キールの家の饅頭はあまり大きくないが、それでも普通の女の子が三つも四つもお茶ついでに食べられる大きさではないようで、マローネやオレガノに分けても数個残ってしまった。
全部自分で食べてもいいしネイアに寄付してもいいのだが、せっかくだから挨拶行脚で最後に残ったミリルのところに持っていくことにする。
裏道を通ってディゴ爺さんの宿屋に行くと、薪割りの音が聞こえてきた。
ディゴ爺さんと鉢合わせたら饅頭一個献上して場を誤魔化そう……などと姑息なことを考えつつ薪割りの音のする裏手を覗き込めば、そこにいたのは他ならぬミリル。
「ふう……よい、しょっ」
病気が病気だったせいで、非常におとなしい印象を受けるミリルだったが、長柄斧を扱う手つきは危なげない。
「えいっ」
気合一発、カンッと綺麗に薪を割る。
「おー」
拍手するとミリルは黒髪を翻してこっちを見た。
「ご、ご主人様! いつから」
「今覗き込んだとこだよ。お疲れ、ミリル」
袋から饅頭を出してミリルに差し出す。
「そ、そんな、もったいない」
「もったいないって……別に普通にリンドンで二個金貨三枚で売ってる饅頭だよ」
リンドンというのは饅頭屋の正式な屋号。キールんちの姓そのまんま。……こんなド田舎で洒落の効いた名前つけるよりわかりやすくていいけど。
「私なんかのためにご主人様がお菓子を買って来てくださるなんて……」
「……なんか相当変な誤解があるような気がする」
そもそも「ご主人様」なのは雌奴隷たちにとってはの話だ。
猫獣人娘たちは本来そんな関係ではない。ただの「種付け係」と「妊娠希望者」。
多数に種付けする勢い的に雌猫たちに居丈高になってしまう部分はあるが、本来は上下関係はない。俺はヤらせてもらって気持ちいい、猫たちは妊娠したいという利害一致の関係だ。
「俺は君らにとってそんな平伏する相手じゃないはずだけどなあ。ドナ婆さんに好きなだけエッチしていいって言われてるだけだぞ」
「で、でも……御恩は返しきれないほどありますし……」
「病気や怪我を治したのは俺じゃなくて霊泉。俺は誰でも来れば治るってわかってたから、エッチする相手を増やしたくて紹介しただけだぞ?」
「そんな……謙遜なんてされなくても」
「いやいや」
というか饅頭差し出してる手が疲れてくる。
「なーんとなく『ご主人様』って呼び方が定着しちゃってその気になっちゃってるのはいいけどさ。饅頭持ってきたくらいでそんな恐縮されても困るんだって。単にエッチ以外でも仲良くしたいって下心でしかないんだからさ」
「……下心ってそういう風に堂々と言う事じゃないと思うんですけど」
「ミリルが変に遠慮したせいだろ。……手が疲れるからそろそろ受け取って欲しいんだ」
「す、すみません」
ミリルが慌てて担いでいた斧を放り出し、饅頭を受け取る。
斧が軽々と宙を舞い、地に突き刺さる。
……男の俺でも軽くは扱えないサイズだ。やっぱり獣人って人間よりもスペック高いんだろうなあ。
「それでは……あの、いただきます」
饅頭をおずおずと口に運ぶのを満足気分で眺めていたら、ちょうどそこにのっそりとドワーフ……じゃない、ディゴ爺さんが出てきた。
そして俺を見つけると目を見開き、一瞬で顔を赤くして杖を振り上げる。
「こ、こりゃあ!」
「うわ、ちょっ、待ったディゴ爺さん! 俺はただ」
「人の目を盗んで娘っ子に手を出すとはけしからん!」
杖が投げつけられる。
思わず顔をかばう。袋に入れていた饅頭がボロボロと宙を舞った。
が。
「はっ!」
ミリルは軽やかな蹴り上げで飛来する杖を真上に弾いて阻止。
続いて空を舞った饅頭三個をシパッと手の一振りでキャッチしてみせる。
……おいミリル。君本当に最近まで寝込んでた虚弱児なのかね。
「お爺さん! 暴力は駄目です! 私たちの大恩人なんですよ!」
「むぐ……ミリルや、そいつはやめるんじゃ……」
「お爺さんにも感謝していますけど……ご主人様は何を受け取るでもなく私たちを助けて下さっているのに、そういう扱いは酷いです」
「猫獣人の娘たちに片っ端から手を出しておるというではないか!」
「私たちにはそれが必要なんです!」
一般的に言ってディゴ爺さんの見解の方が正しい。
というか実質的にも俺は「ヤッていいよ」と言われて喜んで女体を貪っているだけなので反論の余地は微塵もない。
「ご主人様に意地悪するおじーちゃん嫌いー!」
「にゃー!」
が、騒ぎを聞きつけて妹たちまでもが俺に加勢するにつけ、ディゴ爺さんが涙目になっていく。
……爺さんの身になって考えるとかわいそうになってきた。
「いや、爺さんいじめないであげて。爺さん悪いこと言ってるわけじゃないから」
「小僧! このワシに憐れみでもかけるつもりか!」
「いやなんでそこで噛み付くのさ!?」
せっかく弁護したのに。難儀な人だ。
一応饅頭をアゼルとリゼルにも与え、爺さんいじめにならないようにさっさと退散する。
その出際に、ミリルは俺の耳にそっと囁いた。
「十一の鐘の頃に、お邪魔しますから」
「?」
聞き返そうとするも、ディゴ爺さんの視線を気にしてか、笑ってそのまま手を振るミリルに送り出されてしまう。
「……お邪魔するってことは、家に来るのか……?」
十一の鐘……夜十時か。
その後、撤収準備してるアイザックたちや次の家屋を建て始めている青のエルモたちにも挨拶し、酒場で一杯引っ掛けつつ、ぶらっと現れたアイリーナのお尻をつい堂々と撫でてウィリアムズのドロップキックを浴びたりしているうちに、夜が更ける。
「そろそろかな……あ、鐘が」
「なんじゃ、先約か」
「そんなもんだ。アイリーナも来る?」
「良いのか」
「ま、いいんじゃないか」
ポルカにいる限り、目当ての子と完全に二人っきりというのは俺が奇襲でもしないと無理だろうし。
チラチラ舞う雪をくぐり、家に戻る。
そこには防寒着でもこもこした恰好のミリルが待っていた。
「あ、ご主人様!」
「待たせた?」
「いえ……くしゅっ」
「待たせたみたいだな。とりあえず中に入って」
「は、はい」
ミリルを招き入れる。アイリーナはニヤニヤしつつ一緒に入ってきた。
「ダン爺さんはまだ酒場にいたし……ブルードラゴンは誰かいるのかな」
ダイニングで確認するように言うと、すぐに奥からミシェラが現れる。
「私だけです。エアリは既に山の向こうへ飛んでしまいましたよ」
「あちゃ。挨拶しそこねたな」
砦には今ジュリーンがいるはずだ。アスティは……パレスか?
「アスティはいないの?」
「数日前に主様のお母様をお連れしたはずですが……そういえばまだ帰ってきてないのかしら」
「なんかトラブル?」
「わかりません。向こうでお母様に引き止められているのかもしれませんし……」
「引き止めるかな、お袋」
「何かと、主様と関係した女性には親身に接していたようですが」
うーん。まあ、アルメイダとも仲良くなったお袋だし、ドラゴンのアスティにもてなす程度には仲良くなっててもおかしくないのか。
「もしも心配なら一族の者を向かわせますよ。雄竜ならお父様以外にも何頭かいますから、循環便に穴を開けずに済ませられますし」
「いや、トロットで滅多なことは考えづらいし、もうちょっと様子を見よう」
なんといってもドラゴンだ。いくらフォルクローレが色んな人間の集まる都会とはいえ、そう簡単にアスティをどうにかできる者がいるはずもない。
まして、何かと戦うわけでもなく、ただのおばさんを運んでいるだけだ。
タイミング的にアスティには循環便開始は伝わっていなかったのだろうし、何かのきっかけでゆっくり寄り道するつもりになってしまってもおかしくない。その辺、何かとのんびりな長寿の種族をあまり急かすのも感じが悪いだろう。
「わかった。……留守番ありがと。今日はこの子可愛がるからよろしく」
「あら。首輪をしていないようですけど」
「してなくても俺の子供産みたいって子もいるんだよ」
俺がミリルを抱き寄せつつニヤリと笑うと、ミリルはフードを払い、場違いにおずおずと「よ、よろしくお願いします」とミシェラに挨拶。
「ククク。ウブで愛らしい娘じゃの。スマイソン殿の肉便器にするのは不憫じゃ」
「そ、そんな! むしろ光栄で……」
「だからややこしい混ぜっ返しするなっての、アイリーナ」
一階の一番奥、俺の寝室として割り当てられた部屋に三人で乗り込む。
「あの、妹たちも連れてきた方がよかったでしょうか? てっきりたくさんの方が順番待ちをしているかと思って、私だけ……」
「なに、ついて早々からスマイソン殿はあちこちヤリ回っておったのじゃ。夜に無理に乗り込んでくる娘は今日のところはおらぬじゃろ」
「流石です」
感心しつつコートを脱ぐミリル。
……いや、ヤリ回ったと言ったってここと温泉とセレンの部屋だけだからね?
そんなにヤリ回ったというほどじゃ……ええと、三箇所で合計十人犯してれば普通は立派なモンなのか。
「そんなに頑張ったつもりはなかったんだけど……一般的基準ではあれでも大暴れになっちゃうのか」
「もっと暴れてもよいと思うがのう?」
「ご、ご主人様なら丸一日でもお付き合いする人ばかりだと思います!」
「いや、まあ……うん、確かにもっと暴れても大丈夫だとは思うけど。ちょっと自分が性欲怪人になりかけてるのを実感した」
主にヒルダさんとかのおかげで。
……いや、ヤレる女の子がたくさん待ってるのに弾切れ激しいよりはずっといいと思うけどね。
「怪人だなんて。……え、えっと……」
「無理に誉めそやしてやることはないぞ? こやつ、好きでやっておるのじゃ」
「ま、そうだけどな。アイリーナ、舐めろ」
まだマントを脱いだばかりのアイリーナにいきなりちんこを突きつける。
「あっ……わ、私はどうしたら……」
困惑するミリル。
……とは言っても、ちんこ舐めとかって猫獣人にやらせるわけにいかないからなあ。舌で削られるし。
「ちゅ……ん、ちゅ……決まっておろう、脱いでスマイソン殿を煽るのじゃ。まったく、工夫もなく訪ねてくるばかりでは埒が開かぬ。趣向を凝らし、犯したいと思わせねばスマイソン殿に可愛がってはもらえぬぞ?」
ちんこをちゅぱちゅぱ吸いながら偉そうに講釈垂れるアイリーナ。
「お前だって滅多に趣向を凝らすとかしないだろうが」
「わらわは良いのじゃ。この膣の魅力だけで充分にスマイソン殿を狂わせられるでの?」
ニヤニヤしながら舐め続ける氏族長様。
……事実、ちょっとアイリーナの膣には魔性の魅力を感じてしまっているので悔しい。
「わ、わかりましたっ……頑張ります」
ぐっと気合を入れたミリルは、するすると衣服を脱いでいく。
砂漠から持ってきたであろう貫頭衣の下にトロットで手に入る街娘衣装。重ね着は寒がりの証か。
それらを脱ぎ捨てると簡素な下着。
「スマイソン殿はパンツを脱ぐ女の尻に特に欲情するぞ? じっくり気を持たせて脱いでみよ」
「は、はいっ!」
事実だけどアイリーナに解説されると自分がとっても駄目な人に思えてくる。
が、ミリルがパンツを脱ぐのを見せる角度を試行錯誤し、ド正面に尻を向けるのははしたないかな、でも見せないのも往生際が悪いかな……と悩んでいるのがありありとわかる腰つきが実にいい。
「硬くしおって」
「な、何言ってんだよ。初々しくていいじゃんアレ」
「くく。新物も良いが、この口も負けぬぞ♪」
アイリーナがフェラチオに本気を出し始める。
じゅぽじゅぽと、幼い口の中に俺のちんこが吸い込まれ、舐め上げられ、飲み込まれていく。
そんな快楽を与えられる横で、マローネはついに下着を下ろしていく。
するり……と、アイリーナに気を持たせろと言われたせいか、はたまた単なる恥じらいか、ゆっくりとその尻の丸みとその奥の性器をあらわにしていく。
アイリーナに激しく吸いたてられているせいで、その膣の中の快楽がダイレクトに想像されて、その奥の子宮が俺の子を望んでいる事実にクラクラして、俺はミリルへの欲情を最大限に高める。
「アイリーナ、放して。……あっちを犯す」
「ん、む……なんじゃ、わらわに一本飲ませてからではないのか」
「俺は子宮に流し込むほうが好きなの」
「ふむ。ま、それもそうじゃな。口の方がいいと言われるより好ましい」
アイリーナが納得したように口を放す。激しい口淫の跡が、糸引く唾液に表れている。
そして、俺はさらけ出されたミリルの尻を掴み、その膣にぬらぬらのちんこを思い切り深く突き刺していく。
「ふあっ……あ、はっ……♪ ご、ご主人様のっ……♪」
「苦しくないか?」
「は、はいっ……ありがとうございますっ……おちんちん、嬉しいですっ……♪」
「だーかーらー……」
なんだろう。やはり変な崇拝されているような気がする。
「頑張りますっ……いい肉便器になりますからっ……♪ ご主人様の好きな時に射精しに来てもらいたくてっ……♪」
「俺はそんなにだな……」
「いいん、ですっ……♪ 私が、そうしたいんですっ……♪ ご主人様に、もっと、もっとご奉仕して、種付けされて、お腹膨らんでも、お構いなしで犯されてっ……♪ 犯されながら、子供産むんですっ……♪ 生まれた子供に最初のミルク、おちんちんミルク飲ませちゃうっ……♪」
「…………」
えーと。
どっちかというと……誤解というより、趣味だったらしい。
ま、まあ若い猫獣人は満月時本当にエッチで頭が一杯になって止まらないというし。
ミリルの場合、子供授かるのに他の子よりも格段にハードルが高かったせいで、逆にハードな妄想に走っちゃったのかもしれないけど。
「だからっ……ご主人様、もっと、もっとっ……私を……エッチだけの女に……っ♪」
「ミリル。……お前が妊娠しても勿論遠慮なく犯してやるけどな」
ちょっと低い声で、ミリルの大きな黒い猫耳に囁いてやる。
「どうせなら心まで堕ちてくれよ。イチャイチャ甘いことを囁きながらミリルのボテ腹にチンポ入れさせてくれ。予定日を数えながらしつこく中出しさせてくれ。……な?」
「……っ、っっ……♪」
ぶるり、と震えるミリルの子宮口をここぞとばかりに突き、捏ねる。
そして、射精。
「ふああっ……あ、あああっ……♪」
「孕めよミリル……孕んだら犯す。孕まなかったら犯す。孕むまで犯す。孕んでも犯すから。な?」
「あ、ふあ……ああっ……♪」
くてりと脱力するミリルに溢れるほど射精しながら、抱きかかえ、寝かせる。
「やれやれ。相変わらず卑怯な説得の仕方をするのう」
「そ、そうか? 赤ちゃんに顔射とかしたくないからもうちょっとマイルドに頼みたいだけなんだけど」
「そなたのチンポの味、まさに思い知らされながらそのように囁かれたら、従わぬわけにはいかぬじゃろうて……♪」
うっとりするアイリーナ。それはお前が特別相性がいいせいじゃないか……と思いつつ、精液ダラダラ溢れさせながら幸せそうに息をつくミリルは演技にも見えない。
「じゃあアイリーナ。お前も説得してみよう」
「……何をどうせよと説得するのじゃ」
「孕め」
「……ククク、説得してみるが良い♪」
アイリーナはスルリと下着を下ろして四つんばいになってみせる。
まあ、避妊魔法かけられちゃってるから実際は無理なんだけど。
「んく……ん、ふぅっ……ほれ、この子宮、ちょっとやそっとねだった程度では応えてくれぬぞ♪」
「上等だ。精液満杯でだらしなく溢れるまで説得してやる」
「よい覚悟じゃ……ふあ、ああっ♪」
……アイリーナとの子供か。
どんな生意気ハーフエルフが生まれるのかな、とちょっと楽しみになった。
(続く)
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