俺もアンゼロスも、ディアーネさんも、何年もバッソンの隊舎で生活していたわけで、本格的に居を移すとなるとやっぱり引き取ってこないといけないものは多岐にわたる。
「家具はよほど変わったものでなければ家師に頼めば作ってくれよう。持ってくるのはそれ以外でよいぞ」
 アイリーナがそう助言してくれる。
 いくらドラゴンとはいえ、机や椅子、テーブルにベッドなどゴチャゴチャ持つのはしんどそうだからそうしておこう。置いておけば引き取り手には事欠かなさそうだし。
「本格的な引越しとなるとバッソンのなじみの店にも挨拶しとくべきか……?」
「突っ込まれると説明が面倒だし、クロスボウ隊と縁を切るというわけじゃないから今後世話にならないというわけでもない。多少心苦しいけど放置すべきじゃないかな」
 アンゼロスの言う通りか。
「引き取ってくる荷物のことを考えると、あまり大人数で行くのは効率的じゃない。今回はボイドも回収することだし、人員は最低限度で行くぞ」
 ディアーネさんがそう言うと、ナリスやテテスは残念そうな顔をする。
「もう一度あっちの雰囲気に触れるのも悪くないかなーって思ってたんですけど」
「……旅の間が寂しいです」
「い、いやテテスちゃん、ホント何があったの。そんな本気で寂しそうな顔はちょっとなんと言うか……逆に怖いよ?」
「怖いって何よう」
 確かに今までのテテスだったら微妙に掴めない笑顔で言うべき台詞かもしれない。
 ……それはそれとして。
 元々隊舎に住んでて、こっちに引き払ってくるべき荷物を残しているのは……俺とアンゼロスの他に、オーロラ、ジャンヌ、そしてセレンか。
 一応ルナとかヒルダさん、ライラも部屋があるが、ヒルダさんの分の荷物はディアーネさんが担当するようだし、ルナやライラはもともと着の身着のままで行動するタイプなので私物の心配はほとんどないだろう。
 となると、セレンを連れて行くかが肝なんだけど……。

「大したものは置いてないんで向こうで適当に判断しちゃってください。最悪全部捨ててもいいですから」
「私たち……ああいう生活だったので、あまり物は持たないんです。大事な道具とかは肌身離さないで持てる程度のものばかりですし」
 セレンとアップルはあっさりそう言ってのけた。
 ……まあ、そりゃそうか。極端な話首輪さえあれば、あとはどうだっていいんだろう。
「となると……アンゼロスとオーロラはまあ連れていくとして……あとはジャンヌか。どうする?」
「行くだよ。……けど、ピーターも連れてってええだか?」
「ピーターも……?」
 また髪がようやく生え揃った程度のピーター。
 セレスタを見せてもまだ理解できるような歳じゃないし、連れて行くにしても赤ん坊は体調崩しやすくて色々と危険だから空の旅にはあまり連れて行きたくないんだけど……。
「じっちゃんに会わせてやりてえだよ」
「……まだ早いんじゃないか?」
 そりゃ俺もいずれは連れて行ってやりたいとは思ってるんだけどさ。
 ピーターがもう少し成長するまでは、やっぱり色々と怖い。
「ヒルダ先生にも協力してもらえばできると思うだ」
「あんまり他人の魔法に頼るなよ。自分でわかってない力を頼みにし過ぎると、いつか痛い目見る」
「んでも……」
 ジャンヌが未練ありありの顔をする。
 気持ちは、わかるんだけどな。でも、それでピーター自身に無理させちゃ、やっぱりまずい。
 特にピーターはちょっと珍しいハーフドワーフという存在だ。ヒルダさんの実力を疑うわけじゃないけど、100%のケアはどうしても難しいという側面もある。
「冒険的なことは、せめてピーターが乳離れするくらいまで成長してからにした方がいい。俺は……そういうことで家族を危険にさらすのは反対だ」
「ぅ……」
 ジャンヌがしょんぼりする。
 が、それを見てセレンが明るく提案した。
「ピーター君をよそに連れて行けないなら、会わせたい人を連れてくればいいんじゃないですか?」
「……そ、それは……でも、じっちゃんあれで忙しいだ」
「赤ちゃんの体調に注意しなきゃいけないのは説明すればわかってくれるはずですし、それで断られたらしょうがないことです。健康より忙しさを取られたら、ね」
「…………」
 確かに、な。
「ドワーフコロニーに行って、ダン爺さんを説得してみよう。どうしても駄目なら、ピーターがもっと大きくなってから行けばいい。時間は、あるだろ」
「……んだな」
 ジャンヌに納得させたところで、俺もお袋を呼ぶことを少し考える。
 ……今回のセレスタコースでフォルクローレまで寄るのはちょっと寄り道しすぎだから考え物だけど、引越しのゴタゴタがすんでも一日くらいの猶予はあるだろう。
 お袋にも、孫を見せてやらないとな。


 今回のメンバーはディアーネさん、アンゼロス、オーロラ、ジャンヌ、そして俺。
 飛行役はマイア。
 帰りにはボイドを載せて、あと全員分の私物に後席を譲って……まあ、それで無理なしなら御の字か。
 いざとなったらマイアに幻影応用の空中収納も活用してもらおう。
「土産待ってますぜー」
「俺もー」
 ドラゴンマイアの手で抱えられ、浮き上がり始めた馬車に、ランツとケイロンが手を振りながら図々しいことを言う。
「こないだ買ってきてやったばっかりだろうが! もうすぐ任務再開なんだから我慢しろ!」
「えー」
「スマイソンのケチー」
 ホント図々しいにも程がある。


「ライラを待たなくて良かったんですか、ディアーネさん」
「ライラの手が必要なことじゃないしな。それに行き帰りのコースは同じだ、気がついたら合流……」
『ライラ様が見えたけど、なんか言う?』
 車内にマイアの幻影音声が響く。
「近いか?」
『向こうも気付いた。右に旋回して……多分二分ぐらいでコース合わせて追いついてくる』
「まだ子蛇より北だよな? なんかこう、鳴き声的なもので合流の合図できない?」
 子蛇山脈より南になるとドラゴンの鳴き声はパニックに繋がる危険があるが、今の位置なら大丈夫だろう。
『大声で言わなくても……ちょっと話す程度なら幻影でやり取りできるよ』
「頼む。引越しの説明と、できれば手伝い、な」
 指示するとアンゼロスが心配そうな顔をする。
「ライラも飛びっぱなしで疲れてるんじゃないかな」
『アンゼロス、ドラゴン舐めすぎ。ただ飛ぶだけなら私だって一ヶ月ぐらい余裕で飛べる』
 マイアが反論。……ってか、ホント俺達の基準では計れないなぁ。
「……そりゃごめん。でも、ちょっと酷使しすぎじゃない、最近?」
「いくらライラさんとはいえ、少しは労わってあげないといけません」
 アンゼロスとオーロラはそう提案する。
 確かにな。全裸村にも混ぜてやれなかったし。
「聞いたらきっとライラも喜ぶな」
「んだ。新しい子たちと違ってアンゼロスたちは余裕あるだで、聞いてて気持ちいいだよ」
『ドラゴンは、ライダーに良く使役されるなら、それだけでも嬉しい生き物なんだけどね。……今、私の斜め後ろについた。このまま飛ぶよ』
「それより普通にちびマイア出して喋ってくれ。話しかけづらいよマイア」
 子蛇を越え、そのままトロットの平野へ。
 普通に歩けば何日もかかる道のりを、ドラゴン二頭で飛び抜けていく。

 まずはバッソンの隊舎に着陸。
「ほ。とりあえずドワーフコロニーに向かうのは我とジャンヌで良いな」
「アンディたちは引越しの支度を進めるとええだよ」
「……一応お前たちの引越しもあるんだけどね」
「我の荷物で必要なものは持ち歩いておる。置いてある物は適当に処分すると良い」
「アタシのもライラ姉様がだいたい持ってるだよ」
 ……物に頓着しない子、多いなあ。
「アンゼロスやオーロラまで『大した物ないよ』とか言い出さないよね」
「僕は……まあ、それなりに物は大切にするほうだから」
「ほとんどは衣装や書物ですし、よそで買っても良い物ですけれど……まあ、捨てるというのも多少惜しいものが多いですし」
 さすがに二人はそこまで浮世離れはしていないようだ。よかった。
「私もそれなりに記念品やら何やら多いからな……姉上やライラたちの私物も私が片付けた方が都合がいいか」
「私は何すればいいの」
「マイアはアンディの手伝いをしていてくれ。時間が余ったら……まあ、好きにしていていい」
「わかった」
 軽く確認しあって、ライラたちの再離陸を見送ってからそれぞれの部屋に散開する。

 しばらく前にも荷物の確認をして、ポルカでの生活に必要と思われるものは持ち出した。
 が、完全に引っ越すとなると……ちょいと名残惜しいけど、持ち出せるものは全部持ち出さなきゃな。
 この部屋も十人長昇格してからずっと俺の唯一のプライベートだったけど。
「アンディ様。なんかいっぱいごろごろでてきた」
「ああ、それ……アクセサリーの試作品な」
「これ何?」
「ベルトのバックル。そっちはピアスか」
「つけていい?」
「駄目。女の子がドクロバックルとか可愛くないしピアスは痛そうだから嫌」
「……せっかくアンディ様の作品なのに」
「また暇な時に作ってあげるよ」
「♪」
 マイアと仲良く私物を穿り出しては梱包。
 まあ服とか小物がほとんどなんだけど。

 中にはマイアに見せると困りがちなものもあるといえばあるわけで。
「……巻物、いっぱい」
「それは……」
 俺が買い集めたエロ絵巻のセット。
「見ていい?」
「だ、駄目」
「……駄目なの?」
「ただのエロ絵巻だ」
 よく考えれば今更隠すことじゃないので堂々と言う。コソコソするから怪しく見えるんだ。堂々としてれば……。
「……面白いの?」
「い、いや、面白くはないよ」
「勉強になる?」
「フィクションだからあんまり……」
「……なんでそんなに大事にしてるの」
 そういう哲学的な質問はやめていただきたい。
 俺だってちょっと疑問に思う。
 でもな、俺がまだ若かりし時代(つっても四、五年前だけど)、胸躍らせたオカズたちをぞんざいに扱うのはどうしても気が咎めるんだ。
 いわば心の記念碑といえよう。
「そういうの見て、あの変態コンビみたいにおちんちん擦るの?」
「……そんな時代もあった」
 童貞捨てたのもまだ二年も前ではないので決して昔話じゃないんだけどね。
「……言えば、私が何時間でも、やりたいだけえっちしてあげるのに」
 少し困った顔でマイアにそんなこと言われるとなんというかですね。
「じゃあここでのラストエッチしようか」
「片付けはいいの?」
「もう必要なものはほとんど包んだし」
 マイアを抱き寄せてキス。そして遠慮なく服の中に手をいれ、直接お尻を鷲掴みつつもう片方の手はその後頭部を抱く。
「ん……く、っ……」
「……マイアは可愛いな」
「あ、あんまり褒めても……」
「褒めたら激しいエッチしてくれたりしない?」
「……褒めなくても、なんでもするよ」
「機嫌よく激しいエッチしてくれると俺も嬉しい」
「……じゃ、じゃあ、そうする」
「ホント可愛いなあ、マイア。……脱がすよ」
「ん……脱がして」
マイアをベッドに運んで押し倒し、服をはだけさせてぱんつをゆっくり引き摺り下ろす。
「パンツ脱がす時のアンディ様、ほんと楽しそう……」
「何度見てもマイアのココは綺麗だし可愛いし、おいしそうだからな」
「……全部、アンディ様のものだから、好きにしていいよ」
「好きにしちゃうさ」
 ふとディアーネさんたちにバレたら怒られるかな、と思いつつも止まらず、マイアの淡い毛に包まれた股間を指でいじり、押し殺した喘ぎ声を聞きながら舌で味わい、時々その控えめなおっぱいも舐める。
「……ま、まだ……入れないの?」
「入れて欲しいか?」
「……うん」
 マイアは少しポーッとした目で頷く。
「……アンディ様のおちんちんなら、いつ突っ込まれてもいいもの……できるなら、暇さえあれば犯されてるくらいがいい……♪」
「……淫乱だな、マイアは」
「淫乱、だめ?」
「最高にいい」
「♪」
 マイアのはにかんだ微笑を見つめながら、俺はマイアの濡れた陰唇に思い切りちんこをしゃぶらせる。
「ふくっ……あ、ふぁっ……♪」
「マイア……愛してるぞ、俺の可愛い雌奴隷……」
「……テテスと、同じことっ……♪」
「駄目か?」
「もっと、言って……ペットでも肉便器でも、オモチャでも……全部、あってるからっ……♪」
「じゃあ……そうだな」
 ズチュズチュと腰を振る。
 気を持たせながらベッドに押さえつけ、互いに体を揺すり、淫臭を撒き散らし。
 淫乱に、それでいて可愛らしく、貪欲に俺の腰を離さないマイアに。
「可愛い俺の恋人……とか、どうだ」
「こ、恋人っ……」
「ああ、それもあってるだろ?」
「……あ、あって……あってる、けどっ……♪」
 マイアは言いながらゾクゾクと背を波打たせ、膣をキュッキュッと締め付けて。
「……一番、ひどいこと、言われてるっ……♪」
「酷いとか言うな」
「だってっ……胸が、一番ドキッとしたっ……お腹の中が、甘くなっちゃったっ……♪」
「ああもう、可愛いなあ……!」
 マイアを全力で突き上げ、密着したまま揺すってキスを繰り返し、射精。
「ふわっ……あ、あああっ♪」
「……ふう」
「……いっぱい、きたっ……アンディ様の、せーえきっ……♪」
 マイアの奥での射精を終えて、その股間から精液を拭き取らぬままパンツを履かせる。
「何人気付くかな」
「……♪」
「こういう遊びは、駄目か?」
「……毎日してもいいよ」
 いじらしいマイアをもう一度抱き締める。
 そして、エロ絵巻の処分を決めた。マイアがこれだけ頑張ってくれたんだから潔く決別だ。
 ……ランツの部屋に投げ込んどけばいいか。

 しばらくして女子隊舎に様子を見に行く。
 ……と、ミカガミ姉がマイアの接近に際して顔を赤くする。
「あ、あの……お、お風呂、使いますか……?」
「なんかすごいエッチい匂いしてるよー」
「け、ケイト! そんなデリカシーのないこと言わないの!」
 ……気を使われてしまった。
「……そういうのはアンディの場合わざとやってるから普通に文句言っていいよ、ミカガミ」
「アンゼロス十人長」
 アンゼロスが呆れた顔をしていた。
 オーロラとディアーネさんがヒルダさんの部屋から出てきて同じ苦笑いの表情を作る。
「匂いますわね」
「こうまであからさまだと清々しいな」
「……アンディ様。ばれちゃった」
「ばれちゃったな」
「す、スマイソン十人長! 少々下品です!」
「お姉ちゃんが言えるかなー」
 なんだ?
 ミカガミ姉も意外にシモネタ強かったりするのか?
「まあ、そういうことまで含めてマイアにアンディの面倒を頼んだんだけれど……セレンとジャンヌの部屋の処分がまだだ。もう一度くらい楽しんできていいよ」
「ディアーネ百人長! あ、あまりそういうのは勧めないで下さい!」
「お姉ちゃん、あんまり怒ると子供に障るよー」
「……だって。アンディ様、もう一度やる?」
「やろうか」
「♪」
「ですからそういうのは聞こえないところで!」

(続く)


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