アイリーナとだらだらエッチしすぎて夜を明かしてしまい、男爵邸から朝帰り。
「どこに行ってたんだアンディ」
「……すみません、ちょっとアイリーナと……」
 ディアーネさんはちょっと困った顔をした。
「あー、まあ、止めはしないが……確認までに、お前アイリーナも雌奴隷にする気なのか?」
「フェイザーみたいなこと言わないで下さい……」
 奴隷奴隷と軽々しくみんな言うもんだから麻痺してるが、雌奴隷にするだなんて本来他人が聞いたらギョッとする仕打ちなのは間違いない。
「じゃあどういう関係にする気なんだ?」
「…………」
 現状セックスフレンドって感じだけど、言われてみるといろんな意味でちょっと危なっかしい状態なのは間違いない。うん。
「……正直な印象を言わせてもらうとだな」
「はあ」
「あいつ、立場上は言葉にしてないだけで、もう充分に……とりあえずルナ以上に雌奴隷状態だと思うぞ?」
「い、いやいやいや」
「人と交わりハーフエルフを生むのは未だエルフの間でそうそう許されている行為とは言い難い。ブレイクコアとディエル救出の英雄となった今のお前が相手なら、表立って糾弾はされづらいだろうがな」
「う……」
 確かにエルフたちはまだトロットなど外の世界と本格的交流を始めたばかりの段階で、セレンやアップルも俺とともになした功績ゆえに排斥できないだけ、という印象もある。
 まだまだ意識が裏返ったわけではない。
「……まあアンゼロスの父も白の氏族だというし、アイリーナの一族はあまり過激な方針でもないだろうが……それでも70年前には血が汚れたという理由で、外の賊に孕まされたアイリーナの侍女たちもまとめて放逐されていたりするんだ」
「……そ、そうですね……」
 でも中出しし放題してる俺、改めて超外道っぽい。
「だがな、アンディ。お前が意識すべきはそこじゃない。そこに関係しているが、そこじゃない」
「?」
「それだけの現実を押して、アイリーナがむしろ積極的にお前に懐き、体を許しているということ、だ。……あまり軽く考えてやるな、と言いたいんだ」
「……そう、ですね」
 それは酷く勇気のいる行為なのかもしれない。
 それなのに俺はセックスフレンドなんて軽い言葉で気取り、アイリーナを軽く扱いすぎていたかもしれない。
 いや、軽々しく欲望のままに抱いて、許されていることに甘え過ぎていたかもしれない。
 もうあまり気軽にするのはやめよう……いや、ついさっきまでアイリーナの膣をぐちゅぐちゅと楽しみ続け、半分眠りながら何度も何度も流し込んどいてどうかとも思うけど。
「改めて思い知ったという顔だな」
「は、はい……」
「じゃあ改めて聞こう。……アイリーナがもし森を放り出されたら、お前のどういう相手だ、と決着をつけるつもりだ?」
「はい?」
「今さらもう抱かない、で済む状態でもないだろう? アイリーナはあれだけの障害を自覚しつつお前につきまとい、何度もお前とセックスしているんだ。お前が考えるべきは今後アイリーナを抱く抱かないじゃない。アイリーナを雌奴隷に加えるか、妻として扱うか、あるいは用が済んだら捨てるかだ」
「捨てる、って……」
「まあお前はそんなことしそうにないが。よく考えてやれ。おそらくアイリーナはもう森かお前かと言われたらおまえを取って放逐される方を選ぶ。半端な言葉で濁してやるなよ」
「…………」
 ディアーネさんに言われて、確かにそうだと思う。
 中に出されるのを名目上拒んではいるが、セックスを拒まないし中出しされた後はもう吹っ切ったように俺に甘えまくってしまうアイリーナだ。これで子供が出来てしまって、俺に「産め、森を出ろ」と言われたら……思い切っちゃうんだろうなあ、と思う。
 ……あれ?
「待ってくださいディアーネさん」
「なんだ」
「俺、今さらですがこれってものすごく、フェイザーの言う調教っぽいことしてませんか」
「犯して、狂わせて、自分の言う事を聞かせる……あー、確かに今までの雌奴隷で一番それっぽいな」
 アイリーナとはエッチするまであまり親しくはなかったし。エッチしてから劇的にべたべたと気軽にまとわりつくようになったのも事実。
 今までの子はなんだかんだと、普通の好意やちょっとした勘違い、種族の事情や個人的な性的趣味などが先に立ってただけに、アイリーナほどそのまんま性的な関係からドツボにハマった例はなかった。
「ひぃ。その肩書きだけは勘弁を」
「……まあ、その。フェイザーにはくれぐれも知られるなよ」
 見捨てられた。
 ……うん、ここまでフォロー不可能だと普通見捨てるよね。


 昼過ぎ。
 たまには鍛冶場にこもらず行軍訓練と射的訓練をこなす俺。
 油断すると体力なんてすぐ落ちてくる。殴り合いは他の連中に任せるにしても、いざと言う時逃げることさえままならないんじゃ話にならない。
 ということで、俺は森のそばの道を何度も往復し、草原に立てた案山子の的を撃ったりして体力の維持に努めるのだった。
「ふー……」
 最近は夜のベッドではヘバらなくなってきた俺だが、やっぱりエッチと走るのでは使う筋肉が結構違うらしい。
 走れる距離自体はあんまり伸びていなかった。
「ふむ。精が出るのう」
「アイリーナ」
 いつの間にかアイリーナが道端の岩に座っていた。
「というか、昨日の今日でよくそれだけ走れるもんじゃ。わらわは目が醒めてからしばらく腰が立たなかったというに」
「あー……ごめん」
「わらわは悪いとは言っておらんぞ? ……うむ。たまにはああして時を気にせず欲望のまま……というのもその……」
 耳を垂らして照れている。
 まあエッチの時のテンションではなかなか話せないか。
 だが。
「……ふむ、時を気にせず……か」
 照れ照れとした表情をぴくんと真顔に変えた。
 しばらくじーっと考え込む。
「何を考えているんだアイリーナ」
「む? いや、その……ところでスマイソン殿はよく考えればあまり森に詳しくないのう?」
「いや、そりゃ詳しいか詳しくないかといわれたら……でもトロット人ではトップクラスに森を知ってる方だと思うけど」
 唐突な話題振りにちょっとたじろぐ。走りこみの後でちょっと頭がふらつくのもあって、キビキビと返答が出てこない。
 アイリーナは「そうじゃったな」と頷き、がしっと俺の手を取った。
「よし、それでは今日は森を少し案内してやろう。わらわはそれが本分じゃ」
「え、何いきなり!?」
「森の救いの英雄たるスマイソン殿が森をよく知らぬというのも妙な話じゃろ? 半分以上の氏族領を知らぬではないか。祝福を捧げてこれでは、北の森のエルフが恩知らずと言われてしまう」
「誰に!?」
 なんか無理矢理な理屈に聞こえなくもないが、俺はずんずんと引っ張るアイリーナの手を振りほどくことも出来ずに森の中に踏み込み。
「────。開け」
 古代結界を超える。


 森に入ってすぐの場所は銀の氏族領。
「行軍訓練のまま来たら後でライラとかディアーネさんが騒ぐから、一度戻ってから改めて……」
「何、案ずるな。あとで使いの者を出す」
 アイリーナは妙に楽しそうに銀の氏族の中心集落、氏族庄をてくてく歩く。
 ついていく俺。
「あら、白のアイリーナ様。ごきげんよう」
「ふむ、良い日和じゃ」
 道ゆくエルフがアイリーナに簡単な祝福の印を切る。目上にはそうするのがエルフたちの本来の挨拶なんだそうだ。
「ポルカのスマイソン様もご機嫌麗しく」
「あ、ども」
 俺も軽く会釈。
 銀の氏族のエルフは少し微妙な立場にあるので、出方を見るまではそのエルフの態度がよくわからない氏族だ。
 中には俺を見てケッという態度をとる中年エルフもいるし、フェイザーも銀。
 だがその一方で、マイアの出身地であるミスティ・パレスの従属氏族という一面もある。
 ミスティ・パレスのドラゴンたちは俺にはほぼ全面的に友好的態度をとっているので、今俺に挨拶してきたエルフのように、ドラゴンの意向に沿ってこちらを邪険にしない者も少なくないのだ。
 あと、直接ポルカと近い位置にあるのも大きい。ドラゴンたちの意向の手助けもあり、また好奇心旺盛な若いエルフたちは少なからずポルカに交流に出てきている。そんな中には人間族を既に良い友人と考え始めているものもいる。
「汗もかいておることじゃ、温泉に入ってゆこうではないか、スマイソン殿♪」
「あー……そうだなあ」

 銀の氏族領はまた、ポルカと源を同じくする霊泉の湧出地域でもある。
 効能もほぼ同じ。
 ただ、この見通しの悪い森の中ではあまり人が来ないので浴場を整備する必要性がないのか、あるいはそういう伝統なのか、いくつもの泉として溜まった霊泉は特に囲いも着替え小屋もなく、空いている所に適当に入れ、というアバウトなスタイルが取られていた。
 特にどの泉がどちらの性別用と決まっているわけでもない。そんな状態なので、入っているかどうかを確認するために他人の入浴中に覗き込むのも咎められないし、特に気にしないということで同意を得られるなら一緒の泉に入るのもアリだという。
「……ディアーネさんとこのコロニーもこうだったなあ」
「この風習があるからこそ、銀の者以外はほとんど泉に入らず湧き水を飲むだけじゃという話もある」
「やっぱ普通のエルフは恥ずかしいよなコレ……」
 森を歩き回りながらいくつもの泉を覗き込むと、美容に気を使うのか、やはり女性が入っていることが多い。そして俺とアイリーナの顔を見ると苦笑いして「ご一緒しますか?」とか聞いてくるので是非にと答えそうになるがアイリーナが断ってしまっていた。
「話によると、ミスティ・パレスの竜が裸体を気にしない習慣が、銀の連中にも影響しているというが」
「俺は今ブロールさんたちをとても尊敬している」
「たわけ」
 木の棒で殴打された。

 7、8個も全裸エルフ、いや泉を巡った後、少し奥まった泉でようやく誰もいない空きを見つける。
「よし、じゃあ入るか」
「うむ」
 俺が服を脱ぐとアイリーナも当然のようにぱんつを脱いだ。
「待て、一緒に入るのか」
「ふむ? 今さら気にするかの?」
「いや気にしないけどいいのか」
「わらわは最初からそのつもりじゃったぞえ?」
 意地悪く微笑みながらスカートを落とすアイリーナ。無毛の股間が木漏れ日の中に晒される。
「今俺疲れてるからさ」
「ふむ」
「……ちんこえらい元気なんだけどそれでも一緒に入る?」
「疲れていなくても同じじゃろ」
  アイリーナは上着も脱いで木の枝にかける。髪を軽くツタの葉でポニーテールにまとめて泉に浸かり、ニヤニヤしながら俺が脱ぐのを待っていた。
「上等だ」
「よいよい」
 俺がパパッと脱いでアイリーナの隣に入る。ほどよくぬるくて長湯に最適っぽい。
 そして。
「……ふう」
「ふー……よい湯じゃ」
 二人で溜め息をついた後。
「じゃあいただきます」
「ふわっ……も、もう少しゆっくり湯を楽しまんか、たわけがっ」
「やだ。こら逃げるな」
「捕まえてみせい、そなた体力勝負の軍人じゃろ♪」
 ばちゃばちゃとアイリーナと泉の中で追いかけっこ。
 途中から水の上を歩く魔法を使ったアイリーナの尻がちょうど俺の顔の高さになり、余計に煽られながら必死で追いかける。

 そして最後は、ほとんどわざと捕まったっぽいアイリーナを浅瀬で押し倒す。
「ふふっ……湯殿でこんなにふざけたのは久しぶりじゃ」
「仮にも氏族長がはしたない恰好でふざけちゃいけません」
「それに見事に煽られて発情した顔で組み伏せておるのは誰じゃ?」
「俺です」
 見境なくてごめんなさい。
「んっ……」
「んむっ……んれるっ……」
「んちゅっ……んんー」
「……ふう」
 アイリーナとキスを交わす。その薄い舌と小さな口腔は、俺の舌の侵入を拒まないばかりか積極的に俺の舌を巻き取ろうとする。
 意地になって舌先を追い、口の中を舐め回しあう。
「……たわけ。偉そうな事を言いながら何たる淫らな舌使いをしよる……♪」
「……はしたない氏族長に対するお仕置き」
「わらわは銀の郷に入り、銀の風習に従ってみたまでじゃぞ? 勝手に発情したのはそなたじゃ」
「発情するだろ普通」
「……そなたの普通など知るものか、わらわはそなたのことなど大して知らぬ……その逸物の猛々しさ以外、な♪」
 アイリーナが軽く俺の腰に片足をかける。誘ってる。
 こういう場面でただで誘いに乗るのはちょっとカッコ悪い気もする。
 が。
「じゃあいいことを教えてやる。俺は超スケベだ」
「それは、知っておるっ……んんっ!!」
 そのまま、俺は誘われるままに挿入した。
 カッコ悪くていい。アイリーナが可愛くていとおしい。
 この状況で恰好気にして我慢できるほど俺は二枚目じゃない。
「んぁ……っく、はぁっ……♪」
 アイリーナの濡れたポニーテールが水深数センチの浅瀬に広がり、シャパシャパと複雑な波紋を広げる。
 俺の片手に両腕掴まれ、逃げられない体勢。傍から見たらどう見ても俺悪者。
 だが、その両足は俺をカニ挟みに捕まえて離さない。俺の乱暴な往復運動をする腰が逃げていかないように、俺の腰をとっ捕まえて抽挿をしっかり受け止める。
 そして俺とすこぶる相性のいいその膣は、俺のちんこを大喜びで咥え込んでいた。
 すっかり俺に犯されることに馴染んだ幼膣は、俺のひと突きごとにキュウキュウと締め上げて咽び泣く。溢れ出る愛液は快楽に歪むアイリーナの表情、その唇や瞳から溢れる液体と連動しているようだった。
「はーっ……はーっ……♪」
「アイリーナ……アイリーナ、気持ちいいぞ、お前の体っ……!!」
「わ、わらわもっ……わらわも、溶けそうじゃ……♪」
「そろそろ、出そうだっ……」
「わ、わかっておるじゃろうな……外に、出すんじゃぞ……っ」
「ああ、わかってる……わかってるけどっ……」
 アイリーナの足が全然離してくれません。
「……どっかの淫乱が外に出るなって言ってるから無理っぽい……」
「誰じゃ、そんなデタラメを言う変態わっ……♪」
「誰だろうな……? く、出る、出るぞ、アイリーナッ!!」
「んぅぅっ……あ、中にっ……この、たわけ、中に……♪」
 ぎゅーっと足を締め付けたまま、俺を罵りつつ膣奥に射精を受けるアイリーナ。
 俺は脱力してアイリーナに覆い被さる。んんー、と俺の胸板の下で顔を横にして重そうな声を上げるアイリーナ。
「……はあ、はあっ……」
「……また随分出しおって……まあ、朝までずっと種付けしておったわけじゃし、今さら抜いても意味なぞなかろうが……無遠慮にもほどがあるわ♪」
「抜こうとは思った……うん、俺悪くない」
「嘘ばかりつくな、思い切り膣奥に種汁塗りつけてからに」
「バレた?」
「バレるも何もないわ、わらわは犯されておる本人じゃぞ」
 ペシ、と頭を叩かれた。
「……そろそろ交代じゃ」
「?」
 泉に利用時間制限でもあるのかと思ったら、アイリーナに無理矢理転がされて俺が下にされた。
「そなたがずっと覆い被さっていては重いじゃろうが。わらわは小さいんじゃぞ?」
「ごめん」
「……まったく、少しは配慮せい」
「でも抜かないんだな」
「疲れたのじゃ。すこし寝床になるがよい」
 アイリーナは俺のちんこをくわえ込んだまま、ぺとっと俺の上でうつぶせに寝そべる。というかただ甘ったれてくっついてるだけとも言う。
「……そなたは萎えぬのう」
「多分お前がそのまま寝たら、特に動かなくても30分に一回ぐらい射精する」
 アイリーナの中すごく気持ちいいし。
「試してみるかのう」
「マジで?」

 本当に射精するまで粘られた。


 さっぱりしたんだかスッキリしたんだか。
 俺たちは泉の森を出て、氏族庄の特定地点にある広場に向かう。
 歪な形の広場だが、同じ形の広場がどの氏族庄にもある。
 その広場同士を簡易な魔法を起動することで移動するのだ。
「次は……そうじゃな、せっかくじゃから金の氏族庄にゆくか」
「金ってなんかあるの?」
「金の領地には大河が流れておっての。景色のよさは随一じゃ」
 アイリーナは自慢げに言い、転移術を起動した。


 金の領地は下手すると青蛇の峰にも及ぶかというような高い山がひとつ、デンとそびえている。
 その脇を流れる川。水源は山からも一部あるっぽい。
 幅数百メートル、落差も多分100メートル近い滝があり、その近くに氏族庄があった。
「おおー」
「すごいじゃろう」
「確かにこりゃすごい。前に遠征で大アルモニカ河行ったことあるけどこんなすげー滝は見なかった」
「あの英霊峰と、この滝が金の自慢のひとつじゃからな」
「英霊峰?」
「我らの伝説によると、ふさわしき格を備えたエルフは死後、下級精霊となってあの山に宿るという。そしていずれは光の精霊の一部になるのじゃ」
「へー。エルフにもそういうのあるんだなあ」
「人間族にもあるのか」
「結構一杯ある。トロット教会の教えでは、死んだ人は気の流れに乗って巡り巡ってライカ山に行く」
「ほほう」
「大地の守護神にそこで審判を下されて、また新しい運命を貰って生まれてくるんだってさ」
「他には?」
「セレスタではそれこそコロニーの数だけ違う死生観があるっぽいからなー。まあ最近はあんまり地元信仰信じない奴が増えてるらしいけど」
「嘆かわしいのう」
 喋りながら、アイリーナの先導で近くの牧場に行く。

 牧場では小規模ながら一角馬を飼っていた。
 そのうちの1頭を借りて、二人乗りで川に沿って少し登り、川に沿って存在する大断崖を見に行こうという話になったのだが。
「むー……なかなか乗せてくれる馬がおらんのう」
「一角馬は処女好きって話があるし、今のアイリーナじゃ乗せてくれないんじゃないか?」
「め、迷信じゃっ! そなたのつけた匂いが悪いのじゃっ!」
 アイリーナは一角馬にことごとく逃げられていた。
「むー……ゴルクスの姉上は嫁に来ても平気で一角馬に乗っておったがのう……」
「ゴルクスのお姉さんって白に嫁に来たの? もしかしてゴルクスってお前と義理の兄妹だったりすんの?」
「4、5代ほど遡れば確かにゴルクスの義兄もわらわの縁戚じゃが、わらわ自身は兄弟はおらんぞ」
「びびったー。……ゴルクスにアイリーナ犯したってバレたら殺されるかもと思った」
「あやつはあやつでよく白の領地に来ておったし、わらわが幼いころはよく遊んでくれた仲じゃからな。わからんぞ?」
「……あの、切りかかられたら俺一発で死ぬからね? アンゼロスとかと違って全然防御とかもできないからね?」
「くくく、バレたら一大事じゃな♪」
 意地悪く笑うアイリーナ。

 結局、老馬が1頭なんとか言う事を聞いてくれそうだったので、2、3人乗り用の小型馬車をつけて川沿いの道を遡っていく。
「意外とエルフいねーなー」
「金は特に人数が少ないからのう。英霊峰がやたらと気の浄化力が高いおかげで繁殖力が特に細っておるのでは、とクリスティが言っておった」
「その理屈で言うと、聖獣迷宮があった赤も少ない?」
「それほどではない。赤はなんだかんだ言っても割と外に出る氏族じゃからな、その分悪い気もバランス良く浴びておるのじゃろう、とこれまたクリスティの弁じゃ」
「いろいろあるんだなあ」
「何、外の俗世に比べれば大した話はない」
 ぽっくりぽっくりと坂を登り、滝の上へ。そのまましばらく馬車をゆっくり進めると、川遊びをしているエルフたちが見える。
 そういや今は夏なんだよな、まだ。ポルカはもう秋だけど、常春の森の中ではもっと季節の進みが遅いのだろう。
 それにしても……あのエルフたちも見た感じ裸だ。銀のことをどうこう言えるものではない。
「なんだ結構羞恥心低いじゃん、ここも」
「滝の上は女の水浴び場、滝の下は男、と決まっておるだけじゃ。間違ってもこれ以上近寄るでないぞ、射られても知らぬぞ」
「……ハイ」
 まあそうだよね。うん。

 空が赤くなるころに大断崖に着く。
 川に削られた大地の芸術だった。
 高さはゆうに500メートルぐらいありそう。下から見上げると凄い迫力。
「こんなんがあるなんて、エルフの森も思ったよりすげえじゃん。もっとなんにもない森だと思ってた」
「古代結界で歪んでいる分、広さだけならトロット王国の三倍以上になるという話じゃからな。広ければそれなりにいろいろあろう」
「そんなん回ってたら一ヶ月二ヶ月で済みそうにないなあ」
「ま、2、3日で済むところだけを案内してやろう。感謝して崇めよ」
「いやお前、無理矢理連れてきたんじゃん。エルフが恩知らずって言われないためとか言って」
「エルフ全体にとってはな。じゃがわらわに個人的に感謝の念を持つのはそなたの自由じゃ」
「あー、……まあいいや。確かにいいもの見れてる気がするし」
「ほほほ」
 美峰。大断崖。ゆるやかな大河。そして虹を作る滝。
 感謝してもいい。確かにそう思えるくらい雄大な眺めだった。
「さて……か、感謝しておるなら態度で示すのが礼儀と思わんか?」
「?」
「……さ、幸いにして、いや不幸にして、わらわはもう既に今日は幾度も好き放題そなたの中出しを受けておる。もはや何度流し込んでも変わらぬ」
「いや待て、いきなりこんな広いお外で何を言いやがってますか氏族長」
「え、エルフはまぐわうにいちいち屋内に篭もるなどせぬのじゃぞ。むしろ恋人といえば二人で森の奥に行くのが子作りの暗喩じゃ」
「……あー」
「じゃから……その……」
「わかったわかった。……この淫乱め」
「っ……♪」
「あ、あと……」
「む……?」
「……恋人、がいいのか、アイリーナ?」
 もののついでを装いながら、ちょっと重要なことを聞いてみる。
「あ、あう……」
 アイリーナはスカートの裾をいじりながら、耳を垂らし、真っ赤になってしどろもどろで言う。
「そ、そなたは英雄じゃが所詮は人間族じゃし、わらわはこれでもエルフの頂点の一角じゃ。わ、わらわに恋をしてしまうのは致し方ないことじゃが恋人同士の付き合いはその、多分少し難しいかも知れぬ」
「そうか……」
「じゃ、じゃがっ……」
 アイリーナは俺の手をぎゅっと握り、少し必死な表情で俺を見て。
「……そなたなら、わらわの都合など無視してくれよう」
「…………」
「わらわを……わらわを、強引に我が物に、してくれような……?」
「……言っとくぞ、アイリーナ」
「…………」
「俺はそう言うの雌奴隷って呼ぶぞ?」
「……知っておる」
「雌奴隷って、お前が思ってるよりかなり恥ずかしい名前だし、俺は自分の雌奴隷には遠慮しないぞ?」
「……知って、おる」
「それでも」
 俺は、わざと。
「それでも犯されたいか淫乱」
 酷い言葉で言う事で、彼女に逃げ道を作って突き放して、それでもどこか自分でも甘ったれている気がする声で彼女に迫る。
「……わらわは、氏族長。白の氏族長アイリーナじゃ」
 そして、アイリーナは形だけ毅然として。
「それでも犯すのじゃろう、変態?」
 俺に決断を迫り返しながら、マントの留め金を外して落とす。
「……よく知ってるじゃねーか」
「……淫乱じゃからな♪」
 そして、二人して互いに責任を押し付けあいながら、キスをして、茂みに倒れこむ。
 一角馬はブルルと鼻を鳴らす。茶番だ、と笑ったのだろうか。

(続く)


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