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俺は、おっさんへの恐怖と、畏敬と、そして反発心を全身が震えるほどに感じながら、おっさんをひたすら殴り続けていた。
「テメエらが築いた国が見えるか! テメエらが残した誇りが見えないか! テメエらのために背筋を伸ばし続けた職人と! テメエらを恐れたセレスタやアフィルム、エルフたちと! これから生まれて剣聖の伝説を聞く子供たちが! どれだけいると思ってるんだ! それだけ暴れた人生の後始末が二日三日で済むとか思ってんじゃねえ!」
「ぐっ……う、がっ……」
倒れたおっさんに馬乗りになって、俺は泣きながら拳を振り下ろす。
「テメエは生きて親孝行される義務があるんだよ! 天から貰った命の限り、テメエに憧れたクソガキどもの憧れとしてそこにいる義務があるんだよ! 子供に誇りを伝えたいなら伝え続けろ! 背筋を伸ばして見せたいなら見せ続けろ! そして孫を抱いて、甘やかして、育てて、自分が頑張ってよかったと、頑張りつづけた甲斐があったと、幸せな人生だったと言うしかなくなるまで生き続けてから死にやがれ!」
「ぐううっ……」
「俺たちは、だから強くなろうと思うんだよ! 大好きだった人を死なせずに、幸せな人生送らせるために強くなろうとするんだよ! いい国ってのはそういうもんだろう! 親を、子を! 隣人を、友人を! 末永く幸せに暮らしましたとさで綴れる国にするために頑張るんだろうが!」
「……う……うっ……」
「一番頑張った王や至剣聖がくだらねー死に方するなんて俺は絶対に認めねえ! そんな話をして子供が頑張れるのかよっ!!」
拳から、血が舞った。
おっさんの唇は切れていたが、それ以上に物を殴り慣れていない俺の拳がボロボロになっていた。
……そして、おっさんは、泣いていた。
「……く、ぅ……うおおおおおっ……」
号泣して、おっさんは俺を抱き締めた。
「すまん……すまんなぁ……私たちは、こんなで……こんなことしか思いつけぬ親で、すまなかった……っ!!」
「…………」
「私の負けだな……私の……二度目の、負けだ」
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