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そして、夕方。
「それでは全員乗ったか」
ドラゴン体のライラが声をかける。
今回は背中ではない。
さすがに長く飛ぶには居住性が悪いので、大きめの乗り合い馬車の車体を購入し(ライラの秘宝の中でカルロスさんの商会でも扱えるのがあったらしい)、それにみんなを乗せてライラが両手で掴んで飛んでいくことになったのだった。
「全員いまーす」
窓からセレンが手を振る。
御者台の向こう、ライラの正面あたりにはカルロスさん見送りに立っていた。
「いつでも戻ってきていいからね、ディアーネ、ヒルダ。特にヒルダ、用が済んだら妊娠しないうちに戻ってこないとお兄ちゃん泣くかんな」
「えへへー。行ってきまーす♪」
パカン、と観音開きの扉を閉めてしまうヒルダさん。
……まあ飛び始めたら風が入らないように確かに閉めなきゃいけないんだけど。そんな急いで閉めなくても。
「いってくれ、ライラ」
横窓からディアーネさんが声をかけるが、ライラは動かない。
ディアーネさんはちょっと顔をしかめて、ちょいちょいと俺を呼んだ。
「お前に号令かけてほしいみたいだぞ」
「ほほ。どうあれ、そなたが我の乗り手なのじゃ。命じるがよい」
まったくもう。
……でも尊重してもらえて、ちょっと嬉しい。
「ライラ、飛べ!」
「ほ。行くぞえ!!」
ばっさばっさばっさ。
夕空に、ライラの羽音が響き渡る。
……ついに、またトロットに向かう日が来たんだ。
(続く)
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