夜の砂漠の上を飛ぶ馬車。
というか馬車を掴んだドラゴン。
……シュール極まりない光景だろうが馬車の中の俺たちはあまり関係ない。
「セレン、明かり、つけられない?」
「結構上下に揺れますからねえ。蝋燭じゃ危ないんじゃないですか」
「ランタンはないか?」
「うーん……ないです。たいまつならあるみたいですけど。盲点でしたねえ」
馬が引くよりはるかにダイナミックに揺れる(というより傾く)馬車の中では、いくら受け皿があるとはいえ蝋燭じゃ危なっかしく、たいまつなんて論外だ。
「見えないというのは大変だな」
「んだんだ」
闇でも平気で見通せるダークエルフのディアーネさんとドワーフのジャンヌが気の毒そうに呟く。まあ確かにあなたたちには必要ないんでしょうが。
「まあ夜も更けてきた。適当なところで泊まるとしようかの」
座席の背もたれの上にちょこんと立つ、ライラ……の、手のひらサイズの幻影。
さすがに抱えた馬車の中に向けて、いちいち喋るのは骨だということで会話用に作った幻像だ。
ライラのくせにちまちましてて可愛い。全裸だけど。
「泊まると言ったって砂漠の真ん中だ。サンドワームは馬車くらいなら丸ごと食らうというし、危ないのではないか」
ディアーネさんの言葉を聞いて肩をすくめるライラの幻像。
「ラッセル砂漠は我の庭ぞ。どこに泊まるにちょうどいい土地があるかなど、調べるまでもないわ」
「そうか」
「近くに猫獣人のコロニーがある。あと15分ほどじゃ」
ライラの言葉とともに少し車体が傾き、進路が変わったことが身体でわかる。
「……っと」
「あ、悪い」
隣に座っていたアンゼロスに軽く覆い被さる形になってしまい、謝る。
水平に戻るとともに体勢を戻したが、アンゼロスはそのままくっついて俺に引っ張られるように体を倒してくる。
「……アンゼロス」
「……い、いいだろ」
「うん……まあいいけど」
エッチしてからこういう細かい部分で俺に甘え始めたアンゼロス。これまたちょっと可愛い。
が。
「ずるいぞー、アンゼちゃん」
「そーですーっ、私だってアンディさんとくっつきたいですーっ」
ヒルダさんがそれを目ざとく見て取り、セレンも便乗する。
たちまち座席の上で三人に抱き付かれる、というか組み付かれて固定される恰好になる。
「お前ら、ちょっと落ち着け馬鹿ーっ!」
「ほ。うらやましいことしおって。我も参加してしまおうか」
「お前はとにかくちゃんと飛べー!」
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