百人長は。
……否、ディアーネさんは、俺にのしかかったまま身体に手を回し、
「……ん、よっと」
軽い掛け声とともにギュッと抱いて、いきなり身体を妙な感じに回転させる。
俺の方には引っ張られたとか押し上げられたとか、そんな感覚は一切なかった。
なのにザバッと湯から引き抜かれて、少し重力を無視して浮揚。
ディアーネさんごと空中を横回転。トン、と百人長の足が洗い場に着き、俺は抱き締められたままくるくると振り回される。
「な、なっ」
「風呂の湯が汚れてしまっているとバレるからな。それに風呂の中でやろうとして、私の淫液まで流れてしまうと不都合だ」
「や、やる気なんですか本当に!?」
「冗談に聞こえたのか、悲しいな」
「いや普通……んぐっ!」
回転が落ち着く直前、ディアーネさんが膝を曲げ、俺は洗い場に投げ出されるような恰好になる。そしてあくまでディアーネさんは俺から腕を放すことなく、するりと自然な形でマウントを取り、俺に唇を重ねていた。
「ん……っ、ふふ、甘美なものだな。ああ、男に肌を晒すことにドキドキしてしまっているのは久々だ」
「う……」
「覚悟を決めろ、アンディ・スマイソン。お前は私を本気にさせたんだ。これはその罰なんだ」
「ど、どういう理屈ですかっ」
「犬に犯られたと思って諦めろ」
「ヒィ! 犯される!」
往生際悪く冗談に流そうとする俺と、それを一切無視して俺を動かせないディアーネさん。
じたばたしようとするが叶わない。この人はものすごく強いのだ。
「……うぅ」
「いい子だ。なに、損はさせない。任せておけ」
諦めて力を抜いた俺を見て、抱き締めていた腕を解く。照れた顔で頬にキスを残し、ディアーネさんは下半身にずり下がる。
「元気なことだ。……見慣れたものだが、これが私を貫くと思うと感慨深いな」
俺のいきりたったちんこをいとおしそうに撫でながら溜め息。そして、おもむろにその豊満な胸にふにゅっと挟む。
「う、わっ」
いきなりのパイズリに思わず驚いて声を上げる俺。そんな俺の反応を見てディアーネさんは意地の悪い笑みを浮かべる。
「なんだ、お前胸好きのくせにこんなので驚くとは、さては……雌奴隷にコレをさせてないな?」
「……い、いつも揉み専ですんで」
「そうかそうか。お前のパイズリ処女は私のものということか。私の一点リードだ」
何が。と言う間もなく、ディアーネさんが胸で俺のちんこをしごき始める。ふにゅふにゅと柔らかく波打つおっぱいで、小刻みに俺のちんこを挟み直すようにして。
「ん……ふふ、お前は本当に素直な表情をするな。どうだ、こんなのは?」
「ううっ……」
今度は上体をスライドさせながら、長いストロークで乳肉の間を往復させられる。
心地いい。
ディアーネさんの身体は200歳とは思えない(エルフだから当たり前だけど)瑞々しさで、いつも憧れながらも絵の向こうのように遠かったあの乳房が俺の一番下品な器官を刺激している、と思うと否が応にも腰が震える。
「ん……ほらほら。何を我慢している」
「く……が、我慢なんか」
「さっきから何度もビクッとしてるぞ。出したくて仕方ないんだろう? 私の胸でいつでも射精していいんだぞ? 遠慮するな」
「う、う、ううっ……!」
かすかな罪悪感。圧倒的な高揚感。
あのディアーネ百人長が俺に奉仕している。娼婦のように俺を誘っている。
その事実だけで先走りが溢れてしまうような、俺の青二才なちんこ。実際の快楽も合わさればそうそう何分も持つはずがなく。
「う、んううぅっ!」
ビュクッ! ビュクッ! ビュクッ!!
あえなく、ディアーネさんの乳房の間で性欲を爆発させてしまう。
「お、おおっ……はは、コレが射精……か」
「でぃあーね、さん……」
「……私の身体で自慰に更ける男は何人となく見てきたが、こうして自ら浴びてみると……ふふ、あいつらももったいない事をしている。女に浴びせれば悦ばせられるのにな」
「……?」
紅潮した顔で、高揚した目で、ディアーネさんが呟く。
その一言一言の間に、何か違和感を覚えるが……風呂ののぼせ頭と初パイズリの余韻に霞む意識では、イマイチまとまった疑問にならない。
「……一度出すと萎えるというが。さすがはスマイソンだ」
そして、俺のちんこは寸暇の後にすぐに硬度が戻る。
最近気づいたことだが、俺は割と精力が強い方らしい。
日に三度も射精すれば俺ぐらいの歳だと普通おなかいっぱいになるものらしいが、俺はセレンを相手に朝昼晩犯ってまだちんこが勃つ余地がある。ちんこのエネルギー切れよりも動く体力の方が先に切れる。
一応戦闘勤務の軍人としてちょっとどうなんだろうなあそれ、と思わなくもないのだが、セレンしかり、今のディアーネさんにしても、
「実に頼もしいな」
と好評のようだ。
「……それじゃあ、ここから本番と行こうか」
「ほんとに犯っちゃうんですか!?」
「何度も言わせるな」
膝立ちで俺の上にまたがり直すディアーネさん。
今だ射精の残滓でヌメつく逸物の上に、自分のヴァギナを広げて乗せる。ビラビラの中は感動するほど綺麗なピンクで、俺の更なる劣情を煽る。
「よし……っ」
接触したところで一旦停まり、少しだけ気合を入れ直すディアーネさん。
さっきの違和感がムクムクと首をもたげる。
まさか。
まさか。
「……もしかして、ディアーネさんはじめて……?」
「!?」
ぴたり、とディアーネさんが止まった。
「わ、悪いのか!?」
「で、でも、だって、パイズリとかいきなりしてるのに!?」
「う、うるさいっ! 二百歳にもなれば耳だって肥える!」
真っ赤になって怒り出すディアーネさん。
なんとなく合点が行く。そんなうまい話があるものかと思っていたのだ。
「……そ、そうですか」
思った。
多分、この人は、処女が恥ずかしいんだろう。
俺はちょうどいい初体験の相手で、つまり、オモチャなんだろう。
なんだか随分がっかりした。人のことなんて言えないのに。俺だってセレンをオモチャにしたのに。
ディアーネさんは……いや、百人長は、もっとピュアな、高潔な人だと思っていたかったからだろうか。
「……なんだぁ」
「?」
「そういう、ことですか」
「……どうした、スマイソン」
いきなり水でも被ったように意気消沈した俺に、百人長が心配そうな顔をする。
そんな顔をして欲しくない。させる資格はない。
それなのに失望が口をついて出た。
「それなら早く……言って下さいよ」
「何を言っている」
「俺……百人長の、ただのセックス相手なんでしょ」
「なん……どういうことだ?」
「ただセックスの経験したくて、そういうことなら、その……大仰な理屈とか要りませんから。俺、普通にただのスケベですから。ダークエルフの気性とかなんとか、あまりかつぐようなことは……してほしくなかっ」
「スマイソン」
俺が泣き言を言い募ろうとするのを、百人長は泣きそうな目で制した。
「お前は、私をそんな女だと思いたいんだな」
「……え」
その目が真剣で、あまりに純粋で。
俺はとんでもない勘違いをしたことに気づく。
とんでもなく傷つけるようなことを言ったことに気づく。
「どうしたら信じてくれる?」
「百人長」
「どうしたらディアーネと呼んでくれる? お前の妻に本気でなりたいのだと信じてくれる?」
「あの」
「子を産めというならもちろん産む。お前のことだけを考えろというなら今すぐ軍をやめてもいい。どうしたらお前を十年間想い続けていたと理解してくれるんだ?」
泣きながら、震える声で彼女は訴える。
でも。
俺は小心者で、小市民で、どうしようもなくただの人間で。
そんな僥倖をただで信じられる器ではない。疑わざるを得ない。
そのことだけは理解してもらわなければならない。
「俺はセレンが本当にいたというだけで身の丈に余るくらいのちっぽけな人間なんです。剣をタダで作ったからって、百人長みたいな偉大な人に好かれるなんて美味い話なんてないって思っちゃうんですよ。そんな理由が、あなたの心と身体を貰える理由になるなんて思えない」
「…………」
「それならあなたが処女を捨てる為のオモチャに選ばれたって思う方がまだ納得できる。俺はそんな小さい人間なんです。失望させたのなら謝ります。でも俺、……ただの、人間なんです」
「…………」
百人長は静かに頷いた。逸物を握る手を離し、俺を抱き起こして。
優しい目で囁き始めた。
「悪い。そうだな、お前は人間だったな。……私たちのことを急に理解はできないんだったな」
「はい。すみません」
「いや、いい。……すまない、思えば私も人のせいにしすぎた。ダークエルフだとかなんだとか、一般論で誤魔化し過ぎていた。私は私だ。慣習も種族も私個人に関係ないのに、全部それで説明できた気になっていた」
「百人長」
「正直に言おう。……隊に来たその時から、ずっとお前が好きだった。剣を作ってくれたあの少年と同一人物だというのは嬉しかったが、それはきっかけに過ぎない。お前が好きだ。お前のその弱さも、優しさも、正直さも、勇敢さも全て好きだ。それを部族の慣習で誤魔化したんだ。すまない」
今までの色仕掛けと打って変わった真剣な告白。
それは、セレンの一途さと同じ、飾ることのない捨て身で丸裸の感情。
これを聞いたら、もう下らない年上女の見栄だなんて見当違いの解釈なんかしようもない。
「お前をあの小娘に取られるのは嫌だ。いなくなって欲しくない。だからまずは私のことを抱いてくれ。私にお前の女として、努力ができるチャンスをくれ。頑張るから」
「……わかりました。ディアーネさん、俺、……ディアーネさんを犯したい」
「犯して」
そして、今度こそ熱烈に抱きあって、もつれて倒れた。
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