クロスボウ隊の陣地はトロットとの国境近くの山沿いにある。
 緑は豊かだが魔物はおらず(出てきても隊全員で針山にする)、畑もほとんどない。人が立ち入らない地域のド真ん中にぽつんとある。
 なんでそんなことになっているかというと、原因はうちの主力兵器であるクロスボウの長射程にある。
 常に出来る限り射程ギリギリから撃つ関係で、広い演習地域をとらないと話にならないのだ。
 で、一度侵入した盗人を離脱前に狙撃した際、あまりにも遠くから盗人の足をブチ抜いたので「新兵器の射程は30km、見えないほどの遠くから百発百中」と無責任な噂が流れて近場の住民も陣地に近寄らなくなった。
 実際のところはそんなには飛ばない。当たり前だが。

 まあそれはともかく、とにかく人里から遠いので、酒を飲みに行くのも片道一時間近くかかる。
 酒に弱い奴が仲間に引っ張られることなく、酒場に置き捨てられるのもその辺が理由だ。俺とか。
 本来兵士なんて上客もいいところのはずの酒場でさえそんな遠いので、品揃えのいい便利な商店となると、馬でも使わないと滅多にいけるものじゃない。
 自然と買出しは代表制になり、当番制になり、定期的になる。
 で。
「……こんなん準兵の連中の仕事にすればいーじゃねーかよー」
「軍務に直接関係ないのだから階級を盾にしてはいけない」
「だーけどさー……せっかくの休みなのに。この時間をもっとさー」
「君ときたら……そんなに例の雌奴隷と破廉恥な午後を過ごしたいのか!」
「当然だ!」
 胸を張ったら御者台から氷点下の視線で見下げ果てられた。
「ごめんなさい正直すぎてごめんなさい」
「君は土下座しながら全然反省してないな!」
 アンゼロスにものすごい怒られる。

 アンゼロスの機嫌に関係なく、空は快晴。馬車も快調。久しぶりに飛龍便も見えた。
 今日はいいことあるといいな。


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