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砂漠トカゲの革は、タルクではずいぶん安かった。
オフィクレードやバッソンで買うのの半額ぐらいだ。
そして首輪の素材にする分には、あまり大量に必要なわけでもない。
「ジャンヌと、ライラと、あとえーと……いる人?」
アンゼロスとオーロラとヒルダさんが手を上げる。
「二人ね」
ヒルダさんはあえて無視。
いやちょっと待て。
「……オーロラもいるのかよ!?」
「わたくしがその程度の儀式に怖気づくと仰いますか?」
「いい加減見えないものと戦わないでくれ。つーかこれは本人たちの趣味だから。つけてないからって不都合とかないから」
「つけていてもあなたにとって不都合でないなら、わたくしが尻込みする理由はありませんわ。この身が一人の男性のものと証すことに、何を恐れることがありましょう」
「……いや、まあ飽きたら外していいけどさ」
あの突撃エルフはいろんな意味で手がつけられなさ過ぎる。
諦めて4本作ることにした。
「だーかーらー、ヒルダ先生もいれて5本ー」
「なんで昨日会ったばかりの人妻にまで雌奴隷の印つけなきゃいけないんですか!!」
「人妻奴隷って燃えない?」
「燃えるけどそれとこれとは別です!!」
「わーい、認めたー」
「認めたなアンディ」
「アンディさん……」
みんなの白い視線が突き刺さる。
「とにかくヒルダさんは駄目!」
「けちー」
二枚に重ねて、しっかり縫って。
焼き印で「アンディ・スマイソン」と押す。
それを四本。
「できた」
足とかはあまり関係ない作業だったので、まあそこそこに手早く不都合もなく出来上がる。
「さてと、ライラ……って」
ライラからつけてやろうと呼んだら、何故かライラは全裸になり(これはいつも通りといえばいつも通りの奇行だが)、椅子に座った俺の前に跪いている。
その表情は、いつものちょっとふざけた表情でなく、ひたすらに真剣で、ちょっとビビる。
「ライラ?」
「アンディ・スマイソン。さあ、我に、臣下の証を」
「臣下!?」
ライラが俺を見つめる。うっすらと笑う。それはやはり悪意や茶目っ気の欠片もない、なんだか透明な笑顔。
「ライラ姉様?」
「ライラ……?」
ジャンヌやディアーネさんも、ライラの雰囲気の変化に訝しげな顔をしている。
「なんだか、お前、変じゃないか?」
「いいや。至極真面目じゃ」
「真面目って……」
「アンディ・スマイソン。よいか。心してこの黒竜ライラに首輪を嵌めよ」
ライラはその真剣な瞳で、俺をしっかりと射抜く。
「お主を愛していない竜に、首輪を嵌めるのだ。心せよ」
何が言いたいのかわからなくて、俺は動くことも逃げることもできず、ただ、その赤い瞳をじっと見つめた。
(続く)
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