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数日後。
「はいはーい、目を開けちゃ駄目だからねー……流しますよー♪」
ざばー、とセレンが水をかけると、小さな頭はぶるぶると水を跳ね飛ばした。
その頭には2本の小さな角。
「……桁外れじゃな、この霊泉は」
ライラが苦笑する。
「腕を落としたというのに、たった三日で傷痕もなく治ってしまうとは……」
「繋いだ私が言うのもなんだけど、奇跡よねぇ」
ダークエルフ姉妹も並んで苦笑。
……少女は、ヒルダの腕前も多分にあるのだろうが……瀕死からあっさりと全快していた。
「姉上は、やっぱり凄いな」
「ふふーん。尊敬した? 敬った?」
「ああ……私ではああは行かない」
「じゃあアンディ君見つけたら、独占で一晩貸してね♪」
「いやそれは私の独断では」
「ほ。まあ一晩に余る働きはしたと思うがの」
相も変わらず、アンディたちの手がかりは見つけられていなかった。
が、まあなんとかしていると不思議と確信している。アンディはきっと、見つかるまで持ちこたえる男だ。そう信じていた。
「ねーねー、ヒルダ先生」
「なぁに、サラちゃん」
「助けてくれたお礼に、これあげる」
湯上りの散歩中、サラはとてててっと道の脇の雪塊に近づき、わしわしと掘って中から大事そうに氷塊を取り出した。
「このまえ、縄跳びの練習してた時に見つけたの」
矢の突き刺さった真球の氷。
「……ほ。ディアーネ、あの球……マイアのじゃぞ?」
「矢は……あの矢は、この前フェイザーという男が撃っていたのと同じ」
ライラとディアーネは顔を見合わせた。
『サラ、えらい!』
「え、ええっ!?」
サラはディアーネとライラに抱き締められ、ぱちくりと目を瞬かせた。
森の中、古代結界の手前。
ライラ、ヒルダ、セレン、ディアーネが力を合わせて結界を力づくで穿っていた。
「ふむ。……古代結界、なんとかなるものなのか」
アーサーがゴーグルを上げ、結界を見つめる。その空間を見通す右目は、多重呪文によってパイの皮を割られるように無理矢理こじ開けられていく結界の姿が見えている。
「早く通れ」
ディアーネの号令で、他のメンバーが次々と結界に入っていく。
「さあ……返してもらうぞ、北方エルフ」
閉じゆく結界をくぐりながら、ディアーネは再び、戦士の目をした。
(続く)
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