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「ふぃー」
ざぶーん、と風呂に飛び込んで一息。
清掃の後にアンゼロスの警邏に付き添って演習場一周、いつもならもう寝ている時間だ。
整備と訓練ばかりとはいえクロスボウ隊も体力仕事。そうそう無闇に夜更かしする奴はいない。広い風呂は今俺だけで独り占めだ。
「そういやアンゼロスは風呂どうしてるんだろう。入ってないわけじゃないだろうし」
「山の中で水浴びしたり、こっそりバッソンの風呂屋で済ませてるみたいだな。何度か尾けてみたことがある」
「へえ……ってうわ」
音もなく背後に百人長が立っていた。
びっくりして振り向くと、気さくに笑って隣に入る。
「ドワーフやオーガでさえ週一で風呂に入らせてるんだ。流石にハーフエルフが風呂入ってなかったら示しがつかないし、気になってな。だからあいつが女だってわかったんだが」
「な、なるほど……しかし百人長にしちゃ遅い入浴で」
「二度目だ。ちょっと話したい事があったからな」
なんか近い。肩が触れ合いそうだ。さすがに視界の端におっぱいが見えて気まずいよ百人長。
「最近部屋にいれば雌奴隷、それ以外ではアンゼロスがべったりだからな。風呂ぐらいしかサシで話す機会がないじゃないか」
「ま、まあ、そうですね」
「アンゼロスとの距離の取り方には気をつけろよ。裕福で親の愛が足りてたといったってハーフエルフはハーフエルフだからな。ちょっと情を移させるとすぐ後戻りできなくなるぞ」
「はぁ」
やばい勃起してきた。悟られてないといいけど。
「で、本題だが。ダークエルフの精神性はハーフエルフに近いってよく言われるの、知ってるか?」
「いえ、あんまり」
鎮まれー。鎮まれー。
「あはは、そういやお前トロット出身だったな。ダークエルフの気性や生活なんてわからないか」
「お察しの通りで」
「……ダークエルフはエルフ族の異端、魔物と同じ気の流れに染まった種と言われている。何の裏づけもない憶測に過ぎないが、昔からエルフ族の中では一段下に見られていたのは事実。エルフだけれどエルフじゃない、孤独な種族だって言われている」
湯船の縁に肘をかけ、気持ちよさそうに反り返りながら語る百人長。大きくて形のいいおっぱいを隠す気全然なさすぎる。
ああ、せめて距離が離れてて相手されてなければオナニーするのに。ちょっとランツやゴートの気持ちがわかる。
「そんなだからな。一度異性に惚れたらのめり込む特徴だけはハーフエルフと似てる。孤独が深い分、一度そこから足を浮かせてしまったら二度と戻りたくないから」
「……はぁ」
「それでな。……私は自分を結構特別だと思ってたつもりだったんだが、割と典型的なダークエルフだったらしくてな」
すっ、と身体を起こすと、いきなり百人長は俺に覆い被さって、今度こそ制止する間もなくしっかり唇を重ねてきた。
「んぐ」
「んっ……。ふふ、勘違いだったのは認めるよ。だけど勘違いでも、私はもう十年お前と結婚する気でいたんだ。お前を抱くことだけを考えていたんだ。覚悟しろアンディ・スマイソン。ハーフはお前から離れないかも知れないが、私はお前を逃がさない」
「ん、はっ……そ、そんなこと言われても……百人長、ちょっと離れて」
「百人長じゃない、ディアーネさんと呼べ。そしたら考えてやる」
「くっ……で、でぃあーね、さんっ!」
「……ん、ちょっとぎこちないがいい響きだ。二人っきりになったらそう呼ばないと怒るからな」
「わ、わかったから、わかったから離れて」
「んー……考えた。やっぱり嫌だ」
「卑怯者!?」
「なあに、勃起してるぐらい気にするな。元気なことはいいことだ」
「犯されるー!?」
「……ああ、それだ。いい考えだな」
「う、ええー!?」
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