とりあえずマイアには必死こいて落ち着いてもらって、そして俺自身はライラの幻影(俺とは別の場所に俺の幻影を映し出し、俺自身は隠してもらった)でなんとか矢の雨を凌ぎきって事なきを得る。
 とはいえ、マイアのドラゴン体が視界内に入ってから流石に射撃も大人しくなったので、ほとんど保険だったけど。

 ……で、俺は人間体に戻ったマイアと服を着たライラに両脇を挟まれて、みんなの前に引っ立てられる。
「た、ただいま」
「やあおかえりスマイソン。確か出て行く時には雌奴隷はセレンちゃんだけだったと思ったけど、随分美人に囲まれてるじゃないか」
 ウィリアムズがにこやかに言う。
 うん。それ笑顔のつもりなら顔の上半分もちゃんと笑顔にして欲しいな。
 それに続くその他の隊員たち。
「アンゼロス十人長にまで首輪がはまってるのはどういうことなのか説明を戴きたい」
「それどころかざっと見ただけで首輪っ子がひのふの……し、七人もいるだよ!?」
「どういうことだスマイソン十人長! 何故百人長もこんな暴挙を黙って見ているんですか!」
「その、あとついでにさっきのドラゴンみたいなの、アレなんですか」
 それらの質問にどう答えたものか迷っていると、コホン、と咳払いをしてディアーネさんが俺の前に立った。
「あー、その……とりあえずスマイソンのことについては明朝ということにしてくれないか。我々は長旅から戻ったばかりだ」
「そんな!」
「百人長、これは我々の心の軍法会議だ!」
 かなりマジな顔で訴える隊員たちをジロリと睨んで、ディアーネさんは深く溜め息をつく。
「こんなことを言いたくはないが、お前たちはそんなだから女に縁がないんだぞ」
「!?」
「ど、どういうことですか!」
「私やセレン、アンゼロスはともかく、初対面の女性が何人もいるのに挨拶もなしに醜いところばかり見せていたのでは、お前たちに好意を抱く女もいはしまい」
「くっ……」
「うぅ」
 微妙に勢いをなくすムサい隊員たち。
 そこにアンゼロスが追い討ちをかけた。
「大体、僕や百人長がいないからって羽を伸ばしすぎだ、お前たち。軍の兵器の私用は営倉ものだぞ」
「そ、それはその……」
 怯む隊員たち。
「それともウィリアムズ、アイザック、お前たちが許可したのか?」
「報告書を提出してもらわなくてはならんな。最悪、降格処分もある」
 ディアーネさんも加わって脅しにかかっては、さすがにみんなも色をなくす。
 ちょっとかわいそうだけど、まあ今釈明しようにも全然言い訳が思いつかないし。
「それよりディアーネちゃん、私たちの泊まるお部屋あるの?」
「最悪アタシは馬車の中でもどこでもええだよ」
「がるる」
 絶妙に合いの手を入れるヒルダさんとジャンヌ、あと相変わらず他の隊員たちに敵意剥き出しにしているマイア。
 オーロラとライラは超然と、セレンとアップルは控えめに場の流れを注視している。
「……あとのことは明朝。いいな? それと姉上たちは客間へ。さすがに一晩くらいは雑魚寝を覚悟してもらう」
 ディアーネさんの念押しのような一言で、隊のみんなは渋々と引き揚げていく。
 そして、残された俺たち。
「……随分過激な隊ですわね」
「過激すぎませんか……?」
「すまない。僕たちがいればもう少しは規律正しいんだけど」
「思えばセレンが来た時も地味に嫉妬されていたからな」
「なんだか随分昔の話みたいな気分ですよねぇ」
 ああ、でも帰ってきたんだなあって気がする。
 このアホたれでエネルギッシュな空気、これでこそ俺たちのクロスボウ隊。
 そう思うと、あまり腹も立たない。いや怖かったけどさ。


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