午後。
猫屋敷を訪ねてみると、割と平気な顔をしたバーバラとやや腰がガクガク気味のマローネが迎えてくれる。
「……昨日はそんなに回数こなさなかったと思うんだけど、意外とマローネって足腰弱い?」
「しばらく前まで足そのものがなかったものですから……」
「……そういやそうだったなぁ。ちょっと配慮すべきだったか」
「い、いえ、むしろ足腰立たなくされるのは雌奴隷として光栄といいますかそのっ」
居住まいを正すマローネ。いや、光栄とか言われても。
「そういやバーバラは昨日はキールとうまくいったみたいだね」
話を振ると、気まずげに笑いながら頬を掻くバーバラ。
「うまくいったといいますか、その……理性が飛んじゃいまして、気付いたらキールさんが無理無理って泣いてたと言いますか」
「いや、酒場で見たキールの按配でなんとなく様子はわかったから、そういう詳しい状況は秘密にしておいてあげて。エッチで泣きを入れた状況を言いふらされたとなったら俺でも立ち直れない」
「は、はい……」
セックスというのはしっかり互いに噛み合えば深い満足も得られるが、受け入れ態勢のできていない相手を自分から貪るだけではなかなか快楽は充足しづらいらしい。俺そういう経験ほとんどないからよくわからないけど。
バーバラが特別に剛の者という可能性も否定できないが、キールがただやられるだけだったとしたらバーバラは自分が動いた分しか快楽は得られないわけで、うちの猫娘たちみたいに求めた以上に満足して正気を取り戻すには、結構時間がかかったんではないだろうか。
それがあの惨状だったわけで。
キールが積極的にエッチを楽しみにかかっていたら結果は違ったものになると思う。が、あのキールにそれだけの余裕が生まれるのはいつのことだろうか。
「ちょっとマローネが羨ましい、かな……」
「いや、そういう発言は本当に控えて。それよりキールとしっかり話し合って。セレスタには獣人と結婚してる人間もいっぱいいるんだから互いに満足いく性生活は無理なことではないはずなんだ」
「だ、大丈夫かなぁ……」
「あいつだってポルカの男だ」
童貞力は俺と同等のはず。あと霊泉による回復力もあるし。セレスタ人より不利な点はないはずだ。
……よく考えたら俺、最初がセレンで本当によかったのかもしれない。少なくとも優しかったし一緒にステップアップしてたし。
「セレスタ……コロニーのみんな、どうしてるかなぁ」
マローネがソファに腰を落ち着けて天井を眺めつつ言う。
「砂漠はまだ寒いのかな……」
「もう南では春じゃないかな」
こっちはまだ雪が残っているのでマローネも騙されがちになるが、さすがにもう王都あたりは春満開だろう。それより南のセレスタ領では言わずもがな、という奴だ。
「ご主人様、年末以降コロニーでみんなとシました?」
「あー……一度だけやったけど」
「多分、みんな待ってると思います。誰か妊娠してるかもしれないし、行ってみたらどうですか?」
「うーん……でも三日後に春祭りだしなぁ」
ライラの翼なら行って帰ってくることはできるだろうけど。
できれば、春祭りは出ておきたい。
なんて話をしていたら、ドアをがちゃりと開いてエアリが入ってきた。
「私にお任せあれ」
「エアリ……何を?」
「我ら氷の竜は火竜よりも風を捉えることに長けております。そして私は、飛ぶ速さではパレスでも随一」
「へえ」
やっぱり飛行能力に個体差ってあるのか。
「私の翼ならば、今夜に出て明後日の晩まで砂漠の地で過ごしても、三日後の朝には必ず間に合わせましょう」
「できるのか?」
そういうスケジュールで動くとなると、時間はそう余っていない。
移動時間は夜だけ……となるとライラでも風に恵まれなければ少し厳しいだろう。
「必ずや」
「……なら少し相談してみようかな。マイア!」
俺がドアの外にちょっと大声で言うと、一分ぐらいでマイアがすっ飛んできた。
「なに」
「ちょっとディアーネさん探して。二日ほど砂漠に行ってみようかと思って」
「うん。でもディアーネ、もうこっちに向かってる」
「え?」
「多分、ライラ様が聞いてたんだと思う」
ライラ? と思っていると二人が猫屋敷の前にゆったりした足取りで現れる。
「ほ。我も侮られたものじゃのう。エアリとやら、この我よりも速く飛ぶと言うたか」
「こればかりは、私の数少ない取り柄にて」
「面白い。飼い主殿の益になること、止めはせぬが……我も競って飛ばせてもらおう」
「ふ。良いでしょう」
ちょっとだらしない服の着方のセクシー女二人、目と目で火花を散らす。
「……まあ、二日間のことなら特に問題はないだろう。私も行こう。祭りの支度はクリスティやフェンネルたちが動くようだし」
ディアーネさんはあっさりとOKを出した。
「いいんですか、簡単に乗っちゃって」
「今のポルカでは、元々私は員数外だ。動いて困る者はいないさ。それに私がついていく方がアンゼロスたちも安心できるだろう。アンディはちょっとした隙にピンチを呼び込むからな」
「すごい駄目軍人扱いされてる気がする……」
事実なのでちょっと困るけど。
昨日の乱交に加わった猫娘たちは今回はお休み。
懐かしいコロニーに帰りたがっているかと思えば、むしろ俺がヤリまくるのを横で眺めるだけになりそうなので遠慮したいらしい。
「まだ月が丸いから」
「私たちも混ざりたくなってしまいそうですけど、昨日あれだけお情けをいただいたのにまたコロニーでまでご主人様の手を煩わせては皆に悪いですし……」
ルナの言葉をミリルが継ぐ。
「悪いな。ミリル、その代わりと言ってはなんだけど、首輪作ったから」
「えっ」
嬉しそうなミリルだったが、ディアーネさんが制するように手を伸ばす。
「だけど、まだ駄目なんだ。雌奴隷に入るなら、それなりの儀式をすることになっているから」
ディアーネさんはそう言って俺が取り出しかけた首輪を懐に戻させる。
そう。その問題があったんだった。
それも、できるだけ集めて全員の前で首輪をかけてやらなくてはいけない。
その「できるだけ」の範囲に今砦にいるガントレットの四人やアップルなんかを含めるかという問題もある。
例えばブレイクコアなんかはちょっと無理があるから欠席はしょうがないとしても、あっちの砦にいっている娘たちは自分たちを除外して首輪の儀式をすることに納得するかどうか。
昼にセボリーに愚痴ろうとしたのはその辺の話だったりする。
「そうなんですか……」
「できるだけ、雌奴隷同士で認識を共有したいというのが大勢の意見だ。円満に仲間入りをするためだから、まだ装着するのは待って欲しい」
ディアーネさんがそう説得すると、一応ミリルは引き下がる。残念そうだけど。
「そういうわけで留守中は頼むぞ、アンゼロス。たった二日間だ、無いとは思うが……部隊に関することやスマイソン家に関することで問題があったらお前とクリスティに任せる」
「了解しました」
ディアーネさんに敬礼を返すアンゼロス。……アイリーナが一応一番立場高いはずなんだけどやっぱりクリスティに指名が行ってるのがちょっと哀れ。
「男爵家にはマイアが話を通したし、これでいいか。強行軍になるがアンディも準備はいいな」
「大丈夫です」
元々そんなにくつろぐつもりではいなかったので旅支度はすぐに終わっている。
「ほ、それでは行くとするか。エアリよ、ハンデになんぞ我も抱えるか」
「手ぶらで上等。それでも私より速く向こうに着いたならば、一族の秘宝を進呈しましょう」
「いらぬわ。竜の秘宝が竜に価値などあるものか」
「ふふふ、ならば誇りを」
「それでよい」
エアリは俺とディアーネさんの乗った馬車を抱えて、それでもライラをぶっちぎるという。すごい自信だ。
いつもの森の際の雪原で二人はドラゴン体にそれぞれ変じ、青と黒、二頭の堂々たる巨竜がゆっくりと羽ばたいて離陸する。
そして馬車の中の俺はと言うと。
「……で、ディアーネさん……?」
「んちゅ、ん……むっ……なんだ?」
「これから飛んでいくっていうのにいきなりちんこ舐めるのはどうかと」
「いくら速いとはいえ、半日も空の上でやることもないんだ。無駄に過ごすことはないだろう?」
「ライラたちが知ったら怒りそうですけど」
ディアーネさんは俺の膝の間でちんこを握りながら苦笑。
そしてライラが馬車の中にちびライラを飛ばしてきて。
「ほ。勝負は勝負、それはそれじゃ。たまにはディアーネの相手もじっくりしてやると良いわ」
「すまないな」
「ほほ。流石に飼い主殿も暇じゃろうと少し心配しておったところじゃ。しかしやり過ぎて猫どもの分の種も出し尽くすでないぞ。向こうに霊泉はないのじゃからな」
「わかってる……アンディ。じっくりいこう……ん、はむっ」
「ディアーネさん次第ですかね……」
ライラ公認の空中馬車セックス。確かにまぁ、暇なんだけど。
……でもこういう暇潰しもどうかなぁ、と思いながら、ディアーネさんの口内に精液を吐き出していた。
(続く)
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