夕食後、ちょっと早めにベッドルームに退避。
 騒ぐカルロスさんはナンシーさんが抑えてくれたので、なんとか直接俺に追及が及ぶことなく乗り切ることが出来た。
「本当だったらもうちょっと飲酒タイムなんだけどなぁ」
「そんなの家の蔵から誰かに持って来させればいいじゃないの」
 部屋の出入り口付近にいたノールさんが高らかに三度手を叩くと、しばらくしてどこからともなくダークエルフのメイドが現れる。
「御用でしょうか」
「お酒。いいのを四、五本くらい見繕ってきてよ」
「ノールお嬢様のお口に合わせて? あるいはお客様方に?」
「私にはルインドロップの上物一本あればいいわ。残りはタルク自慢になるようなのをね」
「かしこまりました」
 スッといなくなるメイド。
「……俺、ああいういかにも上流階級っぽいメイド捌き、久々に見たかも」
「あらためて……富豪のおうちなんですねぇ」
 ナリスと顔を見合わせる。
 が、他の面子は上流階級が多いせいかケロッとしたものだった。
「バスター候の屋敷にいるときにはああいう風に至れり尽くせりだったりしたなー。あんまり慣れなかったけど」
「私もアフィルム本国ではメイドを使っていたものだ。あんなにしっかりしたものではなくハウスキーパー程度のものだったが」
「アーカス時代が懐かしいわね……。レンネストに居ついてからは私たち三人とも何でも自分でやっていたものだから、家事を任せたりするというのはないのよね」
「あら意外。……というほどでもないのかしら。シャロンちゃんはもっとお姫様体質なのかと思ってたけれど」
「故郷を出奔するまではそうでしたが、旅をするうちに色々身についたものです。それにレンファンガスでは私たち外様の軍人はあちこち飛び回りますからね。気がつけば自分のことは自分でやるように……」
「…………」
 シャロンが若干照れながら話す横ではオーロラが胸元を押さえて暗い顔をしている。
 うん、もっと頑張ろうなオーロラ。何、まだまだこれからだ。色々。
「アンゼロスのところは使用人いっぱいいたんだろ?」
「いたね。まあ母上はその気になったらなんでも自分で出来たけど、『他人に出来る仕事は他人に任せるのも上司の義務』って方針だったからね。あと僕も今思うと結構甘やかされてたし」
「メイドとか執事とかにいっぱい甘えてたのか」
「うーん……まあ、僕がハーフだから、外で窮屈な思いをする分は……って部分もあったと思うけど。とにかくみんな優しかったな。だから試験での差別は堪えたし、セレスタに来てから苦労もしたけど」
 しっかり者のアンゼロスも結局お嬢様育ちだ。
「マイアのところは……銀のエルフがいろいろやってくれそうだな」
「うん。まあ大抵貢物持って来る程度でそれ以外には何もないけど」
「……そういやドラゴンってあんまり欲求もないんだっけか」
 奉仕しようにもまず手が必要ないんじゃしょうがない。
「フェイザーはいろいろ教えてくれたけど、それあんまり役に立たなかったし」
「……うん。そうだろうけどかわいそうだからそんなに嫌ってやらないで。一応生まれた時からの幼馴染なんだし」
「竜としてはライダーの邪魔ばっかりする幼馴染なんて恥以外の何物でもないもの……」
 フェイザー。最近の嫌がらせは予想以上に自分の首を絞めてるっぽいぞ。
 なんだか昔仲良かった子に唾棄されるのは他人事でも俺の心が苦しくなるからやめて。
 ……なんて会話をしているうちに、さっき消えたメイドと一緒に数人の使用人がガラスの酒瓶とたくさんのコップを持って到着する。
「ガラスコップ……」
「アンディ君にとっては珍しくないでしょ? トロットの王都育ちなんだから」
 ヒルダさんが俺にコップを持たせて注ぎながら不思議そうな顔をする。
「いや、まあそうなんだけど……王都じゃ多いって言ってもやっぱり高級品には違いないし、それがセレスタの南で簡単に揃っちゃうってあたりはやっぱ金持ちだよなーって」
 ガラス工業は大きく地域差がある。簡単に言ってトロット王都が一番盛んで、窓にガラスを庶民まで使うっていうのは王都ならではの風景だ。他の地域ではだいたい木戸。
 飲み物の器も綺麗で割れやすいガラスより、陶器や木彫り、金属器が多い。木彫りや金属器が割れにくいのは言うまでもなく、陶器はあまり立派な窯もいらず、粘土さえあればどこでも作れてコストが安いので大陸中で主流だ。
 そんな中でガラスコップ、ガラス瓶の酒が特産地でもないタルクでポンと出てくるのは、やっぱり財力を感じる。それにすごく綺麗なカットガラスのコップだ。きっと高いんだろうなあ、とかそういうのが気になってしまう。
「さ、グッと飲みなさいな☆」
「うーん……いただきます」
 そんなところを気にしながら口をつけたせいで、なんか妙に度数強くないか、と思った時には思い切りよく喉に入れてしまっていた。
「ひ、ヒルダ姉さん、それドワーフでもない限りは割らないとキツい奴よ」
「あら。……ライラちゃんがカパッと飲んじゃったから、つい☆」
「我やマイアを基準にしてはならぬぞ。ディアーネも相当なものだが」
 そういうのは早く気づいて欲しい。というか俺もう目が回り始めてるんだけど。
「う、ううーん」
「大丈夫? 魔法で酒気飛ばす?」
「ほ、出来るのか、そんなことが」
「お医者さんよ、私。ただでさえこの享楽の街で開業してたんだからそれくらい出来ないと話にならないわよう」
「ならばかけてやるがいい」
「うーん……でも強制的にお酒抜くとそれはそれで気分きっついのよねえ」
 もしかしたらコスモス嬢のアレもヒルダさんが伝授したものなのだろうか、とか思いながら、ふわふわと視界が狭くなったり揺れたりするのを感じて、ちょっと記憶が飛ぶ。

 気がつくとベッドに寝ていた。
 その俺を膝枕しているのはヒルダさん……いや、ノールさんか?
「あら、目が覚めたみたい」
 ノールさんだった。
 というかいつの間にかノールさんは脱いでるらしく、うなじに感じる膝の感触も直だし、視界の上のほうを遮るおっぱい……というか上半身は完全にヌードだった。
「あれ……俺は……?」
「ちょっとフラフラして、大丈夫大丈夫、って言いながら突然ネイアちゃんのパンツを脱がそうとして……脱がしたところでいきなり寝ちゃって」
「ぱ、パンツ……?」
 何故いきなり。何故ネイア。
 ……と、自分の行動に疑問符を打ってもしょうがない。酒の魔力は自分を別人にする。
 そこにひょいっとヒルダさんが横から覗き込んできた。
「ネイアちゃんが一人だけお尻ひん剥かれて泣きそうになっちゃったから、もうこの際みんな脱げば同じよってなってねー☆」
 その横からにゅにゅっとルナも顔を出す。
「……やろ、アンディ」
「う……」
 まだ少しはっきりしない頭で周りを見回す。ベッドの端のほうには今まさに最後の一枚を脱いでいるネイアと、彼女に付き添うようにしているオーロラ(全裸)の姿。
 ベッドの端に腰掛けたまま半身を捻り、こっちを見ているシャロンとテテスの姿もある。もちろんこちらもまた全裸に首輪だけ。
 そして、ふと足元の方を見ると案の定ちんこには女の子が取り付いているものの、意外なことにそれはナリスだった。
「んちゅ……ん、く……はむっ……ん……」
「駄目。そんなのじゃ出すまで一時間かかっちゃうよ」
「ほ、ほんらころいわれまひてもれすね!?」
「言った通り口全体でもっと思い切りじゅるじゅる吸って、頭動かして。自分の口をおまんこのつもりで使うの。……できないなら今夜はおあずけ」
「なんでマイアちゃんがそんなの決めるんですかぁ……」
「他の子の方がずっとアンディ様にされたいアピールしてるし、ルナが最優先って約束もしてる。ナリスも混ざるなら誠意見せないと」
「うー、なんでこんなことになっちゃったんだろ……れる」
 なんでだか、ナリスがしっかり口奉仕しないと参戦させてもらえない流れになっているらしい。ナリスの隣で正座しているマイアはナリスが動きを鈍らせるたびに細かく指導し、フェラテクを伝授していた。
「……で、現在の流れは……」
「ナリスちゃんに一発飲ませたら、ルナちゃんを中心に次々相手してもらおっかって感じ? それともその前にノールちゃんを一ひねりしちゃう?」
「こ、今回はそう簡単にギブアップなんか……ひゃっ!?」
 何か意気込みを語ろうとしたノールさんのおっぱいを無造作に上げた手で逆さ鷲掴み。むにゅむにゅと揉んで、その柔らかさと乳首の勃起具合を楽しませてもらう。
「だ、黙って揉まないでよ」
「えーと……揉みしだいていいですか?」
 わきわきむにゅむにゅしながら口頭で確認。
「せめて一旦手を離してから訊きなさいって! もう、手癖の悪い弟君だなぁ」
「目の前で丸出しにされてなければ少しは遠慮するんですけど」
「……も、揉みしだいていいわよ。今夜は……なんでも受けて立つんだから」
 難儀な姉上に小さく苦笑しつつ、ナリスのぎこちないながらマイアのおかげで激しさを増す口技に射精感が込み上げる。
「っ……あ、そうだノールさん……」
「何、よっ……」
「避妊、魔法かけるなら、今のうちですよ……昨日も流し込んだけど、俺、外に出すとか器用なことほとんどしないんで……っっ!!」
 喋っているうちに快楽が高まり、ナリスの口の中に射精する。
「ん、んぐふぅっ……は、はなに入ったぁっ……うぇふ、ふぇっっ……」
 ナリスが股間で情けない声を上げる。その顔にびゅる、びゅるっと白濁を継続して吐きつけ、ノールさんに射精量の健在をアピールする。
 それを少し呆然と見ていたノールさんは、咳払いをした。
「わ、わかってるわよ、そんなの……っ。でも、そもそもダークエルフを孕ますなんて滅多なことじゃ無理なのよ?」
「……そりゃ確率で言うとそうですけど、安心できるもんじゃないですよ。ノールさんだって妊娠して踊れなくなっちゃったら困るんじゃ……」
「……にん……っ。な、生意気言うじゃない」
 ふるり、と暖かい太ももが震えたのは想像による恐怖か、それとも……。
「この私を、に、妊娠させて……舞台に、立てなくしようなんて……できるならやってみなさいよ……っ♪」
「ノールちゃん、お姉ちゃんが言うのもなんだけど……あなた本当、刹那主義よねぇ」
「っ……何よ、文句あるの?」
「全然? ……でも、ディアーネちゃんより先に孕んだらきっとあの子泣いちゃうわよ?」
「そ、そんなの弟君の根性次第だし……そう簡単には行かないわよ」
 ……どうも、義理の弟の性欲に付き合ってるうちに孕まされる、という異様な想像に変に興奮しているらしい。別にいいけど挑発下手だなあ。可愛いけど。
「はい、ちゃんと綺麗に舐めて。おちんぽの中に残ってる汁もちゅーって吸って。そこまでがフェラチオ」
「うぅ、変な味ぃ……」
 何故か健気に頑張ったナリスにちんこを綺麗にされ、いよいよ俺は膝枕から起き上がる。
 起き際にノールさんの股に指をすべり込ませ、潤む陰唇とクリトリスを軽く撫でて期待を煽りつつ、期待した顔で待っていたルナの手を取り、押し倒す。
「……アンディ」
「じゃあ、可愛がるぞルナ。……俺の可愛い発情雌穴」
「発情……して、ないもん……っ♪」
「本当か?」
「……ごめん、嘘。月とか関係なく、アンディにずっと発情してる」
「いい子だ」
 キスをして、オーガ用の大きなベッドの上で抱き締めあい、ひとしきり足を絡め合って互いの心理的な温度差を埋める。ルナはすぐに種馬状態の俺のテンションに追いつき、そんな自分の準備の完了を、自らの茂みを俺のちんこに押し付けることで知らせる。
「たっぷり注ぎ込むからな」
「うんっ……♪ 私、アンディの種汁、注ぐための穴っ……♪」

(続く)

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