赤の氏族庄から徒歩や馬車だと数日かかる聖獣迷宮も、ライラの翼にかかれば何時間とかからない。
「ブラックドラゴン……えっとつまり、ドラゴンは二匹……ドラゴンライダーが実は二人……?」
 ライラの背に乗って飛びつつ、ブツブツと散漫なことを呟いているネイアに、幻影のちびライラがクスクスと諭す。
「ほ。竜の盟約では同じ正義を二竜が奉じてはいかん……とは示されておらん。……否、同じ男の、別の面を愛しておるのかもしれんがな」
「え、でも……いえ、男っていうことはやっぱりスマイソンさんが……?」
「うむ」
「……え、ええっ……でも、スマイソンさんは……ええと」
「我らが望むは力にあらず。我らが望むは理屈にあらず。我らが望むは、絆にあらず」
「?」
「ただ、竜が乗り手を決めるのじゃ。ドラゴンライダーとはそういうもの。……力なきは資格なきか、否。理屈の立派さは竜を伏し得るか、否。絆の多寡が乗り手の質か、否。……忘れるな、間違うな、竜は資格で乗り手を選ぶのではない。強く優しく美しければそれで全ての竜が従うなどということは有り得ぬ。英雄でなく、権威でなく、ただ、竜の心が永遠の決意をする、それだけじゃ」
「え……ええと……?」
「アンディ・スマイソンは、弱く、愚かで、幼く、我らと暮らして長いわけでもないが、見せた生き方は二頭の竜を従えた。事実はただそれだけじゃ。ドラゴンライダーにそれ以上の前提はいらぬ」
「…………」
「ほ。そなた、勇者と言ったか。……竜を従えるのはさぞかしの英雄、さぞかしの貴人と思っておったか?」
「あ、いえ……その、まあ」
「強きものにさらなる加勢はいらぬ。俗世の高貴に竜はひれ伏さぬ。学の高きに竜は関わらぬ。ただの愛情に儀礼など無粋じゃ」
「それなら、なぜ彼に……?」
 ちびライラは微笑んだ。
「後悔せぬと、思えたからじゃの」


 聖獣迷宮の近くに着陸する。
「ようこそ。前に来てから随分早いな」
 遠くから飛んでくる俺たちの姿を見つけていたのか、いち早く一角馬でディエルが出迎える。
「スマイソン殿と森めぐりの道中じゃ。赤の氏族領に来たはいいが、氏族庄の近くには面白いものが思いつかなんだ」
 しれっとアイリーナが言う。ディエルは苦笑した。
「そりゃ、金や銀に比べれば……ウチの氏族庄は面白くはないかもな」
「そこで、ついでじゃから聖獣の顔でも見てから次に行こうと思うたのじゃが。途中でライラ殿らと会ってな」
「なるほど。……ま、茶の一杯ぐらいは出そう」
 デイエルが一角馬で引き返していく。
 俺とアイリーナ、そしてライラとディアーネさん、オーロラとネイアは、ぞろぞろとそれに続いた。

 キャンプでの歓迎もそこそこに、俺たちは聖獣迷宮(の上の草原)へと赴く。
 そこでは、多くの若いエルフたちが語らい、ハープや笛を奏で、あるいは剣術や弓術の鍛錬に励んでいた。
 迷宮前のキャンプの中よりも開放感があり、ブレイクコアからいろいろ学ぶこともできる。彼らにとってはある意味で理想的な場所なのかもしれない。
「おーい」
「よく来た。遠くからも見えていたぞ」
 ブレイクコアが駆け寄ってきて、俺やアイリーナと握手する。
 本当に嬉しそうなので、こっちもちょっと嬉しい。
「それで、どういう用事でここに来たんだ? いつまでいられる?」
 嬉しそうに聞いてくるブレイクコアに、これまでの顛末を説明する。いや、さすがにどこでエッチしたとかはぼかしつつ。
「そうか……」
「明日には白の領地に行こうかと思う」
 アイリーナの言葉に、少し残念そうな、それでも明日まではここにいるから嬉しい、とでも言うような複雑な表情をするブレイクコア。
 そして。
「い、一応伝え聞いたことはあるのですが、本当に居たのですね、聖獣……!」
 ある意味で世間知らずのネイア、興奮。
「あ、あの、すごく強いって言うのは本当ですか? 不死身という話も……」
「私が今すごく強いかどうかは微妙だな、全盛期に比べたら半分程度だ。不死身というのは本当。まあ、そう簡単には殺されない自信もある。手合わせでもするか?」
「そ、それはいいです。ええと……あと何千年も生きているというのは? 噂では獣人共栄圏の時代やジオロードの時代も経験しているとか」
「そういうのがあるというのを聞いたことはある。けど危なくなるとすぐエルフが森を閉じてしまったから、知っているとは言いがたいな」
 なんだかやたらといろいろ聞いているが、俺はネタ半分もわからない。
「意外と勉強家だな、ネイアは」
 ディアーネさんは感心していた。
「何ですか獣人共栄圏とかジオロードとかって」
「千年以上昔、そういう国家形態があった時代がある。……まあ、一般市民には伝承さえ残っていない時代の話だ。ネイア、よく勉強しているな」
「……私にとってはトロット王国やエルフの森だって伝説の時代の話だったんですよ?」
「ああ……」
 カールウィン王国では三百年前に世界は滅んだことになってたんだっけ。
 魔物領を隔てたこっちの世界の話は、その辺全部ひっくるめて歴史の勉強だったわけだ。

 夜。
 前の熊鍋の時よりは随分とささやかに、それでも十数人のディエルの側近が出張ってきての宴会が、草原の星の下で催される。
 そして、その宴会も無事に終わり、気を利かせたディエルたちが早めに引っ込んだ後で。
「さて、アンディ」
「うむ。スマイソン殿、夜はまだ長いぞ?」
 月明かりの下、二人の白い髪の女が、妖しい目つきで俺に擦り寄ってきていた。
「夜になったらとりあえず、って感じで迫っちゃうのもどうかと思うんだけどなー」
 口ではしおらしいことを言いながら、手は自然とブレイクコアの髪を撫でている俺。
 梳く指への反応で、ブレイクコアのやる気が確かなことを確認すると、俺はおもむろにおっぱいに手を伸ばす。
 はい、ごめんなさい。最初からその気でした。
「……っていうか、幻影結界張った?」
「一応は、の」
 アイリーナが俺の手を服の中に誘い込みながら、恥ずかしそうに頷く。
 そう。ディエルたちが引っ込んだとは言っても、岩ひとつ隔てたところでネイアとディアーネさんは歴史や天文の話題でまだ話している。オーロラやライラはいいとしても、ネイアは巻き込めない。
 いや、目の前でルナとかとエッチして見せたこともあるけどさ。
「まあ、完全欺瞞幻影じゃないのがちょっと心配だけど」
「わらわの腕を疑うのか」
「……正直魔法の腕に関しては疑う疑わない以前によくわからない」
「むう」
 まあ、ネイアも魔法がどれだけできるのかよくわからないので、信じるにしろ信じないにしろ材料が足りないんだけどね。
「ま、見るなら見せてやればよい……んっ」
 アイリーナの服の腋から、薄い胸を直に触りつつキス。
 そして唇を離し、もう片方の手で胸を揉んでいるブレイクコアにもキス。
「んっ……君は、両手に女を抱いた欲張りなポーズが好きだな」
「いい女が二人いて、両方抱かせてくれるっていう喜びを噛み締めてるんだ」
 まあ正直罰当たりというか、わがままな構図だというのは理解している。
 ……が。
「ほ。二人で充分と申すかえ?」
「わたくしもあなたに初めて抱かれてからこっち、拒んだ覚えはありませんわよ?」
 ディアーネさんたちから隠れている岩の裏から、計ったようなタイミングでにゅっと現れるライラとオーロラ。
「……って、幻影は」
「我を誰と思うておる」
 ……生半可な幻影魔法ではドラゴンには効かないか。
「むぅ」
 術をあっさり破られて渋い顔のアイリーナ。
「で、できれば私に譲って欲しいのだが。アンディがここに来た時しか、私はねだれない」
 ちょっと必死なブレイクコア。
 しかし闖入者二人、にっこりと満面の笑み。
「ほほ。この男を侮るでないぞ?」
「四人程度でアンディさんが音を上げるものですか」
 ……いや、うん、そりゃ確かに一人一回二回なら四人ぐらい平気だけどさ。
 ええい。
「よっし、受けて立ってやる」
 どうせ元々、追っかけてきた時点で「自分たちも混ぜろ」という要求は見えていたんだ。
 なら、細かいことを言ってもしょうがない。
「ブレイクコア、脱げ!」
「あ、ああ……」
「そしてアイリーナも脱げ!」
「ぬわっ!?」
 ブレイクコアは脱ぐに任せ、アイリーナは自分の手でひん剥いていく。
 次々に月光の下に現れる二つの裸体。
「ライラとオーロラも脱いでこっちに来い!」
「ほ。飼い主殿らしくなってきたのう♪」
「こういうのも嫌いではないですわ♪」
 いそいそと、それでいて妖艶に服を脱ぎ落としていくライラとオーロラ。
 その二人を四つんばいにさせる。

 月夜の草原にエルフと人外娘の白い尻を並べた。
 背格好も雰囲気もバラバラの、ただそれぞれに抜群のスタイルを誇る裸体。
「ブレイクコア、もっと腰を突き上げて」
「ん、はうっ……ま、まるで獣のようだな……♪」
「獣だろ、聖獣」
「……違いないな。君の雰囲気も、飢えたオスそのものだ……♪」
 言葉だけ聞くと冷静そのもの。だが声を聞けば高揚するのを必死に押さえるかのようなブレイクコアを、おもむろに後ろから犯した。
「ひぅ、んっ……!! は、入ったっ……」
「ああ、入れた……ああ、入れたぞ、奥までっ……!!」
「うんっ……ああ、やっぱり、嬉しいっ……君が入ってくると、ひどく嬉しくて、胸までいっぱいになるっ……♪」
「っく……!」
 四つんばいで背を丸め、腕と腋の間から俺に蕩けた顔を見せるブレイクコア。
 逆さまのその顔を見ながら、俺はゆっくりと腰を動かし始める。
 さやかな月光の下、心地よく厚いその肢体を後ろから掴み、腰を叩きつける。
 四つんばいのまま、ライラもアイリーナも、オーロラも、髪を振り乱して悦ぶブレイクコアにうらやましそうな視線を送る。
 うずうずと待つ三人の股間に、蜜が垂れ始めるのを横目で確認する。
 ああ、あっちも犯したい。
 アイリーナの小さな尻、ライラの豊満な尻、オーロラのすらっとした心もち細い尻。
 俺のちんこを想像して涎を垂らしている尻を、早く犯したい。
「……よし」
「あっ……」
 そこそこに突いたところでブレイクコアの尻からちんこを引き抜く。
 そして、隣の小さなアイリーナの尻を掴んで、その秘部に挿入。
「ふあっ……♪」
「わ、私に、流し込んではくれないの……?」
「後でな。今はいろんな尻がうまそうに見えちゃって」
「……やっぱり君は、欲張りだっ……待ってるから、早く来て……♪」
 未だ満足していない尻を振って情欲を主張するブレイクコアと、その狭い膣で存分に俺を楽しませるアイリーナ。
 その膣もひとしきり突き、次の尻へ。オーロラの尻へ。
「はぁっ……あ、アンディさんのおちんちんっ……♪」
「なあ、なあオーロラっ……お前が、北の森のっ、こんな迷宮のそばで、人間に素っ裸にされて嬉しそうにケツ振ってちんこ咥えこんでるなんて、一大事じゃないかっ……!?」
「ふふっ……もちろん、一大事ですっ……兄が知ったら、すごいことになってしまうでしょうね……♪」
 俺の挑発するような蔑むような言葉に、オーロラはあえて微笑を返す。
「わたくしとっ、白のアイリーナ様とっ、砂漠のドラゴン、聖獣っ……!! これだけの女を一度に、好きなように使って射精するなんて、後にも先にもアンディさんだけの特権ですわっ……♪」
「ほほ、その贅沢、我も使わぬと完成せぬぞ……? そら、この胎も使え、我が主人よ♪」
「言われなくても使ってやる、この変態ドラゴンっ!!」
「んふっ……♪ 良い、そなたの男らしい突きが我をねじ伏せておるっ♪」
「うおお、お、おっ……く、ううっ……まだまだっ!」
 オーロラからライラへ。そしてさらに次の尻へ。
 ……ん?
「……あ、あれ?」
 更に横にずれてみるとまだ尻がある。
 勢い任せに掴み、突っ込んでしまってから、ソレがおかしいということに気づく。
「え、あ……?」
「ん、ふっ……どうした、アンディ?」
「……い、いつの間に?」
「ふふ。暴れ過ぎだ、もう少し声を抑えないとな♪」
 ディアーネさんがいつの間にか端っこに加わっていた。
 ディアーネさんだったことに何故か安堵し、ホッとしながら一分ほど腰を振って。
 そのまま、ディアーネさんの中に射精。
「はぅっ……熱、いっ……♪」
「わらわにも出さぬのか……?」
「わたくしにもいただきたいですわ」
「私も……せ、せっかくだ、一度くらいは流し込んでいって欲しい」
「ほほほ、大人気じゃな。無論、我の中で我慢ができなくなっても問題はないぞえ♪」
「あーもう、逆順で犯すからな! 覚悟しろ、みんなケツ突き上げろ!」
『♪』
 俺は勢いに乗ってどんどん犯し、次々に種付けしていく。
 青白い光の中、広い草原なんていう幻想的なシチュエーションなのに、妙に賑やかで楽しそうな女たちに、ただひたすらに汁を流し込みまくり。


 なんか忘れてるとは、思った。


「…………」
 朝方、ネイアが岩の裏で鍔広帽子を顔に乗せて寝た振りをしているのを発見した。
「……ネイア」
「……ぐー」
 見事にバレバレの寝息が聞こえてきた。
「ついでにやっちゃおうかな……」
 不穏なことを口にしてみる。
 ビクッとネイアが怯えたのがわかった。
 ……いやいや、ネイアいじめてもしょうがない。しょうがないのだ。
「……ライラーっ!! ディアーネさんも!! なんで幻影張り直しとかしないんですか!!」
「ほ、ほほほ、まあタイミングの問題じゃ」
「で、出遅れたらなかなか難しいしな、その、入ることを優先してしまった」

 朝日の中で、素っ裸のブレイクコアとオーロラ、アイリーナは仲の良い子猫のように眠っていた。

(続く)

 
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