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 夜、俺たちは王都のホテルのひとつに落ち合った。
 正確にはセレスタ軍が宿舎として借り上げている宿で、特別諜報旅団員や飛龍便の伝令兵などが休むのに利用するところなんだそうだ。
「そうか。そんなことが……」
「アンゼロスさん、どうするんですかねえ」
「親と故郷にかかる問題でしたら……正直、わかりませんわね。自分ひとりのわがままで皆を不幸にしてしまうのでは」
 借りた部屋のひとつに閉じこもってしまったアンゼロスを、みんなが気遣う。
「ところでそっちの首尾は?」
「トロット軍団司令部への面通しか? 上々だった。ライラがなかなかいい演技をしてくれてな」
「ほ。ちょいとドラゴン体で威嚇しただけじゃがな」
 可哀相に。居合わせた兵士たち、夢にドラゴン出るだろうなあ。
 ……と。
「……アンディ」
 ドアが少しだけ開いて、アンゼロスがか細い声で呼ぶ。
 俺は周囲のみんなに目配せしてから、部屋に入った。

「……正直、すごく迷ってる」
「そうか」
「…………」
 アンゼロスがいきなり恨みがましい目をした。
「迷うなよ、って言って欲しかった」
「……俺だって、自分が一言言うだけで親父や故郷のみんなが失業するとなったら迷うさ」
「そうか。……うん。そりゃそうだよな」
 ベッドに腰掛け、ぱたぱたと足を振りながら、アンゼロスは寂しそうな顔をする。
「そういやアンゼロスの親父さんって、エルフなんだろ? 今どうしてるんだ?」
「こっちの水が合わないみたいでね。たまにこっそり母上と僕に会いに来るけど、普段は北の森に住んでる」
「親父さんは、どう言うだろうな」
「……わからない。そもそも人間社会がほとんど理解できない人だから。僕にも母上にも、人の心がそれでいいと思うなら、それでいいんじゃないか、としか言わなかった」
「…………」
 世の中色々だなあ、と思う。

 しばらく、アンゼロスは足をぱたぱたさせ続けて。
 ぽつりと言った。
「迷うんじゃねえよって言って欲しい」
「…………」
「お前は俺のものだって言って欲しい。他の男になんてやらないって、取られるくらいなら今から犯し壊してやるって、言われたい」
「思ってはいるぞ」
「言ってくれよ」
 耳がへろへろに垂れている。意気消沈の極み。
「……なあ、アンゼロス」
「?」
「さっき、お袋さんの前では『私』っつってたな」
「う、うん。……意識して男言葉にしたの、トロット出てからだから」
「今からしばらく女言葉でいてくれないか」
「……?」
 アンゼロスを同僚として見るのも悪くないけれど、女の子相手じゃないと言いにくい言葉がある。
 いくら女の子らしい服装で、髪型でも、できればそれっぽい感じにしてくれないとやりにくい態度ってものがある。
「アンジュって言ってくれるなら」
「わかった。……アンジュ」
「……はい」
「愛してる」
「!」
 耳がピンと跳ね上がり、アンゼロスの顔が真っ赤になった。
 今までやっぱりうやむやで、勢いで流していて、結局言ってなかった気がする言葉。
 俺みたいな浮気野郎が口にしたって凄く安っぽいとは思うけど。
 でも、アンゼロスには今、こうしか言えない。
 俺についてこい、なんて、無責任に家族と過去を捨てさせるようなことも言えないし、だからといってアイツと結婚した方がいいよなんて口が裂けても言えない。
 首輪つけて所有物にしたくせに、そんな弱腰でどうする、とも思うし、俺が無理強いするようなこと言ったって所詮腕力も歩行能力も何もかもないスッテンテンの今、アンゼロスが逆らおうと思えばいくらでも逆らえるのに変に遠慮する必要もないと思うけど。
 それでも、アンゼロスに今必要なのは、俺が与えてやれる言葉はこれしか思いつかなかった。
「そ、そんなっ、い、今さら……」
「今まで言ってない。言った覚えがない。だから言う。アンジュ、愛してる」
「…………っっ」
 アンゼロスはベッドにひっくり返り、シーツに顔を埋めた。
「……馬鹿っ」
「愛してる」
「嘘つき」
「嘘じゃない」
「……嘘だ」
「何で疑う」
「疑ってるんじゃない。……行動が伴ってないって言ってるだけ」
「?」
「……あ、愛してるなら、愛してよっ」
 アンゼロスはシーツに伏せたまま、くいっと腰を持ち上げた。
「……それは見解の相違というか、俺は真剣に言ってるんであってな?」
「ぼ……わ、私だって真剣に言ってるよ」
 ちょっとだけ顔を上げて、アンゼロスは俺をチラリと見た。
「……最初に言われてから、子宮が疼いてる」
「おい」
「アンディの愛を直で感じたくて、身体が勝手にそういうモードに入ってる。お前の愛の証拠、身体の奥で感じたくなっちゃってる。そんな状態なのにしつこく言うから、腰がもう抜けちゃってる」
「こ、この変態アンジュ」
「……うん。全然反論できない」
「愛してる」
「……っっ」
 じゅわ、とスカートの中で下着がみるみる濡れていくのがわかる。
「……でも、もっと愛してやりたいけど。今俺足動かないぞ」
「……う、うぅ……な、なんとかして」
「無茶を……」
 と、そこで閃いた。

 アンゼロスの服をひん剥いて、ベッドの周りに投げ散らし。
 髪に鼻を埋めるようにして、背中から抱きつく。
 そして、右半身を下にして腰を密着させる。
 ……いわゆる側位という奴。これなら左足が駄目でもなんとかなる。
「あはっ……アンディ、硬い……っ」
「お前がメチャクチャ可愛い顔してスケベに誘うから」
「アンディが私を言葉責めで骨抜きにしたのが悪い……っ」
「愛してるっていうのは言葉責めなのか」
「うん」
 難儀な女だ。
「……入れるぞ」
「入れて……さっきから、先っちょがお尻に触るたびに頭の奥に響くぐらい欲しいっ……!」
「このド淫乱……!!」
「うんっ……ん、はあぁぁっ♪」
 俺がちんこの位置を定め、押し込もうとすると、アンゼロスも腰を突き出して俺の侵入を助ける。
 二人の欲望に満ちた腰の動きで、互いに意図しないほど素早く、亀頭が膣奥まで一気にずにゅるるるっと入り込んでしまった。
「あ、あぅ……んんっ、これ……これ、好きっ……アンディのおちんちん、泣きたいくらい愛しいよぅっ……!!」
「俺も……俺も、お前のマンコ穴、朝から晩までずっと犯してたいほど愛してる」
「うあっ……ば、馬鹿ぁっ……♪ そんな嬉しい事言うなぁっ……♪」
 ほとんど涙声で俺の性欲に晒されることを喜ぶアンゼロス。
「いくぞっ……この、このっ……」
「ふあ……ふああっ……アンディ、アンディいっ……駄目、駄目ぇっ……、ちょっとコスれるだけで、頭の中、どピンクになっちゃうようっ……馬鹿ぁっ♪」
 互いに体重がかからない体勢のため、あまり奥を強くイジメるということはできないが、それを補って余りある異常なまでの発情とそれに伴う敏感さが補う。
 全く躊躇なく、互いの発情に飲み込まれようとする愛欲が、二人でみっともなく腰をヘコヘコぶつけあう、しつこくしつこく貪りあう芋虫のようなセックスを止めさせない。
「あぅ……あううぅっ……やだぁっ……やっぱりやだぁっ……アンディがいい、アンディのおちんちんに一生えっちなことされたいっ……アンディに毎日、愛してるって言ってもらえる人生じゃないとやだようっ……♪」
「この変態っ! 変態エースナイトっ! 変態チビ女っ! 変態ハーフエルフ! ……メチャクチャ愛してるぞド変態っ!! 妊娠しちまえこいつっ!」
「は、あああぁっ♪」
 ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!
 ……子宮に思いっきり精子を叩きつける。
 もう精子地獄の効果時間はとっくに切れているので、普通の射精量だけど。
「ああーー……あ、あっ……あー……あぅっ」
 アンゼロスは、全身を震わせて俺の射精を悦んだ。


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