているという状態で、アイリーナに相談する。
「まあ魔法の明かりを浮かべるくらいは造作もないが……せっかくじゃからのう」
アイリーナは裸で長椅子の背もたれ越しに後ろから乗り出し、ニヤリと笑って呪文を唱えつつ、指を大きく周囲に回す。
すると、まるでカーテンを開かれるように壁が透けて周囲が見えるようになる。
「開放的じゃろ」
「お、おう」
床と椅子を残して壁や天井が不可視化された馬車は、今ライラの腕に抱えられて快速で空を飛んでいる。高さは数百メートルというところか。
地面が流れていくのを実感できる高度のおかげでちょっと怖い。
「ふむ。……ライラ殿の体も申し訳ないが少々景色の邪魔じゃの。透かそうか」
アイリーナはさらに魔法をかけ、ライラの体すら消してしまう。
「お、おいおい、そんなことして大丈夫か」
「この中から消えて見えるだけじゃ。ライラ殿はライラ殿で地上から見えんように体を覆う幻影を張っておるからの、干渉するような魔術は元々使えん」
「……ってことは外からも別に見えないのか」
「うむ。ま、明るい場で女体を見たいそなたには充分じゃろう?」
ククク、と笑うアイリーナ。
まるで御伽噺の魔法の絨毯のように、晴れた空を滑空していく床板の上で、十人以上の女の裸体が陽光に照らされている。
「あはっ……こういうのも、いいですねっ……♪」
「いずれはアンディさんなら……まやかしではなく現実に、こうして裸の雌奴隷を満載した神輿で、ゆっくりと地上を巡幸することも夢ではありませんわ……♪」
テテスとオーロラが白い肌を陽光に輝かせつつ、俺の乳首を舐めながら酷い妄想をする。
裸の雌奴隷満載の神輿でセックスしながら練り歩くって……一体何が目的でそんな恥ずかしい行進をするんだ。
「やる必要が感じられないパレードだ……」
呟くと、肌を寄せてきたシャロンに反論される。
「そうでしょうか? こうして床でのあなたの雄々しさを見せ付けて回れば、私たちがあなたに屈従していることの理由も万人に納得させられるのでは……無論、その際には存分に私を使って例としてくださいね……♪」
「お前実は見られるの大好きだろ……」
「あなたの奴隷としての卑しい姿を余人に見られるのは、やぶさかでもありません……このはしたない牝の身体が、本来あるべき姿として収まっているのは喜ばしく誇らしいことです……♪」
俺におっぱいを揉ませながら陶然と語るシャロン。そして背後でナリスが軽く身を抱くようにしながらブツブツと文句を言う。
「なんか騎士長のああいう趣味ってカラダに自信があるヒト特有のものを感じて若干イラッとする……!」
「いいじゃないかナリス。お前の体でもアンディは欲してくれるのだ……胸が全てと思うのは間違いだぞ」
「アルメイダさんも私よりゃマシだからって超余裕ですよね……!」
ナリスはしきりに胸が小さいのを気にしているが、別にナリスのおっぱいはナリスのおっぱいでとても魅力的だと思うけどなあ。
まあ、一般的にどどんと放り出して男が圧倒されるのはシャロンの巨乳である事は否定できないけど。
でも、女体というのはバランスだ。
大きければいいというものでもないし、もちろん小さいなら小さいほどいいということではない。
全体の調和が取れた美しさがあればそれでいいのだ。ナリスもアルメイダも、テテスもオーロラもアンゼロスも、みんな運動に強いだけあって余計な贅肉はないし、その胸もお尻もそれぞれに男を惑わす魅力はある。
「胸……胸、かぁ……」
ボソリとベアトリスが呟くのが聞こえる。次々によって来ては素肌を擦り付けてくる雌奴隷たちのおかげで見えないが、きっと隣のネイアと自分の胸を見比べているに違いない。
ベアトリスの胸は確かに育ってないが、まだまだこれからだ。いやここからネイア級になるのは厳しいかもしれないが、これから栄養バランスのいい食事とかセックスとかしてじっくり育てれば……ルナ(手のひらに余るほどではない普通サイズ)くらいのおっぱいにはなるんじゃないかな。
……と思っていたら、いつの間にかベアトリスの方にヒルダさんが忍び寄っていたらしい。
「ふっ、ふっ、ふっ☆ ベアトリスちゃんったら胸おっきくしたいんだ?」
「やっ、何っ……!? べ、別にっ……そ、そんな胸とか大きくても邪魔だしっ……!」
「ネイアちゃんやシャロンちゃんは巨乳でも強いじゃないの☆」
「そ、それは……そうだけど……」
「その上、女としての存在感でも負けたくないわよねえ? うんうん、同じ女としてわかるわー☆」
「……アンタが言うとすっごいイヤミっぽい……」
「羨ましい? ふふーん。私これでも人体の専門家なんです。胸おっきくする方法に興味ない?」
ピクッとオーロラ、アンゼロス、それにテテスが俺にくっつきながらも反応した。
うん。やっぱ諦めてないんだ。……別に君らは君らでいいんだよ。あとテテスは無いと言うほどでもないから今でも充分だよ。
「……な、何なのよ……こういうのって放っておく以外にどうにかなるって言うの?」
「ま、色々ね……魔法とかお薬もあるけれど。一番自然な方法は、こういうのって血筋以外にも、女としての自覚が強いほどにカラダも女性的になっていくものだから……アンディ君とどんどん積極的にエッチするといいわよ……☆」
耳打ちするように言うヒルダさん。とはいえエルフだらけの車内ではナイショ話にはなっていないだろう。っていうか人間の俺でも普通に聞こえてるし。
「女としての自覚……って……」
「気持ちだけじゃ駄目よ? カラダの成長を促すんだから、それこそ表面的じゃなくてカラダの芯まで、ああ、自分はオンナなんだ、って……女に生まれて幸せだって思える体験を毎日、たっぷりしないとね☆」
「っ……」
「ああしてアンゼちゃんがしてるみたいに、アンディ君のおちんぽにちゅっちゅしてみたりとか……オマンコもお尻の穴もアンディ君におちんぽでほじくられて、おなかの奥でひゅーびゅーされて精液まみれにされる幸せ……毎日いつでも意識して……ね☆」
「そんなのっ……」
「そうしてオンナとして完成していくのよ……殺伐としたことばかり意識したっていいことなんかないわよ? あなたの人生はあの日に変わったんだから……気持ちいいことや幸せなことに手を伸ばしていくのが、結果として魅力的なカラダになる秘訣なのよ」
「…………」
黒い肌とベアトリスの雪国育ちの白い肌に寄り添わせて、誘惑するように囁き続けるヒルダさん。
ベアトリスは俺に奉仕する女たちを見て喉を鳴らす。
「……タチ悪くないですかこの人」
ナリスの呟きは多分馬車内の多くの気持ちを代表している気がする。ベアトリスをどこまで落とす気なのか。
「……そう、ですよね……♪ 私も、アンディさんに……ご主人様に、奉仕、しないと……♪」
そして、ベアトリスよりもそそのかされていたのはネイアの方だった。
座席を立って、そっと俺と他の女たちが絡み合っている長椅子に近付いてくると、その豊満な胸をもてあますように両手で抱え、俺の足に擦り寄って胸をこすり付けてくる。
既に女の肌でもみくちゃの俺に新たな柔肌と乳首の感触が加わり……いや、むしろネイアは俺の体に乳首を擦りつける旅に切なげに目を細めて……。
これは……ネイアは俺の肌で乳首オナニーをしているのか?
「貪欲ですねーネイアさんも♪」
「よいではありませんか。雌奴隷として喜ばしい傾向ですわ」
テテスもオーロラも、そのさまを微笑ましげに見ながら俺への舌奉仕を続けている。
首輪以外の全ての肌を陽光に晒しながら淫らに蠢く女たち。
空を駆けながら、その快楽にじっくり浸る。
そして、片手でシャロンの乳を揉み、片手でオーロラの生尻を撫で回し、テテスに脇腹から抱きつかれ、膝をネイアの乳首オナニーに提供し、時々足指でそのネイアの陰部をつつきながら、ちんこはアンゼロスの口の中で大いに荒ぶり。
やがて、俺は青空を見上げながら気持ちよく射精する。
「お、おおっ……っ!」
「んぐ、んんっ……♪」
アンゼロスの口の中に、今日も精液は激しく吹き上がり、飲みきれるはずもない量が溢れてこぼれ、生臭い匂いが充満していく。
「そろそろ交代」
「わらわたちもかわいがってもらわぬとのう」
「御奉仕しますね……♪」
「ほらほら、ベアトリスちゃんも☆」
「え、やっ……私はっ」
「諦めろ。私ですら耐えられなかったんだ。そのうち……プライドなんてどうでもよくなっていくさ」
「あのですねアルメイダさん。私ですらとか言ってますけどあなた一般的に言ってものすごくチョロい側ですからね?」
「……な、何を言う。そもそも私はお前が知るより前からっ」
今までいたメンバーと場所を入れ替え、ルナやフェンネル、アイリーナらが俺にたかり、その後を追うようにベアトリス、ナリス、アルメイダも絡んでくる。
彼女らの裸体も、流れていく空の青と大地の緑に映え、美しい。
やがて暮れ始める日の光に目を細めながら、俺たちは飽きることなく絡み合う。
「思ったほど遠くはなかったなあ」
「ほ。砂漠を跨ぐような距離ならともかく、大した距離でもないじゃろ」
ハーモニウム郊外についたのは日が落ちる前だった。
砂漠東の草原地帯は広々としているが、ハーモニウムはその北の端に近い。北方軍団の拠点があるのだから当たり前だが、バッソンからそう極端に離れているわけでもないのだった。
「ライラは来たことあるのかここ」
「昔、旅をしていた頃じゃの。そう新しい都市ではない」
「まあ、そうか」
セレスタという国は歴史が浅いが、このあたりに人が住み着いたのはそれよりずっと古い。
都市自体はあったのだから来ていてもおかしくないのか。
「どうするのじゃ。今夜は野営か」
「とりあえずは宿を探そうか」
「ふむ。都合の良いところが見つかるとよいが」
「?」
ライラの呟きに首を傾げる俺たち。
……その意味はすぐにわかった。
「連れはエルフか。面倒はごめんだ、よそを当たってくれ」
「面倒って……そんな」
「うちは人間専門でずっとやってるんだ。オーガも獣人もエルフもドワーフもいちいち何くれとうるさいからね」
三軒の宿屋で異種族お断りされて途方に暮れる。
やんわりと断ってくるのもあれば、直截的ににべもなく言ってくるところもある。
トロットでもここまで異種族を毛嫌いすることはないんじゃないだろうか。いや、トロットはむしろセレスタの圧力に適応してるからこそ、ある程度は異種族を受け入れざるを得ないのか。
「ライラ、知ってたのか」
「昔から変わらんのう。ここらは異種族と見ると面倒な余所者と見る向きがあったからの」
「……泊まれないのかな」
「探せば泊まれる場所もあるはずじゃが。さて、どのあたりじゃったかのう」
「お前は当時も人間扱いで泊まれたんだろ」
「うむ。じゃから伝聞じゃの。昔とは地勢も違っておるかもしれんが」
ライラを先頭に、みんなでゾロゾロとついていく。
と、その途中でふとエルフを見かける。
「っと、いるじゃんエルフ。おーい、聞きたいことあるんだけどいいか」
「ん?」
気だるい雰囲気の女エルフだった。だるだるのローブを雑に纏っている。顔自体はエルフだから綺麗なんだけど。
「なんだい、わざわざ。あたしゃエルフだよ。街のこた人間に聞きな」
「いや、エルフの連れが多くてさ。エルフが泊まれるとこ知らない?」
「……なんだってエルフ連れてこんなとこ来るんだい。不便なのはわかってただろうに」
ぽりぽりと後ろ頭を掻く。
「ついてきな。悪いがエルフの口に合う飯はないよ」
「ん……ああ、助かる」
不思議な物言いをする女性だったが、案内してくれるというのでついていくことにする。
(続く)
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