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 しばらくすると足音が聞こえてきた。
「!」
「(待って)」
 立ち上がりそうになったセレンを制し、そのまま漂うことにする。
 探しに来た仲間とかだったら、今大慌てで岸に戻っても冷やかしを受ける結果は同じだろう。少しでもやり過ごせる可能性に賭けようという算段だった。
「…………」
 岸でしばらく逡巡するような間。
 そして、意を決したようにカチャカチャがっしゃん、という音が聞こえてくる。
 そして衣擦れ、ちょっとした溜め息。
「……?」
 探しに来た仲間ではないことは確かな気がする。どういうことだろう、とそーっと首を上げてみると、そりゃそーっと上げてもざぱーとポタポタポタとか音はする。
 そして相手はこっちを向いた。
「!!」
「えっ」
 長い長い髪と、華奢な体躯。ふくらみかけのささやかな胸、そして長い耳。
「ス、スマイソン!?」
「誰!?」
 そしてそのエルフっぽい少女は俺の名を呼び、俺は彼女がわからない。


 血まみれのごっつい黒い鎧とか見覚えのあるショートソードとかが視界の端に映っていたが、あまりにも目の前の少女が少女過ぎて、にわかには信じようがなかった。

(続けようかなみたいな)


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