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温泉浴場の営業時間は寺院の十の鐘までになっている。
六の鐘が真昼、十二の鐘が真夜中なので、都会式に言うと夜八時というところ。
それ以降ももちろん泉が止まるわけでもないので入ろうと思えば入れる。単に管理する泉守りが、かがり火の薪代をケチっているだけだ。
まあ温泉の泉守りは儲からない(入浴料を取ろうとしたこともあるけど、街中の女衆の反対にあったので助成金だけでやってるらしい)ので仕方ないといえば仕方ないみたいだが。
どうせ湯船の掃除は朝なので、それまでは掛け流しのまま。暗いことさえ我慢すればいいのだ。
暗いならエルフだろうがなんだろうが見つかる心配もない。夜目の効くドワーフやオーガなら見えてしまうかもしれないが、奴らはそもそも風呂の習慣がない。
「というわけで混浴混浴♪」
「……はぁ」
ハーフエルフの少女は呆れたというか、拍子抜けしたような顔をした。
「……これも霊泉の水、なんですよね」
「ん? ああ、そうだよ。使うなら帰りに汲んでけばいい」
「贅沢っていうか……」
「どうせ霊験は半日しか続かないし、飲み尽くすほど病人がいるわけでもないじゃん」
「そうなんでしょうけど」
決死の覚悟で、なんでもすると言ってまで欲しい水が、まさにただの湯水として使われていることが納得いかないらしい。
まあそんなのはどうでもいいのだ。
「じゃ、おっぱい触らせて」
「うぅ……はい」
先にポンポンと服を脱いで湯に飛び込んだ俺の満面の笑顔に、ものすごく複雑な顔をしながら彼女も服を脱いでいく。
薄暗くて肌の白さが堪能できないのが残念だけど、月明かりでもわかるぐらいに綺麗な肌とボンキュッボンの完璧なプロポーションはたまらない。
「へへっ」
おずおずと近づいてきた彼女に、無遠慮に手を伸ばす。緊張しきった顔でビクッとする彼女だったが、お構いなしにむにゅっと乳房を掴ませて貰った。
「おお、すげ……こんなでっかいおっぱい、男爵のとこの嫁さん並みだ」
「……も、もしかしてひんぱんに女の子の体触ってるんですか? その歳で」
「さ、さすがに触ってないよ。見ただけ」
頼めば揉むくらいはさせてくれそうなねーちゃんだったが、そこまでしてバレたら流石に親父が危ない。
覗いたり、たまにおばちゃんたちに引っ張り込まれて洗い倒されるだけならイタズラ小僧っていうことで許されるので、そこまでが俺のラインだったのだ。
しかし今は揉み放題触り放題の約束の最高のちちしりふとももがある。それは見る専だった俺にとってはもう脳が痺れるほどの体験だ。
「うわ……やーらけー……」
「ん、う……っ」
相手がただのエロガキで、本当にただ触るだけとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしいだろうし決して愉快ではないだろう。それでも彼女は律儀に触られるまま、くねくねと身もだえしながら決して拒絶はしなかった。
調子に乗って尻。そして性器も触る。
「ここがどうなってんのか、いっぺん思う存分確かめたかったんだよなー」
「そ、そんなっ……ひぁっ……!」
湯気越しに遠目に覗くだけでは、股間がどうなってるのかなんて決して理解なんかできるもんじゃない。増して毛だって邪魔だ。
しかし驚いたことに、彼女は胸や尻はしっかりと発育しているくせして毛は生えていなかった。
「こんな風になってるのか。そういやエルフって毛、生えないの?」
「わ、わかりませんよぅっ。純エルフの人たちの裸なんて、見たことありませんしっ……!」
「そっか。俺は毛がない方がいいな」
「あ、ありがとうございます……」
真っ赤になって俯きながらだけれど、わりと本気っぽい照れ方で礼を言うあたり、結構ズレた子なのかも知れない。
そんなこんなで本能の赴くままに尻を揉み乳を揉み舐めしゃぶり。随分そうしてベタベタしていた気がする。
が、しばらくして浴場の入り口に人の気配が現れたので、俺は彼女に抱きついたままピタリと停止せざるを得なかった。
「誰か来た……!」
「え、えっ?」
わざわざかがり火が消えてから温泉に来るなんて奇特な話だ。洗いづらいし躓きやすいばかりで不便なのに。
それともこのハーフエルフみたいな、いわくつきの客ってことだろうか。
「…………」
「…………」
二人でじっと息を潜め、闇に慣れた目で新しい客の動向をうかがう。
二人組だった。温泉の流れる音に紛れて声は聞き取りづらいが、片方は男。
もう片方は……。
「……きゃっ」
「?」
ハーフエルフの少女が息を飲んだ。
俺は……見えていたが、何をしているのかしばらく理解できなかった。
正体は宿屋の小間使いの娘と、男の方は多分旅人。連れ立って暗がりで服を脱ぎ、抱きあって湯船の中で絡み合い……時々追加料金とかサービスとか小声で言いあっているのが聞こえる。
しばらくして話が済んだのか、男のまたぐらに女がかがみこみ、なにやらチュポチュポと音を立て始める。その時の俺には何をやっているのか全く想像できず、ただ本格的にエロい何かをやらかしているのだろうということだけしかわからなかった。
じっとハーフエルフの少女を抱き締めながら、ひたすら息を殺す。
そのうち男の方が突然立ち上がり、女の頭を掴んで腰を降り始める。女の方も慌てたようにじたばたしたが、しばらくして諦めたのか大人しくなり、やがて二人とも動きが止まる。
そして虚脱したように二人とも湯の中にへたり込み、息を整えてからまた何か言い合いつつ出て行った。
「……な、なんだあれ」
「…………」
俺は目の前で展開された意味不明の光景に、すっかり毒気を抜かれていた。
意味がわからない。ドキドキするけれど、理解できない。
目の前に極上の裸体があって触り放題なのに、いきなり展開された他人の何かHな行動がショッキング過ぎて身が入らない。
なんだあれ。なんだあれ。と、ひたすら混乱していた。
それはなんだかんだ言ってもポルカは道徳的な大人が多く、俺は女の裸は見まくっていてもセックスやフェラチオなんて知らなかったということだ。
それを偶然に目撃してしまったことで俺は飽和してしまった。
が、ハーフエルフの少女はそうではなかったらしい。
「……あの」
「な、なに?」
「あれ、しましょうか?」
「あれ、ってあれ、何?」
「……してみればきっとわかります」
多分スケベな手つきで撫でまわされて、俺が思っている以上の覚悟を決めていたのに寸止めで、ある種欲求不満だったのだろう。
その時俺は初めて、目の前の少女が自分より年上で、自分よりおそらくは強く、自分がもう何の交渉材料も持っていないことに気づいたのだった。
少女は俺の手を振り解くと、さっきの娘と同じように俺の股間に顔を近づけてきた。
俺のムケていないがビンビンに張ったちんこを見て、、愛しそうに目を細める。
そして……あまり躊躇いも見せず、ちんこに口付けをしてきた。
「!!」
「ん……っ」
ビクリと跳ね上がるちんこ。彼女はそれに驚いたようにビクッと全身震えたが、再び果敢に口付けする。今度は離さないとばかりに口を開いて先端を迎え入れ。少しだけ開いた皮の隙間へ、にゅ、と舌を突き刺してきた。
「う、あ……!」
「んーっ……こ、こう……かな?」
「……も、もしかして自分で何やってるのかわかってないの!?」
「ちゃ、ちゃんと知ってますっ! でもその……話に聞いていただけなので」
女の裸の柔らかさに夢中になっていた俺と五十歩百歩だ。しかし彼女は年上な分だけ性行為の何たるかを知っている。少なくとも本能でおっぱいおっぱい騒ぐしかなかった俺と違って、最終的に互いのどの部分を使って何をするのがセックスなのかという所に関しては、正しい知識があった。
霊泉の闇に俺のブザマな喘ぎ声と、彼女が懸命に吸いたてる音が響く。さんざん皮を弄んだ末、どうやら根元に向けて引っ張ればムケるということを理解したらしい彼女は本格的に俺を責め立て始めた。
「ん、んちゅっ……ん、んん……んぶ、んんっ」
「く、や、ヤバ、そんなキツっ……!」
裸の亀頭に襲い掛かる湿った粘膜の感触。オナニーすらまともに知らなかった俺にとって、それは快楽というより拷問に近いものだった。
技巧自体は今考えると大した事はなかったが、セックスも射精も知らない俺にとっては未知の世界過ぎて悲鳴しかあげられなかった。
そして。
「う、うあ、あっ……なんか、うあ、うわあっ!?」
「ん……ぶ、ぶぷっ……!」
射精。
ハーフエルフの少女の美しい唇の中に、俺の、おそらくは生まれて初めての射精が打ち込まれていた。
それが射精だと知ったのはしばらく後だったけれど、俺はその時は全身が言う事を聞かなくなるような快楽で混乱していて、彼女の唇から垂れる白いものがなんなのかなんて全くわからなかった。
「……んくっ」
「……あ、ああ……っ」
ぱしゃん、とさっきの男のように湯の中にへたり込んだ俺を、彼女はうっすらと微笑みながら見つめ、喉を動かした。俺の出した精液を彼女は自分から飲んでいた。
「…………何、今のっ……」
「ふぇらちおっていうらしいです」
「……ふぇ、ふぇらち?」
彼女は可愛らしく笑った。一瞬だけ見えた怖いくらいの欲情が消え、可憐な元の印象に戻っている。
「少しは、お礼になったでしょうか?」
「……うん」
何のお礼だっけ。
俺はそんなことさえ忘れるほどに、刺激的な体験に翻弄され尽くしていた。
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