ルーカス邸での騒動から数日が過ぎた。

「ふっ!!」
「せいっ! やっ!!」
 ホテルの裏庭で、アンゼロスとオーロラの剣が幾度となく交錯し、火花を散らす。
 両者とも刃を落とした模造剣だ。
 アンゼロスとオーロラは割と実力が近い同士、こうして朝晩と試合を繰り返すのを日課としつつあった。
「はぁ……はぁ……やりますわね」
「君もな。自慢するだけのことはあるけど」
 兄同様、細身の長剣を操るオーロラと、いつも通りショートソードのアンゼロス。背丈に10センチ近く差があり、また腕のリーチも短いだけあってアンゼロスがいかにも不利に見えるが、長時間打ち合うとオーロラの弱点が露呈してくる。
 すぐに振りが鈍くなるのだ。対してアンゼロスはその気になれば同じ調子で2時間は打ちまくれる。
 スタミナと、握力不足だ。
「そんなのじゃ短期決戦の練習試合や強襲作戦ならともかく、防御作戦は辛いぞ。どうやって岩神迷宮を突破したんだ」
「り、両手で交互に持ち替えてなんとか持たせましたわ。武器も業物でしたから長引くことはありませんでしたし」
「……兄貴よりは努力家なんだな」
 ルーカス将軍は左手で剣を使うことに全く慣れていなかった。そのおかげでアンゼロスでも勝てたというのがアンゼロスと俺の共通見解だ。
「兄はあんな性格ですが、こと剣に関しては天才です。一芸でもって何もかもを制することができましたもの。わたくしにあの真似はできないとは理解しておりますから、その分は手広くレパートリーをと」
「いい心がけだ。君が相手なら僕は勝ちを拾えなかったかもな」
 再びアンゼロスが突進する。オーロラは剣を持ち替えて応戦。
 剣戟が続く。しかしあんなことを言っても、アンゼロスの攻撃は決して力衰えることはない。すぐにオーロラは打ち負け始める。
「くっ」
 オーロラがたまらず距離を取ると、アンゼロスは咄嗟に衝撃波を打って追撃。
「きゃああっ!?」
 オーロラが空に舞い上がり、練習服の前垂れがメチャクチャに巻き上がってぱんつ見えた。
「よし」
「うむ」
 見ていた俺とベッカー特務百人長が同時に頷いて、ちょっとした連帯感に握手。
 直後に二人揃ってディアーネさんに拳骨を食らう。
『痛っ!?』
「何をやっているんだお前らは」
「いやほら、俺暇ですし」
「はっはっは、まあ可愛い後輩どもの成長をですね」
 同時に言い訳をする俺と特務百人長。ディアーネさんは溜め息をつく。


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