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 そして、前半組の最後。
 ヒルダさんに向き直ろうとしたら、ヒルダさんがそこにいない。
「あれ?」
 いいのかな、と思った次の瞬間、俺は後ろからぎゅっと抱えられて逆に作業台に押し倒されていた。
「どーん」
「うおっ!?」
 ばふ、と麻袋と垂れ布の塊の上にうつぶせにぶっ倒れる俺。
「いてて……ヒルダさん?」
「えへー。……あと大体1分半しかないわね」
「え?」
「魔法の効果時間。……私にはわかるのよー、魔力の残り具合とかで」
「そ、そうなんですか」
「だからこれ以上は危険。急に力が抜けて転んじゃうと、こんな鍛冶場じゃ大怪我しちゃうわ。タイムアップね」
 なんかほえほえと適当な人に見えていたが、やっぱり医者。欲求より怪我や病気への心配を優先してくれるようだ。
「……はい」
 意気込んでいた全身の力を抜く。柔らかいおっぱいと、ほのかな花の香水の香りが、なんだかひどく安心させてくれる。
「ここからは私のターン」
「……はい?」
「ヒルダ先生の108の必殺技・夜の部、ちょっとだけ披露しちゃおっかなー、みたいな♪」
「夜の部!?」
「昼の部は医術、夜の部は房中術なの♪」
 仰向けにさせた俺の上に、ヒルダさんがのっしりとのしかかって来る。
 前言撤回。ちゃんと医者だけどやっぱり欲求も優先するようだ。
「あ、姉上!?」
「だーってー。どうせ次に足動かす魔法かけられるまで30分あるしー。私どっちかというとマグロな人をメロメロにする方が専門なの♪」
「……そういえば義兄上も元は患者だったと聞いたが、まさか……」
「んー、その辺はヒ・ミ・ツ♪」
 ……今。
 なんか見えたぞ。
 患者として動けないところで性的にメロメロにされた旦那さんが、結婚後もあまりに激しい夜の生活に耐えかねて、遠い空へ旅立とうとしているカスカスの後姿が。
「さーて、どれから行こうかな? どんなのがいい?」
 ヒルダさんが妖しく笑った。
 ……オオウ。もしかしたら勢いで凄い人に手を出しちゃったんじゃないか俺。
 それこそマスターナイト級に。
「早く希望言わないと大変だぞー? 先生、その気になったら30分あれば10回は絞っちゃうんだから」
「ヒィ!?」

(続く)


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