「さて、そろそろ行こうかのう。皆の衆、達者での。また来るぞえ」
「ライラ様ぁぁぁ」
「お待ちしておりますぞー!!」
 たくさんの人々に見守られながらライラ、全裸になってからドラゴン体に変身。
 ここまで毎回全裸を貫かれると、本当に全裸にならなくてはいけない理由でもあるんじゃなかろうかと思えてくる。
「ほれ、全員乗れ乗れ」
 軽々とジャンプで背中に飛び乗るベッカー特務百人長とディアーネさん。セレンはまるで足に糊か何かついてるんじゃないかという器用さで軽々と駆け上り、オーロラも器用に、優雅に続く。ジャンヌは背に一列生えているトゲトゲを利用して猿のようにひょいひょい登り、そして俺は……ええと?
「どうやって登ろう」
「……世話の焼ける奴」
 最後まで順番を待っていたアンゼロスが肩を貸そうと、俺の腕を取る。
「い、いや、いい」
「……スマイソン?」
 さっきの釈明もまだなのに、それでも何事もなかったように手を貸してくれるのは嬉しいけど。
 でもそれも、半ば自分のせいで俺の足が駄目になったことに対する負い目からで、もう心はベッカー特務百人長に傾きかけてるんだろうと思うと、なんだか変な動悸がきてアンゼロスにさわれない。
「おい、何を……って、そうか」
 上から俺の状態を見て取ったディアーネさんが、飛び降りて俺の松葉杖を奪い取り、ライラの背の上に向かってぽいぽい投げ上げる。
「ベッカー、死ぬ気で取れ。壊れたらお前徒歩な」
「ちょっ!?」
 慌ててそれをキャッチするベッカー特務百人長。
 そして俺を横抱きにして、ジャンプ一発、ライラの背の上に軽く着地。
「アンゼロスも急げ」
「は、はいっ」
 それを呆然と見ていたアンゼロスだったが、よじ登ろうとしてスカートなことに赤面し、しばらく考えて、意を決してディアーネさんのようにジャンプ。
 でもスカートが舞い上がるのは避けられず、ライラの背に着地してから、しばらく俯いて一人で恥じ入る。こういう時耳が突き出しているエルフ族は読みやすいことこの上ない。
「白か」
 ベッカー特務百人長が真面目に呟いて、直後にアンゼロスの斬風チョップでブッ飛ばされる。
「え、うわ、おいここ高ぇんだぞ、アンゼロス、うわあああ!?」
 そのままライラの背から地面に落っこちて……と思いきや、背びれのひとつにちゃっかり命綱をつけていて地面激突だけは避けているあたり特務百人長は強い。
 が、ライラはそれを知ってか知らずか。
「ほ、全員乗ったな。では行くぞえ」
 そのまま離陸。
「え、うわあああああ!?」
 ばっさばっさと羽ばたく翼に煽られ、肩から前にぶら下がった特務百人長が登ってこれない。
「お、おい、ちょっと、ドラゴン姉ちゃん、待て、待てって!!」
 叫び声がぶらんぶらんと振り回されて聞いている方が不安になる。
「……ほ。どうしたものかの」
「まあ奴にはちょっといい薬になるだろう。女の恥ずかしいところは見たもの勝ちだ、という奴の性根は、一度正しておかねばならないと思っていた」
「ふむ。まあせいぜい数十分じゃ、ちょいと眺めを楽しんでおれ」
「隊長ぉぉぉ!?」
 そのままぶら下がり飛行確定。
「あー……」
 アンゼロスが微妙に気まずい顔をする。あれでいいんですのよ、ええだええだ、とオーロラ&ジャンヌから肩を叩かれる。
「……ていうかベッカーさんっておいしい人ですよねえ、いろいろ」
 セレンはちょっと意味のわからないことを言っていた。


 夕日を追いかけるように西に進むこと数十分。
 すぐに眼下に大きなオアシスとその周りに広がる街が見えてきた。
「今度はちゃんと幻影つけてるだろうな」
「ほ。二度も三度も同じ事はせんわ」
 ばっさばっさばっさ。
 街の近くの荒地にゆっくりと近づく。
 と、その途中で特務百人長のギャーという叫び声と共に、垂れ下がっていた綱がプラーンとテンションを失った。
「……落ちた?」
「途中でヤシにでも引っかかったんだろう。なに、ベッカーだ死にはしない」
 酷い扱いだったが、後ろを見たらディアーネさんの言う通りにヤシのてっぺんにしがみ付いていた。
 そして、着陸。
「ふう。平和な着陸って素晴らしいのう」
「そう思うなら二度とやるなよ」
「わかっておるわい」
 パッと俺を抱いて飛び降りるディアーネさん。松葉杖はセレンが担いで駆け下りる。そのどちらも手伝おうとして、結局仕事を取られて困った顔をするアンゼロスがなんだか痛々しい。
「…………うぅ」
「あ、アンゼロス。別にそんな無理に手伝わなくてもいいから」
「でも……」
 責任感の強いアンゼロスのことだから、そう言われてハイそうですかとも言えないのだろうが。
 うう、なんだかモヤモヤする。


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