トロット王国

・王都
 トロット王国首都。正式な都市名は「トロット」。紛らわしいので普通は王都と呼ばれる。
 人口10万を数える北西平原でも有数の都市。
 壮麗な王城と大闘技場が名物。他にも貴族屋敷が集中し、また金属工業が盛んでとても賑やかな街。
 アンディが鍛冶の修業として10歳から17歳ごろまで住んでいた街でもある。八十軒以上の工房が軒を連ねる中でも「王都十剣匠」と称えられるうちの一つ「スリード工房」がアンディとその父ピーターの修業地だった。
 またアンゼロスの出身地でもあり、彼女の母にして非常に強い勢力を誇り先王ユリシスとも懇意な商人、リンダ・ノイマンもここに本拠を置く。
 付近にはドワーフ鉱山と呼ばれる大規模なドワーフコロニー(≒大鉱脈)が三つ存在し、特に多く産出される「真銀」と呼ばれる金属は劣化しにくく強度と耐久性に優れ、刀剣に非常に向いている。
 付近にある守護峰カルバマ山のおかげで自然状態でも非常に気の流れがよく、魔物がほとんど発生しない。

・フォルクローレ
 王国第二の都市。
 王都から見て西方、アフィルム帝国への街道と王国最大の大河ガラージュ川の交点にある。
 ちょうど川の中に浮かぶように人工島が街を形成しており、水上都市とも呼ばれる。
 かつてアフィルム(当時は蛮族領とも言われた)からの侵略に対する砦として建設された街でもあり、この地はトロット王国最大の名門ガードナー公爵家が代々領有してきた。
 近くにドワーフ鉱山を持ち、烈光銀と呼ばれる発光金属(名前はすごいが実際はそんなに強い光を放つわけではない)が産出される。強度は劣るが加工しやすく、装飾用の素材として高い人気を誇る。
 またドラゴンパレスも近く、火竜戦争時代には一度丸焼きにされたことがある。
 現在はアンディの母マリーが居住している。また、アフィルム帝国を出奔したアルメイダが償いの戦いをする本拠地と定める場所でもある。

・シュランツ
 王都南方に位置する王国第三の都市。
 歴史は古く、王都とほぼ同じ六百年ほど続いているため古都という枕詞をよく使われる。
 重量武器に適した硬く重い金属を特に多く産出し、王都とは違った分野で鍛冶の本場と呼ばれている。
 食糧生産地としても名高い。また、歴史上この街は南方勢力に対する最前線として扱われることが多かったため、付近には多くの城や砦の廃墟がある。
 有名騎士「シュランツの鷲」ジョセフ・ベイの出身地であり、彼の弟子でありトロット最速の剣聖「疾風」アベル・ディンギルもこの街に居住し修練を重ねている。

・聖地ライカ
 王都よりまっすぐ北方に進んだ先にある円錐形のライカ山とその麓の街ライカをまとめて「聖地」と呼ぶ。
 王国教会の総本山である大寺院、そして教育舎と呼ばれる施設で若い司祭候補が王国全土から集められて共同生活を送り、さながら学園都市の様相を呈している。
 また下手な迷宮よりも強力な気の清浄化作用を持ち、六匹の聖獣がこの地を守っているのも特徴。彼らの半数以上が絶滅した古代獣である「天空虎」である。
 またライカ山には地下迷宮があり、その深奥にはドラゴンスレイヤーが二十本以上封印されているらしい。

・パストラル
 王都からライカまでの街道筋にある宿場の一つ。
 第一部でちょっと出た。あまり大したものはない。

・カンツォーネ
 王都からライカまでの街道筋にある宿場の一つ。
 第一部終盤、住民を引き払わせた上でディアーネのクロスボウ隊と至剣聖ボナパルト率いるロートル剣聖旅団が衝突した場所。

・ポルカ
 王国最北端の街。アンディの故郷。
「奇跡の水の街」と呼ばれる。その名の通り、この時代の魔術を軽く凌駕する驚異的な癒しの霊験を持つ泉が冷温両方湧いていて、遠方から多くの病人怪我人が訪ねてくる。
 大陸を縦断する青蛇山脈を東に、そこから二股に派生する子蛇山脈を西に望む盆地にあり、王都までは馬車で三週間もかかる最辺境。
 それゆえに周囲の時勢とは隔絶しているという利点もあり、現在ではすぐ北方にあるエルフの森から続々とエルフたちが現れて立ち寄り、人間社会の勉強や交易を行っている。
 領主であるデュラン・グート男爵は老壮の身でありながらも霊泉の効力で肉体能力を若く維持しており、剣聖の称号をも持つ優秀な剣士でもある。


・セレスタ商国

・クイーカ
 セレスタ商国の南西、海岸線に位置する首都であり、トロット王都と並んで都会の代名詞。
 登録されている住民だけでも10万を超えており、周辺に勝手に住み着いている非登録住民も数えると人口では北西平原最大である。
 種族雑多なセレスタを象徴するかのような人種の坩堝であり、治安は残念ながらかなり悪い。
 セレスタ軍総本部も当然ながらここにあり、ディアーネの父アシュトンも普段はここに詰めている。
 ジーク・ベッカーの所有するアパート(管理人は義理の祖父母であるバードマンの老夫婦)もここにある。第一部で手に入れた嫁二人も一応ここに住居を移したらしいが結構フリーダムに動いてベッカーに会いたがっているよう。
 劇中では一回も訪れていない。

・バッソン
 セレスタ商国北端の街。
 現在のトロット国境に最も近い街であり、ディアーネ率いるクロスボウ隊の駐屯地も近くにある。
 トロットとの貿易が活発化した影響で急速に発展している。市民の憩いの場として大きな競技場が建設されており、スポーツの大会などを催したりイベント会場などとして使われている。

・オフィクレード
 バッソンから南、ラッセル砂漠の北外縁に位置する。
 駅馬車の中継地点、そして砂漠大迷宮を探索する冒険家たちの行動拠点として機能しており、活気はあるが街の雰囲気は荒っぽい。

・ティンバレス
 大アルモニカ川河口部にある港町。セレスタでは唯一、西方大陸直通の船便が出入りする。
 漁港、貿易港であると同時に、セレスタ北西部の密林地帯を経済的に支配する狐獣人商工会の本拠地でもあり、異文化が多く入ってくる街特有の異国情緒もあいまって独特の雰囲気を見せる。
 劇中では一回も訪れていない。
 ジーク・ベッカーの登録上の出身地。

・ハーモニウム
 オフィクレードから東に進んだ先にある都市。木工品が街の名物であり工芸都市と呼ばれる。
 狐獣人やダークエルフとセレスタを三分する人間族の商業組合の本拠地。セレスタ内にしては雰囲気は落ち着いていて、治安もいいが若干異種族に対する差別意識が見え隠れする、とも。
 セレスタ北方軍団の司令部が置かれ、将軍級(マスターナイトではなく、本職としての指揮官教育を受けた)の軍人が多数居住する。
 劇中では一回も訪れていない。ディアーネが単独で交渉には向かっている。

・タルク
 セレスタ南部、砂漠の際に位置するオアシスコロニー。ダークエルフとオーガが主構成種族。
 ダークエルフ商工会の根拠地であり、ヤシの木と日干し煉瓦、多数のオアシスが街周辺に点在する砂漠文化の象徴のような都市。
 ディアーネ、ヒルダの出身地であり、彼女らの兄弟が多数居住する。コロニーリーダー(市長)もディアーネの兄カルロスが務めている。
「水浴びオアシスでは混浴、かつ恥ずかしがらない」「刃物を贈ったらプロポーズのサイン」などの独特の生活ルールがあり、またダークエルフが一般的には忌避されがちな性的魔法開発に積極的なために性風俗も盛ん。このあたりの性質は商業国家の面目躍如とも言える。

・クラベス
 セレスタ南西部、森林領と呼ばれる地域を統括する州都。
 分類上はエルフコロニーであり、最高責任者であるディオールはコロニーリーダーと呼ばれるが、本来は「空色の氏族」というエルフの一氏族の長であり、この森全体を一種の王国のような形で統治する。
「刻紋」という、魔法的ラインの描画による特殊な物体加工技術を確立して研究を進めている地で、その技術のやり取りで政治的な平衡を保つ学術都市の側面をも持つ。
 オーロラの出身地。その兄ルーカスが勢力を伸ばしていたが、調子に乗りすぎて現在は謹慎中。

・ヘリコン
 タルクとクラベスの中間、湖沼地帯に存在する街。
 大した名物もなく、はっきり言って普通の宿場に過ぎない街だったが、アンディたちを送る際のライラの来訪によって「ドラゴンの街」として町おこしが始まった。
 ライラも別荘として気に入っており、現在もライラが訪れると即座に酒盛りが始まる。
 サンドワームが数年おきに襲ってくる地域でもあり、対応に手を焼いている。

・ルナの猫獣人コロニー
 ドナ・バジルを中心とした猫獣人たちのコロニー。他と交流がほとんどなかったため、区別するための地名のようなものはない。
 砂漠の真ん中にあり、砂漠大迷宮からしか道が通じていないため、陸の孤島といえる。
 猫獣人は満月の夜に他種族よりも強烈に発情するが、ここでは長期的な気の流れの影響で男女のバランスが崩れた結果、少ない男が満月の夜に何人も相手せざるを得なくなり、その過酷さから逃げ出す男性や家族に逃がされる男性が続出、それがさらなる一極集中を呼んでしまい結果的に男性が一人もいなくなってしまった。
 そのため性欲の解消に支障が出ているのはもちろん、妙齢ながら子供が欲しくても相手がいないという女性が非常に多く、そのためたまたま立ち寄った精力過多のアンディがアイドルと化している。リーダーのドナが黙認の姿勢を取り、元々の猫獣人の楽天的で享楽的な性質もあって、ほぼ村中の女性といつどこでセックスに及んでもOKというアンディ専用の娼館ならぬ娼村状態になっている。
 ルナがアンディたちに合流してから度々訪れるようになり、ドラゴンの翼を利用してポルカに傷病者を運んで治療させたり、あるいはアンディに重点的に種付けさせたい娘を送り込んだりと交流も太くなり始めている。

・その他
 小国に匹敵する広さの砂漠大迷宮内にはいくつものコロニーがあり、アイザックの出身地である牛オーガコロニー、ミカガミ姉妹の住んでいた狼獣人コロニー、ジャンヌの生まれたドワーフコロニーなど、単独では小規模ながらその数はかなりのものになっている。
 同じ迷宮内とは言えルナたちの猫獣人コロニーはアイザックたちの迷宮上のラインとは離れており、交流はない。


・レンファンガス王国

・レンネスト
 レンファンガス王国首都。城塞都市。国土のほぼ中央に位置している。
 飛びぬけた魔物の発生率の高さにより「大陸一危険な国」として知られる同国だが、それゆえに兵士や騎士には高収入が約束され、多くの腕自慢たちが集まる。
 そのために活気は非常にあるが治安もあまり良くはない。
 その地理上、城塞を常に実戦使用している珍しい首都であり、兵士の練度は高い。
 アンディたちのための拠点として貴族屋敷が一軒貸し与えられている。
 テテス・マーレイの生まれ育った街。

・カタリナ
 レンネストの北、五日ほど進んだ先にある最前線の街。というか積層型の砦。
 遠くから見るとアリ塚に見える。下層は頑丈な石積みの壁で防御され、オーバーハングとなった上層から物を落として攻撃ができる構造になっている。
 ネイア・グランスが最初に保護されたのがこの街の守備隊によってであった。
 内部は螺旋状の通路が頂上まで続いており、延べ面積は結構広い。街としての機能は充分にある。

・ギブリ要塞
 レンネストの北東、東方山地の斜面を背負った大要塞。
 幾重にも壁を巡らせ、その壁の中を仕切って小部屋を作り、効率的に魔物を分断して包囲攻撃できるように設計されている。
 その構造上、突撃しかしない魔物に対しては滅法強いが対軍防御は考慮されていない。位置的に考慮してもしょうがないだけでもある。
 大陸最大の破壊力を誇るゴールドアーム、アネット・ランジュのための専用武器発射装置が建設されている。発射時には個人出撃にも関わらず周囲に避難命令が出される。

・アリーゼ砦
 カタリナとギブリ要塞の中間点にある砦。
 岩山の間にあり、地形的に有利なので守備兵はあまり多く置かれないが、そのせいで時々ピンチになることも。
 アンディとマイア、そしてアンゼロスとオーロラのエースナイトコンビが一度鮮やかに救ったことがある。

・ミストラル
 レンファンガスでも比較的安全な南部にある美しい街。
 ポンド伯爵家が領有していた。反乱の罪により没収され現在は天領とされている。
 劇中では一回も訪れていない。

・アブロロス
 レンファンガス南部の大きな街。規模的にはレンネストと同等の大きさを誇る。
 南のヴァレリー湖畔諸国への玄関口であり、レンファンガス領内としては例外的なまでに優雅で平和。
 エコー公爵家が領有しており、位置的にも政治的にもキナ臭い動きが起きやすい為、常にブルーアームが数名入りこんでいる。
 劇中では一回も訪れていない。




アフィルム帝国

・帝領
 アフィルム帝国を帝国として成立させた「皇帝」の直轄地。
 五大公が集う会議の場所であり、人口規模こそ劣るものの文化度ではトロット王都やクイーカにも負けない都会でもある。
 人間族が主流派であるが他の種族も肩身が狭くない程度にはいる。パワーバランスのため、アフィルムで種族差別がほとんどない唯一の地域。
 領内に乗用に適した飛龍の繁殖地があり、これを握っていることが影で国内外への大きなアドバンテージに繋がっている。

・レンヌ公国
 アフィルム帝国を形成する五公国のひとつ。北方エルフの傍系のひとつ「深緑の氏族」が支配する地域。
 アルメイダ、セレンの出身地。保有する部隊は弓での遠距離戦に定評がある。
 男尊女卑が激しく、またハーフエルフに対する苛烈な弾圧がある。

・ブランバクス公国
 アフィルム帝国を形成する五公国のひとつ。
 野性と戦闘力に長ける猫獣人と知略に長ける狐獣人が反目と協力を繰り返しながら勢力を維持していた獣人支配地域。他の獣人や人間族も少数ながらいる。
 特に夜戦や不整地戦に強く、神出鬼没の浸透戦術で恐れられた。
 多産の獣人族らしく母系社会で、家長はほとんどのの場合母親という。大公にも頻繁に女性が就任する。

・ペッケール公国
 アフィルム帝国を形成する五公国のひとつ。
 リザードマンと人間族が常に勢力争いをしている地だが、七年に一度どちらの種族が上位かを「部族戦」という闘技で決定し、相手種族は勝者の治世に必ず従うという掟がある。悪政をしたり反乱すれば他の種族や魔物に対抗できず容赦なく食われるという土地柄のため、意外にもうまく回っている模様。 
 狡知に長け、湿地戦に強いリザードマンの種族特性のため、特に川を使った防衛戦では強力な国である。

・バルグ公国
 アフィルム帝国を形成する五公国のひとつ。
 オーガが支配する、もっとも「蛮族」と呼ばれるに相応しいマッチョな国。オーガ特有の貞操観念のため、家や血統というものが軽視される傾向があり、とにかく最強の戦士が王座につくという明快な統治形態を取る。その分、ここの大公は統治者として必要な意識や知力に欠ける場合が多く、戦力だけなら最強であるにもかかわらず政治の場では他の大公にいいように翻弄される面も。
 とにかく戦闘経験豊富なオーガが多く、パラディンとロードを最も多く抱えるのもこの国。

・ガイオラ公国
 アフィルム帝国を形成する五公国のひとつ。
 ドワーフ鉱山の共同体。他の地域に比べると野心は少ないが、熟成された武装製作技術と強い忍耐力を利した伏兵戦術は脅威であり、怒らせると酷い目に遭う。
 地理的に半島の先端にあるためセレスタ商人と敵対意識が希薄であり、取引相手として懇意。そのため帝国とセレスタの交渉の窓口になったりする。

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