ブライト・ライトと名乗った美女は芝居がかった仕草で、砂漠の町に襲い掛かったサンドワームの群れを全滅させてみせた。
人知れず、遠近関係なしに光を操り、一匹残らず。
「この町に安息を。恋人たちに充実した夜を」
「なんか言葉のセンスがアレだなこいつ」
リザードマンの呟きを右から左に聞き流す、ダークエルフの姿をした光の精霊。
「おいヒーリィ、こいつ本当に精霊か?」
「う、うん、なんか感じとしてはすごく精霊っぽくはある……けど」
「いやだねえ、魔法であんなことができるのなんて精霊以外にいると思うかい?」
ブライトの言う通り、少なくともセレスタ軍の魔法使いには、魔法そのもので直接サンドワームを殺傷できる者はまずいない。
光を発生させる魔法も炎を発生させる魔法もあるが、戦闘におけるウェイトとしてはそれはあくまで補助である。
発生できる力の限界を考えた場合、加熱した剣や矢、目くらましの光として使うのが正しく、結局は幻影魔法が戦場の主役となってしまうのだ。
光を収束させて分厚い皮に覆われたサンドワームを八つ裂きなんて、それこそ百人級の祈りと宗教司祭の専門技術による制御が必要な領域である。それを平気な顔でやってのけた彼女がただのダークエルフでないのは明白だった。
が。
「それでは恋人たちよ、続きをお楽しみください」
「何故そんな期待した顔で俺たちを見る」
「やだねえ、私は精霊だよ? 祝福する役だよ? 素晴らしい夜を願うのは当たり前さ」
「だからなんでそんな当然の如く俺たちを尾行するんだよ!」
「尾行なんて人聞きの悪い。旅は道連れ世の情け。夜はまだまだ始まったばかりじゃないさ。……さあ水の精霊、君も彼とエッチしたいだろう? 年にたった2度、国中上げての性愛を祝福する夜だ、誰にはばかることもないんだよ? 君たちがやらないで誰がやるんだい」
「ま、まあ、それは……うん、今夜に限ってガッシュが乗り気じゃなかったらショックだけど」
「おいヒーリィ、何丸め込まれてる。こいつ宿までついてこようとしてるぞ。多分タカリだぞ」
不信感を露にするリザードマンと、芝居がかったポーズで異様にエロスを賛美するダークエルフ、言われてみればと乗り気になりかけるハーフエルフ。非常にアンバランスな三人である。
サンドワームとの激戦から引き揚げ始めた憲兵隊他の戦士たちの目もあり、ガッシュはリザードマン同士にしかわからない表情で少し苦い顔をし、改めてブライトに向き直る。
「……ちっ、わかったよ。助けてもらった礼だ、一晩ぐらいは宿代奢るさ」
「ははは、そこまでしてくれなくてもいいんだがそう言われては受けないわけにもいくまいねえ」
「…………」
なんと胡散臭い女だ、とガッシュは思ったが呟かなかったのでセーフである。リザードマンの本心は悟られ辛い。
「ね、ガッシュ」
「あん?」
久々に使ったトマホークの手入れと、荷物の整理をしていると、ヒーリィがそばによって来る。
「まだ夜明けまで結構あるよね」
「そうだな……」
トマホークを2本揃えて、革と鎖で封印する。抜き身で荷物に入れておくわけにはいかない。
久々に全身の反射神経を使い、昂ぶった心を、ガッシュは癖で呼吸によって静めようとする。
リザードマンや獣人に限らず、戦いに猛った心は誰しも容易には消せない。
その余った勢いが無用の暴力や略奪、先走りや深追いといった外の道に向かぬように、心をコントロールする方法は戦士が正しく生きていくために必須の技術であり、生来戦士階級であるガッシュにとっては身に染み付いた習慣だった。
が。
「……昂ぶってるね、ガッシュ」
「まあな。もう少し待て、まだ気が落ち着いてない……おい」
せっかくガッシュが老師に習った、深度を厳密に決められた順序で繰り返す呼吸法を試みている最中だというのに、ヒーリィはガッシュの太い膝に身を倒したかと思うと腰布をめくってガッシュの股間をまさぐっていた。
リザードマンは人間のような覆うタイプの下半身用衣服は尻尾や筋肉の形状の問題で難しい。だから長めの腰布で下半身を軽く覆う程度で、めくればすぐにリザードマンの特徴である2本のペニスが出てくる。
「……うん、どんどん血が巡ってきてる……あむ」
「しゃぶるな馬鹿」
「えー」
今夜はオーガとの相撲、酒盛りからサンドワームとの遭遇戦、なんか変な光の精霊と、予定外の事が多すぎた。
血の気の多いガッシュは、自分の血の気が多いからこそ、非常事態が重なったときに冷静になる大切さを知っている。
勢いづいて浮ついた部分が少しでも尾を引いていると、思わぬ失敗をしてしまうものなのだ。
だからこそ自分の状態を一旦最低の活動レベルに下げることが肝要だというのに。
「せっかく勃ちがいいのに静めちゃう事ないじゃない……」
ちゅぽ、ちゅぽっと2本のペニスを美味しそうに交互に吸うヒーリィ。
決して美味いものではないはずなのだが、あれから毎晩盛り上がっているうちに口での奉仕は強制するまでもなくなってしまっていたのだった。
だが今はよくない。腹の奥に暴力の火種が残っている。
ヒーリィと出会い、あれからすぐに軍を退役したので、こんな状態でヒーリィと交わるのは最初のとき以来になる。
あの時は体力的にも精神力的にも枯渇寸前で、ヒーリィのような人間族の女(というか精霊だが)との性交の経験もなかったのであれで済んだが、ヒーリィの体の隅々まで知り尽くした今はどうなってしまうのか予測もできない。
「だ、だから、そういう昂ぶりとは別のものだから下手に刺激すると……っ」
「ん……んん、むんんっ……っ♪」
ヒーリィは聞いていない。
片手で一方のペニスを柔らかく激しく擦り立てながら、もう片方を熱心に口でしゃぶりつけている。たまに左右のペニスを持ち替えるので両方にヒーリィの唾液が満遍なく絡み、いやらしい音と吸い抜かれそうな快楽がガッシュの思考力を奪っていく。
それと反比例するように雄々しさを増すヘミペニス。力強くそそり立つそれにヒーリィがうっとりした鼻声を出した。
「ん、ふぅっ……んぷっ、えへへ……ガッシュ、やる気になってきたあ……えへへへっ。だって今夜は、私が慈しんであげるって……恋人たちの夜だって、言ったもんね……♪」
「ヒーリィ……!」
「ガッシュの恋人だもんっ……私、ガッシュの……っ」
「うおおお!」
2本のペニスをまるで目移りしてしまう高級菓子のように夢中で吸いたてる精霊の姿に、ガッシュのテンションは後戻りができないところまで盛り上がってしまう。
その思考に油のように染み付いた破壊衝動をなんとか制御しようとしつつも、ガッシュは心持ち乱暴にヒーリィの体を持ち上げて寝台に投げ出し、その身を覆う衣服を強靭な指でビリビリと裂いて捨ててしまった。
「きゃ、が、ガッシュっ……!」
「はあっ、はあっ……!」
他の人間族やエルフを見ても欠片ほどにも欲情はできないガッシュ。だが、何故かヒーリィの肉体は何度見ても血が滾る。
この細い首がガッシュの精を喜んで嚥下し。
この、不自然に大きくはないながらもたわわな乳房がヘミペニスを捕らえて扱き、時に両の乳首を尿道に擦りつけてはおどけてはにかみ。
この華奢な腰の、この柔らかい胎が幾度となくリザードマンのシロップのような濃厚な精で満ち溢れ。
この柔らかい尻の真ん中の孔さえ、ガッシュの精の味を知っている。
毎晩のようにガッシュに犯され、痛がっていたのも今は昔、今ではこの野蛮なトカゲ男の性欲の発露に自ら喜んで身を任せるようになったこの少女が、恋人たろうとして今こその交尾を求めている。
その事実が、ガッシュの理性を狂わせる。
「ガッシュ、あっ……そんな、おっきくっ……!」
「ヒーリィ……ヒーリィ、ヒーリィ!」
自らがつけた安直な名を何度も叫びながら、ガッシュはその無骨な手で少女の足を割り開き、忙しなく無様にモゾモゾとにじり寄ってヘミペニスを挿入しようとする。
ヒーリィはあまり濡れていない。しゃぶっていただけだから当然だ。本当はガッシュの細い舌でヒーリィの性器を隅々まで味わい、一度イカせて力が入らないようにしてから犯すのがいつものパターンなのだが、今はそんなことを悠長にしている心の余裕はない。
すぐにでもヒーリィにねじ込んでしまいたい。
自分のペニスが目の前のヒーリィに入っていないなんて耐えられない。この美少女の粘膜に包まれていないと安心できない。
ガッシュはもはや理不尽ともいえるそんな熱情に駆られて、ヒーリィの穴ににじりよる。
そして、2本のペニスを、性器と肛門に同時に突き刺した。
「あいぃっ……が、はぁっ……!」
「うお、おおっ……あ、あったけえ……っ!」
「ガッシュうっ……」
濡れていない穴への無理やりの侵入は、ヒーリィの顔を歪ませる。
だがヒーリィは痛そうな顔はしても、ガッシュの無茶を拒みはしない。二穴同時挿入なら何度かしていたし、ガッシュを煽った時点でそれぐらいは覚悟していたのだろう。
それでも、ガッシュとひとつになりたかった。ガッシュの激しい劣情に晒されて、愛情を返して、自分たちが溺れ合う恋人同士だと体で感じたかったのだ。
そんなヒーリィの熱情が伝わってきて、ガッシュはヒーリィの二穴の中でビクンビクンと悦びを表し、抽挿を開始した。
「あ、あぁ、くっ……あっ、っはあはっ、が、がっしゅっ……!」
「はぁっ、はぁっ……ヒーリィ、あったかいぞ、気持ちいいぞぉっ……お前の腸と子宮、最高だぁっ……!!」
「…………が、がっしゅのちんぽも、おっきくて、男らしくてっ……♪」
「おおおおおっ!」
苦しげに悶えながらも懸命に微笑むヒーリィに、ガッシュは咆哮しながら発奮する。
先汁がちょっと溢れて、ヒーリィの中を汚し、少し抽挿が楽になる。
それに合わせてヒーリィの笑顔も愛から来る痛々しい演技ではなく、本物の快楽と肉欲に染まっていく。
例え物理的に不死たる精霊の具象体でも、痛みと快楽は人に沿い、だからこそ本物の喜びとして感じられるのだった。
「ヒーリィ、出すぞ、出すぞヒーリィ、子袋とケツ穴ザーメンでドロドロにすんぞっ!」
「はぁっ、ガッシュぅっ♪ ガッシュ、ガッシュううっ♪」
ヒーリィはガッシュの乱暴になるばかりの抽挿にガクガクと翻弄されながら、霞がかった瞳でガッシュの名を呼び、歓喜を表現する。
水の精霊として漂うように生きてきた彼女は、こうしてただひとりの男と熱情をぶつけ合うことの喜びにすっかり心の奥底まで染まりきっていた。
もう離れられない。離れたくない。
堕ちたと言われてもこのリザードマンといつまでも濃厚に愛し合い、執拗に犯されていたい。
そんな、彼女の本性がその姿に、その表情に表れて、
「ふうむ、すごいねこれは……」
「!!」
「!?」
いつの間にかベッドサイドにしゃがみこみ、上気した顔で顎を撫でながら食い入るように見ていたダークエルフの声で硬直する。
二人とも極度の驚愕に全身を強張らせ、ついでにその状態のまま射精が始まってしまった。
「ぶ、ブライト!?」
「なっ、なんであんたそんなとこで見てんのよっ……!?」
「いやほら私精霊だし。核元素が近くにあれば壁とかあんまり意味ないし。あと個人的にセックスする精霊って見てみたくて」
しれっと言う美女に、繋がって射精を継続したままリザードマンと水の精霊は拳を振り上げて抗議する。
「自分でやればいいじゃないっ!」
「覗くにしてももっと穏便にしろよテメエ!」
「が、ガッシュってば覗かれるのはアリなの!?」
「いやできれば覗いて欲しくはないけどお前の喘ぎ声だとほら、気にするなって言ってもたまに無理なときあるし」
「……う、うー」
「はいはい、ごちそうさまです」
ブライトは手を合わせた。
「……でもそれほど気持ちがいいのかい?」
「……正直たまに、このまま本当にハーフエルフに生まれ変わってガッシュと死ぬまでエッチしてもいいかなって思う」
「いきなり転生すなアホ」
なおもしつこく残滓を膣奥と直腸に吐かれながらデレデレなことを言うヒーリィと、ポカンとその頭を叩くガッシュ。
ベタベタに愛し合いながらも、妙に決まりきらない二人にブライトは苦笑する。
ペロリと舌なめずりしたのは二人には見えていなかった。
精霊祭の夜がもうすぐ終わる。
恋人たちの特権の夜が、明けていく。
(続く)
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