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「っ」
 幻影から目覚める。
 その幻影は一瞬でしかなかったのだろう。誰の位置も表情も変わっていない。
 そして、俺はライラの伸ばした手をとっ捕まえ、引っ張って無理矢理胸に引きずり込んだ。
「なっ……!? ぼ、坊や、幻影が見えておらなんだのかえ!?」
「動くなバカドラゴン」
 そして、ちゃっちゃと首輪をつけてしまった。
「う……こ、後悔……するかもしれんぞ」
「俺は、ドラゴンライダーなんて興味ない」
「坊や!」
「坊やじゃねえよ。今からお前のご主人様だ」
 ライラの面食らった顔を両手で捕まえ、唇を突き出せばキスできそうな距離でじっと見据える。
「お前、そんなに寂しそうな顔して自分を適当だから気楽だから竜だからってペラペラうるさいんだよ。そんなに予防線張りまくらないと甘えることもできないのか。あの晩には甘えさせろって言ったくせに」
「……アンディ」
「言っとくけど俺はお前の力を使うような場面を持ってる男じゃない。勝たなきゃいけない相手も、倒さなきゃいけない悪魔も思いつかない。……だけど、今さらお前にビビってやるほどお人よしでもない。知ってるぞ、お前はただの寂しがりやでドMで露出狂でおっぱいでかくて美人のバカだ。あとちょっと空も飛べて火も吹ける」
「どこが『ただの』じゃ……」
「俺に比べりゃここにいる奴みんなスゲェんだよ。手がつけられないくらい。だから強いってだけじゃ今さら俺をヒかせるなんて無理だぞ」
「……弱っちいことを自慢するでない。頼りないご主人様じゃのう」
「気に食わないなら首輪外して返せ。こうなったらヒルダさんにつけてやる」
「嫌じゃ」
 ライラは笑った。
 そして、力を緩めた手からするりと逃れ、目の前で優雅に跪いて、はっきりと宣言した。
「アンディ・スマイソン。そなたを我が主、我が乗り手と定めよう。その命尽きても、子々孫々までも、我が力はそなたの下に。我が心はそなたの胸に」
「いいけど常識の範囲でな」
「ほ。無粋な奴じゃのう。……とりあえずベッドの上は常識の範囲じゃろ?」
「まーな。乗りまくってやる」
「楽しみにしておくぞえ」
 いつものライラの不敵な笑みが戻ってきた。


 続いて、ジャンヌ、アンゼロス、オーロラに首輪をつけてやる。
「これでアタシも正式に十人長んちの子だ♪」
「お前俺と同い年だろ……」
 変な喜び方をしているジャンヌ。
「……ちょっと夢だった」
「隊舎では外せよ。頼むから」
「丸首シャツ着るからいいだろ」
「……そこまでしてつけてたいか」
「うん」
 妙にてれてれしながら首輪を大事そうに撫でるアンゼロス。
「ふふふ。誰かの所有物というのも悪くありませんわね」
「ホント飽きたら外してくれよ。というかルーカス将軍に知れたら今度こそ俺片足じゃ済まない」
「あんな男のことなど気にすることはありませんわ」
「やだよ! 超怖ぇよ!」
 兄に辛辣なオーロラと、さすがにトラウマが抜けない俺。


 希望者全員に首輪をつけ終わると、首輪仲間同士できゃいきゃいと騒ぎ始めた。
「これでアンディさんの雌奴隷が一気に六人ですねー」
「六人ですの? ここでは五人に見えますけど」
「……なんでもアンディの出身地にまだ一人残してきているらしい」
「さすが十人長だ」
「こりゃあ曜日で分担かのう」
 そしてそれをちょっと羨ましそうに見ているダークエルフ姉妹。
「いいなー。ディアーネちゃんは欲しくないの?」
「わ、私は正々堂々とアンディの妻になる気だからいいんだ」
「むー。でもあんな調子じゃ奥さんになっても月3回ぐらいしか回ってきそうにないわよ?」
「……ちょっと待て姉上。もしかしてあなたも勘定に入っているのか」
「入れてくんないのー? ウチの旦那さん全然帰ってきそうにないし、しばらく入れてよー。どうせ誰か産休になったらアンディ君のカラダも空くし」
「姉上、そういう浮気性は人間には嫌われるぞ?」
「うー。でも別に離婚したいほどオーリンズさんのこと嫌いなわけじゃないんだもん」
 複雑な人だ。
「はいはい、それよりカルロスさんがお昼用意してくれてるだろ? みんなそろそろ母屋に戻ろうぜ」
 手を叩いてそう言うと、みんなが一瞬きょとんとした。
「まだ十時の鐘なったばかりでしょ?」
「今時間見てきます」
 そして庭に設置された日時計盤をセレンが見てくる。
「まだお昼まで一時間半はありますよー」
「時間は充分余っていますわね」
「んだんだ」
「まったく、みんな……姉上」
「はいはい♪」
 やれやれ、と溜め息をついたディアーネさんに促され、ヒルダさんが俺の足に取り付く。
「────! はい動かしてー」
「お」
 足が動く。
 動くけど。
「……どうせなら泊まり部屋でかけたほうが良かったんじゃ」
「ほ。甘いぞ、アンディ」
 ライラがスルッと間合いに入ってきて、胸元で科を作った。
 さっきから全裸のままなのでそのおっぱいに耐性はついていたつもりだったが、それでも色香を出すような動作をすると途端にドキンとする。流石にお色気に関してはライラはツワモノだ。
「こんな不似合いな場所だからこその情緒というのもあろう。鉄を打ち革を切り縫う工房で、職人が息抜きに女を並べて孕ませる……というのも乙なものではないかえ?」
「息抜きって。もう作業終わったし」
「ほ。そういうプレイということじゃ」
 その辺から麻袋や垂れ布を引っ張ってきて、作業台の上に広げるヒルダさん。
 その上に寝そべり、片足を上げて誘うライラと、おずおずとハーフパンツとショーツを下ろして尻を向けるジャンヌ。
「ほれほれ、親方。膣は熱い内に打て、とな♪」
「こっちにもお仕事あるだよ、親方ー♪」
 親方と来たか。
 ……確かにいつかそう呼ばれるのは夢だけど。
「ずーるーいーでーすー!」
「親方ぁ、ちょっと止め具が外れちゃってぇ。ハメ直しお願いしますぅ♪」
 作業台に上半身飛び乗るセレンと、スカートを上げてお尻を振るヒルダさん。
「僕らも混ざった方がいいのかな……」
「さ、さすがに下品……ですけど、わたくしとてアンディさんの女……」
 ふらふらと作業台に近づくアンゼロスとオーロラをディアーネさんが止める。
「お前たちは一応エースナイトとしての自覚を持て。あと時間的にこれ以上は無理」
「ディアーネさん」
 冷静なディアーネさんがちょっと頼もしい。
「一時間半あるから私たちは次の回まで待つべきだ」
「……次の回?」
「駄目か?」
 ……無茶言われているのはわかってるけど。
 でも、数週間もしていなかったのだ。昨日だけでは全然足りない。
「やります」
「やった♪」
 無邪気に喜ばれると引くに引けない。
 ……頑張れ俺。


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