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 ばっさばっさばっさ、どずーん、と、ライラの着地する音。
 そしてゆっくりと馬車が下ろされ、地に馴染む感触がする。
「到着じゃ。猫獣人コロニーはこの岩山の下になる」
「なるほどな」
 往々にしてコロニーがあるところの近所は、魔物は現れづらい。そういう立地こそ集落に選ばれるのと、魔物を住人が自力で駆逐して安全を確保している場合が多いのと両方の理由だ。
 そして岩場の上なら、魔物の出る確率はさらに低くなる。
 ここなら安心して眠れるだろう。
「日の出から飛んだとして、砂漠から抜けるのはいつ頃になる?」
「ここからなら昼前にはオフィクレードとかいう街の近くに行くじゃろう。少し夕暮れを過ぎて良いのなら、トロット王都とやらも明日のうちに着く」
「そうか。……まあ日程にも余裕はあるし、トイレ休憩もそこそこ入れてくれ。我慢させるのは忍びない」
「ほ。そういえばそうじゃな」
 ガタッ、と御者台の扉が開き、ライラの人間体が馬車の中に入ってきて、幻像が消える。
「では明日は国境を越えるところまで、というところか。ゆっくり行くとしようか」
「……ホント、すげえ時間感覚だ」
 ライラにローブを投げつつ感嘆する。
 馬車で何週間の旅が一日だ。
 そもそも馬車というのは、一日にそう長時間走り続けられるものではない。馬だって疲れるし、そもそも怪我をしやすい生き物なのだ。余裕を持った距離だけ走って宿場に着き、次の日まで待って運行再開となる。
 歩くよりは早いが、健脚の人に比べて倍とは行かない、という程度しか進めない。
 そんな時間感覚が一気にすっ飛ぶこの高速性。飛龍便が大事にされる訳がちょっとわかる。
「ほ、そなたは我の乗り手なのじゃ。望みとあらばいつでもどこでもこの速さで進めるのじゃぞ? 少しは我をありがたく思うかえ?」
「……超ありがたいですハイ」
 少なくともこの速さでポルカにカッ飛べば一ヶ月以上は療養できる。それでちゃんと治れば軍もやめなくて済む。
 ライラがいなければ確実に退役ののち、無職でとぼとぼとポルカに向かうことになっていただろうと思うと感謝してもしきれない。
「感謝しておるのなら……今夜の伽は我じゃろう?」
「……え、そういう話?」
「ほ。どういう話じゃと思っておった。そなたの感謝の気持ちが他の形で表せるのかえ?」
「…………」
 そういやそうだ。よく考えたら俺ってセックス以外、ライラの喜ぶものは全く提供できない。
「……うわー超ヒモっぽい」
 悩む俺を、ぽんぽん、とアンゼロスが撫でる。
「ヒモじゃない。ご主人様だろ」
「……アンゼロス」
「ついでに、飼ってる女が一人じゃないことも忘れるなよ?」
「…………」
 喉元を見せ、トントン、と指で首輪を叩くアンゼロス。
 どういうプレッシャーのかけ方だ。
「ほ。嬢ちゃんも一緒するかの」
「い、いいだろ」
「……まあ、我らのご主人様じゃ。一発二発で音は上げまい」
 逃げ道はないっぽい。

 外の岩場は砂岩というのか、蹴飛ばせば削れるような脆い岩の集まりで、ちょっと探せば砂溜まりもあった。
 そこに分厚い布を敷けばちょっとした寝床の出来上がり。
「……はあ」
「ほほ、夜に外で脱ぐのははじめてかえ?」
「い、いや、別に……隊舎にいた時は水浴びとか内緒でしてたから、そうでもないけど……」
 ゆっくりと下着を脱いで、裸身を月明かりの下に晒したアンゼロスは、熱っぽい視線で俺を見る。ちなみに足の方はちゃんと魔法がかかっているので大丈夫。
「こうして抱かれる為に外で裸になるのは初めてなんだ」
 一糸纏わぬアンゼロス。本当に一糸すら、髪を縛る紐の一本すら打ち捨てたアンゼロスは、やっぱり美しい。胸は小さいけれど、すらっとしたその小さな裸身が俺のちんこに犯される為に自ら晒されているのだと思うと、俺の興奮は否が応にも高まる。
「ほほ、いずれこの男が一城の主ともなれば、こうして女全てに裸で一日過ごさせるような趣向もあろう。いつでも気ままに組み敷かれて孕まされるのじゃ。楽しみじゃな、その爛れた日々が」
「……うん」
「うん、じゃねーだろよ」
 どこからそんな発想が出てくる。
「そもそも俺が城持つなんて発想がどこから」
「野心のない男じゃのう。ドラゴンを手足と扱えるともなれば、将軍だろうとなんだろうと思いのままじゃろうに」
「俺はお前を使って人殺しも権力争いもする気はない。そんなののご褒美に女といちゃつくなんていやだ。せいぜいそのうち大陸中を旅行したいとか思ってる程度だよ」
 ライラは幸せそうに笑う。
「楽しみじゃなあ」
 アンゼロスは俺にゆっくり近づき、俺の腰の前に跪きながら、真っ赤になってぼそぼそと。
「……僕はお前が自分の家を持つって意味だと思ってた」
 ああ。なるほど。
 自分の家を持つ、自分の店を持つ、自分の工房を持つ。
 そういうのを「一城の主」という場合もある。
「俺が家を持って、お前やセレンやディアーネさんやライラや、みんな裸にして一日中発情して過ごすような休日?」
「うん」
 できなくはないけど。たまにそれっぽい状態になって乱交しちゃったりもするけど。
「俺の意志でそんなエロいことしてくれるかなあ。みんな」
「お前結構Hの最中ぼんやりしてる?」
「なんだよ」
 アンゼロスは呆れたような溜め息を吐きつつ俺のズボンを下ろし、ちんこに口をつける。それを裸で咥えることは自分の仕事とでもいうように、なんの躊躇いもなかった。
「ん、ちゅっ……れるっ……んちゅうっ……。僕たち、何度も言ってるだろ?」
「?」
「お前が……んちゅっ……もし、したくなったら……いつでもどこでも、僕らを、思いのままにひん剥いて……何の同意も得ようとせずにいきなりコレ突っ込んで、思うさま種付けしたって……んちゅうっ、ん、んっ……誰一人、嫌がらないよ、きっと」
「ほほ。少なくとも我はいつでもそなたの寵愛、待っておるぞ?」
 Hの最中、セレンやディアーネさん、ライラが熱に浮かされたように口にする妄想。それに倣うように他の子も似たようなことを口にしてはいるが、本気と思うにはちょっと現実離れしすぎている情景。
「……そのうち本当にやるぞ?」
「ずっと待ってるのに」
「……アンゼロス?」
「……僕は、ずっと待ってたんだぞ……そのうちお前が僕も女だって思い出して……ん、ちゅるっ……ふぐ……ん、、んっ……んんっ……っ、ぷはっ、性欲が止まらなくなって、いきなり押し倒されて犯されたら、どうしようって……どんなに気持ちいいかなって、ずっと思ってたんだからなっ……ん、んくっ」
 そういえばこいつも相当精神的マゾだった。
「だから本当に、していいからっ……いつでも僕を、おまんこだって思っていいから……おまんこだけ使っていいから、好きな時にしてほしい……乱暴に、無理矢理に、僕をお前のチンポ用の家畜だって思い知らせて欲しい……っ♪」
「……エスカレートしすぎ」
 ちんこ咥えて、舐めて、先走りを啜りながら、段々と自分が俺の性欲にメチャクチャにされる妄想を熱弁しだすアンゼロス。
 歳以上に、ともすればオーロラより幼く見える、美しい少女の外見をした裸のアンゼロスがそんなことをうっとりと語る、星空の砂漠。
 いろんな意味でミスマッチ。だからこそ燃える。燃えてしまう。
「ほほ、我もおるぞえ。忘れずに犯してくれろ♪」
 ライラも布の上に四つんばいになって尻を振る。トロトロに融けた股間からダラダラと涎を垂らして俺を誘っている。
 ゴクリと唾を飲み込んで、まずはライラから犯そうとして……。
 次の瞬間、いきなり目の前に裸の女の子が二人増えて、俺は目を瞬いた。
「?」
「んなっ!?」
 ライラとアンゼロスも突然の出来事に目を丸くする。
 俺はそのまま突然現れた二人の女の子にタックルされ、恐ろしい速度で攫われる。
「お、おい、何だお前ら!?」
「!」
「♪」
 二人は答えない。


 そのまま、俺は同じ岩山のどこか別の場所に担いでいかれてしまった。
「な、なんだよ!? 俺に何かっ……」
「アンタ誰」
「……いやそれを聞いてるのは俺」
 ザアザアと小さな滝になっている、小川のほとり。いくらかの下草が生えていて、腰をおろすと柔らかい。
 そこに俺は連れて行かれて、どさっと投げ出される。
 突然現れて俺を攫った女の子は、一人は銀色の髪、一人は金に近い茶色の髪の、ややワイルドな風貌の……あ、耳と尻尾が。
「猫獣人?」
「ここ、あたしたちのコロニー。アンタ誰」
「俺は……」
「やっぱりどうでもいい」
「ええ!?」
 何、会話してくれないの?
「どうでもいいから交尾しろ」
「いやマジで説明を」
「あとで」
 いきなり銀色の方が俺に跨ってきた。
 なす術もなく、俺は逆レイプされ……って。
「んぐうっ!!」
 ブチリ、と。
 いきなり処女を奪う感覚。
 急展開にも程がありすぎる。
「え、ええっ!? 処女!?」
「悪いかヤリチン」
 銀色が涙目で俺を睨む。今さら気づいたけど結構おっぱいでかい。
 茶色はそれを発情した目で見ながら、俺のどこかをどうにか触ろうとぺとぺとと手を回して、最終的に銀色の尻の下から横向きに頭を突っ込んで、俺の玉のあたりを無理矢理ペロペロしだす。
「な、なんなんだよ……どういうことか教えろっ!!」
「別に知らなくてもちんちん勃ててれば済む。黙って交尾しろ」
「おいこら!」
 そのまま銀色はぐちゅぐちゅと腰を動かしだす。茶色はそれをキラキラした目で見つめる。
 と、そこでツカツカと近づいてきて、銀色の頭を木の杖でゴチンと殴る誰か。
「何やっとるアホウ!」
 続いて茶色も殴られる。
 ……ちなみに俺はアンゼロスに結構高められた後だったので、銀色が殴られた拍子にギュッと締めた瞬間、我慢できずに銀色に中出ししていた。
「痛い」
「にゅー」
「……ほらほら、降りろ馬鹿娘ども! ったく、なんてことだい」
 銀色と茶色がしぶしぶどくと、そこにはゆったりしたローブを着た猫獣人の老婆。
「……説明していただけますかご老体」
「カッ、ったく、そういう時はウソでもお姉さんとお言い」
 老婆はちょっとだけ威嚇すると、ぶつぶつ言いながら指笛を咥え、ぴーっと鳴らす。
 すると、一分ほどでライラやディアーネさん、そしてアンゼロスやセレン、オーロラが集まってきた。
「ほ、見つかったか」
「見つかったか、じゃないよこの馬鹿女。満月の夜にウチのコロニー近くで交尾なんざ、どういうつもりだい」
「ほほ、まさかそのようなことになっているとは思わなんだでな」
 ライラを無造作に罵倒しているあたり、付き合いがあるらしい。
 その老婆は、銀色と茶色を正座させ、俺がセレンとアンゼロスに助け起こされる(魔法切れた)のを見て、嘆息しながら。
「アタシはドナ。ドナ・バジル。ここのコロニーリーダーだよ」
「は、はぁ。俺はセレスタ北方軍団クロスボ」
「どうでもいいよ」
「…………」
 このコロニーは人の名前を聞いたら死ぬとかそういう言い伝えでもあるのか。
「……んでお兄さんよ。……セックスには自信あるかい?」
「はい?」


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