夕方。
カタリナの医務室で、ディアーネさんが魔法とナイフを使ってキングフィッシャー将軍の接着されたクチバシをパカッと開いてやる。
「クエー! カッ、カッ……クアー! ええい畜生め! 隊長、恩に着ます!」
キングフィッシャー将軍は半泣きでディアーネさんに頭を下げてからベッカー特務百人長と逆毛……いやリグリー君をとっちめるためにすごい勢いで飛び出していった。
「いつまで経ってもあの馬鹿どもは……」
「ほ。して、次の小屋建て作業はいつか入るのじゃ」
「できれば今からがいいな。前回の作業で手は慣れているとはいえ、小屋を10個建てるとなると……」
「四日、五日は欲しいか。……手早くやろうにも、雪が邪魔じゃのう」
「それはお前の力で吹き飛ばしてくれることを期待しているがな。……マイアの力も頼りたいが、この寒さの中でアンディまで連れて行くのは厳しいか」
なんかダークエルフのディアーネさんに寒さの心配をされるのも不思議な気分だ。
「い、一応、俺、北西平原でも有数の北国っ子ですよ?」
「私は魔法が使えるし医者として自己管理もできる。体力もそれなりにあるし、ちょっと寒い程度で病気にかかりはしない。しかしお前は厚着をするくらいしかないだろう。これから私とライラで昼夜を徹して突貫工事をする間、暖かくしていられるような現場基地はまだないんだぞ」
「う……」
ディアーネさんとライラはもう既にぶっ続けで一気に建設をするつもりでいるらしい。
そりゃ俺や他の女の子達は建築の技能なんてないし、デキる二人は体力自慢だからできるだけ一気にやろうってのはわかるんだけど。
……アイザックたちの持ってた雪中装備、借りてくればよかったなぁ。
マイアも難しい顔。
「私がドラゴン体で丸まれば、風や雪からは守れるけど……それじゃ、夜にここまで帰ってくるのと変わらないし」
「実際、マイアを手伝いに使うつもりなら日参してくれるほうが安全だ」
「それしかないですかね……」
マイア一人で行動……というのもそろそろ覚えさせるべきかもしれないが、いよいよ彼女らに対する俺の立場が精神的なものになってしまうので強くも言えないのが辛いところ。
自分は離れてぬくぬくしつつ、働け働けと命令だけするようなヒモライダーにはなりたくないよね。うん。
……そんな話をしていると、ネイアがおずおずと話に入ってくる。
「あの……私も、お手伝いさせてもらってもいいでしょうか」
「ネイア。……お前、小屋建てとかできるのか?」
「できるというほどではありませんが、故郷ではちょっとした大工仕事は自分でやるように躾けられていましたから……多少はお手伝いできると思います」
……そういえば、カールウィンは変に職種で隔離された社会なんだっけ。
多少のことでいちいち職人なんか呼びつけられる状態じゃなかったのかな。
「まあ、そういうことなら……しかし無理はしないでほしい」
「はい。……この砦にいても私の出番はなさそうなので、少し手持ち無沙汰でして」
ほにゃっと笑うネイア。
……やっぱり、根本的に平穏というものに馴染めていないんだろうか。それとも、ただ望郷の念が手出しさせずにはおれないのか。
後者だといいけど。
「わかった。すぐに出る。準備はいいか」
「はい」
「部隊の現場責任はベッカーに……いないか。いや、元々あいつは助っ人だから筋違いだな。……アンゼロスに委譲しよう。アンディ、呼んできてくれ」
「了解」
鎧を脱ぎに女子部屋に戻っていったアンゼロスを再び呼び戻しに走る。
「それでは、これより指揮権を引き継ぎます。お気をつけて」
「ああ。あとは頼む」
カタリナの屋上。
アンゼロスに後を託し、ディアーネさんはライラに目配せ。
ライラは頷き、服を投げ捨てながら大ジャンプで上空数十メートルまで身を翻らせ、幻影衝撃を伴って空中でドラゴン変化。
その背にディアーネさんとネイアが飛び乗り、スゥッと幻影で消えていく。
「明日から日中は手伝いに行くんだろ?」
「ああ。マイアの手があれば、少なくとも丸太の扱いや屋根葺きは簡単だからなぁ」
アンゼロスと連れ立って屋内に下りる。ベッカー特務百人長とキングフィッシャー将軍は砦の中を壁走りや天井跳ねを駆使して盛大に駆け回っていた。
「クァアアアー!! 待てやこのクソ野郎!」
「追いついてみやがれノロマ鳥。屋内じゃ俺のが速ぇってんだ」
「クァー! クァアー!」
両方とも至近距離で見たら捉えられないほどのスピードで駆け回っているので、とっても近所迷惑だ。そしてそんなスピードで走り回っているわりには足音が異様に小さいのも気持ち悪い。
「無駄に高度な鬼ごっこして……」
「誰かにぶつからなきゃいいけどね……」
アンゼロスが呟いた次の瞬間、案の定ベッカー特務百人長がぶつか……ったというか吹っ飛んだ。
「ぐわぁ!?」
「チョロチョロチョロチョロうぜえわー!!」
アネット大騎士長の張り手だった。
……不意打ちとはいえあのスピードで走り回っていたベッカー特務百人長に一撃入れられるのは、大騎士長ならではと感嘆すべきだろうか。
「っとと……うわ、ちょっ、タンマタンマこれはわけが」
「ほりゃあっ!!」
そして勢い余ってアネット大騎士長に突っ込みそうになったキングフィッシャー将軍もビンタの餌食。翼を使った急制動むなしく、ドテッ腹に掌をブチ込まれてポーンと十メートルくらいすっ飛んでいく。
「はぁ。ったく大の大人が砦で鬼ごっことか恥を知れよな」
「首が、首がっ……」
「く、くそ……なんちゅうパワーだ」
首を変な角度に曲げて悶絶しているベッカー特務百人長、壁にめり込んだキングフィッシャー将軍。
仮にもセレスタの誇るスピードスター二人の大惨事に唖然とするしかない。
「捉えられるもんですねぇ」
「あ、逆毛の」
「リグリーです。りぐりぐと呼んでくださっても結構です。故郷では音速の極楽鳥の二つ名で呼ばれておりましたフェルナンド・リグリーをよろしくお願いします」
「あ、ああ、うん」
さっき何かが切れたのか、自己主張が妙に激しくなった逆毛のリグリー十人長は、追いかけっこのターゲットだったはずだが路地裏にちゃっかり隠れていた。
「あ、逆毛だこの野郎! クチバシの恨み……」
「チッ。それじゃあくれぐれもフェルナンド・リグリー十人長の名をよろしくお願いします」
よろよろと再び追おうとし始めたキングフィッシャー将軍に気付き、そのまま路地裏を通って逃げていくリグリー十人長。こっちも足音がしなくて気持ち悪い。
「なんか……猛獣の檻に取り残された気分だね」
「ああ……」
俺とアンゼロスは冷や汗をかきつつ溜め息をついた。
まあそれはそれとして。
「あんまり堂々とここを訪れるのもどうかなーと思わなくもないんだ」
「まあ……今更ですから」
「今日はネイアさんやベッカー特務百人長もお留守ですし、いいのではないでしょうか」
「アンディはたまには……僕とか、古株雌奴隷をたっぷりいじってもいいと思う」
女子部屋の真ん中近いベッドでアップル、オーロラ、アンゼロスにべたべたくっつかれてる俺。
ベッドの上ではマイアが服をんしょんしょと脱いでいる最中。すぐ隣のベッドではシャロンとアルメイダが並んで座り、それとなく事態が進むのを見守っている……というか、順番待ちしている。
「特にアンゼロス。隊を預かったと思ったらいきなりエロって」
「隊って言っても実質ここにいるメンバーだけだもん。いいじゃない……ちゅっ」
「ふふ。確かに一つにまとまっていますわね……色々な意味で。ちゅっ」
「テテスさんも既にお手つきですし、私たちもう遠慮することはないんですよね♪ ちゅっ」
三人に次々とキスを重ねられ、それぞれ耳をぴこぴこと上下させながら期待した顔をされると、まあ俺もちょっとその気にならざるをえないわけで。
「って、テテスちゃんはお手つきじゃないっぽいですけど。いえお手つきなら平気で同室エッチやらかし始めてもいいのかってあたりに若干疑問が残るんですけど私としては!」
「んー、まあスマイソン十人長的にはエッチ相手はみな姉妹ってことで遠慮しない方針なんじゃないかな? というわけで私も混ざろっかなー」
「駄目テテスちゃん。あっちに行っちゃ駄目。いろいろと大事なものを処女のうちに無くさないように」
「えー」
素通しの部屋のあっちとこっちでこんなこと始めておいてなんだけど、ナリスの言い分はとても正しいと思う。常識として。
「アンディ様。いつでも入れていいよ……ちゅっ」
「スマイソンさん。私にもキスを……ちゅっ」
「わ、私はそんな甘ったれた真似をしたいわけではないが……その、まあ、他をみんな同じようにしたのに私だけ漏らしたのでは貴様も気持ちが悪いだろうから、その……いいか、流れを乱さないようにしてやるだけだぞ? ……んちゅ……っ」
最後に取り付いてきたアルメイダが一番濃厚にキスしたのは他のみんなと一緒に生暖かくスルーしてやることにして。
「とりあえずアンゼロス。おっぱい揉ませて」
「……ぼ、僕の胸か?」
「うん。それとシャロンも」
「はい、それでは失礼して……」
「わ、悪かったな、ハーフなのに胸小さくてっ!」
ちょっと怒りながらも上着のボタンを外すアンゼロスと、スルリとネグリジェを脱いで俺の手に身を任せるシャロン。
ハーフなのにおっぱい小さいアンゼロスと、純正なのにおっぱいが大きいシャロン。
実にあべこべな二人だが。
「シャロンの見事なおっぱいも最高だけどアンゼロスの可愛いおっぱいも捨てがたい」
「アンディのそういうところ、よくわからない……」
「喜んでいただけるなら私はそれが一番です♪」
「どっちも俺の宝物だ。死ぬまで揉んで吸いたい」
きっと二人の美女を両腕に抱え、それぞれ片胸を揉み回しながら内側の乳首にちゅーちゅー唇を付ける俺はすごくみっともないエロ親父の顔をしていると思う。
思うけど気にしない。だらしない顔せざるを得ないじゃないか。
「いっそのこと、お前の価値は下半身だと言われてしまった方が据わりは良いのですけれどね」
オーロラは俺のズボンを丁寧に脱がしながらぼやく。ナイムネ組の苦悩か。
だが。
「俺は小さい胸も好きなんだ。いいか、小さい胸も好きなんだ!」
「力説する所か、それは」
アルメイダに溜め息をつかれても気にしない。そう言いながら誰に言われる前に上着を脱ぎ始めるアルメイダにちょっとニヤニヤしてしまうけど。
「アップルもおっぱい吸わせて。……ああ、そうだマイア、アルメイダも」
「本当に欲張りだな貴様は」
「アンディ様、おっぱい大好き。悪いことじゃない……♪」
俺の手が塞がっているのを見て、肩の後ろに抱きついて小さなおっぱいを押し付けてくるマイア。姿勢的にアルメイダも倣う。
唇でアップルのおっぱいもしゃぶり、そしてオーロラがその股の下から首を入れ、俺のちんこに口をつける。
まさに女尽くし。
特段指示しなくても、すぐにこんな形になってくれるみんなの集団エッチへの順応振りが本当に嬉しい。
「ああ幸せだ……お、オーロラ、もっと強めに頼めるか」
「はい♪ ん、んっ……」
「このままアンディ寝かせれば、あとは一人ずつ場所代わってエッチだね♪」
「最初はオーロラ姫か」
「アンディ様が決めること……でも、体勢的にアップルからの方がいいと思う」
「だ、大丈夫ですわ。そのままアップルさんの胸をお楽しみくださいな。わたくし、アップルさんと背中合わせに自分で入れさせていただきますわ……」
「すごい体勢ですね……」
「アルメイダ、マイアさん。スマイソンさんを支えられますね?」
「はっ」
「うん」
「倒すよー……アンディ、やりたいことがあったら言ってね」
「今やりたい放題やってる。言う前にお前らが全部実行してる」
本音。
それを聞いて、俺におっぱいをしゃぶらせながら頭を抱き締め、またがるようにベッドに膝をついたアップルが艶然と微笑む。
「ふふ……だって、私たち、アンディさんの雌奴隷ですもの」
「そう……だね。それもエッチなこと大好きな、ね♪」
「たっぷり、楽しんでくださいな……私たちの身、あなたのモノですわ♪」
「首輪が……こんなにも暖かいなんて、ふふふっ♪」
「……私はペット。好きなだけ可愛がっていいよ」
「……ま、まぁ、エッチは……そういう約束だ。お前は上手いし、戯れるのは嫌いじゃないが」
六人のとびきりの美女の身体に肉布団状態にされながら、俺はもつれるように彼女らとのセックスを始める。
「…………」
「ナリスちゃん、もしかして……羨ましい?」
「な、なに言ってんのっ? 別にそんな首輪とか普通じゃないし!」
「首輪じゃなくて、あの気持ちよさそうなえっちのことなんだけど……」
「……や、まあ、今朝方たっぷりやったから、今日は腰痛いしその……」
「……なんであんな幸せそうなんだろね、あの人たち……」
「……そりゃまあ……スマイソン十人長は……言い切るだけは言い切ってくれるし……自分だけの力じゃないにしろ、幸せにしてやるっていうのは本当に実行してくれそうだし……」
「……ふーん」
「な、何その視線わ!」
「別に……ナリスちゃん、もう首まで浸かっちゃってるなーって」
「何に!?」
(続く)
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