服屋はとても暇だった。
 というか、服をゆっくり見に来るようなお客は午後から来る、というのがいつものパターンだという。午前に来るのは急ぎの場合ぐらいで、それものんびりしたポルカでは祭りの前ぐらいしかない話だとか。
「それでも店内でこんな遊びを躊躇なく実行しちゃうオレガノは凄いな……」
「万一に備えて幻影を張る練習はしてありますから♪ 時々、アイリーナ様やセレンさんが魔法の指導をしてくださるんです」
「……まあ技術力向上はいいことだ」
 服屋の奥のカウンターでは、暇に任せてダイスを何度も転がし、既に五回も精液を流し込まれて下半身ベタベタドロドロのオレガノが俺の番のダイスでちんこ舐めに勤しんでいる。
 初回で脱ぎ捨てた服はその後一度も着ておらず、かれこれ二時間以上も全裸で店番していることになるが本当に誤魔化しきれるのだろうか。
「んちゅ、ん、く……ん、んっ……」
 というかオレガノ、もうどう考えたって誤魔化しきれないレベルで精液臭いんだけど。
 最近の俺の精液は割とアホみたいな量になっているので一発目から溢れまくり、正常位や騎乗位をすれば尻全面がぬったりと汚れ、バックでやれば内腿が粗相をしたようになる。
 タフというかなんというか、ほとんど休みなしでそんなことを続けているために木の床も受付のカウンターも(俺自身はほとんど鼻が麻痺しかけてるけど)性臭がたちこめていて、猫獣人なんかが来たら大変なことになってしまうのではないだろうか。
「イくまで舐めてていいんですか、ご主人様? それとも次を振ってまた私の中で……?」
「セックスの目にならない可能性もあるんだぞ」
「それなら大丈夫です。ダイスを振るなんて一秒じゃないですか。次振って次振って、その次でまた出せばいいんです♪」
 俺のちんこに頬擦りするようにしながら屈託なく笑うオレガノ。暇潰しとはいえ、俺との独占エッチが嬉しくてしょうがない様子。
「スケベな奴隷になっちまったもんだ」
「えへへ」
「口の中に流し込んでやるから咥えろ」
「はーい……んっ♪」
 オレガノは素直にちんこを咥える。
 その頭を掴み、じゅぽじゅぽと快楽を追及しているうちに六の鐘が鳴り、その余韻が残るうちにその喉奥に精液を流し込んだ。


 朝から非常に不謹慎かつイイ思いをしてしまった、と思いつつ服屋を出て酒場に向かう。
 俺自身の性臭は出掛けにオレガノが誤魔化すポプリをくれた。元々は紫の氏族に伝わっていたモノらしい。
 ……っていうか、そのテのエロ系技術文化は北の森にはないと思ってたら、魔法以外なら意外とあるのね。
 それとも紫は実は結構エロい氏族だったりするんだろうか。秘密主義の氏族ってイメージがあるから逆に想像が膨らむ。

「いらっしゃいませー」
「にゃー」
「こらキュート、にゃーで済ませないの。ちゃんとご挨拶!」
「うー、ごめんなさい……いらっしゃいませー」
 新酒場ではセボリーとキュートが元気にウェイトレスをしていた。
 合わせたのか、セボリーは逆のサイドテールにしたキュートがまた可愛い。姉妹みたいだ。
「くんくん……ご主人様、何か……」
「は、ははは、ちょっとキュートこっち来なさい」
 そしていきなり匂いを嗅ぎだしたキュートをさりげなく隅っこに引っ張る。
 嗅覚が鋭敏な猫獣人の中でも、特にキュートは視力を失っていたせいか鼻が利く。ポプリでは誤魔化しきれなかったらしい。
「……えっちな匂いがするとかみんなの前では言わないように」
「?」
「普通はあんまりいいことじゃないの。特に真昼にあんまりえっちするのは常識的じゃないの」
「ご主人様、いつも時間とか気にしてない気がするにゃー」
「……気にしてないのは認める。でもみんながそれ聞いてるととても居心地が悪くなってしまうのでお願いします」
「……はーい」
「いい子だ。お仕事終わったらデートしような」
「ホント?」
 目を輝かせるキュート。
「ち、ちょっとだけどな。俺もお仕事あるから」
 ジャッキーさんちの手伝いは必須ではない。ちょっと時間取ってもジャッキーさんは自分で仕事をを進めるだろうから、少しくらいは大丈夫のはず。
 そんな俺たちに対し、忙しく皿を回収しながらセボリーが不満そうな声を上げる。
「あー、キュートばっかり可愛がって。私も雌奴隷なんですからねー?」
 それを聞いて新酒場に集まっていたクロスボウ隊員たちがざわつく。
「あれ、言ってませんでしたっけ?」
「言ってあってもそういうのをわざわざ宣言するなよ!?」
 キュートだけでなくセボリーも少しは俺の人付き合いのために気を使ってください。ああウィリアムズが早くもフライングクロスチョップで飛んできてる。
「やめろ馬鹿、百人長にもなって」
「は、放せアイザック! これはクロスボウ隊の総意の一撃だぞ!」
 アイザックが空中キャッチで止めてくれた。持つべき物は友達だ。
 できれば他の奴らも止めて欲しいというのは……贅沢だよね、とジャンジャックの跳び膝蹴りやラックマンのダイビングヘッドを食らいながら思う。
 どうでもいいけどお前ら一応上官に向かって容赦ないね。

 七つの鐘で酒場は昼営業終了。
「あ、いいですよ手伝いなんて」
「キュートと約束しちゃったからな。片付けは早く済むほうが助かるんだ」
「にゃー♪」
 細かいことは二度手間にしてしまうかもしれないので、テーブルからの食器の回収だけ手伝うことにする。
 とは言っても、両手に何枚も皿を重ね、てきぱきと運ぶキュートやセボリーにはとても及ばない。セボリーも仕事始めてそんなに経っているわけじゃないが、キュートの皿運びのスキルの高さはさすがバランス感覚に優れた猫獣人というところか。
「うー、羨ましいなー」
「なんならセボリーもデートするか? 一緒でいいなら」
「いいんですか?」
 ぱあっと明るくなるセボリー。
「あー、ほら、俺午前中はオレガノと遊んじゃったし……バランス取る意味でセボリーともなんかしないと不公平かなって」
「やりー♪」
「にゃー♪」
 よく考えたらバランス取れてるのかどうなのかよくわからないが、二人が喜んでいるのでよしとする。
「それじゃ、どうしようか。饅頭屋にでも行くか、それとも森でも……」
 デートといっても行く場所が多いわけではないのがポルカの悲しいところ。特に冬場は何もない。まさか昼間から温泉でしっぽりというわけにもいかないし。
「どこにも行く必要ありませんよ」
 ニッ、と悪そうな微笑を浮かべるメイド服エルフ。

 マスターの奥さんは片付けをセボリーたちに任せると、さっさと引き揚げてしまった。広い新酒場は人が少なくなると寒くていけない、とか言いながら。
 ……服屋といい、信用しすぎというか大雑把というか。
 そして扉を閉めた酒場は本当に倉庫のように静まり返り、ついさっきまでの喧騒が嘘のようだ。
 そこで、セボリーはカウンターの上に腰掛け、怪しい笑みを浮かべながら手招きした。
「新酒場の秘密の裏メニュー……召し上がってみませんか?」
「お前そういう下世話なネタよく仕入れるな……」
 酒場の「裏メニュー」でウェイトレスをいただく。
 エロ絵巻では定番のネタ、かつ治安の悪い地方都市では実際に行われているという噂もあるサービス。
 物々交換が主流で、酒場に限らず店というものがほぼ存在しないエルフ領内でそんな話はもちろん転がっているはずもない。
「酔っ払ったクロスボウ隊の人が忘れ物していくことがありましてね。なんで酒場に持ってくるのかよくわからないんですけど」
「……男所帯では友情の証だからな、そういうの。酒のついでに取引しようとしてたのかも」
「というわけで……いかがですか?」
 セボリーはするりと下着を脱ぎ去り、メイド服のスカートを持ち上げて、閉じた股間に安酒をちょろりと垂らす。
「ウェイトレスのカラダを杯に、酒場で一杯……ロマンでしょ?」
「そういうロマンは男が持ってればいいものだと思うけどな」
 苦笑しつつ、その股間に溜まった酒をちゅるりと啜る。
「私もやるー」
「ふふーん。キュートで飲むお酒と、私で飲むお酒……飲み比べタイム♪」
 二人はいそいそとメイド服を脱いでしまう。
 裸になった二人は、まさにカウンターの上の「杯」。
「ちゃんと足閉じてないと間から漏れちゃうからねー……ほら、こうして組み気味で」
「こう?」
「うん、OK。垂らすよー」
「ん……っ」
 セボリーがキュートの幼い下半身に酒を注ぐ。そのセボリー自身の股間をちゅーちゅー啜りながら、高い明かり窓から差すだけの薄暗い光の中で俺は彼女達の肌の陰影を堪能する。
 ……手伝い仕事、できなさそうだな。酒が美味しすぎる。

(続く)


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