連れ込み宿を出ると受付の婆さんに手を突き出された。
「刻限を過ぎたよ。追加20枚だ」
「……まだ空赤いじゃん」
「地平線に半分落ちたら日暮れだよ。ウチのルールさ。ギリギリまでチンタラとパコってんのが悪いよ。一発やらかすのにどんだけかけてんだい。若いのに小手先の前戯に時間掛けるようじゃ先が思いやられるね」
「……なんで初対面の婆さんにそんなこと心配されなきゃいけないんだ」
 実際一発じゃ済んでないんだけどね。
 あの後、興が乗るままにベアトリスに5発ほど中出しした。途中から明らかにベアトリスが意識朦朧としていたので、ほとんど伸びた状態のベアトリスに上から腰を打ち付けて楽しんだ。いわゆる寝バックという奴か。
 で、充分楽しんだのでベアトリスを起き上がらせようとしたら全然駄目だったので、その尻を備え付けのタライと手ぬぐいで始末しつつ、ゆっくり待っていたら時間になってしまったのだった。
 まだ処女喪失から片手で足りるほどしかエッチに臨んでいない相手に、少々ハードすぎたかな、なんて思いながらも、本人が誘ってきたんだからいいよな、と自分に言い訳していたものの、起きたらベアトリスはベッタリとなついて、腕なんか組んでいたりする。
「こんなのでモメたってしょうがないでしょ。払っちゃいなよパパ♪」
「まあ、そうだけどさあ」
「……パパ?」
 老婆が怪訝な顔をする。どうやらベアトリスの喋るヴァレリー語がわかるらしい。
「アンタの娘なのかい……?」
「そういうプレイなのでご心配なく」
 俺がベアトリスくらいの子供がいるとしたら、10歳くらいで仕込んでないといけないんだけど……あ、でもアップルがもうちょい積極的だったら有り得たかも知れないな。
 絶対俺、あの頃にセックス知ってたら、アップルに毎日種付けしてた自信がある。まあ実際毎日フェラとかパイズリさせてたんだけど。
 10歳のガキがおまんこ自由な美女なんか手に入れてたら絶対ドハマリするよね。うん。
 結果としてベアトリスと同い年の娘はいたかもしれない。
「何遠い目してんの」
「……ことによったらベアトリスくらいの娘も作ってたかもなあ、と運命を振り返ってる」
「アンタならありそう。すっごいエロい子供だったんじゃない?」
「かんぜんにあってる」
 とんでもなくエロかった。なんというか、そりゃ言いなりになるアップルを目の前にしたら、俺以外のガキだって空前絶後のエロガッパになるしかないと思う。
 そしてそれから十五年、あれだけの女体の味を知りながら、童貞時代は本当に長かった。
「でも俺、実は二年前までセックスしたことなかったんだけどな」
「おかしな冗談ね」
「いやホントにな? ディアーネさんとかアンゼロスとかに聞いてみるといい。本当だから」
「そんなわけないじゃない。どうやってそこから今の状況になるの」
「……そう思うよな」
 雌奴隷二十数名、誰彼構わずセックスしまくれる村一個。
 うん。おかしいよな。でもそうなんだからしょうがないじゃん。
 でも言葉を尽くしてもベアトリスには信じてもらえない気がするので、それ以上は言い募らなかった。

 夜になって、酒場に雌奴隷たちと一緒に席を取る。
 昔馴染みの酒場だ。ここはクロスボウ隊員がよく集まるので、ほとんど軍人御用達といった雰囲気がある。
 店主が俺たちの顔に気づいて眉を上げた。
「スマイソン十人長にアンゼロス十人長じゃないか。ディアーネ百人長はいないのかい」
「今ちょっと外国でね。面倒な仕事頑張ってる」
「あの人がいるとむさ苦しいウチの雰囲気も華やいだんだがねえ。いや、アンゼロス十人長もなかなかいいけどね」
「お気遣いなく」
 アンゼロスが少し諦めた顔で苦笑いする。
 男装を解いてからはあまり来てないんだよな。っていうか、元々あんまり酒飲まなかった。女と見破られるような隙を見せないためだったんだろう。
「一応、他にも女子隊員ちょっとずつ増えてるんじゃない?」
「ウチには来ないねえ。普通の女の子は人前で酒食らわないでしょ。ディアーネ百人長がすごかったんだよ」
「あー」
 まあ、酔った勢いで酷い目には誰だって遭いたくないよな。
 酒好きの女性もいるとは言っても、アクシデント大歓迎のツワモノか、護衛付きか、あるいはドワーフやドラゴンみたいに酒に酔わない自信があるか……ってのでもなければ、普通は酒場で人と飲み交わしたりしない。
 クロスボウ隊の新入隊員は、その辺に関しては常識的なようだ。隊の連中はそんなことしないだろうと俺は思うけど、それも希望的観測でしかないしな。
「で、この女性陣はなんだい。ディアーネ百人長に勝るとも劣らないウワバミ揃いなのかい。エルフ多いね」
「ま、普通の子がほとんどだよ。あ、こいつあの舞踏槍のアルメイダ。うちの連れになったんでよろしく」
「なっ、『あの』とはなんだ『あの』とは」
 アルメイダが少し心外という顔をする。が、店主は流石に知っていた。
「おおー。なんでスマイソン十人長と連れ合いなのかは知りませんが、お噂はかねがね。アフィルムで最も華麗なパラディンと聞き及んでますよ」
「あう……ま、まあ既にアフィルム所属ではないんだが」
「なんとまあ、その辺を是非お聞きしたいものです、あ、お近づきにどうぞ」
 店主はサービスでワインを出す。何かと噂好きというのは、酒場に勤めていればほとんど習性になるものらしい。
 アルメイダは困惑しながら左右を見渡し(他のガントレット三人がニヤニヤしながら見てる)、陶コップのワインを取って口をつけながら。
「まあ、主義の違いで国許とは何年か前に袂を分かったのだ。今は……」
 赤いガントレットに包まれた腕を見て、しばし考え込み。
「そこのアンディ・スマイソンの元で雌奴隷をやっている」
「おいアルメイダ、それは流れがおかしい」
「事実を言っているだけだろう」
「お、おやっさんちょっと冗談に驚きすぎ。コップ落ちた。そうじゃないアルメイダ、普通そこは『レンファンガスでガントレットナイツに』って流れだろ!?」
「それは私の中では既に前職なのだが」
「確かガードナー公爵だか誰だかと外せない契約したんだよね!?」
「それは確かに片付けないといけない案件だが、逆にその義理を果たしたら……その、雌奴隷としての仕事に専念しようと」
「おいスマイソン十人長。なんだこれ、どういうことだい。そういやクロスボウの連中はなんだかアンタについて不穏な言い草してることが多かったが」
「ま、まあ落ち着いて。結構複雑で長い話があるんだ。一晩で語るには少し長すぎるくらいの」
 俺は挙動不審になっている店主をなだめようとしたが、それをよそに、テテスやヒルダさんがビッと手を上げ、笑顔で。
「ここにいるの、私やこっちのおっぱいエルフさんやこっちのちみっ子エルフさんまで含めてみーんなスマイソン十人長の肉便器でーす♪」
「ダンナさんとかいるけどアンディ君にメロメロでーす☆」
「二人とも悪いけどちょっと黙っててくんない!?」
「に、肉便器……雌奴隷……?」
「おやっさん戻ってきて! あと多少語弊があるから! そうじゃない子何人かいるから!」
「ほぼ全員ですよね」
「あのねテテスちゃん、私何度も言うけどそういうのになった覚えなくてね?」
「はいはいナリスちゃんは仲間外れ。ナリスちゃんだけ仲間外れ」
「私だけじゃないし! そっちのベア子ちゃんとかも違うし!」
「ベア子?」
 ベアトリスが怪訝な顔をした。北西語の会話の中で、自分の名前が不当な略され方したのだけは伝わったらしい。
「でもほぼ堕ちてるしー。ねーベアトリス、ご主人様とセックスするの好きだよねー」
「馴れ馴れしくしないでよっ。……せ、セックスは……好きだけど」
 テテスの絡んでくる手から逃げながら、ベアトリスは無駄に素直な反応をする。
 やめなさい。昼間たっぷりヤッたのにまたヤリたくなるじゃないか。
「やれやれ。またセレンを怒らせないといいがのう」
「ほほ、まあセレンは予想しておったじゃろう。飼い主殿にたっぷり愛されて堕ちぬはずがない」
「流石です主様」
「まあ、アンディ様なら大抵そうなる」
 アイリーナとドラゴンたちはほとんど他人事。というか予想済みといわんばかり。
「そっちの猫獣人の子とかエルフのお嬢さんたちもかい……?」
 恐る恐るという感じで店主が指差す。ルナとフェンネルとネイア。
 ルナは果実酒を飲む手を休めて親指を立て、フェンネルとネイアは、まだ多少知らない人間に雌奴隷を自称するのに恥じらいがあるのか、赤くなって曖昧に笑う。
 店主はぽかんと口を開けて固まってしまった。
「ま、まあほら、いろいろあってね? 本当に色々あってね?」
 話せば納得してくれるはずだ。この人なら。
 ……と思いつつも、端々で結構耳を疑うことが起きていた俺の二年弱の話は信じてもらえるだろうか、と不安に思いながら、俺の身の上話が始まり……案の定、店仕舞いまでに語り終えられなかった。
「じゃあ何かい。結局お前さんはあのルーカス将軍やエルフの森の聖獣や至剣聖ボナパルトをやっつけたってのかい」
「う、うん、とりあえずここまでは前提として信じて欲しい」
「おかしな冗談言うようになったなあ」
「お願い、まだまだ割と序盤だからそれ」

(続く)

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