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 夜。
 説得にも疲れたのか、男爵の館に泊めてもらうという(というか本来貴族同士はそういう風に客を歓待するのが不文律らしい)ルースと別れたのち、おもむろにおっさんは馬を出して旅支度をした。
「そのまま帰るのか」
「ああ。……ルースにはすぐには知らせてくれるな」
 おっさんの見送りには、俺一人。
 ディアーネさんたちには知らせるな、というので、みんなをまくためにリンジーおばさんとこで水を飲んだ後、そのまま町外れで見送りをする事にした。
「じゃ……また会えたらいいな」
 俺はできるだけ軽く言った。
 おっさんはゴーグルを上げてしばらく黙っていたが、夜空を見上げて、ゆっくりと話し出した。
「……そのことだがな」
「うん」
「……多分、友……いや、友で良いよな?」
「え、あ、ああ」
「君と友として会えるのは、きっと今日この場が最後だ」
「……?」
 おっさんは、ゴーグルに手をかけて、この上なく優しく微笑んで。

「私は、これから反乱を起こしに行くのだよ」

 そして、ゆっくりとゴーグルを下ろして、馬に飛び乗った。
 俺は呆気に取られて、何も言えないままにその背を見送ってしまった。

(続く)


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