どうもブレイクコア+ダブワイズ式再生法にはいくつか問題点があるらしい。
まず、超痛い。
痛いのは感覚を直接誤魔化す感覚幻影で緩和できるはずだが、それをやると受け入れられる以上の「気」を自分に流入させる危険があってよくないらしい。
元々聖獣というのは無制限に近い力の奔流を常に受け止めている存在なわけで、その力を制御しつつ使うために「必要な分だけ」を取る必要がある。この術の場合、それを既定するのが身体の自律機能なわけで、感覚を誤魔化してしまうとコントロールが狂って余計な量の力を要求してしまう恐れがあるわけだ。
聖地のセシルが痛めつけられては再生する訓練をしていたのも、この仕組みに基づくものなのだろう。どうやら訓練で能率を上げられるもののようだけれど、今回の猫獣人たちは訓練する意味はない。
その痛いのをどうしても緩和したいというのがヒルダさんの意見。
今、治したマローネでさえ、相当条件がよかったのだ。治癒コントロールの素養の一つである魔法は使えたし、本人の意志も強かった。
これを意志の弱い子(弱いというと悪く聞こえるが普通の神経では耐え難いらしい)や、治癒コントロールが下手で痛みばかりが続いてしまう子に適用するのはあまりにも可哀想だ。
できれば治癒コントロールもサポートしたい。
しかし元々肉体の本能を利用して完成しているシステムなので、他人が手を入れたり本能を誤魔化すとなると、どうしても「気」を逃がす安全弁が必要になってくる。
そこで白羽の矢が立ったのはマイア。
ドラゴンの肉体は確かに強靭であり、多少「気」が溢れて流れ込んでも平気らしい。
ヒルダさんが昔読んだ学説によると、元々ドラゴンが食事量に比べて圧倒的な活動性能を維持できるのも、多少ならず自然の気を利用できる身体的構造になっているからだとか……まあ、このへんは眉唾だけど。
「それで、問題はどうやってマイアちゃんにダイレクトに余分の『力』を流すかってことなんだけれど」
「……俺をじっと見てる時点でなんとなくわかりましたが」
「うん。ドラゴンが直接エッチしちゃえば簡単なんだけど、アンディ君ならマイアちゃんも波長合わせやすいだろうから、エネルギーをそのままマイアちゃんに受け流せるように魔法で処置して……それでアンディ君には房中術の逆用で猫ちゃんたちとガッチリ魔法的にも肉体的にも合体。その状態のまま私が横から治癒コントロールします。痛みを完全に消すのは危険だけど、大体計算上は1/8ぐらいまで弱められるわ。溢れた力はアンディ君を通してマイアちゃんが吸収。完璧なチームワークね☆」
「待ってヒルダさん。房中術って何。俺使えないけど」
「私がものすごく得意だから。アンディ君は普通にエッチするだけでいいのよ。あ、射精はしてもいいわよ。好きなだけ治療中の女の子にビュルビュルしてあげちゃって」
ヒルダさんは完璧ね、と一人頷いている。
が。
「ちょっ、ちょっと待ったヒルダさん。いくらなんでも治す代償に貞操ってのはよくないでしょう」
時々訪問してはコロニーリーダー公認で好き放題種付けして回っているような相手に今更何を、と思うかもしれないが、彼女らはそもそも俺の種付け対象じゃない。
経緯の是非はともかく、そういう予定はお互いにないのだ。猫コロニーでは施錠で意思確認ができたが、今回は「治して欲しければ股を開け」という脅迫に近い話になってしまう。
それはよくない。卑怯だと思う。
……という俺の意向を聞いてヒルダさんはちょっと困り顔。
「でもあんなマローネちゃんみたいなのは、下手したら精神的に壊れかねないし……そうだ、なんだったらお尻でも逆房中術イケると思うから、希望者はお尻ってことでどう? そっちも魔法ですぐ気持ちよく使えるように出来るし」
「……それでもちょっとアウトだと思いますが」
「わがままー。治療よ治療。そんなに痛みに悶え苦しむ女の子が見たいの?」
「う、わ、わかりましたよ。くれぐれもちゃんと本人達に意思確認してくださいね」
俺は非常にスケベだと自分でも思うが、別に記録に挑戦したいわけでも処女専でもないのだ。
処女というのが女の子にとってそう安くないこともわかっている。
そういうのは、もののついでで捨てるものじゃない。結婚までとは言わなくたって好きな相手に取っておくべきだと思う。
……なんか頭の固いオッサンみたいな言い草だけどね。
ヒルダさんが猫獣人たちに個別に問診をしている間に、マローネの意識が回復した。
そして、まるで新しい靴で初めて外に踏み出すようなおっかなびっくりの足取りで、草原をゆっくりと歩き出す。
「……すご……い。ほんとの、あし……」
「筋力とかも不足のない程度に戻ってるはず……らしいから、慣れたら走ってみるといいってブレイクコアが言ってたぞ」
「は、はい……」
俺がそう言うと、再生したばかりの素足でさらに数歩ほど歩き……コテンと転ぶ。
「マローネ!」
「あ、あはは……自分の足で歩くの、五年ぶりくらいだから……なんか、バランスが取れなくて」
マローネは俺の手を取って立ち上がる。
そして周囲を見渡し、目を細めて……涙を流す。
「ありがとう、ございます……ありがとうございますっ、ご主人様」
「いや俺ご主人様じゃないし。……ていうか、もしかして酒場とか服屋とかのエルフに感化された?」
ちょっとセボリーやオレガノには注意しとかなきゃいけないかもしれない。
「は、はい。……でも、コロニーじゃないからお客様っていうのも変ですし……」
「アンディ・スマイソン。無理に妙な呼び方しなくていいのに」
名前を教えても、マローネは首を振り。
「これからも、ご主人様じゃ……駄目ですか? えっと、色々な意味で」
「……色々って」
「その……言う事、なんでも聞きますし……コロニーのみんなみたいに子供も産ませて欲しいかな……って……」
「別に恩義とか感じなくていいんだぞ。ほとんどやったのはヒルダさんとブレイクコアだ」
「……恩義がなくちゃ、駄目ですか……?」
ザア、と草原の草が揺れる。
夕暮れに差し掛かった草原は黄金の光をなびかせ、目の前の猫獣人少女の恋する瞳を常春の柔らかな光で彩る。
……よくないよな、卑怯だな、と思いつつ。
「……女好きの浮気性で、多分お前の目の前で他の女ともバンバンセックスする変態だけど」
「知ってます」
「孕ませっぱなしで下手すると子供も『コロニーの子』になっちゃうかも知れないけど」
「いいです。……可愛がって、くれませんか?」
ああ、ヤバい。
こういう時に本当はカッコよく諦めさせるようなことが言えたら場面的にステキなんだけど。
「……よし、それじゃ、ポルカでな。……早速だけど、他の子を治療しながら犯さないといけない」
さらっと最低な事実を突きつける俺。
「……私も犯しながら治療して欲しかったかも」
マローネは俺にキスをした。生まれたばかりの新しい足で爪先立ちをして。
「それで、問診調査の結果ですが……とりあえず来てる子六人全員『処女あげます』だそうです」
「……マジで」
「あのねアンディ君。一応みんな、あのコロニーの女の子だという事を忘れないように」
「…………」
言われてみれば、ほとんどノリだけで何十人も集まって俺と夜のナマ青姦するような人たちだったね。
「というわけで六人分、処女もらいながら治療ね。……はーいみんなー、こっちの小屋に集まってー。あ、マローネちゃんはいいわ。クリスちゃんたちと迷宮村でお夕飯もらってきてねー」
ヒルダさんの号令で、再び全員が動き出す。
「よろしくね、アンディ」
ルナが俺の肩を叩いて囁き、目の不自由な猫獣人娘のために先導にかかる。
……目の見えない子はともかくとして、その他の腕の千切れた猫獣人、顔に大きな傷跡のある猫獣人やその他妙齢の猫娘たちがみんな俺に少し緊張した視線を送ってくるのが居心地悪い。
でも、やらなきゃなあ。
小屋の中ではブレイクコアが相変わらずの位置にいる。
そして、先に小屋に入っていたヒルダさんがいそいそと服を脱ぎ、下着も脱いでしまう。
「ヒルダさんまで脱ぐことないんじゃ」
「私だけ服着てても居心地悪いでしょ? みんな仲良くすっぽんぽんでいきましょーよ☆」
多分自分だけエロの埒外にいるのが嫌なだけだこの人。
「それじゃ、まずはアンディ君、脱いでそこに座って……マイアちゃんはアンディ君と接触して。今からエネルギーラインを強化するから……」
「大丈夫。自分でできる」
マイアは俺の背中に手を置き、小さく、長い呪文を繰り返し呟いていく。
魔法の使えない俺にはよくわからないが、それでもマイアが呪文を唱えるたび、マイアと何かが繋がっていく感覚を覚える。
「これで……一応、気の充溢は対応できるよ」
「こんなことできたのか……」
「本来はドラゴン仲間に力を分ける術。人間とでは器が違いすぎてあんまり意味がない」
とりあえず、準備は完了したらしい。
それに加えてヒルダさんが俺のちんこ周りに魔法を施して……。
「なんでしゃぶってるんですか」
「んぅ? ……だめ?」
「駄目じゃないですけどあの子達待ってるじゃないですか」
「んもー。ヒルダ先生だって雌奴隷なんだからもうちょっとおちんちん突っ込んでくれてもいいと思うなー」
「次の機会にしてください。モタモタしてたら明日になっちゃうし」
「はいはい。……それじゃ最初の患者さんどーぞー」
ヒルダさんがおふざけを終わらせると、隣の部屋に控えていた中から一人目が現れる。
少しコワモテ……まあ目つきが鋭いだけだけど。片手が二の腕からなくなっている。
「お、お願いします」
「はいはい脱いでー。それと避妊魔法いる? このまま孕まされちゃうかもしれないわよ」
「い……いらないです」
ヒルダさんに脱がされて俺の上にまたがる彼女。
俺のちんこが彼女の処女地に刺さっていくのを見ながら、ブレイクコアが最後の確認をする。
「ダークエルフ、順番を間違えるなよ。最初にこちらの契約術起動、お前が治癒コントロールを受け取って再生開始確認の後に……」
「感覚幻影発動。急速再生しながらアンディ君の射精を待って再生を閉じる」
「そうだ」
頷くブレイクコア。
って。
「俺が射精することまで計画のうちなのか……」
「微々たるものだけど絶頂の時が一番、気に対する許容値が広がるんだ。余剰の『気』を発生させるならその時の方が多少安全になる。あと、気持ちよくないまま次に回るのは双方納得しないだろう」
「……双方?」
俺にまたがる鋭い目つきの猫獣人女を見ると、ゆっくりと腰を振りながら小さく頷く。
「……で、できれば……せっかくの初めて、だから……射精してほしい……です」
……ああ。
こんな「ついで」みたいな形でも、やっぱりこの子達にとっては初めてには違いなくて。
初めてだからこそ、ちゃんと終わりまで行きたいのか。
「よし。……それじゃ、イクぞ。もっとガンガンやっていいな?」
「はっ……はい!」
目つきの鋭い彼女を抱き締め、俺は腰を振り始める。
片腕ながら、彼女はきっと狩りを続けていたんだろう。きゅっと引き締まった肉体は卓越した運動能力を感じさせる。
それでいながら片腕がゆえに男の前には出て来れなかった。
そんな羞恥心に哀しさと愛しさを感じる。
俺はその胸をちゅうっと吸い、のけぞる彼女を追い立てるように腰を振る。
そんな時、彼女のなくなった腕の傷口が開く。
ブシュッと血が吹いて腕に降りかかる。思わず彼女の顔を見ると、少し顔をしかめていた。
「い、痛いっ……で、でも……続けてっ……!」
「お、おう」
俺は腰を振り続ける。
血はどんどん噴き、そして腕はだんだん再生しているのがわかる。ジワジワと再生していったマローネよりもいくらかスピードは早く、俺が血を見ないようにおっぱいに顔を埋めている間に、真っ赤な手が蘇っていた。
「あ、あはっ……♪」
その手を見て、涙ながらに彼女が笑うのがわかる。
でも血がブシャブシャ噴いているまま女の子を犯すのは正直、ちょっと怖い。凝視するとちんこ萎えそうだ。
「そろそろ、アンディ君、イッちゃってくれないかなー……☆ 最後の皮膚再生が、できないの……」
ヒルダさんが魔法を駆使しながら要求する。さすがにすぐにとは行かない。必死で快楽に意識を集中し、射精への道を駆け抜ける。
「は、んんっ……♪」
「んぐ」
だが、感極まったらしい彼女が俺に熱烈なキス。
真っ赤な手で俺の背を抱きながらの抱擁、そして熱い唇の感触と腰の返しに、俺はようやく絶頂。
彼女の中に大量の射精。それと同時にヒルダさん、マイア、ブレイクコアが気を引き締めて何かをした気配。
……何かが俺に流れ込んできて……そのまま背後に流れて出る。
その一瞬の飽和は真綿で溺れるような感覚に似て、確かにちょっと怖い。
「……ふぅ。マイアちゃん、大丈夫?」
「平気……少しウッてなったけど」
「上出来だ、ミスティ・パレスの幼竜」
周りの三人の会話を聞きながら、俺は疲れ果てたらしい猫獣人の腕を拭いてやる。
綺麗に再生していた。
……けど、なぁ。
「あと五人かぁ……」
血みどろの半身を見ながらちょっとだけ溜め息。
エッチといってもこうなると嬉しいシチュばかりじゃないなぁ。
……と思いながらも、身体を丸めるようにして身を横たえ、息をつく猫獣人の股間から俺の精液が溢れているのを見ると妙な満足感に浸らざるをえないわけで。
でも、さすがに。
「あ、あっ……♪ あふ、あ、にぁあっ……♪」
両目から大量の血とか涙とかいろいろ噴射してヨガる女の子というのはかなりその、キツい。
この一つ前の片目なくした顔傷の子も半分血まみれ顔で悦んでたけど、さすがにこれはちょっと怖いのでバックからやらせてもらう事になってしまった。
チキンと言いたくば言え。コレで余計興奮するほど怖い趣味にはなりたくない。
「アンディ君、そろそろイく……? 手伝ってあげようか?」
「いくつも魔法操りながら俺の絶頂まで心配しないで下さい……」
ヒルダさんの好意には素直に敬服しつつも、なんとか少女のお尻に意識集中して絶頂を迎える。
その瞬間、一瞬の飽和を経てマイアに流れていく「気」。
それが済むと、ようやくこの血塗られた儀式が終わったことを知る。
「……にゃ……まだ、何も……」
「はいはい、ちょっと目の辺りグジュグジュになっちゃってるわね。落ち着いて、今取ってあげるから。────!」
ヒルダさんが魔法でアフターケアすると、ようやく最後の子も目を開ける。
「……み、見える! みえる!」
「よ、よかった……な」
俺はその顔が目から下真っ赤な鮮血に濡れた状態だというのを指摘できずに荒い息をつく。
結局全員避妊も拒否。なんだかんだでガチ種付けを続けてしまった。
「お疲れ様、アンディ」
「ちょっとボーッとする……」
「青竜、私に気を流し戻せ。さすがに溢れそうだろう」
「うん……」
ルナ、マイア、そしてブレイクコアも一仕事終えた安心感に身を浸す。
そして。
「今日はまたひとつスマイソンが偉業を成したと聞いてな。ウチの若い連中の熊狩りも成功したことだし、馳走だ」
ディエルが気を利かせてくれて、今日もこの地の一番のご馳走・熊鍋にありつくことになる。
「本当は早く帰って寝たい……」
「アンディ様、あーん」
「それぐらいは私にやらせて」
マイアとルナが「あーん」役の奪い合い。
「あの、私からもどうぞっ」
「にゃー。一緒に食べてにゃー」
そこにマローネや目を治したばかりの少女(名前もまだ知らない)なども参戦してきて俺モテモテ状態。
「あらあら。アンディ君空くのいつになるかしら。私もそろそろご褒美欲しいのになー☆」
「私もご相伴に与っていいでしょうか」
「桜の名代、そこは一緒に働いた私が優先だろう?」
年長組は年長組でなんか取らぬ狸の火花散らしてるし。
……あー。でも。
「ありがとうございます、本当に」
「にゃー!」
……みんな治って、よかった。
(続く)
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