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というわけで。
ライラの背に、俺、ディアーネさん姉妹、セレンにアップル、オーロラとアンゼロス、ジャンヌ、そしてボナパルトのおっさん。
マイアの背に、男爵とあとディエル、クリスティ、ゴルクス、アイリーナの若手エルフ氏族長たち。
それぞれを乗せて離陸する。
「や、やっぱりドラゴンに乗って飛ぶのって怖い……」
未だに乗りなれていない(というかフェイザー・マイア戦の時に乗ったきりの)アップルが、セレンと一緒に背中のトゲの一つにしがみ付いてちょっと震えている。
隣のセレンは鼻歌交じりで堂々としたものだ。
「大丈夫、慣れると結構快適よ?」
「ほほ、嬉しいことをいいよる。どれ、ひとつきりもみ飛行でもやってみるかえ」
「や、やーめーてーおーねーがーいー!!」
半泣きのアップルがちょっと可愛い。
そして、ほんの1時間ほどで目的地に到着する。
「地下積層迷宮か。露天のものなら奥まで一気に飛びぬけてしまえばよいのじゃが」
渋々と人間体に戻ったライラ。当然のように全裸。
その彼女にに貫頭衣を被せようとするとするりと避けられ、いきなり後ろを取られてぴったり抱き締められつつ耳を長い舌で舐められる。
「ヒィ、な、何する」
「ほほ、前衛もこれだけおる。どうせお互い暇な身じゃ、迷宮を進む間、こうして我の服代わりになってくれぬかえ?」
「遊ぶなー!」
裸のライラに無理矢理服を着せる。
その俺たちのじゃれあいを呆れ半分、驚き半分で見ているエルフの若手氏族長たち。
「ドラゴンライダーとドラゴンは、恋人であり夫婦であり兄弟であり相棒であるというのは聞いていたが」
「随分仲のいいことですね」
「ほほほ、この男は竜の力とその権威を知りながら使わず、我の女体の方ばかり要求する生粋の好き者じゃからの。欲しいだけ与えてやるのも乗騎の勤めよ♪」
「まるで俺が自分の趣味で人前で変なことやらせてるみたいな言い方するな」
というか押さえつけて服を着せてるつもりが、気がついたら下から抱き締められて蟹バサミされてるわけですが。
俺が傍で見る側だったら絶対言うだろう。「これ絶対入ってるよね」って。
「ふ、ふむ……迷宮に突入する前に、どうしてもというなら1時間ほど休憩しても構わぬぞ?」
「早く着きましたしね」
アイリーナとクリスティがあらぬほうを向きながら言う。二人とも顔が赤い。意外とウブ……じゃなくて。
「そんなつもりじゃないってば!」
このエロドラゴンのペースに巻き込まれすぎだ。
「そ、そんなにしたいのか人間……それならそうと」
「すごいわねぇアンディ君。昨日は三巡もしたのに」
「あんたらも乗るなー!」
で、まあドタバタしたものの、全員陣形を整えて迷宮に入る。
最前衛はディアーネさんとボナパルト卿、そしてその後ろにディエルとゴルクス。間に俺とかアップルとか、荒事にはあまり役に立たないのが入って、しんがりをライラとマイア、その一つ前にアンゼロスとオーロラ。
うん、かなり頼もしい。
というか今さらだけど、やたらと武力高い人多いな、俺の仲間。
今ならルーカス将軍なんかメじゃないかもしれない。いや俺があまり役に立たないのは何一つ変わらないけど。
「ボナパルト殿、ここを頼む」
「よしきた」
ボナパルト卿を残して突然消えるディアーネさん。
そして遠くにいた魔物三体、振りかざしたブロードソードでいっぺんに切り捨て、すたすたと戻ってくる。
「ベッカー特務百人長みたいだ」
「褒め言葉なのかそれは」
ディアーネさんが嫌な顔をする。……そんな顔しなくても。
「ベッカー? 誰ですか?」
「もしや『白昼夢』のジーク・ベッカーか?」
アップルとボナパルト卿が不思議そうな顔を向ける。そういや知らないのか。
「この旅の前半にはいたんだよ。もっのすげえ素早い中年のエースナイトが」
「……へえ」
「ジーク・ベッカーか……惜しいな、一度会いたい剣士なのだが」
「おっさんほどの人でも?」
「うむ。彼一人が前戦争でトロットに出した被害は、千人隊一個分を優に超えるという噂があるくらいだからな」
何気にあのオチ要員すごかったんだな……。
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