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「街で泉守りに頼めばちょっとした手数料だけで祝福までしてくれるよ」
「お金、なくて……それに街に入れそうにないんです」
「ドワーフやハーフオーガが出入りしてるぐらいだから、いけそうなもんだけどな」
 子供ゆえの無思慮をそのまま口に出すと、ハーフエルフの少女は辛そうに笑った。
 見た目バケモノなオーガ族でさえ力仕事の担い手として出入りが認められていたが、ハーフエルフは当時本当にポルカに入れなかったのだ。
「お願いします。何でもしますから……私にできることなら!」
「……うーん」
 なんでもと言われても困る。
 街に入れもしない、金もない。特に芸がありそうにも見えない。
 耳が長いだけの年上に見える少女。
 泉守りを通さなくても、すぐ近くに温泉があるわけで持ってくるのは造作もない事だったけれど、なんでもしますと言われてタダで働くのはちょっと惜しい。
 考えに考えて、スケベ小僧の魂がポンと名案を出した。
「……なんでもっつったね?」
「え、ええ……ひとの命、かかってますから。私でできるなら、本当に何でも」
「う」
 ちょっとだけ罪悪感が湧いたが、しかし言って損することもないと思い直す。

「裸になって、めいっぱいからだ触らせて」
「ぇ」

 さすがにギョッとしたようだった。今考えても我ながら天晴れ過ぎるスケベ根性だと思う。
「え、ええと……」
 少女の目が泳ぐ。無意識といった感じで身を掻き抱き、真っ赤になって俯いてしまった。さすがに単刀直入すぎたか。
「嫌ならいいけど」
 まあ駄目元だ。それ以外でと言われても……ちょっとがっかりだけれど別によかった。じゃあぱんつとか貰うのはアリかな、と思った程度で。
 しかし少女は大慌てした。
「し、します! 構いません、裸にでもなんでもなりますからっ!」
「あ……そう?」
 今考えると、俺の言い方が「じゃあ霊泉の水は諦めてね、ばいばい」とでも言いそうに聞こえたのかも知れない。
 そんなつもりはなかったが、俺のスケベな条件を聞いてくれたからには特に何とも思うことなく、俺は大喜びした。
「で、でも……せめて、もう少し暖かいところで……」
「うんうん」
 こうなると俺の脳味噌は余計に働く。
 自分より頭一つぶん大きい少女を引き連れて、ソリを引きずりながら雪の丘を登り始めた。


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