二種類の精霊と同時に交尾するリザードマンも俺ぐらいだろうなあ、とガッシュは思う。

 そもそも精霊と毎晩セックスするということ自体がまあ、まともではない。
 実体が実体でなく、見た目は普通の女に見えても本質的にはどんな生命活動も意味を持たない精霊とのセックスなど、幻と交尾するのと大差ない。
 が、ガッシュとヒーリィはそこに意味があると信じている。少なくともただの快楽ではなく、互いを繋ぎあう行為として、抱き合う行為に無上の価値があると思っている。
 だがブライトはどうだ。
 こんな行為に混ざって何の意味がある。
 ……などと考えたところで、ブライトもわかりはしないのだろう。
 ガッシュたちがブライトのことを理解できないのと同等に、ブライトもガッシュたちのことを理解できなくて、それゆえに体験で理解しようとしているのだから。

「どっちにしろ処女に突っ込むとなりゃ、ヒーリィに入れたまんまじゃ難しいんだよ」
「だと思った。ちんぽは2本でもそれを振る腰は一つだもんねぇ……」
 ヒーリィの溜め息を聞きながらガッシュはヘミペニスの片方を引き抜く。
 本来的に爬虫類の双根は二本同時に使うためにあるわけではない。
 ヘビやトカゲにはそもそも入れる穴が一個しかないし、それを二つ揃えて同時に犯す体勢はあまりにも無理がある。
 というか動物のメス二匹がそこまで一匹のオスとの交尾に協力的になることなど、ほぼ有り得ない。
 片方はスペアみたいなものだ。
 それを2個体同時に使わせようなどというのは、まさにリザードマンと人間系のメスの特権的……といっていいのかどうかには疑問が残るが、そういうセックスである。
「ガッシュはブライトに入れることに集中して。こっちはこっちで自分で入れるから」
「やるとなったら割り切り早ぇなお前……」
「……ブライトの邪魔が毎回入ったり、常にブライトの居場所に注意してガッシュとエッチする隙を窺う生活より、もう仲間に入れたほうが早いと判断しました。確かに二本あるから同時にすれば待たされなくて済むし」
「そんなにエッチが自由にできないのが不満だったのか……」
「何よ、ガッシュは不満じゃなかったの?」
「……まあ確かにちょっともどかしかったけどさ」
 ヒーリィの隣に寝たブライトはその小麦色の腕でヒーリィを抱き寄せ、その腰に足を絡めるようにして性器同士の距離を密着させつつクスクス笑う。
「仲、いいねえ」
「せ、生活習慣の問題よっ!! いつもそうなんだからしょうがないでしょ!?」
「ちっとも否定になってねえよなそれ」
 対するヒーリィもガッシュの腕に膝裏を乗せ、ガッシュの挿入に片足が邪魔にならないようにする。
 白い肌と黒い肌。多少育ちきれていない感じの肉体と、完成された肉体。
 ふたつの女体が絡み合ってガッシュを待つ。
 ガッシュは入り慣れたヒーリィの陰唇に目を向けつつも、ブライトの開ききらない陰唇に右のペニスを押し付ける。
 左の方はヒーリィが尻のほうから手を伸ばし、自ら位置調整。腰を押し出せばすぐにヒーリィの膣にも入ってけるようにスタンバイしていた。
 ガッシュを期待した目で見るブライト。早くしなさいよ、と目で訴えるヒーリィ。
「行くぞ。最初は多分痛いから……」
「処女膜あるかねぇ、私に。ヒトの話を見聞きしながらいつもそれが心配だったんだ」
「ヤッたことなきゃあるだろよ」
「……ごめんガッシュ。私もあったかどうか覚えてない」
 言われてみればヒーリィとは初対面でいきなり挿入中だった。
「じゃあ遠慮なく突っ込んで、血が出たらご愁傷様って方向で」
 ブライトが他人事のように言うのでガッシュは脱力した。
「痛いのはお前自身だろうがよ!」
「いやいや、慣れてない女の膣をムリヤリ犯すと男も痛いっていうじゃないか」
「ガッシュ、やめなよ……っていうかいい加減このポーズ恥ずかしいんだから放置しないでよ」
 これほど色々間違った3Pもないだろうなぁ、と思いつつ。
 ガッシュはぐいっと腰を押し進める。
「っく……」
「んぅっ……♪」
 二人の股間に、同時に侵入する。
 今の今までガッシュの淫棒にほぐされていたヒーリィの膣は、まったりと甘く出迎える。
 そして、恐らく初めて男を受け入れるブライトの膣は、ガッシュの逸物を握り締めるように固く力が入り、潜り込みにくい。
「おいブライト、力抜けっ……」
「こ、この違和感は予想以上だね……」
「逃げないでよブライト、せっかくガッシュ棒片方貸してあげたんだからね……!?」
 ガッシュとブライトは腰に、ヒーリィは無意識に体を逃がそうとするブライトを押さえつける腕に。
 それぞれ力を入れつつ、挿入の数十秒を力んで過ごす。
 焚き火がパチッと爆ぜる。冬なお賑やかな湿地帯の虫たちが、無言でリザードマンの侵入に悶える精霊たちにエールを送る。
「……っと、入ったぞ……多分」
 少しずつ、重石を押すようにしてブライトの柔肉に分け入ったガッシュは、腰と腰の密着を感じてそう宣言する。
 あまりにも慣れていない力の入りように、濡らし直した方がいいんじゃないかとも思ったが、なんとかなったのでよしとする。
「……こ、これは、すごい、なんというか……存在感、だね」
 ブライトが少し震えながら自分の下腹部を触る。
 反対に、ヒーリィはうっとりと自分の腹を撫でた。
「慣れると……これが自分の完全なカタチ、って思えてくるよ……♪」
「完全なカタチ……?」
「うん。ガッシュのちんぽがココに入って、初めて私は本当の私なんだ……って♪」
「勝手に人のチンポを自分のパーツ扱いすんな」
「もう。それぐらいカリカリしないで喜びなさいよ、せっかく運命の女が自分のチンポで禁断症状起こしそう♪ って言ってるのに」
「い、いや、多分それ言ってないと思う……」
 痛みに震えながらツッコミを入れるブライト。
 なんとも締まらない構図である。
「ブライト、力みすぎだ。力抜け」
「そんなこと言っても……串刺しにされて力を抜けって言われても難しいよ……」
「女の体は男のチンポ入れるためにできてるんだから、そんなに力むことないのに」
「……精霊の具象体は本当にその範疇なんだろうか」
 会話だけ聞くと互いに性器を交わらせあっているとは思えない。
 しかし、あまりにも痛々しいブライトの挙動は、ガッシュに次の動きを起こさせるには充分だった。
「ヒーリィ。ブライトの乳でも揉んでやれ」
「なっ……」
「えー」
「俺はこっちをいじってやる」
 ガッシュはブライトの尻をいやらしく撫で、そのままジワジワと尻穴に指を這わす。
「っっ!?」
 ビクッとするブライト。
 躊躇しないで裸のまま男の前に現れるなど、あれだけ大胆でいながら、性的なことに全く慣れていないその反応にガッシュは密かに興奮し始めている。
 ガッシュ自身がブライトの巨乳を揉みしだいてやってもいいが、体勢的に片手を使うのが限界だ。それなら尻穴を脅かすほうが効果的。
「しょがないなぁ……今回だけだかんね?」
 ヒーリィはいやらしい手つきでブライトの褐色の巨乳を持ち上げ、ギュッと握る。
「い、痛っ……ガッシュも、そこはっ……!?」
「ヒーリィはケツ穴もイケるんだ。お前にもそのうち入れさせてもらうぞ」
「へへー。ガッシュの二穴突き、すっごいんだから。未だに気絶しちゃうし♪」
「む、胸、離して……ひゃうっ!?」
 今度はブライトの淫核をもいじり始めるヒーリィ。
 そうかと思って身を固くすればガッシュの細い舌がブライトの耳をチロチロくすぐる。
「ふぁ、あぁあっ!?」
 熟れたスタイルの割りに未発達な全身の性感を二人に満遍なく攻められ、否応なく膣から意識を散らさざるを得ないブライト。
 そこを、虚を突くようにガッシュが一突き。
『きゃうっ!♪』
 ヒーリィと声が揃う。
 また身を固くしてしまうが、再び始まるヒーリィとガッシュの全身攻撃。
 そして、少しガードが緩んだ瞬間にガッシュの一振り。
 それが幾度も続くうち、次第にブライトは快楽に翻弄されていく。

 いつしか、ガッシュは全力で腰を振ることに集中していた。
「は、あぁ、あああ、あひあああっ!」
「が、ガッシュぅっ、ガッシュぅぅっ♪」
 二股のペニスが身悶える二人の膣を蹂躙する。二つの子宮口を一度にノックする。
 降るような星空の下、ハーフエルフの姿をした水の精霊は愛するトカゲの子種を全身で望み。
 ダークエルフの姿をした光の精霊は身を焦がす快楽を初めて味わい、瞳を霞ませて絶頂を探す。
 その双方にガッシュは白濁の同時注入を開始した。

「んぅ、あ、あっっ……く、熱っ……んああああッ♪」
「出てるっ……やっと、ガッシュのせーえきっ……わたしのなか、でてるよぅっ……♪」

 二人がソレを全身を震撼させつつ受け取り、脱力する。
 ガッシュはその異様な征服感に満足して、二人の髪を撫でつつ大きく息を吐く。

 焚き火が小さくなり、焚き木の追加を求めている。
 ずるりと二人から逸物を引き抜き、その中から糊のように濃厚な自分の精液が漏れ出てくるのに満足しつつ、ガッシュは焚き木の追加をする。
「……朝までは持たないな」
 野営の前に集めた焚き木の量を見て不足を見て取ったガッシュは腰布を巻きつけた。
 リザードマンの身支度は簡単でいい。


 暗さに苦労しつつ薪拾いをしていたガッシュは、不意の背後からの光に驚き、咄嗟にトマホークを二本まとめて腰から抜く。
 腰を落として振り向くと、裸のまま、内腿に白濁を垂らしたままのブライトだった。
「暗いので手助けをと思ったけれど、いらなかったかい」
「……助かる」
 トマホークを腰に収める。
「薪拾い、手伝ってくれるのか」
「水浴びの後でね。実に刺激的だったよ、さっきは♪」
 微笑む。
 この大人びた光の精霊の微笑みはあまりにも無邪気で、魅力的だ。
 その体の快楽を知ってしまったガッシュは、ほんの少しだけれど彼女にも逸物が反応し始めていることに驚いた。
 彼女はすぐそばの川に入っていく。

「……彼女の核元素は水。あの真銀の水筒か」
 ぼそりとブライトが呟いた言葉に、ガッシュは不意にゾッとした。
 荷物を調べられている。
 ……ヒーリィを「こぼす」気か、と一瞬最悪の想像をしたのだった。
 そこにどんな得があるのかはわからないが、ブライトは同じ精霊、ガッシュから彼女を解放しようとしていたとしてもおかしくはない。
「だからなんだ」
 ガッシュは固い声で返事をした。
 ブライトはしばしの無言。水音の後に、ガッシュに振り返る。
「君は、ヒーリィがどんな存在なのか、どこまで知っている?」
 魔法の光の下、豊満な体を隠そうともしないダークエルフのような女がガッシュを見据える。
「水の精霊だろ。水を自由に操れる、核元素によって固定された意思あるチカラ」
「……他には?」
「それだけしか知らねえよ。正直、その言葉もあまりよくわかっちゃいないが」
「だろうね。……君は、君と出会う前のヒーリィの話を聞いたことは?」
「……ない」
「うん。そうだろうと思った」
「……何か、知ってるのか、アイツの過去を」
 意味深な言葉を紡ぐブライトに、注意深くガッシュは問いかける。
 ブライトはあっさりと首を振った。
「全然。違う元素の精霊同士が互いを追いあうことはないし、干渉もしないよ。意味がない」
「……? じゃあ、なんなんだ、今の質問は」
「確認しただけさ。……精霊と愛し合う男の認識を」
 再び水を救い、身に浴びて。
 ブライトは少し真剣な目で、ガッシュに向き直る。
「積み重ねと、永遠の存在は相性が悪い」
「?」
「君は、不思議に思うことはないかい?」

「彼女がひどく忘れっぽいということを」

(続く)

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