俺たちが着陸したのは砂漠南部オアシスと森林地帯のちょうど境界にあたる地域。ヘリコンという街だった。
 このあたりは高木も土地の高低も少なく、湖沼の点在する間に背の低い林が広がる湿地帯といった風景。森エルフが支配する領地はもっと普通の山地の森に近い風景になるらしい。
「場所が場所だから水棲系種族も多いな。リザードマンコロニーがいくつかあったはずだ」
「へえ」
 リザードマン。トカゲ人間。外見的魔物度で言うとオーガより上の、いかにも恐ろしげな連中だ。
 が、意外と知性的というか狡猾で商人向きの一面もあるらしい。
 ウチの部隊には一人もいないが、ヴィオール峠経由でトロットに行き来する歩兵部隊が隊舎近くを通っていく際に何人かいたのを見たことがある。
「系ってことは、他にも?」
「一応人魚とか、あと水精霊がいるっていう噂もある。まあ精霊はどこにでもある噂話程度だが」
「……昨日一晩でよくそこまで聞けましたね」
「何を言っている。私の出身地はここから100キロも離れてないんだぞ。測量やっていた頃にはかなり歩き回ったから、この辺も庭のようなものだ。よく知っている」
 胸を張るディアーネさん。そういやオアシスコロニーの近くでもあったか。
「で、森エルフ領まではここからどのくらいで?」
「領地に入るだけなら馬車で三日。州都クラベスまではさらに三日ってところか」
 ここまでに二週間強。結果として一週間近くショートカットしたことになる。
 帰りは気楽にライラのドラゴンパレスに寄ったり牛オーガコロニーに寄ったりしてもおつりがきそうだ。
「……そういやライラ、ちゃんと帰ったんですかね」
「さあな」
「ジャンヌ待たせてるっていうのにあの調子じゃ……ジャンヌが寂しがってなきゃいいんですが」
「……アンディ、随分あのドワーフっ子にご執心だな」
「ええ?」
 ディアーネさんのジト目の意味がわからない。
 あんな小さい子までライバル視したりしてるのだろうか。いや確かに小さいとは言っても俺と同い年なわけだけど。
 まさかな。
「駄目だぞ、大人で我慢しておけ。ロリペドは一番救いようがないからな」
「べ、別に俺はロリコンでもペドフィリアでもありません!」
 確かに顔も可愛らしいと思うし、なんか鳥の雛みたいになついて後ろについてくるのはちょっと楽しかったが、あれはあくまでどちらかというと姪っ子を見る感覚というか。いないけどさ。
「というかディアーネさんの中で俺はどれだけ性欲の権化になっているんですか」
「……その」
「だって……ねぇ?」
 ディアーネさんとセレンが少し俯いて赤くなる。夜のことを思い出しているっぽい。
 いや、あれはあなた方に求められておこなっている合意のうえでの愛情交歓のはずなんだけど。頑張ってるのにただの暴れチンコ扱いされるのは心外だ。


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