浴場はまさに池、という感じだった。
 迷宮の小部屋……といっても30メートル四方くらいはあるだろう。それがまるまる水没していて、壁の亀裂からどこか迷宮外に向かって余剰のお湯が流れ出している。
 深さは70センチくらいか。歩いている女の子たちのお尻がギリギリお湯に入るかどうかという深さ。もちろんアイリーナやローリエみたいなロリボディだとお腹まで沈む。
「白く濁ってるのね」
 じゃば、とお湯を撫でるミラさん。
「ここはそうなんです。で、この温泉迷宮の面白いところは場所によってお湯の色が違うところで、一説によれば入ることでの治癒効果や美容効果も違うらしいんです。まあわざわざここに来る人はだいたい複数のお湯に入ってっちゃうから詳しい効果の違いはよくわかってないらしいんですけどねー」
 ナリスがそう言って適当な「島」に腰かける。浴場内にはそうして上がって休むための岩がいくつか沈められていて、岩というかまあ瓦礫。材質は壁材と同じようなので、この迷宮のどこかで壊れた壁をオーガにでも引っ張ってこさせたのだろう。
 ふつうの迷宮だとそれによる「気」の流れの変化の影響も心配だが……まあほぼ浄化力は失効してるようだし、いいのかな。
「前回来た時は順路の半分くらいまで制覇したところで日が暮れちゃって。他には黒とか赤とか青とか緑とか黄色いの、あとなんだったかな」
「なんかちょっと入りたくないカラフルさだな……」
 思わず呟く。
 だってなんか毒みたいな色にしか思えないじゃん。
「温泉というもの全体として見れば、ポルカのような無味無臭無色の温泉の方が少ない。なんらかの成分が混ざって色も香りも一味違うものの方が多いんだ」
 ディアーネさんがそう教えながら俺を促し、近くに腰を下ろす。
「それに濁り湯の方が……お前の場合は都合がいいんじゃないか?」
「え?」
「人目につかない湯の中なら触り放題だろう?」
「なるほど……!」
 確かに。この濁り具合なら正直、少し湯に沈めば何も見えない。
 ……って。
「そもそもこの注目度で多少手が隠れたところで意味はない気がするんですが……」
 周囲を見渡す。相変わらずナリス除く9人の美女が堂々の一糸纏わぬ姿で現れたことのインパクトは強く、その場にいた先客も、後からついてきたスケベな客も、数メートルほど離れて遠巻きで数十名がこちらに注目していた。
 普通なら他人の入浴姿をそうもジッと眺めるなんてマナー違反だが、何しろ数が数だ。みんなが凝視しているのに自分だけ奥ゆかしくチラ見なんて意味がないと思うのか、遠慮のない視線が送られていた。
 これだけ見られていれば、手の届くところに女の子を座らせ、何か水面下で動いていると察知されるだけで何が起こっているかはまるわかりだ。
「なあに、さすがにチンポを突っ込んでしまったら追い立てられても仕方ないが、どうも胸や尻を触っているらしい……くらいのことでは他人は何も言えまい」
「あのですねディアーネ百人長。私思うんですが最近スマイソン十人長を甘やかし過ぎじゃないですかね。というかノリで女の尊厳捧げ過ぎじゃないですかね。百歩譲ってベッドでのハーレム乱交はいいとしましょう。しかしこういう風に女として安売りしちゃならんものを安売りしながら歩くってのは自分の魅力をプロデュースする意味でもノーを突き付けていくべき案件なんじゃないでしょうかね」
「ん? いや、ノーも何も、私はどこでもアンディとの入浴を遠慮した覚えはないが」
「……そうだった……!」
 ナリスは頭痛に耐えるように指で額を押さえる。
「そもそもアンディの発案ではないだろう。裸で練り歩くと言い出したのはミラだし、元々文化が違うのに乗ったのはシャロンで、皆それに続いただけのはずじゃないか」
 ディアーネさんは責任の所在についてもしっかり認識してくれていた。
 いや、俺も楽しんでいたから、いざ「お前の所業だ」と言われたら言い逃れる気はなかったけれど。
 そしてミラさんは涼しい顔。
「そもそも裸でいるべき場所で裸なのは当たり前だし、私たちの価値観では自分のカラダに自信があったら堂々としておくものよね」
「タルクあたりではそういうものだな」
 ダークエルフのオープンさは他種族の価値観ではなかなか慣れるものではない。
 ナリスはツッコミかたを探していたようだが、やがて諦めて溜め息。
 そして周囲に集まっている男衆の視線にギンッと睨み返し、何かを叫んで水を蹴っ飛ばして追い散らす。
「今、ナリスなんて言ったんだ?」
 そっと寄ってきたシャロンのおっぱいを当然のように下からすくい上げて揉みながら聞くと。
「『見世物じゃないぞ、この馬鹿ども!』みたいなことを」
「……見世物みたいなものかもしれない」
「ふふっ。ご主人様専用の肉便器としてなら、お披露目もやぶさかではありません……♪」
 シャロンは露出という異常状況そのもののスリルを好んでいる節はあるが、大義名分として「エロ奴隷なら見られ蔑まれるのが当たり前だからOK」みたいな自分への免罪符を捏造しているようにも見える。いや、他の子も多かれ少なかれだけど。
 どこかで止めなきゃいけない破滅願望かもしれないが、とりあえず今は楽しいのでアリとしておこう。
「お前は自慢のエロペットだな。この交尾のために生まれたようなスケベな体が、俺のチンポだけに夢中だってことを自慢しまくりたい」
「……光栄です、ご主人様……♪」
 人目もはばからずに唇を寄せてくるシャロン。
 むちゅーっとキスをしていたら、アンゼロスやアイリーナ、それにガラティアが一斉に咳をした。
「そりゃ、胸ではシャロンには負けるけど……」
「わらわたちとてそなた専用の肉穴奴隷なのじゃから、平等に褒めて欲しいものじゃ」
「え、えっと……だからその……次、いい?」
「……わかってるって」
 苦笑しつつ、白濁した湯の中で三人にも順番にハグ&キス。
 ……そしてアピールの踏ん切りがつかなかった様子のマローネやローリエ、そして悠々と「島」の上に座ってどこからか出した酒を啜っていたライラも抱き寄せてキス。
「サービスも大変ね、ご主人様♪」
「無理に私たちまでそんなことをしなくてもいいんだぞ……ん、っ♪」
 ミラさんとディアーネさんにも情熱的に口づけ。
 ただの痴女集団かもしれない、もしかして自分たちにもワンチャンスあるかもしれない、みたいな期待が観客男たちの間に見えた気がしたので、それに釘を刺す意味で、全員マーキングだ。
 全部俺のスケベ奴隷たちだ。チャンスなんてないぞ。いやディアーネさんは奴隷じゃないけど。
「ナリス」
「なんですかまさか私までっ……ん、んんっ…………あ、あのですn……んーっ……♪」
 暴れていたナリスも捕まえて抱き締め、ディープキス。
 ふと思いついて、キスしながら彼女の薄ローブを脱がしにかかってみる。
 なんか仲間外れだから気まずい、という理由で首輪をつけたようなナリスだ。もしかしたら脱がせるかもしれない。
 ……そしてナリスは気づきながらもしばらく迷ったのだろう。力のない手でしばらく俺の脱がし作業を傍観して、最後にローブが水面に落ちるかというところでハッと意識を取り戻したようにメキッと手首を掴んで止める。
「…………な、何してんですかアンタはっ!」
「い、痛い痛い痛い」
「裸ならあっちでいっぱい見せびらかしてんだからそっちで満足してください! ったく油断も隙もないっ!」
 ちょっと白々しく言いながら唇を腕で拭い、すっかり脱げてしまったローブと帯を水面から拾い上げて身に着ける。
「私はキスまでです! 復唱!」
「……えー」
「復・唱!」
「……ナリスはキスまで。セックスはナシね」
「なっ、そういう話じゃないでしょうが!」
 慌てるナリスはやっぱりかわいい。

 それから野次馬にまとわりつかれつつも三つの浴場を回る。
 ナリスの言う通りにそれぞれ色と香りが違い、最初は抵抗があるが、入ってみると結構気持ちいい。
 温泉なんてポルカの霊泉があれば実質他は下位互換だから無用だと思っていたが、こうして色々入ってみると自分の了見違いだと実感するな。
 温泉というものの提供する「癒し」は、必ず傷が治るとか体調が整うとか、そんな即物的なものじゃないのかもしれない。
 入浴という行為、そして日常的には触れることのない香りや肌触りの湯を全身で感じる喜び。
 その体験が人に与えるものは、霊泉の奇跡のような切羽詰まったものではない。まるで異国の料理を楽しむように、気持ちを豊かにしてくれる何かだ。
 ……もちろんどの浴場でも雌奴隷たちとせっせと仲良くしてはナリスに怒られたりナリスも誘惑したりしたけど。

 いつまでも野次馬がついてくるので、さっさと移動して多数の温泉を楽しむというわけにもいかず、結局日暮れになってしまう。
 露天迷宮なので昼間の照明はいらないが、夜になってしまうとところどころに温泉ガイドたちが浮かべる魔法光が頼りで、それも一晩中は持たないので、できるだけ早くバスメイズに撤収しろ、という話になっている。
 オーガや獣人、ドワーフなどの暗視種族なら特段危険が増すわけではないのだけど、セントガルドは七割が人間族なので、規則は暗視できない前提にならざるを得ない。
「夜はガイドの人たちも撤収しちゃうから、迷ったら朝まで動くなって言ってたわね」
「夜の温泉も乙なものだと思うんだがな」
 ミラさんとディアーネさんも当然暗視種族。
 猫獣人も獅子獣人も、もちろんドラゴンも暗視可能だから、見えないのは残りの俺、アンゼロス、シャロン、アイリーナ、ナリス、ローリエか。
「明かりなんぞ自分で作ればよいじゃろ」
「作るのはいいけど決まった地点にしか浮かべない決まりがあるらしいから、毎回消すんだぞ」
「貧乏くさいことこの上ないのう……」
 アイリーナが肩をすくめる。
 照明を作るのは難しい魔法ではないが、連発していれば集中力が途切れ、光量や持続時間に影響が出る。……人間族の「魔法使い」くらいの腕なら。
 しかしアイリーナはほとんど集中しなくとも、一晩中光って光量も充分なものをどんどん作れるという。さすがは氏族随一の才能の持ち主だ。
 人員数と集中力という、限られた「資源」でやりくりする一般人と比べて、改めて俺の周囲はエキスパート揃いだなあ、と思いつつも、野次馬が街に帰っていったおかげでようやくのびのびと入浴できる解放感に浸る。
 俺たちは最悪、ライラを壁の上にでもドラゴン化させてその背中に乗れば、数分とかからずにバスメイズに戻れる。
 着衣に壁登攀装備を揃えたガイドも早く戻れと声をかけてきたが、暗視可能な女たちが多いことを伝えると、その当人たちが素っ裸でいることもあってすぐに引き下がっていった。
「もう近くには誰もおらぬ。誰ぞにチンポ突っ込んでも構わぬぞ……もう突っ込んでおるか」
「お先……ごめんなさい……っ♪」
 ライラに呆れ笑いをされてしまうほどに早く、浴場の「島」の上でローリエの小さな腰を掴み、背面座位で挿入。
 正直煽られまくって俺のちんこは我慢汁まみれだったし、それを察知した雌奴隷たちは今か今かとチャンスを狙っていた。ローリエに決めたのは手近にいたからに過ぎない。体が軽くてひょいと膝に乗せられたので、彼女自身が発情していたこともあって、手を出してから完全挿入まで4秒の早業インサートだった。
「完全に肉穴オモチャだな」
「うん……私、ご主人様のチンポ専用の中出しオモチャホール……♪」
 ローリエは熱のこもった囁き声で俺の嘲るような言葉にうなずき。
「今夜もいっぱい遊んで……ね♪」
 可愛らしくおねだりしてくる。
 俺はニヤニヤしながらその小さな体を縦に揺すり、快楽の追求を開始する。
 狭くキツい幼膣を存分に使い、お互い半日待ちに待った快感に没頭する。
 他の娘たちも、野次馬たちの軽蔑と欲情の視線に自ら晒され、すっかり興奮していることだろう。空飛ぶ小屋に籠もっての邪魔のない淫蕩もいいが、こうして刺激を挟むことでさらに情熱的なセックスが楽しめそう……って。
 ふと気になって視界の女たちを数え、その中にあるべき濡れローブ姿がないことに気づく。
「……お、おいライラ」
「ほ?」
「ナリスは?」
「……少し待っておれ。探そう」
 ……え、誰も気づかなかったの? なんで?

(続く)

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